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第2章 雄飛の青少年期編
試合経過03 終盤戦へ(正樹視点)
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回は進み、試合は6回表1アウトランナーなしの場面。
スコアは変わらず0-0の膠着状態。
新星と称されている相手投手、大松勝次は未だノーヒットノーランを継続中だ。
対照的に、俺は初回の時点で既にヒットを打たれている。
今正にバッターボックスに入っている2番バッター、倉本未来に。
「ストライクツー!」
1打席目や2打席目と同様に、彼女は追い込まれるまで全く打ち気がない。
多少甘い球でもカウントは簡単にノーボール2ストライクとなる。
そこでようやく倉本未来の構えに力が入る。
腹芸が苦手なのか、そもそも経験が浅くてそこまで気が回っていないのか。
余りにあからさま過ぎて、少し気が抜けてしまいそうになる。
しかし――。
「ボールッ!」
空振りを狙って投じたSFFは、低めのいいところから完璧なタイミングで落ちたにもかかわらず、当たり前のように見極められて見送られてしまう。
だからと言って、ストライクゾーンで勝負をすれば……。
――カンッ!
低めのバックドアを、いとも容易く芯で捉えられてしまう。
既に3打席目の対決にもかかわらず、どうにも驚きを禁じ得ない。
佇まいから抱く印象を思うと、チグハグな結果としか言いようがなかった。
あまつさえ、打球はうまくセカンドの頭上を越えてライト前に落ちてしまう。
本日2本目の被安打。
1アウトからランナーを出してしまった。
「ちっ」
思わず舌打ちをしてしまう。
ヒットを打たれたこと自体は別に構わない。
大松勝次のノーヒットノーラン継続を意識していないと言えば嘘になるが、何人ランナーを出そうと最終的に0に抑えて勝つことさえできればそれでいい。
ただ、打たれ方に何となく釈然としないものがあった。
現時点での俺の成績は5回1/3を投げて被安打2、失点0、四死球2。
それに対して、倉本未来は3打数2安打。
数字が示す通り、今のところ彼女にしかヒットを許していない訳だが……。
相性が悪いというのとも何か違う、妙な薄気味の悪さがあった。
何故なら、彼女は特別優れたバッターだとは到底思えなかったからだ。
別に見下している訳じゃない。
他の選手と比較した結果の客観的な評価だ。
実際、彼女には外野の頭を越えるようなパワーはない。
金属バットの芯を食って尚、前進守備の外野フライが関の山だ。
バッティングの技術も、この試合に出場している選手の中では最下位だろう。
他の打者は俺を疲れさせるためにカット打ちをしてくるが、彼女はそうした気配すらないのは審判に指摘されない打ち方ができないからだろう。
にもかかわらず、こうして当たり前のように打たれてしまう。
2打席目の凡打も、飛んだところが守備範囲だっただけで芯を食ってはいた。
それもまた不可思議ではあったが、何よりもその打ち方に違和感がある。
勿論、スイングの一連の動作を行っているのは間違いない。
しかし、ただ単に投げたボールの軌道上にバットの芯の部分を置きに行っているだけ、という感じがしてならなかった。
弾き返しているのではなく、こちらの球の勢いをそのまま跳ね返している。
まるで高弾性ゴムボールを壁に投げつけているかのような、妙な感覚がある。
「……これも秀治郎の入れ知恵か何かか?」
首を傾げながら、口の中で小さく呟く。
いや、さすがにそれは考え過ぎか。
秀治郎は既に高校野球を離れ、プロ野球選手になってしまったからな。
そういう算段をしていたことは前々から知っていた。
だが、それはそれとして。
正直に言えば先を越された思いもある。
だからこそ、今日この試合はどうしても勝ちたかった。
再び秀治郎と肩を並べるためにも。
小学校の時は俺。
中学校では磐城巧。
そして高校では大松勝次。それと浜中美海に倉本未来も。
秀治郎に導かれるように、無名の選手が一躍その世代の中心へと躍り出た。
その中で、俺はいつしか後に続く者の試金石のような役回りになっていた。
あるいは単なるかませ犬か。
そのことに気づいて焦り、視野が狭まり、大怪我を負ってしまった。
さすがに秀治郎も肘の靭帯断裂は想定外だったようだ。
かなり慌てていたと後になって昇二からも聞いている。
俺を他の奴らの踏み台として利用してるような雰囲気は、実際にあったけどな。
その後、手術を受けて秀治郎と再会してから。
とまっていた時間が動き出したかのように、練習に成果が伴うようになった。
余りの変わりように、秀治郎が何かしたのかとも疑ったが……。
あの短い時間で何かできる訳もない。
さすがにそれはオカルトが過ぎるだろう。
心技体がうまくかみ合った時、急激に成長する選手がいる。
コーチに言われたそれの方が現実的だ。
ともあれ。俺はようやく高校野球の頂点をかけた舞台に戻ることができた。
秀治郎としては、この夏の甲子園で大松勝次や浜中美海、倉本未来を新たなヒーローとして世間に定着させるつもりだったのだろう。
その目論見は既に半ば成功しているが、全て思い通りにさせてやる気はない。
ここで俺達が山形県立向上冠高校に勝利して優勝旗を獲得できれば、正に彼らが積み重ねた評価の分だけこちらの価値が高まろうというものだ。
……そう言えば、中学生の時に磐城巧を立てようとしていた秀治郎達と対戦した時も、似たようなことを考えていた。
ふと思い出すが、その思考の出どころは全く違う。
当時はひたすらドロドロした感情だった。
今は、そうすることが己の成長にも繋がると信じているが故。
秀治郎も俺が自分の想像を超えてくることを望んでいる。そんな気もする。
いずれにしても。
一先ずはこの1アウトランナー1塁の状況を何とか切り抜けなければ。
まあ、ピンチの内には全く入らないが、この回は先頭バッターである浜中にまた7球も使ってしまっているので球数を抑えたいところだ。
その意思をくんだように、バッテリーを組む健治がサインを出す。
3番バッターに対し、2球で簡単に追い込んで3球目。
これまでの打席でのカット打ちの具合から逆算し、フェアグラウンドに飛ぶように速度を調整しつつゴロになるように低めで小さく変化させたツーシーム。
――キンッ!
思惑通りに打球は転がり、ショートの真正面へ。
6-4-3のダブルプレーで3アウトチェンジ。
倉本未来にヒットを打たれたものの、結果として3人で終わった。
7+4+3で14球。
6回投げ切って合計87球。
まだまだ行ける。
肘の調子も大丈夫だ。
準々決勝での195球はチーム外から色々と心配された。
しかし、メディカルチェックでも全く問題はなかったし、自分の感覚でも以前靱帯をやった時とはまるで違っている。
違和感は一切ない。
秀治郎も、無茶苦茶なトレーニングや過酷な連投さえなければ【猫のような柔軟性】を持つ【しなやかな肢体】は大きな怪我から身を守ってくれると言っていた。
当時の怪我は正に両方の合わせ技のようなもの。
問題は肘よりも握力。それよりも更に先に下半身に限界が来る気がしている。
準々決勝の195球と準決勝の走塁と守備。
疲れが微妙に取り切れていない。
