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第3章 日本プロ野球1部リーグ編
202 春季キャンプとドラフト5位、6位
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2月になった。
少し前にWBW日本代表の最終メンバーが発表されていたが、世間はそれよりもドーピング問題の方に気を取られているようだった。
第31回WBW本選の開催を間近に控えたタイミング。
そして、正にそれに直結した事案だったことが拍車をかけてしまったのだろう。
しかし、だからと言って他のスケジュールが滞る訳ではない。
日本プロ野球界は例年通り春季キャンプに突入し、村山マダーレッドサフフラワーズの選手達もまた多分に漏れずキャンプ地を訪れていた。
「さすが沖縄ね。世界が違うわ」
「いやあ、ホントっすね」
場所は去年と同じく久米島第2野球場。
今年も久米島町の副町長が開幕セレモニーに来ていた。
前回も丁寧な対応ではあったが、今回はそれに輪をかけて腰が低い。
もう恐縮し切りだ。
来年もどうかよろしくお願いしますとペコペコしていた。
村山マダーレッドサフフラワーズが1部リーグに昇格したことによって、当然ながら色々と周囲の扱いが変わっている。
まあ、それでも町長の方は去年と同様に宮城オーラムアステリオスのキャンプ地である久米島第1野球場の開幕セレモニーに参加しているが……。
こればかりは仕方がないことだろう。
宮城オーラムアステリオスは同じ1部リーグの球団。
時間が被ってしまったら、長年つき合いがある方を優先せざるを得ない。
ちなみに、町長は後で改めて挨拶に来るとのことだ。
「と言うか、人多過ぎない? 春季キャンプってこんなものなの?」
「いや、多分1部リーグを見渡しても多いと思うぞ。今年に限っては」
扱いが大きく変わった事例の1つとしては、他に報道陣の人数もある。
3部リーグの新興球団も珍しかったが、1部リーグ昇格はそれ以上の珍事。
ドラフト会議周りで大分お騒がせしてしまったこともあって、村山マダーレッドサフフラワーズの注目度は1部リーグ全24球団の中でトップレベルだ。
諸々いい数字が取れると目されているのだろう。
そして、それを証明するように観客の数も去年の比ではない。倍以上だ。
つまり沖縄の離島にまで来てくれる熱心なファンも増えているということ。
彼らの存在は大事にしたいところだが……。
「ま、周りは気にするな」
「選手は競技で魅せるべき」
周りがどう変化しようと、俺達が春季キャンプでやるべきことに変わりはない。
変えてはいけない。
野球選手である以上は、野球のパフォーマンスこそが最重要なのだから。
勿論、人間性は二の次などと言うつもりはないが……。
それは人間としての価値の話であり、野球以前の大前提と考えるべきだろう。
何にしても、春季キャンプはペナントレースに向けての準備期間。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「当然ね」「了解っす」
「うん。分かってる」
ほとんどの選手にとっては言うに及ばないことだ。
ただ、まあ。
去年とあからさまに違う状況を前にして、全く気にせずいるのは中々難しい。
どことなく妙な空気が球場に漂っているのも、否定できない事実だった。
一部チームメイトからは、注目を浴びて微妙に浮ついている様子も見て取れる。
そこは気にしておいた方がいいだろう。
ともあれ、そんな雰囲気の中で。
まずは首脳陣が一通り挨拶を行う。
「今年も僭越ながら投手コーチを務めさせていただきます。特に投手陣の皆さんが潜在能力を100%発揮できるように、全力を尽くしていきたいと思います」
俺も兼任投手コーチとして、そちら側から選手達に向けて言う。
それについて不思議に思う人間はもはや彼らの中にはいない。
報道陣が物珍しそうに何度もフラッシュを焚いているのみだ。
「さて。今年からはドラフト会議を通じて獲得した新人選手も加わって春季キャンプを行っていくことになりますが……改めて自己紹介をしていただきましょう」
