EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

文字の大きさ
上 下
77 / 128
第二章 ガイノイドが管理する街々

077 新たな街へ

しおりを挟む
「なあ、本当にこっちでいいのか?」

 景色が恐ろしい速さで流れていくのを装甲車の中から眺めながら。
 ただ一人、一行の中で生身の人間であるマグは問いかけた。
 明日より遥か先の世界に属する超技術。時空間転移システムの暴走により、介護用女性型アンドロイドガイノイドにして伴侶たるアテラと共に放り込まれた未来異星世界。
 生活基盤を作るためにしばらく過ごしていた秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアを離れ、今は共生の街・自然都市ティフィカへと向かう道行きの途中。
 しかしながら、窓の外の風景は変化が乏しくなって久しかった。
 具体的には一面の砂漠が延々と続いている感じだ。
 もっとも、日本人が砂漠と聞いて真っ先に思い浮かべるような砂だらけの砂漠ではなく、いわゆる礫砂漠と呼ばれるものではあるが。
 装甲車の整地機能を利用し、ひたすら小石を踏み潰して進んでいる。

「どうなんですか?」
「ナビゲーションによれば正しいはずデス」

 アテラの問いに、彼女自身の体の内側から若干独特な口調で答えが返ってくる。
 危うい思想を持つと言う秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者メタを討つために街を襲撃したガイノイド。その内の一人であるオネットの声だ。
 機械の体を破壊された彼女は、電子頭脳をアテラの体内に匿われた状態にある。
 この世界では誰もが当たり前に持つ固有の力。超越現象PBPの効果だ。
 別の時空間から訪れた者、稀人もまた転移した際に肉体を再構成されることで使用できるようになり、初めて発動させた時の状況に見合った能力を得る。
 機人に分類されるアテラも同様だ。

「でも、石だらけです」
「人間が住んでるような気配も全くないわね」

 オネットの返答に対して否定気味の声色と共に告げたのはフィアとドリィ。
 彼女達もまた、この世界惑星ティアフロントで巡り合ったガイノイドだ。
 立ち位置としてはマグとアテラの娘となっている。
 二言、三言のやり取りでその関係性が固定され、彼女達がそれを素直に受け入れているのは一つの機械らしさと言えるが、言動は既に十年来の家族の如く自然だ。
 そのギャップに戸惑いを抱いたりすることもあったが、あれから更に短くない時間を共に過ごしたマグは徐々に慣れつつあった。
 伴侶たるアテラは当然として、日に日に身内としての認識が強くなっている。
 出会って一日のオネットは……さすがに仲間と呼ぶにもまだ信頼関係が乏しい。
 今のところはむしろ、呉越同舟という表現の方が近いかもしれない。
 そんな五人が行く先に広がる不毛の大地。
 装甲車は自動走行機能によって目的地へと向かうはずだが、今はオネットが自身の力で制御を乗っ取っているので正しく機能しているかは断言できない。

「いえ、確かにこの先デスよ。ほら、見て下さいデス」

 そんな疑いを感じ取ったのか、オネットはどこか不満そうに言う。
 それを受けて意識を前に向けると、明らかに異常な光景が視界に映った。
 思わず言葉を失う。
 マグ達の目の前に広がったのは緑に溢れた肥沃な大地。
 しかし、まるで一本の線を引いて区切ったかのように礫砂漠と草木が生い茂る領域がクッキリ綺麗に一直線に分かたれている。
 余りに不自然で違和感が抱かざるを得ない。
 いわゆるオアシスとも植生が全く違う。一通り見渡した限り、面積も広大だ。

「見えてきたデスよ」

 更に少し自然に溢れた地を進んでいくと、オネットが告げた通り、人工物である木製の塀が長く並んでいる光景が見えてくる。
 その奥には比較的小さい木造建築がいくつも建っている。牧歌的な雰囲気だ。
 マグ達が乗る装甲車以外、無機物の気配が全くない。
 どうやら、あれこそが目的地。共生の街・自然都市ティフィカのようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

幼馴染パーティーから追放された冒険者~所持していたユニークスキルは限界突破でした~レベル1から始まる成り上がりストーリー

すもも太郎
ファンタジー
 この世界は個人ごとにレベルの上限が決まっていて、それが本人の資質として死ぬまで変えられません。(伝説の勇者でレベル65)  主人公テイジンは能力を封印されて生まれた。それはレベルキャップ1という特大のハンデだったが、それ故に幼馴染パーティーとの冒険によって莫大な経験値を積み上げる事が出来ていた。(ギャップボーナス最大化状態)  しかし、レベルは1から一切上がらないまま、免許の更新期限が過ぎてギルドを首になり絶望する。  命を投げ出す決意で訪れた死と再生の洞窟でテイジンの封印が解け、ユニークスキル”限界突破”を手にする。その後、自分の力を知らず知らずに発揮していき、周囲を驚かせながらも一人旅をつづけようとするが‥‥ ※1話1500文字くらいで書いております

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。 目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。 『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。 カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。 ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。 ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...