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第1章 雌伏の幼少期編
034 この世界特有の小学校野球
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予想通りと言うべきか、翌年もU12はアメリカの独壇場。
1年でラスボス達は順当に成長し、一層手がつけられない状態になっていた。
来年からはU15の方で猛威を振るうことになるだろう。
同世代の子達はご愁傷様としか言いようがない。
一生ついて回ってくるからな。
まあ、かく言う俺達の世代にとっても将来最大の障害となるのだが……。
年齢制限のない国際大会まではぶつかることがない。
彼らは毎度アメリカ代表に選ばれるだろうし、その時が来るまで精々観察させて貰うとしよう。
それはともかく、今の話だ。
俺達は3年生になっていた。
大きく変わったことと言えば、体育がティーボールから野球になったこと。
それから、クラブ活動と称した野球チームが発足したことだ。
「では、今日も練習を頑張りましょう」
「「「はい!」」」
クラブの顧問となったすなお先生の朗らかな声に皆、元気よく返事をする。
チーム名は耕穣小学校3年生チーム。
名前の通り、クラスメイトのみで構成されている。
ただし、学外の野球チームに所属している者は入っていない。
理由は1つ。
そこで取りこぼした才能を発見することが、このクラブ活動の目的だからだ。
前世では、小学校のクラブ活動というものは学習指導要領に組み込まれた義務教育の一環だった。
だが、この世界では微妙に違う部分があるらしい。
学外野球チームへの所属の方が一種の学外単位のようなものになってるようだ。
ちなみに前世通りのクラブ活動は4年生からだ。
まあ、そもそも全校生徒数が少ない我が校には、片手で数えられる程の文化部しか存在しないけれども。
基本的にそこには野球を諦め、学内チームを脱退した子が入ることになる。
「まず準備体操をしてからキャッチボールをしましょう」
4分割されたグラウンドの1区画で、すなお先生の指示に従って練習開始。
他の区画では4~6年生も活動中だ。
しかし、今一やる気がないのか、活気は余りない。
生徒数も少ない田舎の学校だと、こんなもんか。
そんな上級生達の様子を観察していると――。
「秀治郎君、集中して!」
初めてキャッチボールした時のように注意をしてくる美海ちゃん。
「ごめんごめん」
謝りながら投げ返す。
硬式球かつそこそこのスピードだが、彼女は容易に捕球する。
もう慣れたものだ。
「みなみーは真面目過ぎ」
「2人が不真面目なの、よっ!」
美海ちゃんは語尾に力を込めながらあーちゃんに投げる。
チームメイトの数は17人と奇数なので、俺達は3人でキャッチボールをするのが常になっている。
俺達がチームのトップ3ということもあり、セット扱いとなっている訳だ。
ちなみにこの17という数字は、この2年の間に新たに学外野球チームに入った者を除いた人数となっている。
「しゅー君、はい」
「うん」
返ってきた球を取って、また美海ちゃんへ。
あーちゃんと美海ちゃんは随分と仲よくなった。
今では茜、みなみーと呼び合うぐらいだ。
やはり時間を共有するのが1番だな。
あーちゃんも、よくぞここまで成長してくれたものだ。
「ほら、また!」
しみじみしていると美海ちゃんにまた怒られてしまう。
申し訳ない。
何と言うか、委員長気質なんだよな。美海ちゃん。
逆に子供っぽくてほっこりする。
たまに注意されたくなったりすることもあるぐらいだ。
「6年生になったら外のチームと試合があるんだから、それまでにもっと上手くならないとダメなのよ!?」
「分かってるって」
リトルリーグのチームと各校のクラブ活動チームの全てが参加できる……と言うか、強制参加の全国小学6年生硬式野球選手権大会。
美海ちゃんが言ってるのは、その公式試合のことだ。
才能はあるのに様々な事情で学外チームに入団できなかった子や地元のチームが肌に合わなかった子を、そこで見出すのだ。
つまりスカウトの場だな。
……名目上は、だが。
普通、リトルリーグのチームと当たれば9分9厘コールド負けになる。
そんな試合では評価されることなんてほとんどない。
だからこそ上級生はやる気がないのだ。
それでも100%ではない。
極々稀ではあるけども、試合で活躍したことで特待生として会費免除などの特典と共にシニアチームに入団できた事例もあると聞く。
蜘蛛の糸は確かに垂れている。
後、3年。
このシステムをも利用して、どう未来に繋げていくべきか。
色々と考えていかないといけない。
俺自身のことだけじゃなく、彼女達のことも含めて。
「もうっ、また!!」
今度は割と真剣な思考だったんだけど……。
まあ、美海ちゃんからすると同じことだよな。
さすがにこれ以上怒らせるのはまずい。
真面目にやろう。
計画を固めるのも大切だけど、複数人で練習できる時間も貴重だからな。
1年でラスボス達は順当に成長し、一層手がつけられない状態になっていた。
来年からはU15の方で猛威を振るうことになるだろう。
同世代の子達はご愁傷様としか言いようがない。
一生ついて回ってくるからな。
まあ、かく言う俺達の世代にとっても将来最大の障害となるのだが……。
年齢制限のない国際大会まではぶつかることがない。
彼らは毎度アメリカ代表に選ばれるだろうし、その時が来るまで精々観察させて貰うとしよう。
それはともかく、今の話だ。
俺達は3年生になっていた。
大きく変わったことと言えば、体育がティーボールから野球になったこと。
それから、クラブ活動と称した野球チームが発足したことだ。
「では、今日も練習を頑張りましょう」
「「「はい!」」」
クラブの顧問となったすなお先生の朗らかな声に皆、元気よく返事をする。
チーム名は耕穣小学校3年生チーム。
名前の通り、クラスメイトのみで構成されている。
ただし、学外の野球チームに所属している者は入っていない。
理由は1つ。
そこで取りこぼした才能を発見することが、このクラブ活動の目的だからだ。
前世では、小学校のクラブ活動というものは学習指導要領に組み込まれた義務教育の一環だった。
だが、この世界では微妙に違う部分があるらしい。
学外野球チームへの所属の方が一種の学外単位のようなものになってるようだ。
ちなみに前世通りのクラブ活動は4年生からだ。
まあ、そもそも全校生徒数が少ない我が校には、片手で数えられる程の文化部しか存在しないけれども。
基本的にそこには野球を諦め、学内チームを脱退した子が入ることになる。
「まず準備体操をしてからキャッチボールをしましょう」
4分割されたグラウンドの1区画で、すなお先生の指示に従って練習開始。
他の区画では4~6年生も活動中だ。
しかし、今一やる気がないのか、活気は余りない。
生徒数も少ない田舎の学校だと、こんなもんか。
そんな上級生達の様子を観察していると――。
「秀治郎君、集中して!」
初めてキャッチボールした時のように注意をしてくる美海ちゃん。
「ごめんごめん」
謝りながら投げ返す。
硬式球かつそこそこのスピードだが、彼女は容易に捕球する。
もう慣れたものだ。
「みなみーは真面目過ぎ」
「2人が不真面目なの、よっ!」
美海ちゃんは語尾に力を込めながらあーちゃんに投げる。
チームメイトの数は17人と奇数なので、俺達は3人でキャッチボールをするのが常になっている。
俺達がチームのトップ3ということもあり、セット扱いとなっている訳だ。
ちなみにこの17という数字は、この2年の間に新たに学外野球チームに入った者を除いた人数となっている。
「しゅー君、はい」
「うん」
返ってきた球を取って、また美海ちゃんへ。
あーちゃんと美海ちゃんは随分と仲よくなった。
今では茜、みなみーと呼び合うぐらいだ。
やはり時間を共有するのが1番だな。
あーちゃんも、よくぞここまで成長してくれたものだ。
「ほら、また!」
しみじみしていると美海ちゃんにまた怒られてしまう。
申し訳ない。
何と言うか、委員長気質なんだよな。美海ちゃん。
逆に子供っぽくてほっこりする。
たまに注意されたくなったりすることもあるぐらいだ。
「6年生になったら外のチームと試合があるんだから、それまでにもっと上手くならないとダメなのよ!?」
「分かってるって」
リトルリーグのチームと各校のクラブ活動チームの全てが参加できる……と言うか、強制参加の全国小学6年生硬式野球選手権大会。
美海ちゃんが言ってるのは、その公式試合のことだ。
才能はあるのに様々な事情で学外チームに入団できなかった子や地元のチームが肌に合わなかった子を、そこで見出すのだ。
つまりスカウトの場だな。
……名目上は、だが。
普通、リトルリーグのチームと当たれば9分9厘コールド負けになる。
そんな試合では評価されることなんてほとんどない。
だからこそ上級生はやる気がないのだ。
それでも100%ではない。
極々稀ではあるけども、試合で活躍したことで特待生として会費免除などの特典と共にシニアチームに入団できた事例もあると聞く。
蜘蛛の糸は確かに垂れている。
後、3年。
このシステムをも利用して、どう未来に繋げていくべきか。
色々と考えていかないといけない。
俺自身のことだけじゃなく、彼女達のことも含めて。
「もうっ、また!!」
今度は割と真剣な思考だったんだけど……。
まあ、美海ちゃんからすると同じことだよな。
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