174 / 287
第2章 雄飛の青少年期編
153 背番号、登録名、ポジション
しおりを挟む
「うーん、まだちょっと慣れないな」
「……背番号のこと?」
春季キャンプの活気で満ち溢れるグラウンドを見渡しながら苦笑気味に呟いた俺に対し、あーちゃんが確認をするように問う。
俺の目が練習に励んでいるチームメイト達の背中に向いているのを見て、何に関しての話かすぐに察することができたようだ。
村山マダーレッドサフフラワーズがプロ野球球団となったことで背番号も一新され、一部選手は登録名も変更となった。
そのため、俺の中でまだ数字と選手が紐づいていなかった。
「皆、好き勝手に選んだからグチャグチャ」
「まあ、プロはアマチュアよりも選択の自由度が高いからな」
アマチュア野球では背番号は基本的にポジションに合わせたものになる。
エースピッチャーは1番でキャッチャーは2番、ファーストは3番。
セカンドからライトも同じように4番から9番が割り振られる。
10番はキャプテンだったり、2番手ピッチャーだったり。
30番はリトルやシニア、大学野球では監督がつけることになっている。
ただの慣習とかではなく、ちゃんと野球の規則で定められているらしい。
逆にプロ野球の方は背番号の縛りが大分緩い。
支配下登録選手は2桁までの数字の中から選ぶ必要があるという程度のものだ。
3桁の数字は育成選手だったり、コーチ以外のチームスタッフだったり。
規定としてはそんなところで、後は球団と選手次第。
語呂やら数字に抱く印象やらで使用頻度にちょっと偏りが出るぐらいだ。
「しゅー君の背番号は永久欠番確実」
「…………俺としては普通に使って欲しいけどな」
背中を確認するように、軽く後ろに視線をやりながら呟く。
当然、それで自分のユニフォームに記された数字が視界に入ることはない。
しかし、自ら選んで希望した背番号であるだけに、ちょっとした思い入れがあって重さのようなものを勝手に感じてしまう。
「永久欠番、か」
一般的に。
球史に残るレベルで球界に貢献した選手や特別な理由でそうすべきと認定された選手の背番号は、永久欠番に指定されて使用されなくなることがある。
宮城オーラムアステリオスの10番や千葉オケアノスガルズの26番は、例外的に別の理由で永久欠番になっていたりもするけれども。
前者はスタメン9人の次の番号として、後者はベンチ入り上限である25人の次の数字ということで、いずれもファンナンバーという形での永久欠番だ。
まあ、サッカーのクラブの多くがサポーターを12番目の選手として捉え、背番号12を欠番にしているのと似たようなノリだな。
それはともかくとして。
転生者というある種のイレギュラーな存在である俺の背番号という形でこの数字が永久欠番になってしまうのは、少しばかり後ろめたさを感じる部分もあった。
「できれば、準永久欠番ぐらいに留めて欲しいところだけど……」
俺が選んだ背番号は19。
幸い他の選手が希望することはなかったらしく、すんなりと認められた。
この世界でもエースナンバーとされている背番号18に1プラスした数字ということで「投手に加えて捕手をも担うことを示す」というのが表向きの理由だ。
本当の理由は俺にしか分からないもの。
月見草を自称した前世のレジェンドが現役時代に使用していた背番号だからだ。
とは言え、19という背番号は割と見かける数字でもある。
特にピッチャーの背番号としてよく使われている。
なので、そういった意味でもこれを永久欠番にしてしまうのは忍びなかった。
そんな考えから準永久欠番と口にしたが……。
「準永久欠番でも、結果として事実上の永久欠番みたいになりそう」
「それはそうかもだけど、心情としてな」
名誉番号とも呼ばれているそれの場合、その背番号を背負うに相応しい選手が出てくるまでの間だけ欠番という形を取る。
しかし、この相応しい選手という条件が中々ネックになる。
その背番号に選ばれながら碌に活躍できなかったら確実に叩かれるだろうし、そもそも求められる活躍のハードル自体が並の選手以上となってしまう。
常に前任者と比較され続けもする訳で、重圧も生半可なものではないだろう。
無用のリスクとして腫れものみたいにもなりかねない。
そうして誰も触れようとしなければ、実質永久欠番みたいなものだ。
「けど、どちらにせよ、わたし達が悩むようなことじゃない。後の人達が勝手にその背番号に意味を見出して思いを馳せたり、利用しようとしたりするだけ」
「うん、まあ……それはその通り」
「わたし達は目の前の試合で1つ1つ結果を出していくことだけ考えればいい」
あーちゃんが最初に永久欠番確実とか言い出したことを除けば正論だ。
多分、俺の反応が芳しくなかったからサクッと方向転換したのだろう。
まあ、何にせよ。
そういうことは実際に活躍してから言えって話なのは確かだ。
まだ3部のシーズンすら始まっていない春季キャンプ。
そんな時期に永久欠番がどうとか準永久欠番どうとか心配している姿は、それこそ来年のことを言うどころの話じゃないと鬼も大笑いするぐらい滑稽だ。
「少なくとも、この球団の背番号は何ものにも染まってない状態。数字そのものの意味とか価値以上のものはまだない」
前世のレジェンドへの思い入れもそれはそれ。
この19は村山マダーレッドサフフラワーズの19だ。
あーちゃんの言う通り、今はまだまっさらなまま。
そして、そこに刻み込まれていくのはあくまでも結果に過ぎない。
振り返った時にできていた道の形であり、今の俺が思い描くイメージではない。
あーちゃんや他のチームメイトの背番号にしても同じこと。
ここからチームの歴史が始まっていく訳だな。
ちなみに。
村山マダーレッドサフフラワーズの支配下登録選手と背番号、ついでに登録名とポジションは次の通りだ。
背番号 名前 登録名 ポジション
0 木村 大成 木村 遊撃手/三塁手/二塁手/外野手/捕手
1 鈴木 新之助 鈴木新 投手
3 長尾 成春 長尾 三塁手/一塁手
6 村木 純助 村木 遊撃手/二塁手/守備走塁コーチ
7 崎山 武蔵 ムサシ 三塁手/一塁手
8 山元 功 山元 外野手
11 川谷 有 川谷 投手
12 福元 佐助 サスケ 外野手/二塁手
13 山田 真一 山田 投手
14 加隈 道雄 加隈 投手
17 田之上 寿 田之上 投手
18 松本 大典 松本 投手
19 野村 秀治郎 野村 投手/捕手/投手コーチ
22 鈴木 茜 鈴木茜 捕手/二塁手
24 高梁 隆之 高梁 外野手
27 新垣 九朗 新垣 捕手/ヘッドコーチ
29 猪川 大和 ヤマト 投手
30 源 虎次郎 コジロウ 投手
32 大坂 誠司 大坂 遊撃手/三塁手/二塁手
33 内海 良蔵 内海 三塁手
35 志水 義信 志水 外野手
37 島岡 秀喜 島岡 投手
44 西藤 斎 西藤 投手
45 藤川 浩史 藤川 外野手/一塁手
55 大法 豊 大法 一塁手/打撃コーチ
総勢25名。
尚、プロ野球の出場選手登録は最大29名。
ベンチ入りは先述の通り最大25名だ。
後者ピッタリの人数ではあるが、通常全員がベンチ入りすることはない。
先発投手は次の登板まで調整に入るからな。
ある程度は人員を補充しているが、まだまだ人数不足だ。
シーズンが開始前からチームの台所事情は火の車と評されてもおかしくはない。
とは言え。
2部リーグと3部リーグは前期後期制を採用していることもあり、1部リーグと比べるとほんの少しではあるものの緩い日程ではある。
その上で俺が2人分、いや、3人分は働くつもりなので何とかなるはずだ。
【怪我しない】のおかげで酷使上等だからな。
一先ずは春季キャンプ中の練習試合やその後のオープン戦辺りまでこの体制でやってみて、無理があるようなら更なる補充を検討する形になるだろう。
……まずは再来週の宮城オーラムアステリオスとの練習試合からだな。
