EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

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終章 電子仕掛けの約束

114 いくつもの断片

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 重力に従って落下していく壁、床、天井の残骸。
 何かに切り裂かれたかの如く鋭利な切断面を晒すそれらは、視界の中に存在している量から判断しても一部屋分では済まない。
 どうやら崩壊はこの部屋のみならず、建物全体に及んでいるようだ。
 当然と言うべきか、足下の床もまた隠形を解かれて崩れ落ちていく。
 しかし、マグ達まで崩落に巻き込まれるようなことはなかった。
 いつの間にかアテラのスカートの装甲版が代わりにマグの足場となり、降り注ぐ残骸はフィアのシールドによって全て防がれていたからだ。

『……乱暴』

 同じようにタングステンの装甲版の上に乗せられ、光り輝くシールドの内部に保護されている端末からキリが呆れたように言う。

「これぐらいやらないと、あのメタには届かないデスよ」

 対して、警戒を緩めることなく厳しい表情を浮かべたまま告げるオネット。
 その鋭い視線は、基礎から崩壊してできた穴に溜まった瓦礫に向けられている。
 すると、それに応じるように。

『その通り。……とは言え、さすがにこれは少しばかり不愉快かな』

 残骸の山の奥底から、普段に比べて若干低いメタの声が聞こえてきた。
 それを合図に、地に落ちた瓦礫が弾かれるように勢いよく浮かび上がる。
 そして、管理者の屋敷が逆再生の如く復元されていった。

『……さっきのは、ドリィのレーザーによる攻撃だね。より正確に言えば【アクセラレーター】による超加速との合わせ技だ』

 徐々に元通りになっていく空間の中で断定的に言い放つメタ。

『どうやら修復した【アクセラレーター】の力を全員で共有しているようだね。オネットが持つ支配の判断軸アクシス・統率の断片フラグメントの力なのかな?』

 続く彼女の問いかけに対しては誰も答えない。
 しかし、少なくともこの場では沈黙は肯定以外の何ものでもない。
 アテラが持つ先史兵装PTアーマメント【アクセラレーター】は、起動させると局所的な時間操作によって半ば停止した世界の中を動くことができるようになる。
 つまるところ、オネットを介してその機能を利用したドリィが、レーザービームライトによって刹那の内に建物を細切れにした訳だ。

「それと、ククラ。君の受容の判断軸アクシス・理解の断片フラグメントの力。どうやら他者の超越現象PBPを強化する効果もあるようだね」

 その声は真正面から聞こえてきて、マグは思わず目を剥いた。
 完全に復元された部屋に転がっていた残骸の余剰分が、瞬きをする間に見覚えのある少女の形を作っていた。
 再び現れたメタの端末。それは純白の壁を軽く叩きながら再び口を開く。

「私が持つ保守の判断軸アクシス・不壊の断片フラグメントによって堅牢となったこれを容易く切り裂くことができたのだから、そうとしか考えられない」

 サラリと己が所持する別の断片フラグメントに触れるメタ。
 不壊。単純に考えれば、破壊不能な程に硬くなる力だろう。
 本来ならば、一瞬で細切れにすることなどできなかったに違いない。
 メタはそれを根拠にそう結論した訳だ。

「君の力。ますます欲しくなったよ」
「思い上がり甚だしい。貴方の望みは叶わない」
「さて。それはどうかな。君こそ少し増長しているんじゃないかな?」

 ククラの吐き捨てるような言葉に、メタは肩を竦めながら返して続ける。

「いずれにしても、私そのものを破壊できなければ君達の行為は何の意味もなさないよ。さっきの攻撃にしたって、精々皮膚の表面を撫でられた程度のものさ」

 嘲笑うような表情を見せながら告げるメタ。
 先程自ら不愉快と口にしていたように、想定外の状況への苛立ちが残っているのか普段の軽い態度が僅かに崩れている。
 とは言え、あくまでも想定外の出来事があっただけ。
 戦いの上での優位は確信しているのか、余裕は保たれているように見える。
 根拠は、その身に宿したいくつもの断片フラグメントの力なのだろう。

『再生の判断軸アクシス・廻天の断片フラグメント。己を最善の状態に戻すことができる力、でしたか』
「そう。不壊の断片フラグメントもだけど、私が受容の判断軸アクシス・拡張の断片フラグメント元の持ち主クステから奪った時には既にあったものだから出自は分からないけどね」

 コスモスの忌々しげな言葉に得意顔で応じるメタ。
 彼女は「そして」と前置きながらマグ達に視線を移し……。

「私の電子頭脳は保守の判断軸アクシス・障壁の断片フラグメントと隔壁の断片フラグメントに守られている。如何に理解の断片フラグメント超越現象PBPを強化しようと突破は不可能だ。君達に勝ち目はないよ」

 変えようのない事実を突きつけるように、そう口にしたのだった。
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