12 / 128
第一章 未来異星世界
012 名前とアテラの力?
しおりを挟む
「……名前、か」
「元々の名前を使ってもいいし、新しい名前にしてもいい。だが、一度設定したら変更には面倒な手続きが必要になる。注意することだ」
空中ディスプレイを前に悩む男に、門番がアドバイスを口にする。
折角の新天地だ。
取るに足らない人生を送った己からは脱却したい。
心機一転を図るのも悪くないかもしれない。
男はそう考え、一度アテラに視線を向けた。
「名前を変えようと私にとって旦那様は旦那様です。どこまでもついていきます」
「……ありがとう、アテラ」
この新しい世界に、過去からの繋がりは彼女だけでいい。
だから――。
「これから俺は、マグと名乗ろうと思う」
ガラテアをもじったアテラに対応するように。
同じギリシャ神話のエピソードからピグマリオンの一部を取って逆に読んだ。
人形偏愛。ピグマリオンコンプレックスの由来となった存在だ。
ガイノイドを愛する男には相応しいだろう。
神話では、最終的にガラテアは人間になってピグマリオンと結ばれたが……。
男としては、アテラは機械のままでも構わない。むしろ、そのままがいい。
そういった考えの下、逆読みにしてみた。
「アテラは……」
「私は旦那様にいただいたこの名を気に入っていますので」
「そうか。じゃあ、後はミドルネームとファミリーネームだな」
「ファミリーネーム……あ、あの、旦那様」
アテラは、淡いピンク色に発光させたディスプレイに【(///∇//)テレテレ】と赤い絵文字を表示させながらモジモジし始める。
意図は何となく理解できる。
「ファミリーネームは同じにしよう」
「はい! 旦那様!」
マグの提案に、アテラは嬉しそうに絵文字を【(*≧∀≦*)】と改めた。
この世界の婚姻形態は分からないが、パートナーとしての意識を強く持ちたい。
人生の最期の願い。彼女と添い遂げる。
その決意を表すように、マグは自身とアテラのフルネームを決定した。
「よし。ミドルネームとファミリーネームを入力して……今日から俺はマグ・アド・マキナ。アテラはアテラ・エクス・マキナだ」
「はい。私はアテラ・エクス・マキナです!」
アテラはそう新たな自分の名を嬉しそうに繰り返すと、それを入力するために腕輪をマグ経由で受け取って身に着けた。
「え? あれ?」
次の瞬間、腕輪は吸い込まれるようにアテラの手首の中に消えていく。
自分の時とは異なる現象にマグは、影が薄くなっていた門番に視線を向けた。
それに彼が何か反応を示す前に、腕輪が消え去った辺りから画面が表示される。
どうやら影も形もなくなってはいるが、機能は失われていないらしい。
「……詳細は分からないが、彼女の超越現象だろう」
一連の現象を見て推測を口にするが、彼もそれ以上のことは言えないようだ。
それが転移時の再構成によってアテラが得た固有の特殊能力だというのなら、しっかりと検証していく必要はあるだろう。
しかし、これもまた。ここで考え込んで明らかになる話ではない。
時間を浪費するばかりだ。
「とりあえず私も名前を入力しますね」
アテラもまたそう判断したようで、自身の名をそこに打ち込む。
その作業が終わってから二人同時に門番に向き直ると、彼は頷いて口を開いた。
「まあ、色々あったが、これで俺からの案内は終わりだ。街に入ったら一先ず一般の職業斡旋所に向かうといい。地図は端末に入っている」
締め括るような言葉。
その直後、それを合図にしたように巨大な門が重々しい音と共に開いていく。
「っと、まだ一つ。最後の仕事があったな」
そして完全に開門したところで思い出したように言った門番は、一つ大げさに咳払いをしてから一拍置き……。
「ようこそ、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアへ」
そう演技めいた口調と身振りで告げたのだった。
「元々の名前を使ってもいいし、新しい名前にしてもいい。だが、一度設定したら変更には面倒な手続きが必要になる。注意することだ」
空中ディスプレイを前に悩む男に、門番がアドバイスを口にする。
折角の新天地だ。
取るに足らない人生を送った己からは脱却したい。
心機一転を図るのも悪くないかもしれない。
男はそう考え、一度アテラに視線を向けた。
「名前を変えようと私にとって旦那様は旦那様です。どこまでもついていきます」
「……ありがとう、アテラ」
この新しい世界に、過去からの繋がりは彼女だけでいい。
だから――。
「これから俺は、マグと名乗ろうと思う」
ガラテアをもじったアテラに対応するように。
同じギリシャ神話のエピソードからピグマリオンの一部を取って逆に読んだ。
人形偏愛。ピグマリオンコンプレックスの由来となった存在だ。
ガイノイドを愛する男には相応しいだろう。
神話では、最終的にガラテアは人間になってピグマリオンと結ばれたが……。
男としては、アテラは機械のままでも構わない。むしろ、そのままがいい。
そういった考えの下、逆読みにしてみた。
「アテラは……」
「私は旦那様にいただいたこの名を気に入っていますので」
「そうか。じゃあ、後はミドルネームとファミリーネームだな」
「ファミリーネーム……あ、あの、旦那様」
アテラは、淡いピンク色に発光させたディスプレイに【(///∇//)テレテレ】と赤い絵文字を表示させながらモジモジし始める。
意図は何となく理解できる。
「ファミリーネームは同じにしよう」
「はい! 旦那様!」
マグの提案に、アテラは嬉しそうに絵文字を【(*≧∀≦*)】と改めた。
この世界の婚姻形態は分からないが、パートナーとしての意識を強く持ちたい。
人生の最期の願い。彼女と添い遂げる。
その決意を表すように、マグは自身とアテラのフルネームを決定した。
「よし。ミドルネームとファミリーネームを入力して……今日から俺はマグ・アド・マキナ。アテラはアテラ・エクス・マキナだ」
「はい。私はアテラ・エクス・マキナです!」
アテラはそう新たな自分の名を嬉しそうに繰り返すと、それを入力するために腕輪をマグ経由で受け取って身に着けた。
「え? あれ?」
次の瞬間、腕輪は吸い込まれるようにアテラの手首の中に消えていく。
自分の時とは異なる現象にマグは、影が薄くなっていた門番に視線を向けた。
それに彼が何か反応を示す前に、腕輪が消え去った辺りから画面が表示される。
どうやら影も形もなくなってはいるが、機能は失われていないらしい。
「……詳細は分からないが、彼女の超越現象だろう」
一連の現象を見て推測を口にするが、彼もそれ以上のことは言えないようだ。
それが転移時の再構成によってアテラが得た固有の特殊能力だというのなら、しっかりと検証していく必要はあるだろう。
しかし、これもまた。ここで考え込んで明らかになる話ではない。
時間を浪費するばかりだ。
「とりあえず私も名前を入力しますね」
アテラもまたそう判断したようで、自身の名をそこに打ち込む。
その作業が終わってから二人同時に門番に向き直ると、彼は頷いて口を開いた。
「まあ、色々あったが、これで俺からの案内は終わりだ。街に入ったら一先ず一般の職業斡旋所に向かうといい。地図は端末に入っている」
締め括るような言葉。
その直後、それを合図にしたように巨大な門が重々しい音と共に開いていく。
「っと、まだ一つ。最後の仕事があったな」
そして完全に開門したところで思い出したように言った門番は、一つ大げさに咳払いをしてから一拍置き……。
「ようこそ、秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアへ」
そう演技めいた口調と身振りで告げたのだった。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる