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第1章 雌伏の幼少期編

007 転生特典の活用

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 前世では野球ゲームオタクだった俺だが、いわゆる転生もののテンプレぐらいは知っている。
 実際に転生してしまった当事者になり、何か参考にならないかと記憶の片隅から知識を引っ張り出してきたりもした。
 もっとも、大概はファンタジーな異世界に転生しているイメージ。
 赤ん坊の頃から言語学習を始め、魔法とかの特殊技能を学んでスタートダッシュを決めるのが王道な訳だが……。

 野球に狂ってる以外は割と普通の世界なんだよなあ。

 言語は思い切り日本語だし、住んでる場所の名称も日本。
 勿論、魔法なんてない。
 まあ、俺には野球関連のステータスをマニュアルで操作することができる特殊能力があるんだけど……。
 たとえ全てをカンストさせられたとしても、肉体的には人間を完全にやめるレベルになることはないだろう。
 精々、超一流の野球選手になれるぐらいのはずだ。
 いや、それでも現実的に考えると破格だけどな。
 ファンタジーの転生ものだと大概、人外レベルになるからなぁ。

 何にしても、前世の記憶は然程役に立たなさそうなのは間違いない。
 精々、受験とかが僅かに楽になるぐらいか。
 結局、豊かな生活を送るのに確実性の高い方法は、転生特典の【マニュアル操作】を頼みにすること以外ない。
 それが結論だ。
 ちなみに現在、生後1ヶ月の俺のステータスは次の通り。

☆成長タイプ:マニュアル
☆体格補正値 -70%
☆年齢補正値 -50%
残り経験ポイント0
【Bat Control】▼△
   1(G)
【Swing Power】▼△
   1(G)
【Total Agility】▼△
   1(G)
【Throwing Accurate】▼△
   1(G)
【Grabbing Technique】▼△
   1(G)
【Pitching Speed】▼△
   10     
【Total Vitality】▼△
   122(G+)
【Pitching Accurate】▼△
   1(G)
ポジション適性へ⇒
変化球取得画面へ⇒
スキル取得画面へ⇒
その他⇒

 生まれる前と微妙に画面が変化している部分がある。
 恐らく、この世に生を受けたからだろう。

【体格補正】と【年齢補正】は何となく字面で分かる。
 どちらも滅茶苦茶なマイナス補正なのは乳幼児だから。
 成長と共にマイナス補正は緩和されていくはずだ。
 ゲームにはない余計な要素だが、現実との整合性を取ろうとしているのだろう。
【その他】の部分は、病気や怪我などの状態が色々と見られる画面に飛ぶようだ。

 ステータスとしては【Total Vitality】が少し上がっている。
 これはこの1ヶ月の間に得た【経験ポイント】を、獲得したそばから全て突っ込んでいった結果だ。
 生まれてすぐ死にかけたトラウマが反映されている。

【経験ポイント】は、案の定と言うべきか、行動によって取得量が変化するらしい。
 何故なら、ある日は0ポイント、別の日は1~2ポイントと得られたポイントが異なっていたからだ。
 0ポイントの時は生まれてしばらく、赤ん坊らしく食っちゃ寝してた時だ。
 1~2ポイントの時は、【経験ポイント】が増えないかな、と日がな一日手足をバタつかせた成果。
 運動の量と負荷で増加すると見て間違いなさそうだ。
 もっとも、まだ寝返りも打てない乳幼児である今の俺にできることは限られる。
 だから、無心で手足を動かし続ける。

「もう。秀治郎ったら、せわしないですね」

 そんな俺を見て、母さんが微笑ましさ半分、呆れ半分のような声を出す。

 そうは言ってもね、母さん。
 赤ん坊業務は暇過ぎて、これぐらいしかやることがないんだよ。

 ……と言うか、今後を考えるとまだまだ序の口なんだよな。

 いずれ寝返りを打てるようになったり、ハイハイができるようになったりしたら確実に今の比じゃなくなる。
 何も知らない親からすると、相当気を揉むような状態になるだろう。
 今からちょっと申し訳ない気持ちになる。

 けれど、それもこれも全ては将来のため。
 仕方のないことなのだ。
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