EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

文字の大きさ
上 下
99 / 128
第二章 ガイノイドが管理する街々

099 カギとなる存在

しおりを挟む
「今後の情勢を左右するカギ?」
「はいデス」

 首を傾げて問い返したマグに、オネットの肯定に合わせてアテラが頷く。
 共同作業をして仲が深まったのか、妙に連携がよくなっている。
 ……それはともかくとして。

「この子が?」

 マグは改めて迷宮遺跡の最深部に安置された箱に視線を落とした。
 中では、艶やかな黒髪が特徴的な女の子が目を閉じて静かに横たわっている。
 ガイノイドなので当然だが、息をしている様子はない。
 前髪で顔の上半分が隠れていて見えにくいが、顔立ちは幼く愛らしい。
 勿論、フィア達と同様人間と見紛うような姿だ。
 どうやら戦闘系の機体ではないらしく、それらしいパーツは見て取れない。
 人間と接することを目的として作られていたのか、服装も人間用のものだ。
 ただし、ファンタジーの錬金術師が着ているような簡素なローブだったが。

「早速解放するデス」

 オネットがそう言うと、自動的に蓋が開いていく。
 容器の中が加圧された状態になっていたのか、プシューッという音が響いた。
 充填されていたのは不活性ガスだったらしく、白い煙が噴き出したりはしない。
 微妙に演出が乏しくて物足りなさがあるが、何より保存性を優先したのだろう。

「あ、起きたみたいです!」

 気体の流れで乱れた髪の合間から覗く人形の少女の目がゆっくりと開く。
 彼女は体を緩やかに起こすと、ぼんやりと辺りを見回した。
 それからマグを見て、黒い瞳の奥でカメラアイの焦点を合わせる。

「……パパ?」
「! はい。パパとママですよ」

 少女の問いにマグが答えるより先に、横からアテラが力強く告げる。

「ママ?」

 棺のような容器から出てきた少女は、首を傾げながらアテラに問う。
 対してアテラは深く頷いて「そうです」と断言すると、そのまま言葉を続けた。

「貴方には名前がありますか?」
「……僕、ククラ」
「成程、ある程度の設定は既に済んでいるようですね。……ではククラ。人間によって作り出されたアンドロイドとしての貴方の用途は?」
「色んな製品の非破壊検査」

 ククラと名乗った少女の返答に何となく納得する。

「つまり、ドリィの時と似たような感じか」
「それってアタシが迷宮遺跡に操られてた時の話?」

 彼女の確認の問いに頷く。
 ククラと名乗ったガイノイドが何かしらの断片フラグメントを持っていて、それを利用することでこの迷宮遺跡は侵入者の分析を行っていたのだろう。
 そして、そのデータを基に都度改良した人型機獣を生産していた、と。

「この子の中にある力がオネットちゃんの言うお宝?」
「その通りデス。管理コンピューターに残されていたデータによると、ククラが持つ断片フラグメントは受容の判断軸アクシス・理解の断片フラグメントなのデスよ」
「……理解? ……え、理解!?」

 サラッと告げたオネットに一瞬理解が追いつかず、つい二度聞き返してしまう。

「そうデス。理解デス」

 確かに、今回の迷宮遺跡の性質を思い返せばあり得ない話ではなかった。
 しかし、理解の断片フラグメントは……。

「暴走した時空間転移システムをとめられる可能性がある断片フラグメントの一つデスね」

 そして、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者たるメタが強く強く求めていたEX級アーティファクトだ。
 オネットの言う通り、今後の情勢を左右するカギと言って過言ではない。
 万が一にでも彼女の手に渡ってしまったら、大変なことになりかねない。

「パパ?」

 視線を感じたのか、首を傾げてマグを見るククラ。

「ククラは、これからどうする?」
「僕、パパと一緒に行く」

 彼女は問いかけに一歩距離を詰め、マグを見上げながら言った。
 時空間転移システムの暴走をとめることは、この星ティアフロント、いや、この宇宙全体にとってなさなければならない急務だ。
 折角見つけることができた解決のカギを、ここに放置していく訳にはいかない。
 いずれにせよ、まずは共に向学の街・学園都市メイアに向かう必要がある。
 刷り込みされた雛鳥のように親を見る目を向けるククラの処遇は、しっかりと考えなければならないが、まずは共に迷宮遺跡を出るとしよう。

「分かった。じゃあ、行こうか」

 そうしてククラを連れ、来た道を引き返そうと歩き出した直後。

「あ、その前にいいデス? ちょっとククラにお願いしたいことがあるデスよ」

 そうオネットが引き留めるように言い、マグ達は足をとめたのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...