13 / 128
第一章 未来異星世界
013 街と視線
しおりを挟む
門番に別れを告げた後、マグとアテラは並んで巨大な門をくぐった。
そうして街に入った二人の目に飛び込んできたのは――。
「これは、何と言うか……いわゆるJRPGみたいな光景ですね」
城壁や門番の雰囲気を引き継いだような西洋風の建築物の数々。
古めかしさや厳格さはなく、どことなく現代的なポップさが見え隠れしている。
日本人が一般にファンタジーと聞いて思い浮かべるような景色が広がっていた。
「ゲームの世界に入ったみたいで凄いけど……これ。どう考えても自然とこの形に落ち着いた訳じゃないよな」
一から順に文明を築いていったのならいざ知らず。
ここは崩壊から復興した更に後の世界なのだから。
「ええ。間違いなく、人為的なものでしょう」
誰が音頭を取ったのかは分からないが、JRPG的なライトファンタジー世界をモチーフにしたのだろう。もの好きなリーダーがいたらしい。
そんな感想を抱きながら、マグはアテラの誘導に従って目的地へと歩いていった。
彼女はあの腕輪型の端末を吸収(?)したことで、空中ディスプレイを一々表示させることなく頭の中で地図アプリを起動できるようになったそうだ。
何とも便利な機能が追加されたものだ。
「あの、旦那様」
「…………ああ、視線を感じるな」
アテラの小声の呼びかけに、マグは目線だけで周囲を窺いながら応じる。
「私を見ているみたいですね」
通行人の表情や目の動きからして、どうやらアテラの外見が珍しいようだ。
門番が彼女を指して「随分と旧式」などと言っていたが、如何にもロボット然としたガイノイドはこの時代には余り存在していないのかもしれない。
「けど、入ってすぐは誰も見てなかったよな。あれだけ派手に門が開いたのに」
稀人が発生する場所を街が管理しているということなら、入ってきた門と普段使いされている街の出入り口は全くの別ものと考えるのが妥当だろう。
時空間転移装置は暴走しているとも言っていたし、立ち入り禁止の危険区域となっていて然るべきだ。簡易適性試験も行われる訳だから。
あの門が開けば、稀人が現れたと大々的に知らせるようなものだが……。
「恐らく、光学迷彩などを駆使して住民の認識を阻害していたのでしょう」
「……わざわざそんなことをするなら、小さな扉にして職業斡旋所に続く隠し通路でも作っておいてくれればいいのにな」
「それでは味気ない、ということではないでしょうか」
「…………それは、まあ、確かにな」
突然見知らぬ場所に放り出され、不安が先立つような状況だ。
ひたすら合理的なだけでは気が滅入ることもある。
実際、あの大きな扉が重々しく開いて目にした街の光景にはマグも多少なり興奮していたし、心の清涼剤として機能していると言えなくもない。
あの門番も最後にRPGのモブキャラの台詞染みた言葉を仰々しく口にしていたことを考えても、そうした心理的な効果を狙った演出と見て間違いなさそうだ。
その上で、余り稀人が目立たないように配慮もしていたのだろう。
少なくとも、遥か未来の技術の無駄遣いではなかったらしい。
もっとも、アテラ自身の姿が特異なせいで隠蔽効果は無に帰したようだが。
「ともかく、気にせず職業斡旋所に向かいましょう」
「そうだな」
別に疚しいことなど何一つとしてないのだ。
マグ達は周りの視線を気にせず、堂々と歩くことにした。
そうして街に入った二人の目に飛び込んできたのは――。
「これは、何と言うか……いわゆるJRPGみたいな光景ですね」
城壁や門番の雰囲気を引き継いだような西洋風の建築物の数々。
古めかしさや厳格さはなく、どことなく現代的なポップさが見え隠れしている。
日本人が一般にファンタジーと聞いて思い浮かべるような景色が広がっていた。
「ゲームの世界に入ったみたいで凄いけど……これ。どう考えても自然とこの形に落ち着いた訳じゃないよな」
一から順に文明を築いていったのならいざ知らず。
ここは崩壊から復興した更に後の世界なのだから。
「ええ。間違いなく、人為的なものでしょう」
誰が音頭を取ったのかは分からないが、JRPG的なライトファンタジー世界をモチーフにしたのだろう。もの好きなリーダーがいたらしい。
そんな感想を抱きながら、マグはアテラの誘導に従って目的地へと歩いていった。
彼女はあの腕輪型の端末を吸収(?)したことで、空中ディスプレイを一々表示させることなく頭の中で地図アプリを起動できるようになったそうだ。
何とも便利な機能が追加されたものだ。
「あの、旦那様」
「…………ああ、視線を感じるな」
アテラの小声の呼びかけに、マグは目線だけで周囲を窺いながら応じる。
「私を見ているみたいですね」
通行人の表情や目の動きからして、どうやらアテラの外見が珍しいようだ。
門番が彼女を指して「随分と旧式」などと言っていたが、如何にもロボット然としたガイノイドはこの時代には余り存在していないのかもしれない。
「けど、入ってすぐは誰も見てなかったよな。あれだけ派手に門が開いたのに」
稀人が発生する場所を街が管理しているということなら、入ってきた門と普段使いされている街の出入り口は全くの別ものと考えるのが妥当だろう。
時空間転移装置は暴走しているとも言っていたし、立ち入り禁止の危険区域となっていて然るべきだ。簡易適性試験も行われる訳だから。
あの門が開けば、稀人が現れたと大々的に知らせるようなものだが……。
「恐らく、光学迷彩などを駆使して住民の認識を阻害していたのでしょう」
「……わざわざそんなことをするなら、小さな扉にして職業斡旋所に続く隠し通路でも作っておいてくれればいいのにな」
「それでは味気ない、ということではないでしょうか」
「…………それは、まあ、確かにな」
突然見知らぬ場所に放り出され、不安が先立つような状況だ。
ひたすら合理的なだけでは気が滅入ることもある。
実際、あの大きな扉が重々しく開いて目にした街の光景にはマグも多少なり興奮していたし、心の清涼剤として機能していると言えなくもない。
あの門番も最後にRPGのモブキャラの台詞染みた言葉を仰々しく口にしていたことを考えても、そうした心理的な効果を狙った演出と見て間違いなさそうだ。
その上で、余り稀人が目立たないように配慮もしていたのだろう。
少なくとも、遥か未来の技術の無駄遣いではなかったらしい。
もっとも、アテラ自身の姿が特異なせいで隠蔽効果は無に帰したようだが。
「ともかく、気にせず職業斡旋所に向かいましょう」
「そうだな」
別に疚しいことなど何一つとしてないのだ。
マグ達は周りの視線を気にせず、堂々と歩くことにした。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる