EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

文字の大きさ
上 下
64 / 128
第一章 未来異星世界

064 オネットとキリ

しおりを挟む
 秩序の街・多迷宮都市ラヴィリア。
 しばらく前に【アブソーバー】を用いて一区画のセキュリティが停止するというイレギュラーな事件があったものの、他の街に比べれば基本的に治安はいい。
 しかし、それでも問題を生み出す因子はそこかしこに隠れている。
 かつて完全なる管理社会と思われていた環境の中でさえ、イクス・ユートピアというカウンターが発生していたのだから当然だろう。
 無論、それが顕在化するかどうかはまた別の話だが……。

「……オネット」
「ああ。戻ってきたデスか。キリ」

 街の外。城壁が遠く小さく見える場所。
 そこに二人。あるいは二体。この街の法と秩序に反するであろう存在がいた。
 どこか独特なアクセントで話す方がオネット。
 口数少なく、彼女の呼びかけに対して頷いて応えたのがキリ。
 どちらも人間ではなく、女性型の機人ガイノイドだった。
 後期型の機体故に顔立ちは人間と何ら変わらない。
 だが、首から下は人工皮膚の処理が全く施されておらず機械的。
 正体を隠そうという雰囲気もない。
 特にオネットの頭部には、桜色の人工頭髪の中からアンテナらしき無機質なパーツが飛び出ていたりもする。

「さて、キリ。データを共有して欲しいのデスよ」
「……了承」

 余計な前置きは無用と本題に入ったオネットに、簡潔に応じるキリ。
 彼女は街の中に不法侵入して得た情報を短距離無線通信によって受け渡した。
 内容は二人の目的の障害となりそうな存在の情報。
 その調査が正規の手段を踏まずにキリが街に入り込んでいた理由だった。

「最後のこの子。気づきかけてるデスね」

 電子頭脳内で再生した映像。
 その中で一人の少女型ガイノイドがハッとしたようにキリの方を振り返った姿を確認し、オネットは警戒するように声を低くして呟いた。
 ここ最近、街で暮らし始めた稀人と一緒に行動している子のようだったが……。

「……驚愕」
「全くデス。間違いなく、彼女は何かしらの断片フラグメント持ちデスね」

 表情にも口調にも表れないキリの驚きに同意しつつ、確信と共に言うオネット。
 そう断定することができる理由は、キリもまた断片《フラグメント》持ちだからだ。
 排斥の判断軸アクシス・隠形の断片フラグメント
 それによってキリが保有している超越現象PBP――光学的、熱的な探知や感覚的な認識を狂わせ、己の存在を隠蔽する力――が大幅に強化されている。
 並の探知能力では、彼女の姿を捉えることなどできない。
 にもかかわらず、あの少女型ガイノイドはキリの気配に反応した。
 勿論、完全にキリの存在に気づくことができていた訳ではないようなので、探知に特化した超越現象PBP断片フラグメントではないのは確かだ。
 それでも――。

「……厄介」

 キリの言う通り。
 オネット達の障害となり得ることは間違いない。
 たとえ、ほとんど杞憂となるような極々小さな可能性だったとしても。

「確実に、街の外に誘い出すべきデス」
「……同意」

 敵は強大にして凶悪。
 可能な限り、イレギュラーになり得る要素は排除しなければならない。
 それでも尚、圧倒的な不利な状況に変わりはない。
 しかし、そうと理解していても。なさねばならないことがある。
 それこそが彼女達の存在意義でもあるのだから。

「簒奪者メタ。必ず私達が引き摺り下ろしてやるのデスよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

悠久の機甲歩兵

竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。 ※現在毎日更新中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...