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第二章 ガイノイドが管理する街々
101 帰り道の異変
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結果としてククラという想定していなかった成果を得る形となったが、マグの当初の目的は迷宮遺跡を攻略して人間が機人になる方法の手がかりを得ることだ。
魂と呼称する情報群を移し替える技術を研究しているという街の情報。
それを依頼の対価として受け取るために、とにもかくにも迷宮遺跡の最深部から全員で来た道を引き返し始める。
もっとも、既にこの場所はオネットの超越現象によって掌握済み。
当然ながら、新たな機獣が襲いかかってくるようなことはない。
聞こえてくるのはマグ達の足音と、前を行く彼女達の話声ぐらいのものだ。
「フィアはフィアだよ。ククラちゃん」
「フィ?」
「うん! それでいいよ!」
「ん」
外見的には同じぐらい幼く見えるガイノイド二人のやり取り。
明るく元気なフィアと若干ぼんやり気味のククラ。
性格の面では対照的な感じだが、見た感じ相性はよさそうだ。
フィアは楽しそうな笑顔だし、ククラもどことなく嬉しそうだ。
「アタシはドリィよ。よろしく、ククラ」
「リィ。よろしく」
「ええ。……ふふっ、悪くないわね」
ククラの呼び方は少し独特な感じだが、フィアと同じようにドリィもまた一種の愛称として受け入れているようだ。
何より、妹のような存在ができて喜んでいるのかドリィの表情は明るい。
「改めて、私はオネットと言うデスよ。ククラさん」
「ネー。僕のことはククラでいい」
「そうそう。オネットもアタシ達と同じような立場になった訳だし、アタシのこともドリィでいいわ」
「フィアもです!」
「分かりましたデス。ククラ、ドリィ、フィア」
オネットも加わり、そのまま続けて和気藹々と他愛のない話をしている彼女達。
ククラも含めて、その様子は仲のいい姉妹そのものだ。
人間だったら少し関係の構築に手間取りそうな雰囲気のククラでも既にそんな感じなのは、人間のために作られたガイノイドであるが故か。
とは言え、何だかんだで娘枠に収まってしまった四人であるだけに、不和であるよりは余程いいだろう。
「……やるべきことを全部終えて、どこかで穏やかに暮らせるようになったとしても、楽しく賑やかに過ごせそうですね」
「そうだな。早くそうできるといいな」
アテラを購入するまでは長らく一人きりだったし、彼女を購入してからも重い病のせいで特別なことは勿論、普通の生活というものすらまともに送れなかった。
時空間転移システムの暴走を抑え込み、自分自身の目的を達成することができたなら、彼女達と共にかつてできなかったことをして楽しんで生きていきたい。
そんなことを考えながら迷宮遺跡の出口を目指して歩いていく。
そして何ごともなく。
マグ達は技術センター染みた建物の一階ロビーに戻ってきた。
後は迷宮遺跡の外に出て装甲車に乗って帰るだけ。そのはずだったが……。
「ん?」
出入口に近づいた瞬間。異変を感じ取ってマグ達は立ちどまった。
「揺れてる?」
一瞬勘違いかと思ったが、徐々にハッキリと強い揺れが感じられた。
「じ、地震か?」
「いえ、これは……」
「何か変デス!」
地震は日本人にとって身近なものであるだけに、マグもまた違和感を抱いた。
地面が揺れている感じではない。
これはどちらかと言えば――。
「空間そのものが振動してるみたい」
乏しい表情ながらも怖がっているかのようにマグの腕に抱き着きながらククラが口にした通り、世界それ自体が揺れているかのようだ。
「ククラ。何が起きてるのか分かるか?」
くっついて縮こまっている彼女の背に手を回し、軽くさすりながら問いかける。
対してククラはコクッと小さく頷くと、目を見開いて黒い瞳の奥を明滅させた。
その身に宿した超越現象を以って、眼前の現象を理解しようとしているのだ。
そして。彼女は表情を強張らせながら呟いた。
「時空間転移システムの暴走。この宇宙が許容できる限界に近づいてるのかも」
魂と呼称する情報群を移し替える技術を研究しているという街の情報。
それを依頼の対価として受け取るために、とにもかくにも迷宮遺跡の最深部から全員で来た道を引き返し始める。
もっとも、既にこの場所はオネットの超越現象によって掌握済み。
当然ながら、新たな機獣が襲いかかってくるようなことはない。
聞こえてくるのはマグ達の足音と、前を行く彼女達の話声ぐらいのものだ。
「フィアはフィアだよ。ククラちゃん」
「フィ?」
「うん! それでいいよ!」
「ん」
外見的には同じぐらい幼く見えるガイノイド二人のやり取り。
明るく元気なフィアと若干ぼんやり気味のククラ。
性格の面では対照的な感じだが、見た感じ相性はよさそうだ。
フィアは楽しそうな笑顔だし、ククラもどことなく嬉しそうだ。
「アタシはドリィよ。よろしく、ククラ」
「リィ。よろしく」
「ええ。……ふふっ、悪くないわね」
ククラの呼び方は少し独特な感じだが、フィアと同じようにドリィもまた一種の愛称として受け入れているようだ。
何より、妹のような存在ができて喜んでいるのかドリィの表情は明るい。
「改めて、私はオネットと言うデスよ。ククラさん」
「ネー。僕のことはククラでいい」
「そうそう。オネットもアタシ達と同じような立場になった訳だし、アタシのこともドリィでいいわ」
「フィアもです!」
「分かりましたデス。ククラ、ドリィ、フィア」
オネットも加わり、そのまま続けて和気藹々と他愛のない話をしている彼女達。
ククラも含めて、その様子は仲のいい姉妹そのものだ。
人間だったら少し関係の構築に手間取りそうな雰囲気のククラでも既にそんな感じなのは、人間のために作られたガイノイドであるが故か。
とは言え、何だかんだで娘枠に収まってしまった四人であるだけに、不和であるよりは余程いいだろう。
「……やるべきことを全部終えて、どこかで穏やかに暮らせるようになったとしても、楽しく賑やかに過ごせそうですね」
「そうだな。早くそうできるといいな」
アテラを購入するまでは長らく一人きりだったし、彼女を購入してからも重い病のせいで特別なことは勿論、普通の生活というものすらまともに送れなかった。
時空間転移システムの暴走を抑え込み、自分自身の目的を達成することができたなら、彼女達と共にかつてできなかったことをして楽しんで生きていきたい。
そんなことを考えながら迷宮遺跡の出口を目指して歩いていく。
そして何ごともなく。
マグ達は技術センター染みた建物の一階ロビーに戻ってきた。
後は迷宮遺跡の外に出て装甲車に乗って帰るだけ。そのはずだったが……。
「ん?」
出入口に近づいた瞬間。異変を感じ取ってマグ達は立ちどまった。
「揺れてる?」
一瞬勘違いかと思ったが、徐々にハッキリと強い揺れが感じられた。
「じ、地震か?」
「いえ、これは……」
「何か変デス!」
地震は日本人にとって身近なものであるだけに、マグもまた違和感を抱いた。
地面が揺れている感じではない。
これはどちらかと言えば――。
「空間そのものが振動してるみたい」
乏しい表情ながらも怖がっているかのようにマグの腕に抱き着きながらククラが口にした通り、世界それ自体が揺れているかのようだ。
「ククラ。何が起きてるのか分かるか?」
くっついて縮こまっている彼女の背に手を回し、軽くさすりながら問いかける。
対してククラはコクッと小さく頷くと、目を見開いて黒い瞳の奥を明滅させた。
その身に宿した超越現象を以って、眼前の現象を理解しようとしているのだ。
そして。彼女は表情を強張らせながら呟いた。
「時空間転移システムの暴走。この宇宙が許容できる限界に近づいてるのかも」
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