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第一章 未来異星世界
040 少女の残骸
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「これはとある遺跡から出土したものなのだが……機能も用途も分からないせいで我の超越現象では修復ができず、見ての通りの有様だ」
部屋の隅の壁に背を預けるようにしている幼い少女型の機械人形。
だが、まともなのは大体腹部から上だけで、下はパーツが散乱した状態だった。
下半身は破損が酷過ぎて、ジャンクと言った方が正確かもしれない。
顔は人間と見紛う出来であるだけに、目を背けたくなる。
メタのような外装も服もないため、形としては裸なのも凄惨さを強めている。
「小児性愛者用のセクサロイドではないようですね。それにしては巨乳型ですが」
アテラが機械人形の胸の辺りに視線をやりながら言う。
確かに顔立ちの幼さに反し、胸元の起伏は激しい。
いわゆるロリ巨乳のようなシルエットだ。
ただ、レイティングによってか表面がツルッとしたカバーパーツとなっている。
それを以って、アテラは用途の一つを可能性から除外したようだ。
「うむ。その辺りも含めて製作意図が全く分からん。当たりをつけても確信がなければ修復できんからな。正直、場所を食って困っていたのだ」
「ですが、旦那様の超越現象であれば……」
「要素を構成するパーツが九割揃っていれば復元できる。この子を起動させることができるようになるだろう」
「……つまり、彼女を元通りに修復して遺跡探索の仲間にしろ、と」
「そういうことだ」
マグの結論を肯定するクリル。
対してマグは、心に躊躇いを抱いて難しい顔をした。
「どうした?」
「いえ、その。見た目が少し……」
「幼い少女の形をしたものに戦わせるのは忍びないということか?」
「ええ」
「……汝は少し機人を人間と同一視し過ぎているな。だが、アテラはこれから汝と共に危険に飛び込む訳だが、それはよいのか?」
クリルの問いかけにマグはアテラに視線を向けた。
すると、彼女はそれに応えるように画面を淡いピンク色に染めて音声を発した。
「私は旦那様と目的を同じくするパートナーですから」
決して揺るがぬ真理を告げるように胸を張るアテラ。
そんな彼女の姿に、クリルは思わずといった様子でフッと笑った。
「そうか。しかし、まあ、汝の価値観であれば、この子がこのままなのも許容できまい。とりあえず修復してから、この子の意思に任せるというのはどうだ?」
「……そうですね。そうします」
実際、無残な姿の彼女を修復しない選択肢はない。
だからマグは残骸を踏まないように気をつけつつ、彼女の上半身に近づいた。
幼い少女の頭の青みがかった人工毛髪をすくように撫で、力を発動させる。
すると見る間に散乱していた部品が全て修復され、少女の体に組み込まれていった。
やがて彼女は完全な人型に戻り、その目が静かに開かれる。
そして、感情の色のない無機質な瞳がマグを捉えた直後。
『要人警護用人型汎用護衛ロボットDFSV-7G-12Fの初期設定を行います。名称、性格タイプ、お好みの関係性を入力下さい』
機械的な抑揚のなさで幼さを打ち消した少女の声が、作業場に響き渡った。
部屋の隅の壁に背を預けるようにしている幼い少女型の機械人形。
だが、まともなのは大体腹部から上だけで、下はパーツが散乱した状態だった。
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顔は人間と見紛う出来であるだけに、目を背けたくなる。
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確かに顔立ちの幼さに反し、胸元の起伏は激しい。
いわゆるロリ巨乳のようなシルエットだ。
ただ、レイティングによってか表面がツルッとしたカバーパーツとなっている。
それを以って、アテラは用途の一つを可能性から除外したようだ。
「うむ。その辺りも含めて製作意図が全く分からん。当たりをつけても確信がなければ修復できんからな。正直、場所を食って困っていたのだ」
「ですが、旦那様の超越現象であれば……」
「要素を構成するパーツが九割揃っていれば復元できる。この子を起動させることができるようになるだろう」
「……つまり、彼女を元通りに修復して遺跡探索の仲間にしろ、と」
「そういうことだ」
マグの結論を肯定するクリル。
対してマグは、心に躊躇いを抱いて難しい顔をした。
「どうした?」
「いえ、その。見た目が少し……」
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「ええ」
「……汝は少し機人を人間と同一視し過ぎているな。だが、アテラはこれから汝と共に危険に飛び込む訳だが、それはよいのか?」
クリルの問いかけにマグはアテラに視線を向けた。
すると、彼女はそれに応えるように画面を淡いピンク色に染めて音声を発した。
「私は旦那様と目的を同じくするパートナーですから」
決して揺るがぬ真理を告げるように胸を張るアテラ。
そんな彼女の姿に、クリルは思わずといった様子でフッと笑った。
「そうか。しかし、まあ、汝の価値観であれば、この子がこのままなのも許容できまい。とりあえず修復してから、この子の意思に任せるというのはどうだ?」
「……そうですね。そうします」
実際、無残な姿の彼女を修復しない選択肢はない。
だからマグは残骸を踏まないように気をつけつつ、彼女の上半身に近づいた。
幼い少女の頭の青みがかった人工毛髪をすくように撫で、力を発動させる。
すると見る間に散乱していた部品が全て修復され、少女の体に組み込まれていった。
やがて彼女は完全な人型に戻り、その目が静かに開かれる。
そして、感情の色のない無機質な瞳がマグを捉えた直後。
『要人警護用人型汎用護衛ロボットDFSV-7G-12Fの初期設定を行います。名称、性格タイプ、お好みの関係性を入力下さい』
機械的な抑揚のなさで幼さを打ち消した少女の声が、作業場に響き渡った。
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