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第2章 雄飛の青少年期編
077 ボロボロの公式戦(見学)
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中学世代においてメジャーな野球大会は3つある。
中学校の野球部が競う全国中学校硬式野球選手権大会。
シニアとジュニアユースが鎬を削るU15アマチュア全国硬式野球選手権大会。
中学世代全てが入り混じる全国中学生硬式野球選手権大会。
その他、シニアだけ、ジュニアユースだけといった細かい大会もあるにはあるが、権威のある主要な大会はこの3つだ。
そして時は5月。
中学世代の3大野球大会の内の1つ。
全国中学校硬式野球選手権大会の地方大会がスタートしていた。
ちなみに、裏ではU15アマチュア全国硬式野球選手権大会も始まっている。
まあ、そっちは俺達には関係ないけども……。
かと言って、前者に深く関わっている訳でもない。
「フレー! フレー! 向っ、上っ、冠っ!」
山形県立向上冠中学高等学校応援団部の団長が声を張り上げている。
その一方で、他の生徒達は興味なさそうに試合を眺めている。
いや、実のところ興味がないのは彼らだけではない。
応援団部の生徒達もそこまで野球部の勝利を願っている訳ではない。
単純に、ここが部活動の活動実績や個々の内申点に関わる部分だから、応援団部の部員としての活動をしているだけなのだ。
「参加してないと退屈ね」
「まあ、こればかりはな。けど、学業の一環だからな」
前世の中高生時代でもあった。
野球部の応援への強制参加。
他はどうかは知らないが、俺の学校では何故か応援しに行くのは野球部の試合だけだった。
正直、面倒臭かったけれど、その日の授業はなくなったし、応援そっちのけで友達とだべっていたのでそこまで悪い思い出はない。
俺の学校の野球部は弱小で基本1回戦負けだったが、勝った時には2回戦も応援に行くことになったのでラッキーと思ったりもしたものだ。
まあ、学習指導要領で授業の時間は決まってるので、実際はどこかにしわ寄せがいっていたのだろうけど。
当時の俺はそこまで考えが及ばなかった。
それはともかくとして。
この野球に狂った世界では、どうかと言うと……。
当然の如く、全国中学校硬式野球選手権大会も全国中学生硬式野球選手権大会も地方大会の初戦は全校生徒強制参加となる。
初戦に勝った後は学校の自由。
だが、地方大会の決勝までは全校生徒を駆り出すところもザラにあるらしい。
「野村君、試合に出なくてよかったのかい?」
「今のところ、必要性を感じないからな」
磐城君に問われ、正直に答える。
今の状態でも、普通にいいところまで行けるだろう。
たとえ相手が中学3年生であろうとも。
全国中学校硬式野球選手権大会はシニアやジュニアユースのチームは出てこないから、全国優勝も狙えるだろう。
秋に行われる全国中学生硬式野球選手権大会の方は混合だから、正樹のチームと当たると危ういかもしれないが。
「虻川先生も出ろとは言わなかったしな」
学校側も中学1年生を試合に出そうという考えはないようだ。
今回は基本的に3同好会の中学3年生のみで構成されたチームだった。
余程、意欲的に出たいと言えば別だろうけど。
「必要に迫られでもしない限り、中学生の内は目立たない方がいい」
「そうか……」
俺の考えが今一理解し切れないようで、磐城君は首を傾げる。
「……けど、まあ、今更だね」
既に大会が始まってしまった後で言っても仕方がない。
磐城君は疑問を封じ込めて試合に視線を向けた。
「もう負けが確定しているしね」
現在4回裏の向上冠の攻撃。
しかし、14点差ついて2アウト。
後1アウトでコールドゲームだ。
磐城君の言う通り、このまま1回戦負けとなるだろう。
「あ、終わったわね」
果たして、最後の打者も簡単にアウトを取られ、試合終了。
整列して礼をし、選手達はそのままさっさとベンチ裏に引っ込んでいった。
その表情に悲壮感はない。
一応、選手達は今大会が初めての試合のはずだが、慣れた様子だ。
1年生、2年生と先輩の試合を見てきて、初めから分かっていたからだろう。
結局、補助金を得るための形式的な儀式に過ぎないのだ。
「しかし、これ。補助金の不正受給とかにならないのかな」
「法律上は別に問題ないんじゃない? 単純に弱い野球部が公式戦で大敗してるだけなんだから」
「その野球部、普段練習してないけどね」
昇二がポツリと呟く。
俺もそこが大分問題だと思う。
けど、まあ。普段練習をすること、みたいな法律はなさそうだしな。
いくら何でも当たり前のこと過ぎて。
「それより、もう帰っていいって。私達も帰りましょ?」
「そうだな。ほら、あーちゃんも行こう」
「ん」
隣でぼんやりしていたあーちゃんに声をかけ、球場を後にする。
山形県立向上冠中学高等学校野球部の全国中学校硬式野球選手権大会地方大会1回戦の結果は、例年通りの惨敗。
ボロボロの公式戦を見届けて、現地解散となったのだった。
中学校の野球部が競う全国中学校硬式野球選手権大会。
シニアとジュニアユースが鎬を削るU15アマチュア全国硬式野球選手権大会。
中学世代全てが入り混じる全国中学生硬式野球選手権大会。
その他、シニアだけ、ジュニアユースだけといった細かい大会もあるにはあるが、権威のある主要な大会はこの3つだ。
そして時は5月。
中学世代の3大野球大会の内の1つ。
全国中学校硬式野球選手権大会の地方大会がスタートしていた。
ちなみに、裏ではU15アマチュア全国硬式野球選手権大会も始まっている。
まあ、そっちは俺達には関係ないけども……。
かと言って、前者に深く関わっている訳でもない。
「フレー! フレー! 向っ、上っ、冠っ!」
山形県立向上冠中学高等学校応援団部の団長が声を張り上げている。
その一方で、他の生徒達は興味なさそうに試合を眺めている。
いや、実のところ興味がないのは彼らだけではない。
応援団部の生徒達もそこまで野球部の勝利を願っている訳ではない。
単純に、ここが部活動の活動実績や個々の内申点に関わる部分だから、応援団部の部員としての活動をしているだけなのだ。
「参加してないと退屈ね」
「まあ、こればかりはな。けど、学業の一環だからな」
前世の中高生時代でもあった。
野球部の応援への強制参加。
他はどうかは知らないが、俺の学校では何故か応援しに行くのは野球部の試合だけだった。
正直、面倒臭かったけれど、その日の授業はなくなったし、応援そっちのけで友達とだべっていたのでそこまで悪い思い出はない。
俺の学校の野球部は弱小で基本1回戦負けだったが、勝った時には2回戦も応援に行くことになったのでラッキーと思ったりもしたものだ。
まあ、学習指導要領で授業の時間は決まってるので、実際はどこかにしわ寄せがいっていたのだろうけど。
当時の俺はそこまで考えが及ばなかった。
それはともかくとして。
この野球に狂った世界では、どうかと言うと……。
当然の如く、全国中学校硬式野球選手権大会も全国中学生硬式野球選手権大会も地方大会の初戦は全校生徒強制参加となる。
初戦に勝った後は学校の自由。
だが、地方大会の決勝までは全校生徒を駆り出すところもザラにあるらしい。
「野村君、試合に出なくてよかったのかい?」
「今のところ、必要性を感じないからな」
磐城君に問われ、正直に答える。
今の状態でも、普通にいいところまで行けるだろう。
たとえ相手が中学3年生であろうとも。
全国中学校硬式野球選手権大会はシニアやジュニアユースのチームは出てこないから、全国優勝も狙えるだろう。
秋に行われる全国中学生硬式野球選手権大会の方は混合だから、正樹のチームと当たると危ういかもしれないが。
「虻川先生も出ろとは言わなかったしな」
学校側も中学1年生を試合に出そうという考えはないようだ。
今回は基本的に3同好会の中学3年生のみで構成されたチームだった。
余程、意欲的に出たいと言えば別だろうけど。
「必要に迫られでもしない限り、中学生の内は目立たない方がいい」
「そうか……」
俺の考えが今一理解し切れないようで、磐城君は首を傾げる。
「……けど、まあ、今更だね」
既に大会が始まってしまった後で言っても仕方がない。
磐城君は疑問を封じ込めて試合に視線を向けた。
「もう負けが確定しているしね」
現在4回裏の向上冠の攻撃。
しかし、14点差ついて2アウト。
後1アウトでコールドゲームだ。
磐城君の言う通り、このまま1回戦負けとなるだろう。
「あ、終わったわね」
果たして、最後の打者も簡単にアウトを取られ、試合終了。
整列して礼をし、選手達はそのままさっさとベンチ裏に引っ込んでいった。
その表情に悲壮感はない。
一応、選手達は今大会が初めての試合のはずだが、慣れた様子だ。
1年生、2年生と先輩の試合を見てきて、初めから分かっていたからだろう。
結局、補助金を得るための形式的な儀式に過ぎないのだ。
「しかし、これ。補助金の不正受給とかにならないのかな」
「法律上は別に問題ないんじゃない? 単純に弱い野球部が公式戦で大敗してるだけなんだから」
「その野球部、普段練習してないけどね」
昇二がポツリと呟く。
俺もそこが大分問題だと思う。
けど、まあ。普段練習をすること、みたいな法律はなさそうだしな。
いくら何でも当たり前のこと過ぎて。
「それより、もう帰っていいって。私達も帰りましょ?」
「そうだな。ほら、あーちゃんも行こう」
「ん」
隣でぼんやりしていたあーちゃんに声をかけ、球場を後にする。
山形県立向上冠中学高等学校野球部の全国中学校硬式野球選手権大会地方大会1回戦の結果は、例年通りの惨敗。
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