しばらくして首脳陣の挨拶が終わると、尾高監督がそう促した。
去年も似たような流れだったなと思う。
一先ず今日のところはひたすら定型的に。と言うか、地味に進行して。
無難に初日を乗り越えようというところだろう。
何ごとも入り方が大事だ。
変な方向性のモチベーションを無駄に煽っても練習効率が悪化しかねないし、下手をすると怪我にも繋がりかねないからな。
プロ野球選手としては僅か2シーズン目の俺達だ。
春季キャンプ自体慣れていない。
シーズンとシーズンの間の自主練習に至っては初めてのこと。
それぞれ調整の進み具合も全く違うだろう。
球団に歴史があるならともかく、肝心のチームも2年目でノウハウが不十分。
まずは自主トレ明けの選手の現状を見極めることからやっていく必要がある。
この春季キャンプは、慎重過ぎるぐらい慎重にスタートした方がいい。
そんな風に俺が考えていると、まず美海ちゃんが全員の前に出て口を開いた。
「浜中美海です。ドラフト1位指名で入団しました。ポジションはピッチャー。内野もできます。秀治郎君の顔に泥を塗らないように、結果に拘りたいと思います」
淀みなく告げてから、彼女はチラッと視線を向けてきた。
それに頷いて応じる。
今日から再び正式にチームメイトになることができた。
先程まで選手側で彼女の隣にいたあーちゃんも、心なしか嬉しそうに見える。
気心知れた仲だ。俺も嬉しく思う。
美海ちゃんも同じように思ってくれているのだろう。
彼女はこちらに自然な微笑みを向けてから、元の位置に戻っていった。
そして、その代わりに倉本さんが前に進み出る。
「ドラフト2位入団の倉本未来っす。ポジションはキャッチャーっすけど、今年はバッティングの方でも世間を見返してやるつもりっす」
いつもの口調。しかし、その表情はやはりと言うべきか非常に挑戦的。
春季キャンプを経てペナントレースへ。
そこで結果を残すことができて、ようやく自分を侮った者達の評価を覆せる。
彼女の今のモチベーションは正にそれだ。
気合が入っているのが一目で分かる。
しかし、それが空回りしないように気をつけておいた方がいいだろう。
その倉本さんは宣戦布告であると明確に示すように報道陣に視線を送り、それから満足げに元に位置に戻っていった。
次は――。
「ドラ3位入団の瀬川正樹選手は山形県内で調整中です。まずはピッチング以外のところで怪我の影響が最小限まで持っていくことを優先しています」
本来は彼の順番のところで、俺が代わりに現状を説明する。
正樹はリハビリのため、春季キャンプには帯同していない。
少し心配だが、磐城君の父親である大吾氏と山大総合野球研究会で出会った青木さんと柳原さんのサポートがあれば大丈夫なはずだ。
素人の俺より、その道のプロとプロを目指している人間の方が余程いい。
ともあれ、この場にいない正樹の挨拶はなし。
次は昇二が前に出る。
「瀬川昇二です。ドラフト4位指名で入団しました。ポジションは倉本さんと同じくキャッチャーですが、ピッチャー以外であればどこでもできます」
昇二については俺と同じく【怪我しない】を持つからな。
この春季キャンプでもガンガン負荷をかけていこうと思っている。
ここまで自分の口で自己紹介を行った3人。
美海ちゃんに倉本さん、そして昇二は、チームに顔見知りが多い。
勿論、俺とあーちゃん以外の話だ。
クラブチーム、企業チーム時代の村山マダーレッドサフフラワーズと山形県立向上冠中学高等学校野球部とで合同練習を行っていたからな。
だからか、歓迎ムードが強い。
さすがに去年入団の選手とは初めてだが、彼女達ならすぐに馴染めるだろう。
問題は残る2人だ。
「……佐々井主樹です。ドラフト5位指名で入団しました。ピッチャーです。全国的には無名だった自分ですが、精一杯食らいついていきたいと思います」
「か、門倉光英です。ドラフト6位で指名を受けて入団しました。高校時代のポジションはライト。自分も実績は乏しいですが、何とか頑張りたいと思います」
この両名は何とも自信なさげだ。
まあ、山形県内屈指の強豪校出身とは言え、高校野球では山形県立向上冠高校の前に苦汁を嘗め続けた不遇な選手達だ。
成功体験が乏しい状態のままプロ野球選手になってしまったと考えれば、そんな風になってしまっているのも理解できなくもない。
多分、村山マダーレッドサフフラワーズから調査書が届いていなかったら、プロ志望届を出すことすらしていなかったんじゃないかとも思う。
実際にドラフトで指名され、その機会を逃すことを周りが許さなかったからここにいるのだろうが、自分がプロ野球選手に相応しいと信じられず不安なのだろう。
「2人には光るものがあると俺も思ってます。ですが、すぐに活躍という訳にはいかないのも確かなので、腰を据えて頑張って下さい」
「「は、はい」」
体を強張らせて返事をする2人。
何か凄く緊張しているな。
ちゃんと話せなかったにしても、顔は何度か合わせているんだが。
「同い年なんだから、そんな畏まらなくていいですよ」
「いえ、そういう訳には……」
「世代No.1の選手とも言われてますし……」
うーん。思った以上に卑屈だ。
これまで恒例だったマウンティングをしなくていいのは助かるけれども……。
これはこれでちょっと困るぞ。
2人には何とか自信をつけて貰わないといけないな。
せめて1部リーグのプロ野球球団の一員である自覚を持てるぐらいには。
方法自体はシンプルだ。
俺達の存在によって奪ってしまった成功体験を返す。
紅白戦、オープン戦。それから点差が十分についた公式戦。
そういったところでスポット的に出場させ、うまく実績を積ませるのがいい。
とは言え、それには最低限の実力が必要だ。
当面の目標はそれとしても、この2人についてもやるべきことは変わらない。
他のチームメイトにしてもそうだ。
一抹の不安はあるが、そこはおくびに出すことなくやっていこう。
「……尾高監督。まとめをお願いします」
「ええ。今季の目標は1部昇格1年目での日本一です。万全の状態でシーズンを迎えるため、一層のレベルアップに励みましょう」
「「「「「「はいっ!」」」」」」「「「「うっす!」」」」
こうして新たな仲間を加えた村山マダーレッドサフフラワーズは、1部リーグのプロ野球球団として初めての春季キャンプをスタートさせたのだった。
少し前にWBW日本代表の最終メンバーが発表されていたが、世間はそれよりもドーピング問題の方に気を取られているようだった。
第31回WBW本選の開催を間近に控えたタイミング。
そして、正にそれに直結した事案だったことが拍車をかけてしまったのだろう。
しかし、だからと言って他のスケジュールが滞る訳ではない。
日本プロ野球界は例年通り春季キャンプに突入し、村山マダーレッドサフフラワーズの選手達もまた多分に漏れずキャンプ地を訪れていた。
「さすが沖縄ね。世界が違うわ」
「いやあ、ホントっすね」
場所は去年と同じく久米島第2野球場。
今年も久米島町の副町長が開幕セレモニーに来ていた。
前回も丁寧な対応ではあったが、今回はそれに輪をかけて腰が低い。
もう恐縮し切りだ。
来年もどうかよろしくお願いしますとペコペコしていた。
村山マダーレッドサフフラワーズが1部リーグに昇格したことによって、当然ながら色々と周囲の扱いが変わっている。
まあ、それでも町長の方は去年と同様に宮城オーラムアステリオスのキャンプ地である久米島第1野球場の開幕セレモニーに参加しているが……。
こればかりは仕方がないことだろう。
宮城オーラムアステリオスは同じ1部リーグの球団。
時間が被ってしまったら、長年つき合いがある方を優先せざるを得ない。
ちなみに、町長は後で改めて挨拶に来るとのことだ。
「と言うか、人多過ぎない? 春季キャンプってこんなものなの?」
「いや、多分1部リーグを見渡しても多いと思うぞ。今年に限っては」
扱いが大きく変わった事例の1つとしては、他に報道陣の人数もある。
3部リーグの新興球団も珍しかったが、1部リーグ昇格はそれ以上の珍事。
ドラフト会議周りで大分お騒がせしてしまったこともあって、村山マダーレッドサフフラワーズの注目度は1部リーグ全24球団の中でトップレベルだ。
諸々いい数字が取れると目されているのだろう。
そして、それを証明するように観客の数も去年の比ではない。倍以上だ。
つまり沖縄の離島にまで来てくれる熱心なファンも増えているということ。
彼らの存在は大事にしたいところだが……。
「ま、周りは気にするな」
「選手は競技で魅せるべき」
周りがどう変化しようと、俺達が春季キャンプでやるべきことに変わりはない。
変えてはいけない。
野球選手である以上は、野球のパフォーマンスこそが最重要なのだから。
勿論、人間性は二の次などと言うつもりはないが……。
それは人間としての価値の話であり、野球以前の大前提と考えるべきだろう。
何にしても、春季キャンプはペナントレースに向けての準備期間。
それ以上でもそれ以下でもないのだ。
「当然ね」「了解っす」
「うん。分かってる」
ほとんどの選手にとっては言うに及ばないことだ。
ただ、まあ。
去年とあからさまに違う状況を前にして、全く気にせずいるのは中々難しい。
どことなく妙な空気が球場に漂っているのも、否定できない事実だった。
一部チームメイトからは、注目を浴びて微妙に浮ついている様子も見て取れる。
そこは気にしておいた方がいいだろう。
ともあれ、そんな雰囲気の中で。
まずは首脳陣が一通り挨拶を行う。
「今年も僭越ながら投手コーチを務めさせていただきます。特に投手陣の皆さんが潜在能力を100%発揮できるように、全力を尽くしていきたいと思います」
俺も兼任投手コーチとして、そちら側から選手達に向けて言う。
それについて不思議に思う人間はもはや彼らの中にはいない。
報道陣が物珍しそうに何度もフラッシュを焚いているのみだ。
「さて。今年からはドラフト会議を通じて獲得した新人選手も加わって春季キャンプを行っていくことになりますが……改めて自己紹介をしていただきましょう」
しばらくして首脳陣の挨拶が終わると、尾高監督がそう促した。
去年も似たような流れだったなと思う。
一先ず今日のところはひたすら定型的に。と言うか、地味に進行して。
無難に初日を乗り越えようというところだろう。
何ごとも入り方が大事だ。
変な方向性のモチベーションを無駄に煽っても練習効率が悪化しかねないし、下手をすると怪我にも繋がりかねないからな。
プロ野球選手としては僅か2シーズン目の俺達だ。
春季キャンプ自体慣れていない。
シーズンとシーズンの間の自主練習に至っては初めてのこと。
それぞれ調整の進み具合も全く違うだろう。
球団に歴史があるならともかく、肝心のチームも2年目でノウハウが不十分。
まずは自主トレ明けの選手の現状を見極めることからやっていく必要がある。
この春季キャンプは、慎重過ぎるぐらい慎重にスタートした方がいい。
そんな風に俺が考えていると、まず美海ちゃんが全員の前に出て口を開いた。
「浜中美海です。ドラフト1位指名で入団しました。ポジションはピッチャー。内野もできます。秀治郎君の顔に泥を塗らないように、結果に拘りたいと思います」
淀みなく告げてから、彼女はチラッと視線を向けてきた。
それに頷いて応じる。
今日から再び正式にチームメイトになることができた。
先程まで選手側で彼女の隣にいたあーちゃんも、心なしか嬉しそうに見える。
気心知れた仲だ。俺も嬉しく思う。
美海ちゃんも同じように思ってくれているのだろう。
彼女はこちらに自然な微笑みを向けてから、元の位置に戻っていった。
そして、その代わりに倉本さんが前に進み出る。
「ドラフト2位入団の倉本未来っす。ポジションはキャッチャーっすけど、今年はバッティングの方でも世間を見返してやるつもりっす」
いつもの口調。しかし、その表情はやはりと言うべきか非常に挑戦的。
春季キャンプを経てペナントレースへ。
そこで結果を残すことができて、ようやく自分を侮った者達の評価を覆せる。
彼女の今のモチベーションは正にそれだ。
気合が入っているのが一目で分かる。
しかし、それが空回りしないように気をつけておいた方がいいだろう。
その倉本さんは宣戦布告であると明確に示すように報道陣に視線を送り、それから満足げに元に位置に戻っていった。
次は――。
「ドラ3位入団の瀬川正樹選手は山形県内で調整中です。まずはピッチング以外のところで怪我の影響が最小限まで持っていくことを優先しています」
本来は彼の順番のところで、俺が代わりに現状を説明する。
正樹はリハビリのため、春季キャンプには帯同していない。
少し心配だが、磐城君の父親である大吾氏と山大総合野球研究会で出会った青木さんと柳原さんのサポートがあれば大丈夫なはずだ。
素人の俺より、その道のプロとプロを目指している人間の方が余程いい。
ともあれ、この場にいない正樹の挨拶はなし。
次は昇二が前に出る。
「瀬川昇二です。ドラフト4位指名で入団しました。ポジションは倉本さんと同じくキャッチャーですが、ピッチャー以外であればどこでもできます」
昇二については俺と同じく【怪我しない】を持つからな。
この春季キャンプでもガンガン負荷をかけていこうと思っている。
ここまで自分の口で自己紹介を行った3人。
美海ちゃんに倉本さん、そして昇二は、チームに顔見知りが多い。
勿論、俺とあーちゃん以外の話だ。
クラブチーム、企業チーム時代の村山マダーレッドサフフラワーズと山形県立向上冠中学高等学校野球部とで合同練習を行っていたからな。
だからか、歓迎ムードが強い。
さすがに去年入団の選手とは初めてだが、彼女達ならすぐに馴染めるだろう。
問題は残る2人だ。
「……佐々井主樹です。ドラフト5位指名で入団しました。ピッチャーです。全国的には無名だった自分ですが、精一杯食らいついていきたいと思います」
「か、門倉光英です。ドラフト6位で指名を受けて入団しました。高校時代のポジションはライト。自分も実績は乏しいですが、何とか頑張りたいと思います」
この両名は何とも自信なさげだ。
まあ、山形県内屈指の強豪校出身とは言え、高校野球では山形県立向上冠高校の前に苦汁を嘗め続けた不遇な選手達だ。
成功体験が乏しい状態のままプロ野球選手になってしまったと考えれば、そんな風になってしまっているのも理解できなくもない。
多分、村山マダーレッドサフフラワーズから調査書が届いていなかったら、プロ志望届を出すことすらしていなかったんじゃないかとも思う。
実際にドラフトで指名され、その機会を逃すことを周りが許さなかったからここにいるのだろうが、自分がプロ野球選手に相応しいと信じられず不安なのだろう。
「2人には光るものがあると俺も思ってます。ですが、すぐに活躍という訳にはいかないのも確かなので、腰を据えて頑張って下さい」
「「は、はい」」
体を強張らせて返事をする2人。
何か凄く緊張しているな。
ちゃんと話せなかったにしても、顔は何度か合わせているんだが。
「同い年なんだから、そんな畏まらなくていいですよ」
「いえ、そういう訳には……」
「世代No.1の選手とも言われてますし……」
うーん。思った以上に卑屈だ。
これまで恒例だったマウンティングをしなくていいのは助かるけれども……。
これはこれでちょっと困るぞ。
2人には何とか自信をつけて貰わないといけないな。
せめて1部リーグのプロ野球球団の一員である自覚を持てるぐらいには。
方法自体はシンプルだ。
俺達の存在によって奪ってしまった成功体験を返す。
紅白戦、オープン戦。それから点差が十分についた公式戦。
そういったところでスポット的に出場させ、うまく実績を積ませるのがいい。
とは言え、それには最低限の実力が必要だ。
当面の目標はそれとしても、この2人についてもやるべきことは変わらない。
他のチームメイトにしてもそうだ。
一抹の不安はあるが、そこはおくびに出すことなくやっていこう。
「……尾高監督。まとめをお願いします」
「ええ。今季の目標は1部昇格1年目での日本一です。万全の状態でシーズンを迎えるため、一層のレベルアップに励みましょう」
「「「「「「はいっ!」」」」」」「「「「うっす!」」」」
こうして新たな仲間を加えた村山マダーレッドサフフラワーズは、1部リーグのプロ野球球団として初めての春季キャンプをスタートさせたのだった。
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