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第二章 ガイノイドが管理する街々
099 カギとなる存在
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「今後の情勢を左右するカギ?」
「はいデス」
首を傾げて問い返したマグに、オネットの肯定に合わせてアテラが頷く。
共同作業をして仲が深まったのか、妙に連携がよくなっている。
……それはともかくとして。
「この子が?」
マグは改めて迷宮遺跡の最深部に安置された箱に視線を落とした。
中では、艶やかな黒髪が特徴的な女の子が目を閉じて静かに横たわっている。
ガイノイドなので当然だが、息をしている様子はない。
前髪で顔の上半分が隠れていて見えにくいが、顔立ちは幼く愛らしい。
勿論、フィア達と同様人間と見紛うような姿だ。
どうやら戦闘系の機体ではないらしく、それらしいパーツは見て取れない。
人間と接することを目的として作られていたのか、服装も人間用のものだ。
ただし、ファンタジーの錬金術師が着ているような簡素なローブだったが。
「早速解放するデス」
オネットがそう言うと、自動的に蓋が開いていく。
容器の中が加圧された状態になっていたのか、プシューッという音が響いた。
充填されていたのは不活性ガスだったらしく、白い煙が噴き出したりはしない。
微妙に演出が乏しくて物足りなさがあるが、何より保存性を優先したのだろう。
「あ、起きたみたいです!」
気体の流れで乱れた髪の合間から覗く人形の少女の目がゆっくりと開く。
彼女は体を緩やかに起こすと、ぼんやりと辺りを見回した。
それからマグを見て、黒い瞳の奥でカメラアイの焦点を合わせる。
「……パパ?」
「! はい。パパとママですよ」
少女の問いにマグが答えるより先に、横からアテラが力強く告げる。
「ママ?」
棺のような容器から出てきた少女は、首を傾げながらアテラに問う。
対してアテラは深く頷いて「そうです」と断言すると、そのまま言葉を続けた。
「貴方には名前がありますか?」
「……僕、ククラ」
「成程、ある程度の設定は既に済んでいるようですね。……ではククラ。人間によって作り出されたアンドロイドとしての貴方の用途は?」
「色んな製品の非破壊検査」
ククラと名乗った少女の返答に何となく納得する。
「つまり、ドリィの時と似たような感じか」
「それってアタシが迷宮遺跡に操られてた時の話?」
彼女の確認の問いに頷く。
ククラと名乗ったガイノイドが何かしらの断片を持っていて、それを利用することでこの迷宮遺跡は侵入者の分析を行っていたのだろう。
そして、そのデータを基に都度改良した人型機獣を生産していた、と。
「この子の中にある力がオネットちゃんの言うお宝?」
「その通りデス。管理コンピューターに残されていたデータによると、ククラが持つ断片は受容の判断軸・理解の断片なのデスよ」
「……理解? ……え、理解!?」
サラッと告げたオネットに一瞬理解が追いつかず、つい二度聞き返してしまう。
「そうデス。理解デス」
確かに、今回の迷宮遺跡の性質を思い返せばあり得ない話ではなかった。
しかし、理解の断片は……。
「暴走した時空間転移システムをとめられる可能性がある断片の一つデスね」
そして、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者たるメタが強く強く求めていたEX級アーティファクトだ。
オネットの言う通り、今後の情勢を左右するカギと言って過言ではない。
万が一にでも彼女の手に渡ってしまったら、大変なことになりかねない。
「パパ?」
視線を感じたのか、首を傾げてマグを見るククラ。
「ククラは、これからどうする?」
「僕、パパと一緒に行く」
彼女は問いかけに一歩距離を詰め、マグを見上げながら言った。
時空間転移システムの暴走をとめることは、この星ティアフロント、いや、この宇宙全体にとってなさなければならない急務だ。
折角見つけることができた解決のカギを、ここに放置していく訳にはいかない。
いずれにせよ、まずは共に向学の街・学園都市メイアに向かう必要がある。
刷り込みされた雛鳥のように親を見る目を向けるククラの処遇は、しっかりと考えなければならないが、まずは共に迷宮遺跡を出るとしよう。
「分かった。じゃあ、行こうか」
そうしてククラを連れ、来た道を引き返そうと歩き出した直後。
「あ、その前にいいデス? ちょっとククラにお願いしたいことがあるデスよ」
