第3次パワフル転生野球大戦ACE

青空顎門

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第2章 雄飛の青少年期編

105 飛び交う噂とフルスペック磐城君

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 全国中学校硬式野球選手権大会の地方大会1回戦を明日に控え、俺達はミーティングルームに集まっていた。
 今日は明日の対戦相手についての情報共有のみで、休養日となっている。
 既に磐城君のステータスは仕上がっているので準備は万端だ。
 ちなみに彼の基本能力値は以下の通り。

状態/戦績/▽関係者/プレイヤースコープ
・磐城巧(成長タイプ:マニュアル) 〇能力詳細 〇戦績
 BC:1000 SP:1000 TAG:1000 TAC:1000 GT:1000
 PS:170 TV:1000 PA:1000
 残り経験ポイント:851 好感度:85/100

▽ポジション適性
        センター:SS+
レフト:SS+            ライト:SS+

    ショート:SS+   セカンド:SS+

サード:SS+   ピッチャー:SS+  ファースト:SS+

       キャッチャー:SS+
先発:SS+    中継ぎ:SS+    抑え:SS+

 この辺りはもう正樹や俺と同じだ。
 しかし、現時点では【超早熟】の正樹より【年齢補正】と【体格補正】によるマイナス補正が若干大きく、最高球速は147km/h程。
 MAX153km/hの正樹よりは遅い。
 代わりに変化球は一通り備えているし、投手としては1枚上手というところ。
 さすがに野手としての能力まで含めて考えると互角か少し下ぐらいになるけれども、最終的な到達点は正樹より上になるのが確定的だ。
【超早熟】ではない分だけ、まだ成長の余地があるからな。

 勿論、ステータスを上げ過ぎると時間経過で能力が低下するデメリットはある。
 だが、今のところ【経験ポイント】の消費を2割減らすことができる【天才】であれば相殺できる計算だ。
 後は現状を維持したままマイナス補正が小さくなるのを待てばいい。
 恐らく1年もすれば、世代最強の呼び声をほしいままにすることだろう。
 ……俺は当面表立って動くつもりもないしな。

 ちなみに、磐城君のライバルという立ち位置についた大松君は【経験ポイント】の収支が釣り合うところで平均900ぐらいに抑えている。
 投手能力も磐城君の9割というところ。
 2番手投手として、磐城君が球数制限で投げられない時には彼を立てる予定だ。

 決して追いつくことができない大松君。
 追いつかれることはなくとも、背後に気配を常に感じている磐城君。
 いい具合に互いを意識してくれている様子だ。

 それはともかくとして。
 正直なところ、この2人がいれば1回戦など余裕だろう。
 敵チームの戦力の観点から見てもそうだ。

「どう言い繕っても、相手は昔の私達と同じ万年1回戦負けのチームです。秋の大会で地方大会決勝まで進むことができた私達が苦戦する相手ではありません」

 プロジェクタースクリーンの脇で敵戦力を解説していた陸玖ちゃん先輩も、似たような結論を口にする。

「油断は危険ですが、無駄に気負う必要もありません。普段通りにやれば普通に勝てるでしょう。リラックスして行きましょう」

 ミーティングルームには今年入った新しい後輩もいるが、彼女は先輩らしい姿を取り繕うことができるようになっている。
 高校生になって意識が変わったのか。
 あるいはこの2年、何度もケーススタディのために講義をして慣れたのか。
 内心はどうあれ、落ち着いた雰囲気を醸し出していてちゃんと先輩っぽい。
 いや、っぽいではなく、間違いなく先輩だけれども。

 まあ、何はともあれ。
 試合前日のミーティングはこれで終わり。
 後は本番を待つばかりだ。

「では、明日は集合時間に遅れないように」

 最後に、それまで黙って見守っていた虻川先生がそう締め括って解散となる。
 三々五々と部屋を出ていく部員達。

「それよりさー、これからどうなるんだろうねー。世の中ー」

 虻川先生の背中を見送った後で、諏訪北さんが緩慢かつ軽い口調で問いかける。
 これは……余裕やリラックスというより油断、だな。

「陰謀論染みた暴露を受けてのWBWの開催頻度の増加。それに伴って、ネット上では色々な噂が飛び交っていますね」
「皆、好き勝手言ってるねー」
「けど、テレビを見てると結構政治家の人達も慌ただしく動いてるみたいだし、何が起きるか分からない感じがするよ」

 他の3人も、明日の試合よりもそっちに意識が向いている模様。
 やはり皆、浮足立ってしまっているようだ。

「ちなみに、どんな噂があるの?」

 4人組に美海ちゃんが尋ねる。
 俺と同じく格安スマホの彼女は、余りネットでの情報収集は行えていないはず。
 そういったところには割と疎い。

「噂って言うかー? 他の国が既に実施を示唆してる施策にー、追随するんじゃないかー、って感じー?」
「施策って、どんな?」
「端的に言えば、より優秀な野球選手を育成する環境を整えるための制度や体制の構築、でしょうか」
「……それって、今と何が違うの?」

 今一ピンと来ないのか、美海ちゃんは首を傾げる。

「今だとトレーニング設備の改善、指導者の育成、スポーツ科学に基づくトレーニング理論やスポーツ医学の発展への尽力と、比較的常識的なところでしたが……」
「これからはスポーツで優れた成績をおさめた者同士のマッチングの推進、遺伝子検査による適性の判別とか、才能の領域を開拓しようとしてるみたい」

 悪し様に言えば、野球に特化した人間の品種改良に目を向けている訳か。
 まあ、もっとも。
 前世でもスポーツに関わる遺伝子検査は既にあった。
 少なくとも瞬発力に長けた速筋と持久力に優れた遅筋のどちらがつきやすいかは個体差があり、遺伝子検査で判別できるらしいのだ。
 この分野を突き詰めていくと、その競技との相性が事前に分かることにもなる。
 その是非を問うのは少々難しい問題だが……。
 どのような競技であれ、その頂点に立つ者は血反吐を吐くような努力を以って天稟を開花させた化物であることは言うまでもないことだろう。

「果ては、一定の成績を収めたプロ野球選手の重婚許可だの、遺伝子操作によって野球への適性を高めたデザイナーベビーを作るだの、そんな与太話も出てるね」
「何それ。馬鹿じゃないの?」

 呆れたように言う美海ちゃん。
 俺も同じ気持ちだが、野球に狂った世界だけにやらかしそうな気もしてしまう。
 某野球ゲームの育成モードだったら、もう完全に携帯機側の世界観になるな。

「今まではアメリカには負けても仕方がないって空気だったけど、さすがに今回の件でこのままだとマズいってなったんだろうねー」
「ネット上も混沌としています」

 うーむ。加奈さんに言われても実感が余り湧かなかったが、本当に結構な大事になっているみたいだな。
 しかし、世間の方は如何ともしがたい。
 とりあえず、身内だけでも目の前の大会に意識を向けさせないと。

「まあ、世の中がどう変わっていくにせよ、公式戦に勝つことが有利に働くことは間違いない。一戦必勝。集中していこう」

 理屈をつけて軌道修正し、話を打ち切る。
 一応、それで皆も切り替えてくれたようだった。少なくとも表面上は。

 ……この件はしばらく様子見だな。
 全く。考えることが増えてばかりだ。
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