37 / 287
第1章 雌伏の幼少期編
034 この世界特有の小学校野球
しおりを挟む
予想通りと言うべきか、翌年もU12はアメリカの独壇場。
1年でラスボス達は順当に成長し、一層手がつけられない状態になっていた。
来年からはU15の方で猛威を振るうことになるだろう。
同世代の子達はご愁傷様としか言いようがない。
一生ついて回ってくるからな。
まあ、かく言う俺達の世代にとっても将来最大の障害となるのだが……。
年齢制限のない国際大会まではぶつかることがない。
彼らは毎度アメリカ代表に選ばれるだろうし、その時が来るまで精々観察させて貰うとしよう。
それはともかく、今の話だ。
俺達は3年生になっていた。
大きく変わったことと言えば、体育がティーボールから野球になったこと。
それから、クラブ活動と称した野球チームが発足したことだ。
「では、今日も練習を頑張りましょう」
「「「はい!」」」
クラブの顧問となったすなお先生の朗らかな声に皆、元気よく返事をする。
チーム名は耕穣小学校3年生チーム。
名前の通り、クラスメイトのみで構成されている。
ただし、学外の野球チームに所属している者は入っていない。
理由は1つ。
そこで取りこぼした才能を発見することが、このクラブ活動の目的だからだ。
前世では、小学校のクラブ活動というものは学習指導要領に組み込まれた義務教育の一環だった。
だが、この世界では微妙に違う部分があるらしい。
学外野球チームへの所属の方が一種の学外単位のようなものになってるようだ。
ちなみに前世通りのクラブ活動は4年生からだ。
まあ、そもそも全校生徒数が少ない我が校には、片手で数えられる程の文化部しか存在しないけれども。
基本的にそこには野球を諦め、学内チームを脱退した子が入ることになる。
「まず準備体操をしてからキャッチボールをしましょう」
4分割されたグラウンドの1区画で、すなお先生の指示に従って練習開始。
他の区画では4~6年生も活動中だ。
しかし、今一やる気がないのか、活気は余りない。
生徒数も少ない田舎の学校だと、こんなもんか。
そんな上級生達の様子を観察していると――。
「秀治郎君、集中して!」
初めてキャッチボールした時のように注意をしてくる美海ちゃん。
「ごめんごめん」
謝りながら投げ返す。
硬式球かつそこそこのスピードだが、彼女は容易に捕球する。
もう慣れたものだ。
「みなみーは真面目過ぎ」
「2人が不真面目なの、よっ!」
美海ちゃんは語尾に力を込めながらあーちゃんに投げる。
チームメイトの数は17人と奇数なので、俺達は3人でキャッチボールをするのが常になっている。
俺達がチームのトップ3ということもあり、セット扱いとなっている訳だ。
ちなみにこの17という数字は、この2年の間に新たに学外野球チームに入った者を除いた人数となっている。
「しゅー君、はい」
「うん」
返ってきた球を取って、また美海ちゃんへ。
あーちゃんと美海ちゃんは随分と仲よくなった。
今では茜、みなみーと呼び合うぐらいだ。
やはり時間を共有するのが1番だな。
あーちゃんも、よくぞここまで成長してくれたものだ。
「ほら、また!」
しみじみしていると美海ちゃんにまた怒られてしまう。
申し訳ない。
何と言うか、委員長気質なんだよな。美海ちゃん。
逆に子供っぽくてほっこりする。
たまに注意されたくなったりすることもあるぐらいだ。
「6年生になったら外のチームと試合があるんだから、それまでにもっと上手くならないとダメなのよ!?」
「分かってるって」
リトルリーグのチームと各校のクラブ活動チームの全てが参加できる……と言うか、強制参加の全国小学6年生硬式野球選手権大会。
美海ちゃんが言ってるのは、その公式試合のことだ。
才能はあるのに様々な事情で学外チームに入団できなかった子や地元のチームが肌に合わなかった子を、そこで見出すのだ。
つまりスカウトの場だな。
……名目上は、だが。
普通、リトルリーグのチームと当たれば9分9厘コールド負けになる。
そんな試合では評価されることなんてほとんどない。
だからこそ上級生はやる気がないのだ。
それでも100%ではない。
極々稀ではあるけども、試合で活躍したことで特待生として会費免除などの特典と共にシニアチームに入団できた事例もあると聞く。
蜘蛛の糸は確かに垂れている。
後、3年。
このシステムをも利用して、どう未来に繋げていくべきか。
色々と考えていかないといけない。
俺自身のことだけじゃなく、彼女達のことも含めて。
「もうっ、また!!」
今度は割と真剣な思考だったんだけど……。
まあ、美海ちゃんからすると同じことだよな。
さすがにこれ以上怒らせるのはまずい。
真面目にやろう。
計画を固めるのも大切だけど、複数人で練習できる時間も貴重だからな。
1年でラスボス達は順当に成長し、一層手がつけられない状態になっていた。
来年からはU15の方で猛威を振るうことになるだろう。
同世代の子達はご愁傷様としか言いようがない。
一生ついて回ってくるからな。
まあ、かく言う俺達の世代にとっても将来最大の障害となるのだが……。
年齢制限のない国際大会まではぶつかることがない。
彼らは毎度アメリカ代表に選ばれるだろうし、その時が来るまで精々観察させて貰うとしよう。
それはともかく、今の話だ。
俺達は3年生になっていた。
大きく変わったことと言えば、体育がティーボールから野球になったこと。
それから、クラブ活動と称した野球チームが発足したことだ。
「では、今日も練習を頑張りましょう」
「「「はい!」」」
クラブの顧問となったすなお先生の朗らかな声に皆、元気よく返事をする。
チーム名は耕穣小学校3年生チーム。
名前の通り、クラスメイトのみで構成されている。
ただし、学外の野球チームに所属している者は入っていない。
理由は1つ。
そこで取りこぼした才能を発見することが、このクラブ活動の目的だからだ。
前世では、小学校のクラブ活動というものは学習指導要領に組み込まれた義務教育の一環だった。
だが、この世界では微妙に違う部分があるらしい。
学外野球チームへの所属の方が一種の学外単位のようなものになってるようだ。
ちなみに前世通りのクラブ活動は4年生からだ。
まあ、そもそも全校生徒数が少ない我が校には、片手で数えられる程の文化部しか存在しないけれども。
基本的にそこには野球を諦め、学内チームを脱退した子が入ることになる。
「まず準備体操をしてからキャッチボールをしましょう」
4分割されたグラウンドの1区画で、すなお先生の指示に従って練習開始。
他の区画では4~6年生も活動中だ。
しかし、今一やる気がないのか、活気は余りない。
生徒数も少ない田舎の学校だと、こんなもんか。
そんな上級生達の様子を観察していると――。
「秀治郎君、集中して!」
初めてキャッチボールした時のように注意をしてくる美海ちゃん。
「ごめんごめん」
謝りながら投げ返す。
硬式球かつそこそこのスピードだが、彼女は容易に捕球する。
もう慣れたものだ。
「みなみーは真面目過ぎ」
「2人が不真面目なの、よっ!」
美海ちゃんは語尾に力を込めながらあーちゃんに投げる。
チームメイトの数は17人と奇数なので、俺達は3人でキャッチボールをするのが常になっている。
俺達がチームのトップ3ということもあり、セット扱いとなっている訳だ。
ちなみにこの17という数字は、この2年の間に新たに学外野球チームに入った者を除いた人数となっている。
「しゅー君、はい」
「うん」
返ってきた球を取って、また美海ちゃんへ。
あーちゃんと美海ちゃんは随分と仲よくなった。
今では茜、みなみーと呼び合うぐらいだ。
やはり時間を共有するのが1番だな。
あーちゃんも、よくぞここまで成長してくれたものだ。
「ほら、また!」
しみじみしていると美海ちゃんにまた怒られてしまう。
申し訳ない。
何と言うか、委員長気質なんだよな。美海ちゃん。
逆に子供っぽくてほっこりする。
たまに注意されたくなったりすることもあるぐらいだ。
「6年生になったら外のチームと試合があるんだから、それまでにもっと上手くならないとダメなのよ!?」
「分かってるって」
リトルリーグのチームと各校のクラブ活動チームの全てが参加できる……と言うか、強制参加の全国小学6年生硬式野球選手権大会。
美海ちゃんが言ってるのは、その公式試合のことだ。
才能はあるのに様々な事情で学外チームに入団できなかった子や地元のチームが肌に合わなかった子を、そこで見出すのだ。
つまりスカウトの場だな。
……名目上は、だが。
普通、リトルリーグのチームと当たれば9分9厘コールド負けになる。
そんな試合では評価されることなんてほとんどない。
だからこそ上級生はやる気がないのだ。
それでも100%ではない。
極々稀ではあるけども、試合で活躍したことで特待生として会費免除などの特典と共にシニアチームに入団できた事例もあると聞く。
蜘蛛の糸は確かに垂れている。
後、3年。
このシステムをも利用して、どう未来に繋げていくべきか。
色々と考えていかないといけない。
俺自身のことだけじゃなく、彼女達のことも含めて。
「もうっ、また!!」
今度は割と真剣な思考だったんだけど……。
まあ、美海ちゃんからすると同じことだよな。
さすがにこれ以上怒らせるのはまずい。
真面目にやろう。
計画を固めるのも大切だけど、複数人で練習できる時間も貴重だからな。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした
葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。
でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。
本編完結済みです。時々番外編を追加します。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる