EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

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第二章 ガイノイドが管理する街々

096 第一防衛ライン

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 オネットに言われ、アテラが取り込んだ人型機獣の残骸。
 それらは、扱いとしては他の出土品PTデバイスと同じだったらしい。
 彼女の超越現象PBPによって能力の一部が吸収され、その身にシールドとレーザーを扱うための機構と【エクソスケルトン】を模した追加装甲が生成されていく。
 勿論、性能はこの人型機獣と同程度に過ぎず、フィアとドリィの断片フラグメントの効果までコピーすることができている訳ではないが……。
 アテラの装備が充実したことは確かだ。
 とは言え、その部分はオネットの狙いとは別の効果に過ぎないようだった。

「…………この迷宮遺跡の中枢は地下五階の最奥。随分と先デスね」

 人型機獣が持っていたデータを分析し、彼女は険しい声で小さく呟く。
 今はまだ地下一階。
 全体から考えるとチュートリアルもいいところだ。

「地下二階に行く前に大広間があるようですが……」
「以前ここの攻略を試みた探索者達は、大体そこで撤退を余儀なくされてたようデス。残りは、その手前。どちらにしても、序盤も序盤デス」

 聞く限り、その大広間こそが迷宮遺跡側にとっての第一防衛ラインに違いない。
 そして、今まではそれすら突破できずにいた訳だ。
 そこに至るまでに襲いかかってくる人型機獣は全て、あくまでも侵入者を丸裸にするための捨て駒に過ぎないのだろう。

「旦那様っ!」

 そう分析をしている間にも、マグ達の能力を詳らかにしようと新手が現れる。
 今回は先程までとは違い、見た目の上では変化が見られない。
 性能的な面での差は分からないが……。
 いずれにせよ、これ以上自分達の情報を与えるべきではないだろう。
 マグはそう考えながら、フィアとドリィに視線を向けた。
 すると、二人はその意図を読み取ったように頷き、先程と同様に波長を絶え間なく変化させた光線を撃ち放った。
 これで一方的に攻撃することが可能なはず…………だった。

「うおっ!?」

 正にその次の瞬間。
 フィアのシールドを光線が突き抜け、マグの体を覆う装甲をかすめていく。
 万が一の場合に備えていたのか【エクソスケルトン】のガイドシステムが作動しており、敵の射線からズレるように位置取りをしていたのが功を奏したようだ。
 それがなかったら、直撃を受けて致命傷となっていたかもしれない。
 だが、それで安心することはできない。
 光の膜を突破したレーザーは未だ照射されたままだ。
 射出口を少し動かされるだけで、容易く体を両断されてしまうだろう。

「させません!」

 その追撃は、アテラが【フロートバルク】で操ったスカート状の装甲を盾にすることによって防いで一瞬の時間を稼ぐ。
 あくまでも劣化コピーに過ぎないおかげで、このタングステンの板でも僅かながら耐えることができているようだ。
 その猶予にドリィがレーザービームライトを操って敵を切り刻む。
 マグ達を守る金属の盾が溶断される前に、光の脅威は明滅しながら消え去った。
 ヒヤリとしたが、何とかことなきを得ることができたようだ。
 思わず深く安堵の息を吐く。

「旦那様、お怪我はありませんか!?」

 慌てて傍に来たアテラが、光線がかすめた部分を心配そうに触れてくる。
 対して、マグが傷ついた装甲の表面を復元しながら軽く動かして見せると、彼女はホッとしたように胸を撫で下ろした。

「う、嘘でしょ? リアルタイムで変化させてる波長を予測したって訳!?」

 代わりに愕然としたようなドリィの声が響く。
 どうやら相手の分析能力は想像以上らしい。
 ドリィが波長を変えるパターンを読み切ったのだ。

「これは、少し考えないといけないかもデス」
「間もなく件の大広間ですかからね」

 既に戦闘に関わる能力はほとんどを複製されてしまった状態。
 となれば次は数で攻めてくることが予測される。
 しかも、まだ地下一階。迷宮遺跡の入口に近い。

「けど、今は進むしかない」
「退路は常に確保するようにした方がいいデス」
「そうだな。無茶をして死んだら元も子もない」

 そうして互いに頷き合ってから先に進む。
 やがてマグ達は大広間の前に辿り着き、注意を払いながら中に入った。
 すると、そこには既に数十体の人型機獣が待ち構えていて――。

「マジか」

 尚且つ、その一体一体は今までコピーした能力全てを備えているようだった。
 そして、そうと理解した直後。
 マグ達はレーザーの集中砲火を浴びたのだった。
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