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第一章 未来異星世界
032 メタの所見と……
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「それにしても、おかしな人間だったね」
汚れ一つない真っ白な部屋の中央。
風景に溶け込むように同じく純白に塗られた机に向かいながらメタは独り呟いた。
つい先程まで面会の場を設けていた人間と機人。
正に今日、惑星ティアフロントを訪れたばかりの稀人達。
多種多様な者達が住まうこの星においても少々風変わりな二人だったが……。
この秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの人口が増えること自体は非常に好ましい。
人の数はそのまま街の力だ。
何をするにしても、まず数が揃っていないと始まらない。
それがたとえ特異な趣味嗜好の者と、旧式にも程がある古びた機人だとしても。
「まあ、大勢に影響を与えるような類の者ではないことは間違いないけれど」
人間の原動力とも言える欲望。
彼らのそれは、あくまで個人の範疇に留まるものと見た。
メタやこの街、ひいては世界の秩序に害をなすような存在ではないだろう。
ああいうタイプは、望みが極めてパーソナルであるが故に御し易い。
うまいこと誘導してやれば、気持ちよく思い通りに働いてくれるはずだ。
そうなれば互いにとって損はない。
思惑はどうあれ、形としてはWin-Winの関係と言っていい。
「私が管理するこの街で生きていけば、彼らも幸せになれるはずだ。そうだろう?」
メタは自信満々に告げてから、眼前のディスプレイに意識を移して問いかけた。
首筋に繋がるコードによって街のマザーコンピューターに接続している身。
普通に考えれば別の端末など必要ないはずだが、これには特別な用途がある。
『貴方の展望と彼らの望み。そこに齟齬が生じない限りは問題が具現化することはないでしょう。ですが、驕らないことです。人間は時に不条理な存在なのですから』
聞こえてきたのは、メタのものとは異なる抑揚を抑えた冷たい女性の声だった。
発生源は、メタと同型の機人の顔が映し出されたディスプレイ脇のスピーカーだ。
音に合わせて画面内の少女の口が動いている。
その正体は、ネットワークから隔離された端末に組み込まれたAIだった。
「うん。その通りだね。忠言感謝するよ、コスモス」
そんな彼女の言葉に対し、メタは余裕の笑みと楽しそうな口調で返す。
対照的に、コスモスと呼ばれた画面上のAI少女は苦虫を噛み潰した顔になった。
先の発言は、ある種の当てつけだったのかもしれない。
『……もし、彼女が断片を持っていたらどうしていましたか?』
「さて。どうしていただろうね。けれど、目指すべき先に変わりはないよ」
平坦ながら忌々しげな声色で問うコスモスに、とぼけたように答えるメタ。
両者の間のパワーバランスが見て取れる。
「他の者達と同様に、彼らが幸福になるように導く。その上で、この私のため、この街のため、万民の幸福のための礎となって貰う。それだけさ」
彼女はそう続けると、話は終わりとばかりに目を閉じた。
話しかけておいて一方的な態度。
だが、コスモスはいつものことと諦めるように無言で画面の電源を落とす。
「私達は皆、人間を幸福にするために存在しているのだからね」
最後にメタは瞑目したまま呟き、意識を刻一刻と街の情報がもたらされ続けているマザーコンピューターへと移したのだった。
汚れ一つない真っ白な部屋の中央。
風景に溶け込むように同じく純白に塗られた机に向かいながらメタは独り呟いた。
つい先程まで面会の場を設けていた人間と機人。
正に今日、惑星ティアフロントを訪れたばかりの稀人達。
多種多様な者達が住まうこの星においても少々風変わりな二人だったが……。
この秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアの人口が増えること自体は非常に好ましい。
人の数はそのまま街の力だ。
何をするにしても、まず数が揃っていないと始まらない。
それがたとえ特異な趣味嗜好の者と、旧式にも程がある古びた機人だとしても。
「まあ、大勢に影響を与えるような類の者ではないことは間違いないけれど」
人間の原動力とも言える欲望。
彼らのそれは、あくまで個人の範疇に留まるものと見た。
メタやこの街、ひいては世界の秩序に害をなすような存在ではないだろう。
ああいうタイプは、望みが極めてパーソナルであるが故に御し易い。
うまいこと誘導してやれば、気持ちよく思い通りに働いてくれるはずだ。
そうなれば互いにとって損はない。
思惑はどうあれ、形としてはWin-Winの関係と言っていい。
「私が管理するこの街で生きていけば、彼らも幸せになれるはずだ。そうだろう?」
メタは自信満々に告げてから、眼前のディスプレイに意識を移して問いかけた。
首筋に繋がるコードによって街のマザーコンピューターに接続している身。
普通に考えれば別の端末など必要ないはずだが、これには特別な用途がある。
『貴方の展望と彼らの望み。そこに齟齬が生じない限りは問題が具現化することはないでしょう。ですが、驕らないことです。人間は時に不条理な存在なのですから』
聞こえてきたのは、メタのものとは異なる抑揚を抑えた冷たい女性の声だった。
発生源は、メタと同型の機人の顔が映し出されたディスプレイ脇のスピーカーだ。
音に合わせて画面内の少女の口が動いている。
その正体は、ネットワークから隔離された端末に組み込まれたAIだった。
「うん。その通りだね。忠言感謝するよ、コスモス」
そんな彼女の言葉に対し、メタは余裕の笑みと楽しそうな口調で返す。
対照的に、コスモスと呼ばれた画面上のAI少女は苦虫を噛み潰した顔になった。
先の発言は、ある種の当てつけだったのかもしれない。
『……もし、彼女が断片を持っていたらどうしていましたか?』
「さて。どうしていただろうね。けれど、目指すべき先に変わりはないよ」
平坦ながら忌々しげな声色で問うコスモスに、とぼけたように答えるメタ。
両者の間のパワーバランスが見て取れる。
「他の者達と同様に、彼らが幸福になるように導く。その上で、この私のため、この街のため、万民の幸福のための礎となって貰う。それだけさ」
彼女はそう続けると、話は終わりとばかりに目を閉じた。
話しかけておいて一方的な態度。
だが、コスモスはいつものことと諦めるように無言で画面の電源を落とす。
「私達は皆、人間を幸福にするために存在しているのだからね」
最後にメタは瞑目したまま呟き、意識を刻一刻と街の情報がもたらされ続けているマザーコンピューターへと移したのだった。
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