81 / 306
第2章 雄飛の青少年期編
076 今後も継続して
しおりを挟む
変化球を用いて徹底的に外角を攻める。
それだけで大法さんの次に打席に立った選手は面白いように空振りしてしまう。
しかし、ステータス的には特にそうとは見えない感じだ。
状態/戦績/関係者/▽プレイヤースコープ
・内海良蔵(成長タイプ:バランス) 〇能力詳細 〇戦績
BC:812 SP:791 TAG:795 TAC:800 GT:799
PS:160 TV:802 PA:788
好感度:2/100
・内海良蔵
〇能力詳細
▽取得スキル一覧
名称 分類
・内角打ち◎ 通常スキル
スキルも内角に強いだけで外角打ちにデバフがかかっている訳ではない。
にもかかわらず、【戦績】を見ると得意なコースがあからさまに偏っている。
コース別の打率を分析し、高打率を赤、低打率を青で示したヒートマップを見る限り、いわゆる赤い部分が内角のボールゾーンにまで広がっていて外角は真っ青。
かと言って、ホットゾーンが著しく狭い訳ではない。
平均的な大きさのものが極端にズレているだけ。
これはもう能力的な問題ではない。
ゲームではなく現実であるが故の問題だ。
「内海さんはもっとホームベースに寄って立った方がいいですね。今の状態だと外角の球に対応できません」
彼は自分のバッティングフォームに対して立ち位置が悪い。
ゲーム的に言うならカーソルが最初からインコースにズレてしまっているのだ。
そこからアウトコースを打とうとすると、真ん中からカーソル移動する時よりも誤差が大きくなり易くなる。
結果、打ち損じや空振りが多くなる訳だ。
対して俺の助言は、最初からバッターボックスの立つ位置を変えてしまうこと。
これまたゲームで例えるなら、カーソルを真ん中に補正することが目的だ。
「これ以上ホームベースに寄れって? 内角が打てなくならないか?」
「大丈夫です。内海さん、多分内角打ちは得意でしょう? 打ち方で分かります」
「いや、それは、そうだが……」
あれだけ偏りがあると彼も自分の傾向ぐらいは理解しているようだ。
まあ、さすがにそれぐらいは当然だろう。
内海さんもこの対処法を頭の片隅では考えていたはずだ。
しかし、今時点でスタンダードな立ち位置よりも若干内に寄っている。
そこから更に、となると躊躇してしまうのも分かる。
「内海さんの場合、そこまで内に寄った上でも打つのに窮屈過ぎるなと思ったら、もうそれはボール球です。見逃していい」
ヒットにできるなら別にボール球を打ってもいいとは思う。
けど、それが弱点となるコースを生んでしまうのであれば話は別だ。
しっかりボールを見極めて有利なカウントを作った方がいい。
何より――。
「それよりも外角に全く対応できない方が危険です。大概、ピッチャーは困ったら外角に投げますから」
「そう、だな……」
さすがに中学生に外角球で翻弄されてしまっては受け入れざるを得ないだろう。
いいきっかけになるはずだ。
よし。次。
「――貴方はホームベースから離れて立った方がいいですね」
今度の選手は逆にホットゾーンが外に寄り過ぎている。
こちらもその広さ自体は平均的なので、下手にフォームを弄るよりも立ち位置を変えるだけに留めた方がいい。
ホットゾーンが狭いのなら、さすがにフォームの方に問題があると考えた方がいい。
実際、それを勧めた選手も中にはいた。
ともあれ、そんな感じで一通り選手にアドバイスをしていくといい時間になる。
そうして帰り際。
「今日はありがとうございました」
「いえ……むしろ私達の方が感謝すべきだったかもしれません」
尾高コーチに頭を下げると、逆に彼から礼を言われる。
おお。器が大きいな。
余計なことをするなと怒られても不思議じゃないのに。
「可能であれば、また来て選手達と対戦して欲しいぐらいです」
「俺としては問題ありません。是非」
その申し出は非常にありがたい。
1も2もなく承諾する。
「……まあ、おじさんが連れてきてくれれば、ですけど」
「秀治郎が大丈夫なら俺は喜んで送り迎えするけど……負担にならないか?」
「問題ないですよ。平日は余り投げないですし、右と左、どちらでも投げられるようになりましたから。交互に投げれば負担も少ないですし、いい練習になります」
まあ、それは一種の詭弁だけれども。
