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第1章 雌伏の幼少期編

023 祝・小学校入学

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 第27回WBWでの日本惨敗から2年の月日が流れ……。
 暦の上では春だが、気候的にまだ少し肌寒い日もある4月の上旬。
 俺とあーちゃんは、小学校の校門の前に仲よく並んで立っていた。
 背後には入学式と書かれた看板。
 それを背景に写真を撮っているのだ。風物詩だな。

「秀治郎、立派ですよ。茜ちゃんも」
「ええ、本当に……」

 母さんの言葉に同意する加奈さん。
 その目には僅かに光るものが見えた気がした。
 原因不明の奇病から解放されて既に数年経つものの、小学校入学という節目を受けて込み上げてくるものがあったのだろう。

「さ、折角早く来たんだ。混む前に写真を撮ってしまおう」

 明彦氏の言う通り、大分早くに家を出たので周りに他の家族はいない。
 しかし、入学式の看板前で写真を撮るのは定番中の定番。
 受付開始時刻が近づけば、混雑してしまうかもしれない。

「そうね。美千代さん、カメラをお願いできますか?」
「はい。任せて下さい」

 加奈さんから高性能そうなデジカメを受け取って構える母さん。
 合わせて俺はあーちゃんから離れ、鈴木家を3人にした。
 親子水入らずの写真も大事だ。

「美千代さん達も」
「すみません。お願いします」

 続いて、俺達野村家も家族写真を撮るために校門前に並ぶ。
 喋っていないので影が薄いが、有休を取った父さんもいる。
 デジカメは加奈さんの手に戻っている。

「写真は後でお送りしますね」
「ありがとうございます、加奈さん」

 そうこうしている内に別の家族が来たので、撮影を終えて小学校の敷地に入る。
 チラッと振り返ると、彼らもまた看板の前に並んでスマホを構えていた。

 入学式の受付開始時間までまだしばらくあるので、校舎と校庭を観察する。
 山形県村山市立耕穣こうじょう小学校。
 設立は古く校舎もややボロいが、グラウンドは子供視点抜きに恐ろしく広い。
 四隅には野球のバックネットが設置されている。
 しかも当然のように人工芝。
 マウンドとベース周りだけ土が露出している露骨な野球仕様だ。
 この世界特有の光景だろう。

 ……けど、他の競技をやる時は一体どうするのかな。
 そもそもやらないのか。

 そんな疑問を抱いていると、時間が来て受付が始まる。
 ここで一旦両親と別れ、まずは教室で入学式が始まるのを待つようだ。
 入学式名物、お世話役の6年生の姿が奥の方に見える。

「秀治郎君、茜をお願いね」
「うん」

 加奈さんに頷いてから、あーちゃんと一緒に受付の先へ。
 そこで6年生に名札をつけて貰い、あーちゃん共々同じ教室に案内される。
 両親達の会話を断片的に聞いた限り、この学校は1学年1クラスのみらしい。
 つまり転校とかがない限り、6年間あーちゃんと一緒ということだ。
 着実に幼馴染レベルが上がっていっているな。うん。

 それはともかく。

「あーちゃん、大丈夫?」

 席は名簿順らしく、少し離れてしまっていた。
 教室には続々と新入生が集まり、6歳児の姿が増えていく。

「……ん。だいじょーぶ」

 多数のクラスメイトを前に、あーちゃんは若干気後れしている感があった。
 だが、表情を見る限り無理はしていなさそうだ。
 加奈さんと一緒に小学校ごっこで練習したおかげかもしれない。
 あーちゃんも少しずつ成長しているのだ。

 と思ったが、割と待ち時間があり、あーちゃんは結局俺の傍に来ていた。
 まあ、他の子も知り合いがいれば話をしているみたいだし、そこは構うまい。

「友達、作れそう?」
「……わかんない。けど、しゅーくんがいればいなくてもいい」

 ううむ。
 また心配になることを言いおる。

 とは言え、コミュニティが本格的に広がっていくのはここからだ。
 意外と気の合う子がすぐに見つかるかもしれない。
 そうでなくとも、じっくりと慣れていけば案外社交的になるかもしれない。
 1学年1クラスということは、ここにいるクラスメイト達もまた6年間同じ教室で学ぶことになる訳だしな。
 まだまだこれから。
 何もかも始まったばかりだ。

 いずれにしても、あーちゃんについてはしっかりフォローしていくとして。
 俺は俺で、そろそろ【成長タイプ:マニュアル】の仲間をもう何人か見つけたい。
 そんな訳で、まずはクラスメイトの能力確認から始めるとしよう。

 ふむふむ?
 ほうほう。
 これは中々……。
 ……おっ!?
 いるじゃないか。【成長タイプ:マニュアル】。
 それも、3人もいるぞ。
 どれどれ、もう少し詳細に見てみるか。
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