さて。
「……背番号のこと?」
春季キャンプの活気で満ち溢れるグラウンドを見渡しながら苦笑気味に呟いた俺に対し、あーちゃんが確認をするように問う。
俺の目が練習に励んでいるチームメイト達の背中に向いているのを見て、何に関しての話かすぐに察することができたようだ。
村山マダーレッドサフフラワーズがプロ野球球団となったことで背番号も一新され、一部選手は登録名も変更となった。
そのため、俺の中でまだ数字と選手が紐づいていなかった。
「皆、好き勝手に選んだからグチャグチャ」
「まあ、プロはアマチュアよりも選択の自由度が高いからな」
アマチュア野球では背番号は基本的にポジションに合わせたものになる。
エースピッチャーは1番でキャッチャーは2番、ファーストは3番。
セカンドからライトも同じように4番から9番が割り振られる。
10番はキャプテンだったり、2番手ピッチャーだったり。
30番はリトルやシニア、大学野球では監督がつけることになっている。
ただの慣習とかではなく、ちゃんと野球の規則で定められているらしい。
逆にプロ野球の方は背番号の縛りが大分緩い。
支配下登録選手は2桁までの数字の中から選ぶ必要があるという程度のものだ。
3桁の数字は育成選手だったり、コーチ以外のチームスタッフだったり。
規定としてはそんなところで、後は球団と選手次第。
語呂やら数字に抱く印象やらで使用頻度にちょっと偏りが出るぐらいだ。
「しゅー君の背番号は永久欠番確実」
「…………俺としては普通に使って欲しいけどな」
背中を確認するように、軽く後ろに視線をやりながら呟く。
当然、それで自分のユニフォームに記された数字が視界に入ることはない。
しかし、自ら選んで希望した背番号であるだけに、ちょっとした思い入れがあって重さのようなものを勝手に感じてしまう。
「永久欠番、か」
一般的に。
球史に残るレベルで球界に貢献した選手や特別な理由でそうすべきと認定された選手の背番号は、永久欠番に指定されて使用されなくなることがある。
宮城オーラムアステリオスの10番や千葉オケアノスガルズの26番は、例外的に別の理由で永久欠番になっていたりもするけれども。
前者はスタメン9人の次の番号として、後者はベンチ入り上限である25人の次の数字ということで、いずれもファンナンバーという形での永久欠番だ。
まあ、サッカーのクラブの多くがサポーターを12番目の選手として捉え、背番号12を欠番にしているのと似たようなノリだな。
それはともかくとして。
転生者というある種のイレギュラーな存在である俺の背番号という形でこの数字が永久欠番になってしまうのは、少しばかり後ろめたさを感じる部分もあった。
「できれば、準永久欠番ぐらいに留めて欲しいところだけど……」
俺が選んだ背番号は19。
幸い他の選手が希望することはなかったらしく、すんなりと認められた。
この世界でもエースナンバーとされている背番号18に1プラスした数字ということで「投手に加えて捕手をも担うことを示す」というのが表向きの理由だ。
本当の理由は俺にしか分からないもの。
月見草を自称した前世のレジェンドが現役時代に使用していた背番号だからだ。
とは言え、19という背番号は割と見かける数字でもある。
特にピッチャーの背番号としてよく使われている。
なので、そういった意味でもこれを永久欠番にしてしまうのは忍びなかった。
そんな考えから準永久欠番と口にしたが……。
「準永久欠番でも、結果として事実上の永久欠番みたいになりそう」
「それはそうかもだけど、心情としてな」
名誉番号とも呼ばれているそれの場合、その背番号を背負うに相応しい選手が出てくるまでの間だけ欠番という形を取る。
しかし、この相応しい選手という条件が中々ネックになる。
その背番号に選ばれながら碌に活躍できなかったら確実に叩かれるだろうし、そもそも求められる活躍のハードル自体が並の選手以上となってしまう。
