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第2章 雄飛の青少年期編
088 野球部改革④
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それから1週間。
筋トレ研究部の部員を交え、日々練習を行った。
そうして体験入部の最終日。
「いい感じですね。また球速を計ってみましょうか」
ピッチングを中心に練習してきた上村先輩に、返球しながら提案する。
今は今日のフォームチェックを終えて、投球練習をしているところだった。
キャッチャーはとりあえず俺が務めている。
「ああ、頼む」
1週間前に比べて明るい声で同意を示す上村先輩。
高速撮影でフォームの問題点を1個1個潰していき、まだまだ粗削りながらも大分まともな投球フォームに近づいた。
その成果は既に彼自身も実感している様子だ。
日に日に高揚している姿を見ることができている。
「では、ど真ん中でいいので直球を」
「分かった」
上村先輩は軽く頷くと、正確なフォームを意識するようにゆったりと振りかぶる。
そして、結構いい感じにスピンのかかったストレートを投じた。
――パァン!!
うまくミットがいい音を鳴らすようにキャッチングする。
これをするとピッチャーが気持ちよく投げられるようになる。
凄い球を投げることができたような気分になる。
そういうモチベーション管理もキャッチャーの仕事の1つだ。
「126km/hですね。地方大会なら平均より上ってレベルですが……」
「最初が102km/hだったことを考えると、凄いな」
「それだけ最初の投球フォームが悪かったんですよ」
こればかりは、ろくに指導を受けてきていないようだから仕方のないことだ。
むしろ、そんな状態で100km/h出せていたことが凄い。
真面目に体を鍛え続けてきたことが窺い知れる。
「これまでの筋トレで、元々それだけの球速を出せる潜在能力が上村先輩にはあったんです。たからこそフォーム修正だけでここまで劇的に改善された訳ですね」
まあ、正直なところ。
ステータスからフォームを整えれば球速が出ることは最初から分かっていた。
【体格補正】【年齢補正】を加味して138km/hぐらいが彼の今の上限だ。
実際、自分のステータス値を正確に認識した上で怪我を度外視して投げれば、最初の狂ったフォームでも上限を出すことができるはずだ。
無意識にセーブをかけているから100km/h前後だっただけで。
何にせよ、ちゃんとした投げ方を確立できれば平均球速130km/h台のストレートを怪我なく投げ込むことも夢じゃない。
なので、俺としては126km/h程度は当然の結果というところだ。
上村先輩は喜んでくれているけれども。
単純に、できそうな人をチョイスして「ワシが育てた」をしてるようなものだ。
……そう考えると、改めてちょっと詐欺師染みていると思う。
とは言え、それで相手の利にもなっているのであればWin-Winだろう。
いつものそんな言い訳を心の中でしておく。
ただ、上村先輩もピッチャーとしてはまだまだだ。
投げ続けるスタミナ、コースを突くコントロール、変化球。
その辺についてはまだノータッチだからな。
そこは今回の成果を受けて、継続する気になってくれたら着手する予定だ。
今は一先ず、もう少しおだてておこう。
「もうちょっとフォームが固まれば130km/hは堅いですよ。うまくトレーニングしていけば140km/h台も十分目指せると思います」
「マジか」
俺の言葉にテンションが上がっているのが目に見えて分かる。
僅かでも野球に触れたことがあれば、当然の反応だろう。
前世の俺でも小躍りするはずだ。たとえ披露する機会などどこにもなくても。
この野球に狂った世界なら尚のこと。
それこそ大学入試や就活で面接担当に「140km/h投げられます」とアピールすれば、合格や内定を勝ち取れる確率も爆上がりだ。
……いや、冗談ではなく。事実そうらしい。
「リリースポイントや握り方も調整して球のスピンや回転軸も整えてますから、球質もいい感じです。140km/h出せれば、全国でも十分武器になりますよ」
勿論、これはストレートに限った話ではある。
実際に全国の猛者を抑えるには、他の要素も高いレベルで要求される。
ストレート1本なら、地方大会でも普通に打たれるだろう。
しかし、次の公式戦まで4ヶ月期間が空く。
上村先輩は2年生なので来年もある。
伸びしろは十二分にある。
「そうか……そうか。こんな、俺が……」
上村先輩は感慨深そうに自分の手を見る。
若干目元が潤んでいるのは、野球に挫折した過去の己を顧みてのことか。
この様子を見る限り、彼は継続してくれる可能性が高いな。
しかし、1人では野球はできない。
体験入部に参加してくれている12名の内、最低9名は残って欲しいところだ。
そのまま更にピッチングをメインにした他の2人の球速も測定し、それからバッティングをメインとした残りの9人に移行することにする。
皆、ネットを前にしてティースタンドを使ってティーバッティングをしている。
1球ずつ、しっかりフォームを確認するようにしながら。
そんな彼らにも上村先輩たちのように気持ちよくなって貰うとしよう。
「さて、次はフリーバッティングをしましょうか」
筋トレ研究部の部員を交え、日々練習を行った。
そうして体験入部の最終日。
「いい感じですね。また球速を計ってみましょうか」
ピッチングを中心に練習してきた上村先輩に、返球しながら提案する。
今は今日のフォームチェックを終えて、投球練習をしているところだった。
キャッチャーはとりあえず俺が務めている。
「ああ、頼む」
1週間前に比べて明るい声で同意を示す上村先輩。
高速撮影でフォームの問題点を1個1個潰していき、まだまだ粗削りながらも大分まともな投球フォームに近づいた。
その成果は既に彼自身も実感している様子だ。
日に日に高揚している姿を見ることができている。
「では、ど真ん中でいいので直球を」
「分かった」
上村先輩は軽く頷くと、正確なフォームを意識するようにゆったりと振りかぶる。
そして、結構いい感じにスピンのかかったストレートを投じた。
――パァン!!