俺は【怪我しない】のおかげで肩を壊す勢いで連投しようが問題ないからな。
一応、疲労は溜まるけれども【Total Virality】がカンストしているし、それ以外にも疲労回復に役立つスキルがある。
▽取得スキル一覧
名称 分類
・休息効率向上 通常スキル
・超回復 極みスキル
(取得条件:通常スキル「休息効率向上」の取得)
・疲労しにくい 通常スキル
・24時間戦えます(断言) 極みスキル
(取得条件:通常スキル「疲労しにくい」の取得)
この程度で潰れたりはしない。
そんな俺の自然な様子に、明彦氏は納得したようだ。
「そうか。じゃあ、また頼む」
「わたしもついてく。次は防具も一式持ってくる」
と、あーちゃんが父親の服を引っ張りながら強く主張する。
そんな彼女に明彦氏は苦笑するばかりだった。
「あ、そうだ。尾高コーチ。ちょっとお耳を」
「はい? どうしました?」
1個忘れていたことがあった。
なので、近づいて他の選手に聞こえないように小声を出す。
「村木さんですけど、外野手よりセカンドかショートの方がいいですよ」
今回は打撃関連ばかりだったが、さすがにこれだけは伝えておきたい。
適性Fの守備位置のままでいさせるのは正直酷だ。
「……覚えておきます」
「お願いします」
もう一度頭を下げてから、明彦氏とあーちゃんのところに戻る。
「じゃあ、帰りましょう」
こうして俺は初めてのクラブチーム見学を終えたのだった。
それだけで大法さんの次に打席に立った選手は面白いように空振りしてしまう。
しかし、ステータス的には特にそうとは見えない感じだ。
状態/戦績/関係者/▽プレイヤースコープ
・内海良蔵(成長タイプ:バランス) 〇能力詳細 〇戦績
BC:812 SP:791 TAG:795 TAC:800 GT:799
PS:160 TV:802 PA:788
好感度:2/100
・内海良蔵
〇能力詳細
▽取得スキル一覧
名称 分類
・内角打ち◎ 通常スキル
スキルも内角に強いだけで外角打ちにデバフがかかっている訳ではない。
にもかかわらず、【戦績】を見ると得意なコースがあからさまに偏っている。
コース別の打率を分析し、高打率を赤、低打率を青で示したヒートマップを見る限り、いわゆる赤い部分が内角のボールゾーンにまで広がっていて外角は真っ青。
かと言って、ホットゾーンが著しく狭い訳ではない。
平均的な大きさのものが極端にズレているだけ。
これはもう能力的な問題ではない。
ゲームではなく現実であるが故の問題だ。
「内海さんはもっとホームベースに寄って立った方がいいですね。今の状態だと外角の球に対応できません」
彼は自分のバッティングフォームに対して立ち位置が悪い。
ゲーム的に言うならカーソルが最初からインコースにズレてしまっているのだ。
そこからアウトコースを打とうとすると、真ん中からカーソル移動する時よりも誤差が大きくなり易くなる。
結果、打ち損じや空振りが多くなる訳だ。
対して俺の助言は、最初からバッターボックスの立つ位置を変えてしまうこと。
これまたゲームで例えるなら、カーソルを真ん中に補正することが目的だ。
「これ以上ホームベースに寄れって? 内角が打てなくならないか?」
「大丈夫です。内海さん、多分内角打ちは得意でしょう? 打ち方で分かります」
「いや、それは、そうだが……」
あれだけ偏りがあると彼も自分の傾向ぐらいは理解しているようだ。
まあ、さすがにそれぐらいは当然だろう。
内海さんもこの対処法を頭の片隅では考えていたはずだ。
しかし、今時点でスタンダードな立ち位置よりも若干内に寄っている。
そこから更に、となると躊躇してしまうのも分かる。
「内海さんの場合、そこまで内に寄った上でも打つのに窮屈過ぎるなと思ったら、もうそれはボール球です。見逃していい」
ヒットにできるなら別にボール球を打ってもいいとは思う。
けど、それが弱点となるコースを生んでしまうのであれば話は別だ。
しっかりボールを見極めて有利なカウントを作った方がいい。
何より――。
「それよりも外角に全く対応できない方が危険です。大概、ピッチャーは困ったら外角に投げますから」
「そう、だな……」
さすがに中学生に外角球で翻弄されてしまっては受け入れざるを得ないだろう。
いいきっかけになるはずだ。
よし。次。
「――貴方はホームベースから離れて立った方がいいですね」
今度の選手は逆にホットゾーンが外に寄り過ぎている。
こちらもその広さ自体は平均的なので、下手にフォームを弄るよりも立ち位置を変えるだけに留めた方がいい。
ホットゾーンが狭いのなら、さすがにフォームの方に問題があると考えた方がいい。
実際、それを勧めた選手も中にはいた。
ともあれ、そんな感じで一通り選手にアドバイスをしていくといい時間になる。
そうして帰り際。
「今日はありがとうございました」
「いえ……むしろ私達の方が感謝すべきだったかもしれません」
尾高コーチに頭を下げると、逆に彼から礼を言われる。
おお。器が大きいな。
余計なことをするなと怒られても不思議じゃないのに。
「可能であれば、また来て選手達と対戦して欲しいぐらいです」
「俺としては問題ありません。是非」
その申し出は非常にありがたい。
1も2もなく承諾する。
「……まあ、おじさんが連れてきてくれれば、ですけど」
「秀治郎が大丈夫なら俺は喜んで送り迎えするけど……負担にならないか?」
「問題ないですよ。平日は余り投げないですし、右と左、どちらでも投げられるようになりましたから。交互に投げれば負担も少ないですし、いい練習になります」
まあ、それは一種の詭弁だけれども。
俺は【怪我しない】のおかげで肩を壊す勢いで連投しようが問題ないからな。
一応、疲労は溜まるけれども【Total Virality】がカンストしているし、それ以外にも疲労回復に役立つスキルがある。
▽取得スキル一覧
名称 分類
・休息効率向上 通常スキル
・超回復 極みスキル
(取得条件:通常スキル「休息効率向上」の取得)
・疲労しにくい 通常スキル
・24時間戦えます(断言) 極みスキル
(取得条件:通常スキル「疲労しにくい」の取得)
この程度で潰れたりはしない。
そんな俺の自然な様子に、明彦氏は納得したようだ。
「そうか。じゃあ、また頼む」
「わたしもついてく。次は防具も一式持ってくる」
と、あーちゃんが父親の服を引っ張りながら強く主張する。
そんな彼女に明彦氏は苦笑するばかりだった。
「あ、そうだ。尾高コーチ。ちょっとお耳を」
「はい? どうしました?」
1個忘れていたことがあった。
なので、近づいて他の選手に聞こえないように小声を出す。
「村木さんですけど、外野手よりセカンドかショートの方がいいですよ」
今回は打撃関連ばかりだったが、さすがにこれだけは伝えておきたい。
適性Fの守備位置のままでいさせるのは正直酷だ。
「……覚えておきます」
「お願いします」
もう一度頭を下げてから、明彦氏とあーちゃんのところに戻る。
「じゃあ、帰りましょう」
こうして俺は初めてのクラブチーム見学を終えたのだった。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる
まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。
そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
僕だけレベル1~レベルが上がらず無能扱いされた僕はパーティーを追放された。実は神様の不手際だったらしく、お詫びに最強スキルをもらいました~
いとうヒンジ
ファンタジー
ある日、イチカ・シリルはパーティーを追放された。
理由は、彼のレベルがいつまでたっても「1」のままだったから。
パーティーメンバーで幼馴染でもあるキリスとエレナは、ここぞとばかりにイチカを罵倒し、邪魔者扱いする。
友人だと思っていた幼馴染たちに無能扱いされたイチカは、失意のまま家路についた。
その夜、彼は「カミサマ」を名乗る少女と出会い、自分のレベルが上がらないのはカミサマの所為だったと知る。
カミサマは、自身の不手際のお詫びとしてイチカに最強のスキルを与え、これからは好きに生きるようにと助言した。
キリスたちは力を得たイチカに仲間に戻ってほしいと懇願する。だが、自分の気持ちに従うと決めたイチカは彼らを見捨てて歩き出した。
最強のスキルを手に入れたイチカ・シリルの新しい冒険者人生が、今幕を開ける。
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる