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第一章 未来異星世界
062 迷宮遺跡の異変
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「これでマグさん達は探索者Cランク、狩猟者Dランクです。いいペースですね」
数日後。いくつかの迷宮遺跡で依頼をこなしてASHギルドへの納品を済ませたマグ達に、トリアがおっとりとした笑みを浮かべながら言った。
褒めてはくれているものの、驚きはない。常識の範疇という感じだ。
マグ個人としては、かなりペースが早いような気がしていたが……。
やはり、この時代この星にもRTAガチ勢のような存在がいるのだろう。
「ちなみに、最速記録はどの程度なのでしょうか」
「完全に戦闘特化の超越現象を得た稀人の方で、マグさん達と同じぐらいの期間で探索者と狩猟者を両方Aランクまで上げていましたね」
アテラの問いかけに、少し躊躇いがちに答えるトリア。
「ですが、自身と比較して焦ったりしないで下さい。あの方の場合は、最初から高ランクの迷宮遺跡や幻想獣に挑んだ結果ですから。性格にも難がありましたし」
ASHギルドの受付としては、余り参考にはして欲しくなさそうだ。
比較的穏やかな彼女が性格に言及する辺り、無茶苦茶な人物だったのだろう。
ランクによる情報制限がある以上、街の管理者メタが十分な実力を有していると判断して高ランクの指名依頼を提示した結果ではあるはずだが……。
あるいは、難のある性格の人物を御すための対応だった可能性もある。
いずれにしても、参考にできるような相手ではない。
そういった者に比べれば、安全に十分配慮している上にクリルの店での仕事もなくはなかったマグ達がいいペースに収まるのは当然のことだ。
そこで競い合う理由などないし、焦燥を感じる必要もない。
自分が命を落としたり、アテラ達が破壊されたりしては元も子もないのだから。
「ところで、迷宮遺跡の様子におかしなところはありませんでしたか?」
と、話題を変えようとするようにトリアが問いかけてくる。
確認の意図が強く聞き取れる口調からして、あるなしではなく、おかしなところがある前提でその中身を聞きたいのだろう。
それを踏まえ、マグは今日の遺跡探索を頭の中で振り返った。
「言われてみると……事前情報よりも機獣が少なかったような気がします」
少し自信なく答えながら、詳しい内容を求めるようにアテラを見る。
それだけで理解した彼女は、引き継ぐように音声を発した。
「襲撃頻度はルクス迷宮遺跡の二割程度。かつ【エコーロケイト】で確認できる範囲では様子を窺ったり、退避していたりする機獣の存在は確認できませんでした」
端末を通じて討伐数などの情報は得ているはずなので、欲しかったのはマグの体感よりも機人であるアテラの分析の方で間違いない。
マグとしても自分の感覚よりも信頼できる。
「勿論、未発見区画に隠れている可能性はありますが」
つけ加えられた彼女の言葉に、トリアは予想通りと頷いてから口を開いた。
「恐らく、その可能性はないと思います」
「……何か確証があるようですね」
「ええ。実は、他の迷宮遺跡でも似たような報告が上がっていまして……」
似た事例が同時多発的に起きている。
ならば、単純に未発見区画に潜んでいるとは考えにくいか。
「討伐のし過ぎとか?」
「記録にある限り、ペースは大きく変わっていません。迷宮遺跡の機獣の生産数を大幅に上回るということはないはずです。逆に生産数は増大している推移ですし」
現状は、むしろ機獣が増える方向性らしい。
となると、明らかに。
何かの別の要因によって引き起こされている現象のようだ。
「誰かが勝手に間引いているとか」
「いえ、迷宮遺跡に誰かが入れば記録が残るはずです」
トリアは断言するが、【アブソーバー】のような例もある。
余り過信はできないが……。
少なくとも現時点では、元凶は監視も調査もすり抜ける何かなのは間違いない。
全く以って気味の悪いことだ。
「よくない兆候でなければいいのですが……」
どこか不安そうに呟くトリア。
そんな彼女に、マグもまた面倒ごとのフラグを感じざるを得なかった。
数日後。いくつかの迷宮遺跡で依頼をこなしてASHギルドへの納品を済ませたマグ達に、トリアがおっとりとした笑みを浮かべながら言った。
褒めてはくれているものの、驚きはない。常識の範疇という感じだ。
マグ個人としては、かなりペースが早いような気がしていたが……。
やはり、この時代この星にもRTAガチ勢のような存在がいるのだろう。
「ちなみに、最速記録はどの程度なのでしょうか」
「完全に戦闘特化の超越現象を得た稀人の方で、マグさん達と同じぐらいの期間で探索者と狩猟者を両方Aランクまで上げていましたね」
アテラの問いかけに、少し躊躇いがちに答えるトリア。
「ですが、自身と比較して焦ったりしないで下さい。あの方の場合は、最初から高ランクの迷宮遺跡や幻想獣に挑んだ結果ですから。性格にも難がありましたし」
ASHギルドの受付としては、余り参考にはして欲しくなさそうだ。
比較的穏やかな彼女が性格に言及する辺り、無茶苦茶な人物だったのだろう。
ランクによる情報制限がある以上、街の管理者メタが十分な実力を有していると判断して高ランクの指名依頼を提示した結果ではあるはずだが……。
あるいは、難のある性格の人物を御すための対応だった可能性もある。
いずれにしても、参考にできるような相手ではない。
そういった者に比べれば、安全に十分配慮している上にクリルの店での仕事もなくはなかったマグ達がいいペースに収まるのは当然のことだ。
そこで競い合う理由などないし、焦燥を感じる必要もない。
自分が命を落としたり、アテラ達が破壊されたりしては元も子もないのだから。
「ところで、迷宮遺跡の様子におかしなところはありませんでしたか?」
と、話題を変えようとするようにトリアが問いかけてくる。
確認の意図が強く聞き取れる口調からして、あるなしではなく、おかしなところがある前提でその中身を聞きたいのだろう。
それを踏まえ、マグは今日の遺跡探索を頭の中で振り返った。
「言われてみると……事前情報よりも機獣が少なかったような気がします」
少し自信なく答えながら、詳しい内容を求めるようにアテラを見る。
それだけで理解した彼女は、引き継ぐように音声を発した。
「襲撃頻度はルクス迷宮遺跡の二割程度。かつ【エコーロケイト】で確認できる範囲では様子を窺ったり、退避していたりする機獣の存在は確認できませんでした」
端末を通じて討伐数などの情報は得ているはずなので、欲しかったのはマグの体感よりも機人であるアテラの分析の方で間違いない。
マグとしても自分の感覚よりも信頼できる。
「勿論、未発見区画に隠れている可能性はありますが」
つけ加えられた彼女の言葉に、トリアは予想通りと頷いてから口を開いた。
「恐らく、その可能性はないと思います」
「……何か確証があるようですね」
「ええ。実は、他の迷宮遺跡でも似たような報告が上がっていまして……」
似た事例が同時多発的に起きている。
ならば、単純に未発見区画に潜んでいるとは考えにくいか。
「討伐のし過ぎとか?」
「記録にある限り、ペースは大きく変わっていません。迷宮遺跡の機獣の生産数を大幅に上回るということはないはずです。逆に生産数は増大している推移ですし」
現状は、むしろ機獣が増える方向性らしい。
となると、明らかに。
何かの別の要因によって引き起こされている現象のようだ。
「誰かが勝手に間引いているとか」
「いえ、迷宮遺跡に誰かが入れば記録が残るはずです」
トリアは断言するが、【アブソーバー】のような例もある。
余り過信はできないが……。
少なくとも現時点では、元凶は監視も調査もすり抜ける何かなのは間違いない。
全く以って気味の悪いことだ。
「よくない兆候でなければいいのですが……」
どこか不安そうに呟くトリア。
そんな彼女に、マグもまた面倒ごとのフラグを感じざるを得なかった。
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