うまくミットがいい音を鳴らすようにキャッチングする。
これをするとピッチャーが気持ちよく投げられるようになる。
凄い球を投げることができたような気分になる。
そういうモチベーション管理もキャッチャーの仕事の1つだ。
「126km/hですね。地方大会なら平均より上ってレベルですが……」
「最初が102km/hだったことを考えると、凄いな」
「それだけ最初の投球フォームが悪かったんですよ」
こればかりは、ろくに指導を受けてきていないようだから仕方のないことだ。
むしろ、そんな状態で100km/h出せていたことが凄い。
真面目に体を鍛え続けてきたことが窺い知れる。
「これまでの筋トレで、元々それだけの球速を出せる潜在能力が上村先輩にはあったんです。たからこそフォーム修正だけでここまで劇的に改善された訳ですね」
まあ、正直なところ。
ステータスからフォームを整えれば球速が出ることは最初から分かっていた。
【体格補正】【年齢補正】を加味して138km/hぐらいが彼の今の上限だ。
実際、自分のステータス値を正確に認識した上で怪我を度外視して投げれば、最初の狂ったフォームでも上限を出すことができるはずだ。
無意識にセーブをかけているから100km/h前後だっただけで。
何にせよ、ちゃんとした投げ方を確立できれば平均球速130km/h台のストレートを怪我なく投げ込むことも夢じゃない。
なので、俺としては126km/h程度は当然の結果というところだ。
上村先輩は喜んでくれているけれども。
単純に、できそうな人をチョイスして「ワシが育てた」をしてるようなものだ。
……そう考えると、改めてちょっと詐欺師染みていると思う。
とは言え、それで相手の利にもなっているのであればWin-Winだろう。
いつものそんな言い訳を心の中でしておく。
ただ、上村先輩もピッチャーとしてはまだまだだ。
投げ続けるスタミナ、コースを突くコントロール、変化球。
その辺についてはまだノータッチだからな。
そこは今回の成果を受けて、継続する気になってくれたら着手する予定だ。
今は一先ず、もう少しおだてておこう。
「もうちょっとフォームが固まれば130km/hは堅いですよ。うまくトレーニングしていけば140km/h台も十分目指せると思います」
「マジか」
俺の言葉にテンションが上がっているのが目に見えて分かる。
僅かでも野球に触れたことがあれば、当然の反応だろう。
前世の俺でも小躍りするはずだ。たとえ披露する機会などどこにもなくても。
この野球に狂った世界なら尚のこと。
それこそ大学入試や就活で面接担当に「140km/h投げられます」とアピールすれば、合格や内定を勝ち取れる確率も爆上がりだ。
……いや、冗談ではなく。事実そうらしい。
「リリースポイントや握り方も調整して球のスピンや回転軸も整えてますから、球質もいい感じです。140km/h出せれば、全国でも十分武器になりますよ」
勿論、これはストレートに限った話ではある。
実際に全国の猛者を抑えるには、他の要素も高いレベルで要求される。
ストレート1本なら、地方大会でも普通に打たれるだろう。
しかし、次の公式戦まで4ヶ月期間が空く。
上村先輩は2年生なので来年もある。
伸びしろは十二分にある。
「そうか……そうか。こんな、俺が……」
上村先輩は感慨深そうに自分の手を見る。
若干目元が潤んでいるのは、野球に挫折した過去の己を顧みてのことか。
この様子を見る限り、彼は継続してくれる可能性が高いな。
しかし、1人では野球はできない。
体験入部に参加してくれている12名の内、最低9名は残って欲しいところだ。
そのまま更にピッチングをメインにした他の2人の球速も測定し、それからバッティングをメインとした残りの9人に移行することにする。
皆、ネットを前にしてティースタンドを使ってティーバッティングをしている。
1球ずつ、しっかりフォームを確認するようにしながら。
そんな彼らにも上村先輩たちのように気持ちよくなって貰うとしよう。
「さて、次はフリーバッティングをしましょうか」
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