それでも正しいフォームを意識して投げ続ければ、肘の心配は必要ないだろう。
6回裏のこちらの攻撃は9番打者からの打順。
大松勝次のノーヒットピッチングは続き、この回も3者凡退。
中学時代は磐城巧の控えピッチャーだった男。
だが、今や同等の選手に育っている。
俺の出身県である山形県から何人も、このレベルの選手がよく出てくるものだ。
チームメイトも世間も不思議がっているが、その答えはおおよそ分かっている。
秀治郎の指導力、そして才能を見抜く目。
とは言え、それを誰が信じるというのか。
傍にいた俺でさえ、超常的過ぎて信じ切れていないというのに。
だから、周りに何か聞かれても曖昧に誤魔化すことぐらいしかできないし、そもそも俺にとってはそんなことはどうでもいい。
彼も含め、俺達はチャンスを与えられたのだ。
それを腐らせないように、無駄にしないように足掻き続けなければならない。
秀治郎と深く関わる前の絶望を思えば、疑問を抱いてる間にそうした方がいい。
グラウンドに入ったら懸命にプレーをするのみだ。
7回表の山形県立向上冠高校の攻撃は4番打者、正にその大松勝次からの打順。
似た立場の相手だけに勝負をしたい気持ちもある。
だが、この場も監督の指示通りに申告敬遠を選ぶ。
準々決勝でも磐城巧を全打席申告敬遠していれば延長戦に突入することはなかったはずだし、ああも球数が増えなかっただろうからな。
加えて、このレベルのバッターとの勝負は他よりも激しく消耗してしまう。
いずれプロの世界で存分にやり合うとして、この決勝戦は勝ちに徹する。
結果として、この回も3人で切って取ることができた。
申告敬遠からの5番打者併殺で球数を節約でき、この回は8球で済んだ。
7回95球。大分修正が効いてきた。
7回裏の攻撃。
1アウトで俺の打席が回ってくるが、あちらも申告敬遠を選ぶ。
1アウトランナー1塁。スコアは未だ0-0。
こちらはスコアリングポジションに辿り着くことすらできていない。
盗塁という選択肢が脳裏を過ぎるが……。
延長戦も視野に入れると、全力疾走は避けたい。
下半身の消耗は自覚がある。
とは言え、今のままでは流れが停滞したままだ。
なら……いや、しかし……。
「ストライクスリーッ!」
そんな風に迷っている内に。
大松勝次はテンポよく投げて5番の金澤を見逃し三振。
続く6番の赤沢も空振りの三振で3アウトチェンジ。
機会を逸してしまった。
……いや、このまま凡退が続けば10回の裏で俺からの打順になる。
ノーアウトの状況で盗塁した方が可能性は高いだろう。
金澤は右打者だから3盗もやり易い。
そこでサヨナラ勝ちを掴み取る。
そのためにも、まずは続く8回表、9回表、10回表を耐え切らなければ。
スコアは変わらず0-0の膠着状態。
新星と称されている相手投手、大松勝次は未だノーヒットノーランを継続中だ。
対照的に、俺は初回の時点で既にヒットを打たれている。
今正にバッターボックスに入っている2番バッター、倉本未来に。
「ストライクツー!」
1打席目や2打席目と同様に、彼女は追い込まれるまで全く打ち気がない。
多少甘い球でもカウントは簡単にノーボール2ストライクとなる。
そこでようやく倉本未来の構えに力が入る。
腹芸が苦手なのか、そもそも経験が浅くてそこまで気が回っていないのか。
余りにあからさま過ぎて、少し気が抜けてしまいそうになる。
しかし――。
「ボールッ!」
空振りを狙って投じたSFFは、低めのいいところから完璧なタイミングで落ちたにもかかわらず、当たり前のように見極められて見送られてしまう。
だからと言って、ストライクゾーンで勝負をすれば……。
――カンッ!
低めのバックドアを、いとも容易く芯で捉えられてしまう。
既に3打席目の対決にもかかわらず、どうにも驚きを禁じ得ない。
佇まいから抱く印象を思うと、チグハグな結果としか言いようがなかった。
あまつさえ、打球はうまくセカンドの頭上を越えてライト前に落ちてしまう。
本日2本目の被安打。
1アウトからランナーを出してしまった。
「ちっ」
思わず舌打ちをしてしまう。
ヒットを打たれたこと自体は別に構わない。
大松勝次のノーヒットノーラン継続を意識していないと言えば嘘になるが、何人ランナーを出そうと最終的に0に抑えて勝つことさえできればそれでいい。
ただ、打たれ方に何となく釈然としないものがあった。
現時点での俺の成績は5回1/3を投げて被安打2、失点0、四死球2。
それに対して、倉本未来は3打数2安打。
数字が示す通り、今のところ彼女にしかヒットを許していない訳だが……。
相性が悪いというのとも何か違う、妙な薄気味の悪さがあった。
何故なら、彼女は特別優れたバッターだとは到底思えなかったからだ。
別に見下している訳じゃない。
他の選手と比較した結果の客観的な評価だ。
実際、彼女には外野の頭を越えるようなパワーはない。
金属バットの芯を食って尚、前進守備の外野フライが関の山だ。
バッティングの技術も、この試合に出場している選手の中では最下位だろう。
他の打者は俺を疲れさせるためにカット打ちをしてくるが、彼女はそうした気配すらないのは審判に指摘されない打ち方ができないからだろう。
にもかかわらず、こうして当たり前のように打たれてしまう。
2打席目の凡打も、飛んだところが守備範囲だっただけで芯を食ってはいた。
それもまた不可思議ではあったが、何よりもその打ち方に違和感がある。
勿論、スイングの一連の動作を行っているのは間違いない。
しかし、ただ単に投げたボールの軌道上にバットの芯の部分を置きに行っているだけ、という感じがしてならなかった。
弾き返しているのではなく、こちらの球の勢いをそのまま跳ね返している。
まるで高弾性ゴムボールを壁に投げつけているかのような、妙な感覚がある。
「……これも秀治郎の入れ知恵か何かか?」
首を傾げながら、口の中で小さく呟く。
いや、さすがにそれは考え過ぎか。
秀治郎は既に高校野球を離れ、プロ野球選手になってしまったからな。
そういう算段をしていたことは前々から知っていた。
だが、それはそれとして。
正直に言えば先を越された思いもある。
だからこそ、今日この試合はどうしても勝ちたかった。
再び秀治郎と肩を並べるためにも。
小学校の時は俺。
中学校では磐城巧。
そして高校では大松勝次。それと浜中美海に倉本未来も。
秀治郎に導かれるように、無名の選手が一躍その世代の中心へと躍り出た。
その中で、俺はいつしか後に続く者の試金石のような役回りになっていた。
あるいは単なるかませ犬か。
そのことに気づいて焦り、視野が狭まり、大怪我を負ってしまった。
さすがに秀治郎も肘の靭帯断裂は想定外だったようだ。
かなり慌てていたと後になって昇二からも聞いている。
俺を他の奴らの踏み台として利用してるような雰囲気は、実際にあったけどな。
その後、手術を受けて秀治郎と再会してから。
とまっていた時間が動き出したかのように、練習に成果が伴うようになった。
余りの変わりように、秀治郎が何かしたのかとも疑ったが……。
あの短い時間で何かできる訳もない。
さすがにそれはオカルトが過ぎるだろう。
心技体がうまくかみ合った時、急激に成長する選手がいる。
コーチに言われたそれの方が現実的だ。
ともあれ。俺はようやく高校野球の頂点をかけた舞台に戻ることができた。
秀治郎としては、この夏の甲子園で大松勝次や浜中美海、倉本未来を新たなヒーローとして世間に定着させるつもりだったのだろう。
その目論見は既に半ば成功しているが、全て思い通りにさせてやる気はない。
ここで俺達が山形県立向上冠高校に勝利して優勝旗を獲得できれば、正に彼らが積み重ねた評価の分だけこちらの価値が高まろうというものだ。
……そう言えば、中学生の時に磐城巧を立てようとしていた秀治郎達と対戦した時も、似たようなことを考えていた。
ふと思い出すが、その思考の出どころは全く違う。
当時はひたすらドロドロした感情だった。
今は、そうすることが己の成長にも繋がると信じているが故。
秀治郎も俺が自分の想像を超えてくることを望んでいる。そんな気もする。
いずれにしても。
一先ずはこの1アウトランナー1塁の状況を何とか切り抜けなければ。
まあ、ピンチの内には全く入らないが、この回は先頭バッターである浜中にまた7球も使ってしまっているので球数を抑えたいところだ。
その意思をくんだように、バッテリーを組む健治がサインを出す。
3番バッターに対し、2球で簡単に追い込んで3球目。
これまでの打席でのカット打ちの具合から逆算し、フェアグラウンドに飛ぶように速度を調整しつつゴロになるように低めで小さく変化させたツーシーム。
――キンッ!