常に前任者と比較され続けもする訳で、重圧も生半可なものではないだろう。
無用のリスクとして腫れものみたいにもなりかねない。
そうして誰も触れようとしなければ、実質永久欠番みたいなものだ。
「けど、どちらにせよ、わたし達が悩むようなことじゃない。後の人達が勝手にその背番号に意味を見出して思いを馳せたり、利用しようとしたりするだけ」
「うん、まあ……それはその通り」
「わたし達は目の前の試合で1つ1つ結果を出していくことだけ考えればいい」
あーちゃんが最初に永久欠番確実とか言い出したことを除けば正論だ。
多分、俺の反応が芳しくなかったからサクッと方向転換したのだろう。
まあ、何にせよ。
そういうことは実際に活躍してから言えって話なのは確かだ。
まだ3部のシーズンすら始まっていない春季キャンプ。
そんな時期に永久欠番がどうとか準永久欠番どうとか心配している姿は、それこそ来年のことを言うどころの話じゃないと鬼も大笑いするぐらい滑稽だ。
「少なくとも、この球団の背番号は何ものにも染まってない状態。数字そのものの意味とか価値以上のものはまだない」
前世のレジェンドへの思い入れもそれはそれ。
この19は村山マダーレッドサフフラワーズの19だ。
あーちゃんの言う通り、今はまだまっさらなまま。
そして、そこに刻み込まれていくのはあくまでも結果に過ぎない。
振り返った時にできていた道の形であり、今の俺が思い描くイメージではない。
あーちゃんや他のチームメイトの背番号にしても同じこと。
ここからチームの歴史が始まっていく訳だな。
ちなみに。
村山マダーレッドサフフラワーズの支配下登録選手と背番号、ついでに登録名とポジションは次の通りだ。
背番号 名前 登録名 ポジション
0 木村 大成 木村 遊撃手/三塁手/二塁手/外野手/捕手
1 鈴木 新之助 鈴木新 投手
3 長尾 成春 長尾 三塁手/一塁手
6 村木 純助 村木 遊撃手/二塁手/守備走塁コーチ
7 崎山 武蔵 ムサシ 三塁手/一塁手
8 山元 功 山元 外野手
11 川谷 有 川谷 投手
12 福元 佐助 サスケ 外野手/二塁手
13 山田 真一 山田 投手
14 加隈 道雄 加隈 投手
17 田之上 寿 田之上 投手
18 松本 大典 松本 投手
19 野村 秀治郎 野村 投手/捕手/投手コーチ
22 鈴木 茜 鈴木茜 捕手/二塁手
24 高梁 隆之 高梁 外野手
27 新垣 九朗 新垣 捕手/ヘッドコーチ
29 猪川 大和 ヤマト 投手
30 源 虎次郎 コジロウ 投手
32 大坂 誠司 大坂 遊撃手/三塁手/二塁手
33 内海 良蔵 内海 三塁手
35 志水 義信 志水 外野手
37 島岡 秀喜 島岡 投手
44 西藤 斎 西藤 投手
45 藤川 浩史 藤川 外野手/一塁手
55 大法 豊 大法 一塁手/打撃コーチ
総勢25名。
尚、プロ野球の出場選手登録は最大29名。
ベンチ入りは先述の通り最大25名だ。
後者ピッタリの人数ではあるが、通常全員がベンチ入りすることはない。
先発投手は次の登板まで調整に入るからな。
ある程度は人員を補充しているが、まだまだ人数不足だ。
シーズンが開始前からチームの台所事情は火の車と評されてもおかしくはない。
とは言え。
2部リーグと3部リーグは前期後期制を採用していることもあり、1部リーグと比べるとほんの少しではあるものの緩い日程ではある。
その上で俺が2人分、いや、3人分は働くつもりなので何とかなるはずだ。
【怪我しない】のおかげで酷使上等だからな。
一先ずは春季キャンプ中の練習試合やその後のオープン戦辺りまでこの体制でやってみて、無理があるようなら更なる補充を検討する形になるだろう。
……まずは再来週の宮城オーラムアステリオスとの練習試合からだな。
さて。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる