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第二章 ガイノイドが管理する街々
077 新たな街へ
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「なあ、本当にこっちでいいのか?」
景色が恐ろしい速さで流れていくのを装甲車の中から眺めながら。
ただ一人、一行の中で生身の人間であるマグは問いかけた。
明日より遥か先の世界に属する超技術。時空間転移システムの暴走により、介護用女性型アンドロイドにして伴侶たるアテラと共に放り込まれた未来異星世界。
生活基盤を作るためにしばらく過ごしていた秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアを離れ、今は共生の街・自然都市ティフィカへと向かう道行きの途中。
しかしながら、窓の外の風景は変化が乏しくなって久しかった。
具体的には一面の砂漠が延々と続いている感じだ。
もっとも、日本人が砂漠と聞いて真っ先に思い浮かべるような砂だらけの砂漠ではなく、いわゆる礫砂漠と呼ばれるものではあるが。
装甲車の整地機能を利用し、ひたすら小石を踏み潰して進んでいる。
「どうなんですか?」
「ナビゲーションによれば正しいはずデス」
アテラの問いに、彼女自身の体の内側から若干独特な口調で答えが返ってくる。
危うい思想を持つと言う秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者メタを討つために街を襲撃したガイノイド。その内の一人であるオネットの声だ。
機械の体を破壊された彼女は、電子頭脳をアテラの体内に匿われた状態にある。
この世界では誰もが当たり前に持つ固有の力。超越現象の効果だ。
別の時空間から訪れた者、稀人もまた転移した際に肉体を再構成されることで使用できるようになり、初めて発動させた時の状況に見合った能力を得る。
機人に分類されるアテラも同様だ。
「でも、石だらけです」
「人間が住んでるような気配も全くないわね」
オネットの返答に対して否定気味の声色と共に告げたのはフィアとドリィ。
彼女達もまた、この世界で巡り合ったガイノイドだ。
立ち位置としてはマグとアテラの娘となっている。
二言、三言のやり取りでその関係性が固定され、彼女達がそれを素直に受け入れているのは一つの機械らしさと言えるが、言動は既に十年来の家族の如く自然だ。
そのギャップに戸惑いを抱いたりすることもあったが、あれから更に短くない時間を共に過ごしたマグは徐々に慣れつつあった。
伴侶たるアテラは当然として、日に日に身内としての認識が強くなっている。
出会って一日のオネットは……さすがに仲間と呼ぶにもまだ信頼関係が乏しい。
今のところはむしろ、呉越同舟という表現の方が近いかもしれない。
そんな五人が行く先に広がる不毛の大地。
装甲車は自動走行機能によって目的地へと向かうはずだが、今はオネットが自身の力で制御を乗っ取っているので正しく機能しているかは断言できない。
「いえ、確かにこの先デスよ。ほら、見て下さいデス」
そんな疑いを感じ取ったのか、オネットはどこか不満そうに言う。
それを受けて意識を前に向けると、明らかに異常な光景が視界に映った。
思わず言葉を失う。
マグ達の目の前に広がったのは緑に溢れた肥沃な大地。
しかし、まるで一本の線を引いて区切ったかのように礫砂漠と草木が生い茂る領域がクッキリ綺麗に一直線に分かたれている。
余りに不自然で違和感が抱かざるを得ない。
いわゆるオアシスとも植生が全く違う。一通り見渡した限り、面積も広大だ。
「見えてきたデスよ」
更に少し自然に溢れた地を進んでいくと、オネットが告げた通り、人工物である木製の塀が長く並んでいる光景が見えてくる。
その奥には比較的小さい木造建築がいくつも建っている。牧歌的な雰囲気だ。
マグ達が乗る装甲車以外、無機物の気配が全くない。
どうやら、あれこそが目的地。共生の街・自然都市ティフィカのようだ。
景色が恐ろしい速さで流れていくのを装甲車の中から眺めながら。
ただ一人、一行の中で生身の人間であるマグは問いかけた。
明日より遥か先の世界に属する超技術。時空間転移システムの暴走により、介護用女性型アンドロイドにして伴侶たるアテラと共に放り込まれた未来異星世界。
生活基盤を作るためにしばらく過ごしていた秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアを離れ、今は共生の街・自然都市ティフィカへと向かう道行きの途中。
しかしながら、窓の外の風景は変化が乏しくなって久しかった。
具体的には一面の砂漠が延々と続いている感じだ。
もっとも、日本人が砂漠と聞いて真っ先に思い浮かべるような砂だらけの砂漠ではなく、いわゆる礫砂漠と呼ばれるものではあるが。
装甲車の整地機能を利用し、ひたすら小石を踏み潰して進んでいる。
「どうなんですか?」
「ナビゲーションによれば正しいはずデス」
アテラの問いに、彼女自身の体の内側から若干独特な口調で答えが返ってくる。
危うい思想を持つと言う秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの管理者メタを討つために街を襲撃したガイノイド。その内の一人であるオネットの声だ。
機械の体を破壊された彼女は、電子頭脳をアテラの体内に匿われた状態にある。
この世界では誰もが当たり前に持つ固有の力。超越現象の効果だ。
別の時空間から訪れた者、稀人もまた転移した際に肉体を再構成されることで使用できるようになり、初めて発動させた時の状況に見合った能力を得る。
機人に分類されるアテラも同様だ。
「でも、石だらけです」
「人間が住んでるような気配も全くないわね」
オネットの返答に対して否定気味の声色と共に告げたのはフィアとドリィ。
彼女達もまた、この世界で巡り合ったガイノイドだ。
立ち位置としてはマグとアテラの娘となっている。
二言、三言のやり取りでその関係性が固定され、彼女達がそれを素直に受け入れているのは一つの機械らしさと言えるが、言動は既に十年来の家族の如く自然だ。
そのギャップに戸惑いを抱いたりすることもあったが、あれから更に短くない時間を共に過ごしたマグは徐々に慣れつつあった。
伴侶たるアテラは当然として、日に日に身内としての認識が強くなっている。
出会って一日のオネットは……さすがに仲間と呼ぶにもまだ信頼関係が乏しい。
今のところはむしろ、呉越同舟という表現の方が近いかもしれない。
そんな五人が行く先に広がる不毛の大地。
装甲車は自動走行機能によって目的地へと向かうはずだが、今はオネットが自身の力で制御を乗っ取っているので正しく機能しているかは断言できない。
「いえ、確かにこの先デスよ。ほら、見て下さいデス」
そんな疑いを感じ取ったのか、オネットはどこか不満そうに言う。
それを受けて意識を前に向けると、明らかに異常な光景が視界に映った。
思わず言葉を失う。
マグ達の目の前に広がったのは緑に溢れた肥沃な大地。
しかし、まるで一本の線を引いて区切ったかのように礫砂漠と草木が生い茂る領域がクッキリ綺麗に一直線に分かたれている。
余りに不自然で違和感が抱かざるを得ない。
いわゆるオアシスとも植生が全く違う。一通り見渡した限り、面積も広大だ。
「見えてきたデスよ」
更に少し自然に溢れた地を進んでいくと、オネットが告げた通り、人工物である木製の塀が長く並んでいる光景が見えてくる。
その奥には比較的小さい木造建築がいくつも建っている。牧歌的な雰囲気だ。
マグ達が乗る装甲車以外、無機物の気配が全くない。
どうやら、あれこそが目的地。共生の街・自然都市ティフィカのようだ。
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