思惑通りに打球は転がり、ショートの真正面へ。
6-4-3のダブルプレーで3アウトチェンジ。
倉本未来にヒットを打たれたものの、結果として3人で終わった。
7+4+3で14球。
6回投げ切って合計87球。
まだまだ行ける。
肘の調子も大丈夫だ。
準々決勝での195球はチーム外から色々と心配された。
しかし、メディカルチェックでも全く問題はなかったし、自分の感覚でも以前靱帯をやった時とはまるで違っている。
違和感は一切ない。
秀治郎も、無茶苦茶なトレーニングや過酷な連投さえなければ【猫のような柔軟性】を持つ【しなやかな肢体】は大きな怪我から身を守ってくれると言っていた。
当時の怪我は正に両方の合わせ技のようなもの。
問題は肘よりも握力。それよりも更に先に下半身に限界が来る気がしている。
準々決勝の195球と準決勝の走塁と守備。
疲れが微妙に取り切れていない。
それでも正しいフォームを意識して投げ続ければ、肘の心配は必要ないだろう。
6回裏のこちらの攻撃は9番打者からの打順。
大松勝次のノーヒットピッチングは続き、この回も3者凡退。
中学時代は磐城巧の控えピッチャーだった男。
だが、今や同等の選手に育っている。
俺の出身県である山形県から何人も、このレベルの選手がよく出てくるものだ。
チームメイトも世間も不思議がっているが、その答えはおおよそ分かっている。
秀治郎の指導力、そして才能を見抜く目。
とは言え、それを誰が信じるというのか。
傍にいた俺でさえ、超常的過ぎて信じ切れていないというのに。
だから、周りに何か聞かれても曖昧に誤魔化すことぐらいしかできないし、そもそも俺にとってはそんなことはどうでもいい。
彼も含め、俺達はチャンスを与えられたのだ。
それを腐らせないように、無駄にしないように足掻き続けなければならない。
秀治郎と深く関わる前の絶望を思えば、疑問を抱いてる間にそうした方がいい。
グラウンドに入ったら懸命にプレーをするのみだ。
7回表の山形県立向上冠高校の攻撃は4番打者、正にその大松勝次からの打順。
似た立場の相手だけに勝負をしたい気持ちもある。
だが、この場も監督の指示通りに申告敬遠を選ぶ。
準々決勝でも磐城巧を全打席申告敬遠していれば延長戦に突入することはなかったはずだし、ああも球数が増えなかっただろうからな。
加えて、このレベルのバッターとの勝負は他よりも激しく消耗してしまう。
いずれプロの世界で存分にやり合うとして、この決勝戦は勝ちに徹する。
結果として、この回も3人で切って取ることができた。
申告敬遠からの5番打者併殺で球数を節約でき、この回は8球で済んだ。
7回95球。大分修正が効いてきた。
7回裏の攻撃。
1アウトで俺の打席が回ってくるが、あちらも申告敬遠を選ぶ。
1アウトランナー1塁。スコアは未だ0-0。
こちらはスコアリングポジションに辿り着くことすらできていない。
盗塁という選択肢が脳裏を過ぎるが……。
延長戦も視野に入れると、全力疾走は避けたい。
下半身の消耗は自覚がある。
とは言え、今のままでは流れが停滞したままだ。
なら……いや、しかし……。
「ストライクスリーッ!」
そんな風に迷っている内に。
大松勝次はテンポよく投げて5番の金澤を見逃し三振。
続く6番の赤沢も空振りの三振で3アウトチェンジ。
機会を逸してしまった。
……いや、このまま凡退が続けば10回の裏で俺からの打順になる。
ノーアウトの状況で盗塁した方が可能性は高いだろう。
金澤は右打者だから3盗もやり易い。
そこでサヨナラ勝ちを掴み取る。
そのためにも、まずは続く8回表、9回表、10回表を耐え切らなければ。
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