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第2章 雄飛の青少年期編

107 日々の練習とコネの活用

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 そんなこんなで打倒・瀬川正樹、打倒・東京プレスギガンテスジュニアユースチームを掲げた俺達は、それを念頭に置いたトレーニングに日々励み始めた。
 とは言っても、やることは大きく変わらない。
 筋トレの強度を徐々に上げ、陸玖ちゃん先輩主導でケーススタディをし、シートバッティングやシートノックで実戦慣れさせる。
 それとベースランニングで走塁の練習。
 進学校の少ない部活動の時間で、可能な限り効率的に「野球選手」を作る。
 そのためのメニューを継続していくのみだ。

 勿論、試合に勝る実戦経験はないので、定期的に試合形式の練習も行っている。
 ただし、外部との練習試合ではない。
 弱いところとやっても仕方がないし、元々がアレな学校だったこともあってシニアやジュニアユースとは伝手がない。
 なので、基本的には中高混合チームを2つ作っての紅白戦がメインだ。
 最終ステータス基準でいい具合に戦力が均衡になるように分配したおかげで、毎度白熱した試合が展開されている。
 そのおかげか【経験ポイント】は勿論のこと、【成長タイプ:マニュアル】ではない選手の場合はいつの間にかスキルを取得していたりもした。

 極稀に【マイナススキル】がついてしまうこともあったので一長一短だが……。
 まあ、その辺りの条件については要研究ってとこだな。

 その他、明彦氏を頼って社会人クラブチームの村山マダーレッドサフフラワーズと合同練習という名の練習試合を行ったりもしている。
 当然と言うべきか、こちらは高校生チームが主体だ。
 しかし、磐城君や大松君なども同行させて試合に登板させている。
 ちょっとコネでゴリ押しした感もあったが、村山マダーレッドサフフラワーズ側にも十分メリットはあったはずなので問題ないだろう。
 実際、既にステータスだけならプロでも通用する磐城君の存在に驚愕し、彼と対戦できたことに尾高コーチや大法さんも感謝してたしな。

 で、今日はそんな村山マダーレッドサフフラワーズとの合同練習の日。
 グラウンドでは練習試合が行われている。
 俺とあーちゃんはそれには参加せず、全体の様子を注視していた。
 客観的に両チームの現状を見極めるためだ。
 隣には明彦氏もいる。

「おじさんから見て、磐城君はどうですか?」
「素晴らしいな。正直、このチームに入って欲しいぐらいだ」
「……ピッチャーの枚数が足りないですからね」
「ああ。こればかりはなあ。どうにも改善のしようがない」

 大法さんや村木さんといった野手は自身の弱点を理解したことや適性に沿った形で起用されるようになったおかげで、十分な戦力として数えられるようになった。
 加えて、俺やあーちゃんが時折練習に参加しているので成長補正がかかって練習効率が上がり、ステータスが以前より向上しているのもある。
 一例として、大法さんのステータスは現在こうなっている。

状態/戦績/▽関係者/プレイヤースコープ
・大法豊(成長タイプ:パワー) 〇能力詳細 〇戦績
 BC:742 SP:943 TAG:788 TAC:844 GT:849
 PS:151 TV:811 PA:545
 好感度:76/100

 最初に見た時から【Bat Control】が100以上増えている。
 元が低いから上がり易いというのもあるが、そこを重点的に鍛えたおかげで目も当てられないレベルから平均ちょい下ぐらいにはなった。
 これでパワーはプロ級なのだから、脅威となるバッターに成長したと言える。
 他の野手も同じで、強力打線を誇るチームとなった。
 守備の方も適性が合っているので悪くはない。
 しかし、如何せん投手力が不十分。
 それが社会人野球の全国大会で上の方に行けない最大の理由だった。

 弱点が明確なのだから、そこを補強すればいいだけのこと。
 単純な話ではある。
 だが、簡単な話ではない。
 戦力になるピッチャーをピンポイントで探し出すのは中々難しい。
 明彦氏や尾高コーチだけでなく、俺としてもそこは悩みどころだった。

 実のところ、1つ楽な解決方法があるにはあるんだけども……。
 少なくとも来春までは実行に移せない手段だし、たとえできるようになったからと言って即座にそうする訳にもいかないからな。
 一先ずは別の方法を考えざるを得ない。

「っと、終わったな」
「はい。3-4。中々いい勝負でした」
「ああ。こっちが勝ちはしたけど、やっぱりピッチャーがいいと戦力差があっても結構接戦になってしまうな」

 明彦氏の言葉に同意するように頷く。
 勿論、俺の代わりにキャッチャーをしている昇二が頑張ったのもある。
 長期的な計画の1つとして彼には捕手としての経験も積ませているのだが、どうやら性格的に結構合っている様子だった。
 いつか彼に受けて貰う日が楽しみでもある。

 まあ、あーちゃんは嫌がるだろうけど……。
 そうは言っても彼女と常にバッテリーを組める訳じゃない。
 その辺はあーちゃんも理解してくれてはいる。
 の結果の消極的肯定というところだ。
 将来を見据えれば、俺の球を受けてくれるキャッチャーの育成も必須だからな。
 多分、あーちゃんと一緒にWBWに出られるのは最初の1回ぐらいだろうし。
 何故ならば――。

「そう言えば、明日からアメリカのドラフト会議が始まるけど……秀治郎も注目している選手とかいるのか?」

 と、思考を遮るように明彦氏が話題を振ってきた。
 時期が時期なのと、最近は報道もこれ一色なので仕方がないだろう。

「勿論、何人もいますよ」
「まあ、そうだよな」
「ええ。今回は何かと話題になってますし、絶対に見逃せません」

 アメリカ大リーグのドラフトは日本のそれとは異なり、7月初めに行われる。
 それは毎年のことなので別に特別な話ではない。
 普段は俺も余り意識していない。
 勿論、この世界だと大々的に放映されているのでステータスを確認できる。
 とは言え、そこから大成してWBWに出場するレベルに至るかまでは読めない。
 アメリカ代表になる資格自体は大リーガー全体にあるからな。
 現行のトッププロに勝つのは生半可なことではないし、十分に頭角を現してから確認するのでも遅くはない。

 しかし、今年のドラフトだけは俺も注目せざるを得なかった。
 何故なら、丁度4歳年上の世代からが対象となるドラフトだからだ。
 そして、それはつまり。
 俺に先んじてこの世界に転生し、アマチュアの世界大会でも無双していた前世のレジェンド達が指名されるということに他ならなかった。
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