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第一章 未来異星世界
061 新しい先史兵装
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少しして、クリルは店舗部分から小箱を持って戻ってきた。
「それが重さを解決できる出土品ですか?」
「ああ。【フロートバルク】と呼ばれるものだ」
マグの問いに答えながら、彼女は小箱の中から球体を取り出す。
それを起動させると、同じ箱から何枚かのチップのようなものが飛び出した。
完全に浮遊している。
「これは原炎の作用により、対応するチップが貼られた物体を自由自在に動かすことができる機能を持つ。汝らに分かり易く言えば、念動力のようなものだな」
「自由自在って、対象の重さに関わらずですか?」
「厳密には、消費するエネルギーに差異はある。だが、操作感については重さでは影響しない。むしろ体積の方が影響は大きいな」
聞く限りでは、反重力のような理論の応用だろうか。
操作感に体積が影響するのは、空気抵抗のせいかもしれない。
あるいは視覚的な圧迫感か。
「使ってみろ」
クリルはチップをタングステンの板にくっつけると、本体を差し出してきた。
アテラがそれを受け取ると、昨日の活動でまた超越現象が強化されて容量が大きくなっていたらしく、【フロートバルク】が掌から吸収されていく。
しかし、今回は見た目には変化らしい変化はないようだ。
それをマグが確認している間に、タングステンの板が緩やかに浮かび始める。
アテラはそのまま金属の塊を自身の掌の上に一旦移動させた。
「成程。確かに重さをまるで感じませんね」
そう納得したように言った彼女は、板を手から遠ざけてクルクルと縦横斜めに回転させてみたり、UFOの如く直角な軌道を描いてみたりと色々動かし始めた。
確かにこれならば盾として使えそうだ。
あるいは、中距離ぐらいであれば攻撃にも転用できるかもしれない。
しかし――。
「ちょっと無骨過ぎるな」
思わず素直な感想を口にしてしまう。
マグにとってアテラは愛すべき女性であるため、彼女の装備として諸に金属の塊といった感じの板が追加されるのは何とも違和感があった。
「む……ならば、少し待て」
対して、何やらプライドが刺激されたかのようにムッとしたクリルは、棚からタングステンの小さな板を大量に取り出してきて作業を始めた。
どうやら接合して加工しているようだ。
硬度も極めて高いタングステンだが、粘土の如く形を変えていく。
接合も加工も何かしらの出土品を利用しているのだろう。
更に塗装も行っているようで、アテラに見合う白銀の装甲のようになっていく。
それが都合十枚できあがったところで、クリルはマグ達を振り返った。
「これで文句あるまい」
「え、ええ」
クリルの職人気質なところに圧されながら頷くと、彼女は満足そうにしながら洗練された自作の盾の縁にチップを貼りつけていく。
「【フロートバルク】で操作できる分は持っておいて、残りは【コンプレッシブキャリアー】にでも入れておけ」
「分かりました」
アテラの返事を合図に、十枚全てが浮かび上がって傍らへと滑らかに移動する。
どうやら、この数なら同時に全て操ることが可能のようだ。
「む。旧式でも機人と言うべきか。もう少し予備を作っておくとしよう」
それを目の当たりにしたクリルは、再び板の加工に戻る。
その間もアテラは盾を軽く動かしていたが、何かを思いついたようにディスプレイに電球マークを表示させると十枚の盾を腰の辺りに配置した。
直後、縁の部分が体に触れたのか、チップの形状が変わっていく。
こちらも彼女の超越現象の影響を受けたようだ。
「おかー様、可愛いです!」
「いいじゃない。恰好いいわ!」
それに付随した変化を、フィアとドリィが絶賛する。
見るとチップは腰の部分とのジョイントのように変形し、十枚の盾はまるでスカートのように綺麗に配置されていた。
一枚一枚が大きめのプリーツのようになっている。
「重くはないのか?」
「問題ありません。接続しているように見えますが、実際は浮遊していますので」
スカートが風で揺れるように、一枚一枚を操作して波打たせるアテラ。
その光景に思わずドキッとしてしまう。
対してアテラはそんなマグの反応を受け、ディスプレイをピンク色に染めながら嬉しそうに【(*≧∀≦*)】と表示させた。
「そういうことは他人のいない場所でやれ」
「っと、すみません」
追加分を作り終えたクリルの呆れたような声に、ハッと我に返って頭を下げる。
隣のアテラは何ごともなかったかのように淡々と、追加の一枚一枚を【コンプレッシブキャリアー】に入れていった。
クリルは呆れ気味に嘆息し、それから再び口を開く。
「後、遠距離攻撃用にそれも持っていけ」
視線で示されたのは、今回マグが修復した中にあった先史兵装だった。
失敗作ではないが、機能は極々普通。ただ見た目がおかしなものだ。
「ジョークグッズなのでしょうか」
「実際に殺傷能力があるジョークグッズ?」
「フィアやドリィみたいな戦闘用のガイノイドのための装備なのかもな。見た目が変わるオシャレ武器、みたいな」
同じ効果で外見だけ変わる。
ゲームなどによくある特殊装備のようなものなのだろう。
今回のものは機械でできた花束らしき見た目の、銃。
銃口は花を模した部分のようだ。
普通に花束のように持ち、花を目標に向けると引金が出てくる。
未来の武器であるだけに、こんな形でも威力は申し分ない。
ただ機能が普通過ぎるのと外見がこうなので、クリルも店の雰囲気に合わないからと抱き合わせで売ってしまおうとしているのだろう。
スカートを完備したアテラには似合っているので、マグとしては否やはない。
「ところで、全部でいくらですか? 加工賃も」
「加工は我が勝手にやったことだ。出土品の分と材料費だけでいい」
「あ、ありがとうございます」
それでも結局、指名依頼と追加依頼の特別報酬は吹っ飛んでしまったが……。
戦力が増強された上にアテラがドレスアップされたので特に問題ではなかった。
「それが重さを解決できる出土品ですか?」
「ああ。【フロートバルク】と呼ばれるものだ」
マグの問いに答えながら、彼女は小箱の中から球体を取り出す。
それを起動させると、同じ箱から何枚かのチップのようなものが飛び出した。
完全に浮遊している。
「これは原炎の作用により、対応するチップが貼られた物体を自由自在に動かすことができる機能を持つ。汝らに分かり易く言えば、念動力のようなものだな」
「自由自在って、対象の重さに関わらずですか?」
「厳密には、消費するエネルギーに差異はある。だが、操作感については重さでは影響しない。むしろ体積の方が影響は大きいな」
聞く限りでは、反重力のような理論の応用だろうか。
操作感に体積が影響するのは、空気抵抗のせいかもしれない。
あるいは視覚的な圧迫感か。
「使ってみろ」
クリルはチップをタングステンの板にくっつけると、本体を差し出してきた。
アテラがそれを受け取ると、昨日の活動でまた超越現象が強化されて容量が大きくなっていたらしく、【フロートバルク】が掌から吸収されていく。
しかし、今回は見た目には変化らしい変化はないようだ。
それをマグが確認している間に、タングステンの板が緩やかに浮かび始める。
アテラはそのまま金属の塊を自身の掌の上に一旦移動させた。
「成程。確かに重さをまるで感じませんね」
そう納得したように言った彼女は、板を手から遠ざけてクルクルと縦横斜めに回転させてみたり、UFOの如く直角な軌道を描いてみたりと色々動かし始めた。
確かにこれならば盾として使えそうだ。
あるいは、中距離ぐらいであれば攻撃にも転用できるかもしれない。
しかし――。
「ちょっと無骨過ぎるな」
思わず素直な感想を口にしてしまう。
マグにとってアテラは愛すべき女性であるため、彼女の装備として諸に金属の塊といった感じの板が追加されるのは何とも違和感があった。
「む……ならば、少し待て」
対して、何やらプライドが刺激されたかのようにムッとしたクリルは、棚からタングステンの小さな板を大量に取り出してきて作業を始めた。
どうやら接合して加工しているようだ。
硬度も極めて高いタングステンだが、粘土の如く形を変えていく。
接合も加工も何かしらの出土品を利用しているのだろう。
更に塗装も行っているようで、アテラに見合う白銀の装甲のようになっていく。
それが都合十枚できあがったところで、クリルはマグ達を振り返った。
「これで文句あるまい」
「え、ええ」
クリルの職人気質なところに圧されながら頷くと、彼女は満足そうにしながら洗練された自作の盾の縁にチップを貼りつけていく。
「【フロートバルク】で操作できる分は持っておいて、残りは【コンプレッシブキャリアー】にでも入れておけ」
「分かりました」
アテラの返事を合図に、十枚全てが浮かび上がって傍らへと滑らかに移動する。
どうやら、この数なら同時に全て操ることが可能のようだ。
「む。旧式でも機人と言うべきか。もう少し予備を作っておくとしよう」
それを目の当たりにしたクリルは、再び板の加工に戻る。
その間もアテラは盾を軽く動かしていたが、何かを思いついたようにディスプレイに電球マークを表示させると十枚の盾を腰の辺りに配置した。
直後、縁の部分が体に触れたのか、チップの形状が変わっていく。
こちらも彼女の超越現象の影響を受けたようだ。
「おかー様、可愛いです!」
「いいじゃない。恰好いいわ!」
それに付随した変化を、フィアとドリィが絶賛する。
見るとチップは腰の部分とのジョイントのように変形し、十枚の盾はまるでスカートのように綺麗に配置されていた。
一枚一枚が大きめのプリーツのようになっている。
「重くはないのか?」
「問題ありません。接続しているように見えますが、実際は浮遊していますので」
スカートが風で揺れるように、一枚一枚を操作して波打たせるアテラ。
その光景に思わずドキッとしてしまう。
対してアテラはそんなマグの反応を受け、ディスプレイをピンク色に染めながら嬉しそうに【(*≧∀≦*)】と表示させた。
「そういうことは他人のいない場所でやれ」
「っと、すみません」
追加分を作り終えたクリルの呆れたような声に、ハッと我に返って頭を下げる。
隣のアテラは何ごともなかったかのように淡々と、追加の一枚一枚を【コンプレッシブキャリアー】に入れていった。
クリルは呆れ気味に嘆息し、それから再び口を開く。
「後、遠距離攻撃用にそれも持っていけ」
視線で示されたのは、今回マグが修復した中にあった先史兵装だった。
失敗作ではないが、機能は極々普通。ただ見た目がおかしなものだ。
「ジョークグッズなのでしょうか」
「実際に殺傷能力があるジョークグッズ?」
「フィアやドリィみたいな戦闘用のガイノイドのための装備なのかもな。見た目が変わるオシャレ武器、みたいな」
同じ効果で外見だけ変わる。
ゲームなどによくある特殊装備のようなものなのだろう。
今回のものは機械でできた花束らしき見た目の、銃。
銃口は花を模した部分のようだ。
普通に花束のように持ち、花を目標に向けると引金が出てくる。
未来の武器であるだけに、こんな形でも威力は申し分ない。
ただ機能が普通過ぎるのと外見がこうなので、クリルも店の雰囲気に合わないからと抱き合わせで売ってしまおうとしているのだろう。
スカートを完備したアテラには似合っているので、マグとしては否やはない。
「ところで、全部でいくらですか? 加工賃も」
「加工は我が勝手にやったことだ。出土品の分と材料費だけでいい」
「あ、ありがとうございます」
それでも結局、指名依頼と追加依頼の特別報酬は吹っ飛んでしまったが……。
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