そうオネットが引き留めるように言い、マグ達は足をとめたのだった。
「はいデス」
首を傾げて問い返したマグに、オネットの肯定に合わせてアテラが頷く。
共同作業をして仲が深まったのか、妙に連携がよくなっている。
……それはともかくとして。
「この子が?」
マグは改めて迷宮遺跡の最深部に安置された箱に視線を落とした。
中では、艶やかな黒髪が特徴的な女の子が目を閉じて静かに横たわっている。
ガイノイドなので当然だが、息をしている様子はない。
前髪で顔の上半分が隠れていて見えにくいが、顔立ちは幼く愛らしい。
勿論、フィア達と同様人間と見紛うような姿だ。
どうやら戦闘系の機体ではないらしく、それらしいパーツは見て取れない。
人間と接することを目的として作られていたのか、服装も人間用のものだ。
ただし、ファンタジーの錬金術師が着ているような簡素なローブだったが。
「早速解放するデス」
オネットがそう言うと、自動的に蓋が開いていく。
容器の中が加圧された状態になっていたのか、プシューッという音が響いた。
充填されていたのは不活性ガスだったらしく、白い煙が噴き出したりはしない。
微妙に演出が乏しくて物足りなさがあるが、何より保存性を優先したのだろう。
「あ、起きたみたいです!」
気体の流れで乱れた髪の合間から覗く人形の少女の目がゆっくりと開く。
彼女は体を緩やかに起こすと、ぼんやりと辺りを見回した。
それからマグを見て、黒い瞳の奥でカメラアイの焦点を合わせる。
「……パパ?」
「! はい。パパとママですよ」
少女の問いにマグが答えるより先に、横からアテラが力強く告げる。
「ママ?」
棺のような容器から出てきた少女は、首を傾げながらアテラに問う。
対してアテラは深く頷いて「そうです」と断言すると、そのまま言葉を続けた。
「貴方には名前がありますか?」
「……僕、ククラ」
「成程、ある程度の設定は既に済んでいるようですね。……ではククラ。人間によって作り出されたアンドロイドとしての貴方の用途は?」
「色んな製品の非破壊検査」
ククラと名乗った少女の返答に何となく納得する。
「つまり、ドリィの時と似たような感じか」
「それってアタシが迷宮遺跡に操られてた時の話?」
彼女の確認の問いに頷く。
ククラと名乗ったガイノイドが何かしらの断片を持っていて、それを利用することでこの迷宮遺跡は侵入者の分析を行っていたのだろう。
そして、そのデータを基に都度改良した人型機獣を生産していた、と。
「この子の中にある力がオネットちゃんの言うお宝?」
「その通りデス。管理コンピューターに残されていたデータによると、ククラが持つ断片は受容の判断軸・理解の断片なのデスよ」
「……理解? ……え、理解!?」
サラッと告げたオネットに一瞬理解が追いつかず、つい二度聞き返してしまう。
「そうデス。理解デス」
確かに、今回の迷宮遺跡の性質を思い返せばあり得ない話ではなかった。
しかし、理解の断片は……。
「暴走した時空間転移システムをとめられる可能性がある断片の一つデスね」
そして、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者たるメタが強く強く求めていたEX級アーティファクトだ。
オネットの言う通り、今後の情勢を左右するカギと言って過言ではない。
万が一にでも彼女の手に渡ってしまったら、大変なことになりかねない。
「パパ?」
視線を感じたのか、首を傾げてマグを見るククラ。
「ククラは、これからどうする?」
「僕、パパと一緒に行く」
彼女は問いかけに一歩距離を詰め、マグを見上げながら言った。
時空間転移システムの暴走をとめることは、この星ティアフロント、いや、この宇宙全体にとってなさなければならない急務だ。
折角見つけることができた解決のカギを、ここに放置していく訳にはいかない。
いずれにせよ、まずは共に向学の街・学園都市メイアに向かう必要がある。
刷り込みされた雛鳥のように親を見る目を向けるククラの処遇は、しっかりと考えなければならないが、まずは共に迷宮遺跡を出るとしよう。
「分かった。じゃあ、行こうか」
そうしてククラを連れ、来た道を引き返そうと歩き出した直後。
「あ、その前にいいデス? ちょっとククラにお願いしたいことがあるデスよ」
そうオネットが引き留めるように言い、マグ達は足をとめたのだった。
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