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第一章 未来異星世界
037 三種の遺跡
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「……未来の技術、か」
どうやらVRギアがなくてもフルダイブと似た状態を作ることができるらしい。
大規模な光学迷彩に続く明確な未来感に少しだけ気分が高揚し、周囲を見回す。
マグがそうしていると、近くにいたケイルが軽く咳払いをして注意を引いた。
「まずは遺跡の種類について説明しておこうか」
「あ、はい」
返事をし、最後にもう一度だけ全体を流し見てから彼に向き直る。
一緒に部屋に入ったはずのトリアの姿は見当たらない。
彼女は恐らくシミュレーターの操作や調整を行っているのだろう。
「探索者が探索する遺跡は千差万別だが、大別すると三つに分けられる」
「三つ、ですか」
「ああ。形骸遺跡、迷宮遺跡、そして疑似迷宮だ」
そこに何の違いがあるのか。続く言葉を黙って待つ。
「形骸遺跡は機能が完全に停止した遺跡で建物が老朽化していたり、害獣が住み着いていたりする以外の危険はない。それだけに探索済みの場合がほとんどだ」
「……それだと実入りがなさそうですね」
「ああ。だから、探索者が形骸遺跡に入ることはほとんどない。隠しエリアがあることを期待して行くのが精々だ。狩猟者が害獣を狩りに行く方が遥かに多い」
ケイルはマグの確認を肯定してから補足を加えた。
話の順番からして、元の時代で言う遺跡に一番近いのがこの形骸遺跡のようだ。
マグからすると遥か未来の施設なので、遺跡呼びはまだどうも違和感があるが。
いずれにせよ、わざわざ形骸遺跡を探索するメリットはなさそうだ。
そんな場所で隠しエリアを探すなど、もはや宝くじを買うようなものだろう。
「逆に迷宮遺跡は機能の一部、または全てが生きている遺跡だ。大元の管理システムを破壊しない限り、ガードロボットや罠が停止することもない」
「つまり、確実に未踏領域がある、ということですね」
そして、未発見の出土品を得られる可能性がある、と。
どうやら、この迷宮遺跡こそが探索者にとっての本命のようだ。
「その通りではある。が、厳密には時間を置けば全て未踏領域になると言った方が正確だ。セキュリティにより内部構造が刻一刻変化していくからな。危険性は高い」
「となると、管理システムを先に破壊するのが探索のセオリーですか?」
「それは遺跡による。例えば元々が有用な出土品の工場だった場合、既存の管理システムを維持して一種の生産工場として活用することもある」
「既存のものを維持…………管理システムを書き換えて制御したりとかは――」
「それが可能な者は極めて少ない。遺跡中枢に連れていくのはリスクが高過ぎる」
となると、基本的にガードロボットや罠はそのまま。
探索者がそれらを踏み越えて回収に行かなければならない訳だ。
しかし、一定の価値がある出土品を高い確率で確保できるのは利点と言える。
「探索者への依頼はほとんどがこれだ。このラヴィリア周辺にはそうした有用な迷宮遺跡が多数存在する。故に、ここは多迷宮都市と呼ばれている」
「成程」
秩序の街・多迷宮都市ラヴィリア。
多迷宮都市の部分がそういった理由なら、秩序の街は何に由来しているのか。
マグは内心首を傾げた。
それを問う前にケイルが説明を再開したため、質問の機会を逸してしまったが。
「最後に疑似迷宮。これは俺の出身世界にもあったダンジョンを模したアミューズメントパークの残骸らしい。出現する敵と戦う体験型アクションゲームのな」
「ゲ、ゲーム?」
「あくまでもゲームだったものだ。本来は命の危険などないが、時空間転移システム暴走の影響で安全装置が停止してしまっている。探索は命懸けだ」
「ええと、その探索で得られるものは?」
聞く限りではリスクばかりでリターンがない。
形骸遺跡に輪をかけて探索する意味がないように感じるが……。
「出現する敵は原炎で構成され、打ち倒すと原炎結晶と呼ばれる物体を落とす。これを回収し、ASHギルドに売るのも探索者の主な収入源だ」
「原炎結晶……それは魔石みたいなものでしょうか」
原炎を魔力と言い換えた説明から連想して問う。
「お前の魔石のイメージが分からないから何とも言えないが……出土品や超越現象の出力を高める増幅器のようなものだ。汎用性が高く需要がある」
おおよそ頭の中で思い浮かべていたものに近似していたので、マグは頷いた。
「つまり迷宮遺跡と疑似迷宮。この二つが探索者の活動の軸となる訳ですね」
ざっくり纏めるとケイルは「そうだ」と肯定し、マグが一通り話を理解したと判断したのか一呼吸置いてから続ける。
「大まかな説明はこんなところだ。そろそろ実践と行くとしよう」
「分かりました」
そして彼は視線を小綺麗な通路の先に向け、マグ達もまた顔を上げて身構えた。
どうやらVRギアがなくてもフルダイブと似た状態を作ることができるらしい。
大規模な光学迷彩に続く明確な未来感に少しだけ気分が高揚し、周囲を見回す。
マグがそうしていると、近くにいたケイルが軽く咳払いをして注意を引いた。
「まずは遺跡の種類について説明しておこうか」
「あ、はい」
返事をし、最後にもう一度だけ全体を流し見てから彼に向き直る。
一緒に部屋に入ったはずのトリアの姿は見当たらない。
彼女は恐らくシミュレーターの操作や調整を行っているのだろう。
「探索者が探索する遺跡は千差万別だが、大別すると三つに分けられる」
「三つ、ですか」
「ああ。形骸遺跡、迷宮遺跡、そして疑似迷宮だ」
そこに何の違いがあるのか。続く言葉を黙って待つ。
「形骸遺跡は機能が完全に停止した遺跡で建物が老朽化していたり、害獣が住み着いていたりする以外の危険はない。それだけに探索済みの場合がほとんどだ」
「……それだと実入りがなさそうですね」
「ああ。だから、探索者が形骸遺跡に入ることはほとんどない。隠しエリアがあることを期待して行くのが精々だ。狩猟者が害獣を狩りに行く方が遥かに多い」
ケイルはマグの確認を肯定してから補足を加えた。
話の順番からして、元の時代で言う遺跡に一番近いのがこの形骸遺跡のようだ。
マグからすると遥か未来の施設なので、遺跡呼びはまだどうも違和感があるが。
いずれにせよ、わざわざ形骸遺跡を探索するメリットはなさそうだ。
そんな場所で隠しエリアを探すなど、もはや宝くじを買うようなものだろう。
「逆に迷宮遺跡は機能の一部、または全てが生きている遺跡だ。大元の管理システムを破壊しない限り、ガードロボットや罠が停止することもない」
「つまり、確実に未踏領域がある、ということですね」
そして、未発見の出土品を得られる可能性がある、と。
どうやら、この迷宮遺跡こそが探索者にとっての本命のようだ。
「その通りではある。が、厳密には時間を置けば全て未踏領域になると言った方が正確だ。セキュリティにより内部構造が刻一刻変化していくからな。危険性は高い」
「となると、管理システムを先に破壊するのが探索のセオリーですか?」
「それは遺跡による。例えば元々が有用な出土品の工場だった場合、既存の管理システムを維持して一種の生産工場として活用することもある」
「既存のものを維持…………管理システムを書き換えて制御したりとかは――」
「それが可能な者は極めて少ない。遺跡中枢に連れていくのはリスクが高過ぎる」
となると、基本的にガードロボットや罠はそのまま。
探索者がそれらを踏み越えて回収に行かなければならない訳だ。
しかし、一定の価値がある出土品を高い確率で確保できるのは利点と言える。
「探索者への依頼はほとんどがこれだ。このラヴィリア周辺にはそうした有用な迷宮遺跡が多数存在する。故に、ここは多迷宮都市と呼ばれている」
「成程」
秩序の街・多迷宮都市ラヴィリア。
多迷宮都市の部分がそういった理由なら、秩序の街は何に由来しているのか。
マグは内心首を傾げた。
それを問う前にケイルが説明を再開したため、質問の機会を逸してしまったが。
「最後に疑似迷宮。これは俺の出身世界にもあったダンジョンを模したアミューズメントパークの残骸らしい。出現する敵と戦う体験型アクションゲームのな」
「ゲ、ゲーム?」
「あくまでもゲームだったものだ。本来は命の危険などないが、時空間転移システム暴走の影響で安全装置が停止してしまっている。探索は命懸けだ」
「ええと、その探索で得られるものは?」
聞く限りではリスクばかりでリターンがない。
形骸遺跡に輪をかけて探索する意味がないように感じるが……。
「出現する敵は原炎で構成され、打ち倒すと原炎結晶と呼ばれる物体を落とす。これを回収し、ASHギルドに売るのも探索者の主な収入源だ」
「原炎結晶……それは魔石みたいなものでしょうか」
原炎を魔力と言い換えた説明から連想して問う。
「お前の魔石のイメージが分からないから何とも言えないが……出土品や超越現象の出力を高める増幅器のようなものだ。汎用性が高く需要がある」
おおよそ頭の中で思い浮かべていたものに近似していたので、マグは頷いた。
「つまり迷宮遺跡と疑似迷宮。この二つが探索者の活動の軸となる訳ですね」
ざっくり纏めるとケイルは「そうだ」と肯定し、マグが一通り話を理解したと判断したのか一呼吸置いてから続ける。
「大まかな説明はこんなところだ。そろそろ実践と行くとしよう」
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