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最終章 英雄の燔祭と最後の救世
346 〈呪詛反転・応報〉
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「さて、まずは……」
鎮守の樹海中心にある社の地下から氷漬けのヒメ様達を地上に運び出し、封印の注連縄を用意した上で凍結を解除する。
俺達の試みは、全ての観測者に影響を与え得るものだ。
それをなす瞬間まで凍結状態にしておくのは余り好ましくない。
加えて、ある意味五百年の救世に囚われ続けた被害者とも言える彼女達を氷の中に封じ込めたまま放置するなど、人外ロリコンの俺からすると論外だ。
何より、当事者として彼女達には全てを見届ける権利と義務があるだろう。
「イサク様……」
氷から解放された代わりに縄に縛られながら、複雑な表情で俺を見るヒメ様。
そこに怒りや憎しみといった負の感情は見て取れない。
どことなく申し訳なさや諦め、それと一つ大きな肩の荷を下ろしたような解放感のようなものが感じられる。トリリス様やディームさんも同様だ。
チサさんは今一表情が分からないが、似たような感情を抱いているに違いない。
「霊鏡ホウゲツは印刀ホウゲツの一撃で諸共に砕け散り、かつての英雄の残滓は消え去りました。俺達の勝ちです」
凍結が解除されて最初に目にしたのが俺である時点で彼女達も理解しているだろう。だが、改めて事実を突きつけるように告げる。
「そう、ですか」
対してヒメ様はそうとだけ告げると、全てを受け入れるように目を閉じた。
ショウジ・ヨスキの鏡像が完全敗北し、チサさんの力も封じられている。
逆転の目はない。そう即座に理解したからというのもあるだろうし、それ以上に長年蓄積された心労も相まって抗う意思をなくしてしまっているのだろう。
彼女達は揃って口を噤む。
殺されかけて何だが、改めて同情心を強く抱く。
「……しかし、イサク。これから一体どうするつもりなんだ?」
と、そこへ僅かな静寂を破るようにライムさんが問いかけてきた。
彼もそうだが、俺の計画の全容を知る者は多くない。
視線が集まっているのが周囲を探知せずとも分かる。
「救世はお前の死を前提としたもの。俺としても容認できるものじゃない。が、そうしなければ世界が滅ぶのも事実。当然、代案があるんだろう?」
「ええ。勿論です」
確認するように続けられたライムさんの問いに対し、俺は詳細を知らずとも助けとなってくれた彼らの信頼に内心で感謝しながら即答した。
そして一度皆を見回し、それから改めて口を開く。
「救世の転生者と【ガラテア】の命を契約で紐づけ、救世の転生者の死を以って【ガラテア】ごと破滅欲求を消し去る。この方法では結局のところ同じことを延々と繰り返す必要があります」
「観測者が存在する限り、破滅欲求は蓄積されていくのだからな」
おさらいをするように告げた俺の言葉を受け、そうした観測者のあり方を嘲笑うように【ガラテア】が補足を入れた。
「……故に私は、二度とこのような虚しい繰り返しが生じぬように、破滅欲求を吐き出す観測者を滅ぼさんとしていた訳だ。結局、今回も失敗だった訳だがな」
一転して、彼女は自嘲するような口調で続ける。
嘲笑に眉をひそめた者へのフォローではない。単なる本心だろう。
「ただ、この方法は既に破綻しかけています。救世の転生者たる俺がまだ二次性徴も迎えていないのがその証明です。次、百年も間を置かず、新たな【ガラテア】が生まれるでしょう。偏に、人口の増加が臨界を超えてしまったせいです」
「それでも尚、この救世を強行しようというのなら人口を削減するか、共通認識を弄って救世の転生者を頻繁に作り出す以外にないな」
【ガラテア】の結論に、ライムさんは現状の理解が進んだのか渋い顔をした。
他の面々の様子を見ても、現行の手段では袋小路に入りつつあるという認識については共有することができたようだ。
「だから俺は、俺達は、新たな【ガラテア】も救世の転生者も必要としない方法を選ぶことにしました」
「必要としない? そんなことが、できるのか?」
本題に入った俺に、ライムさんは驚愕で目を開きながら半信半疑で問う。
対して俺は、肯定の意を込めて首を縦に振ってから隣に立つイリュファを見た。
「彼女の力を使えば」
「彼女の力?」
そうしながら俺が口に出した答えに、ライムさんは首を傾げて繰り返す。
同じヨスキ村出身の彼だ。イリュファの力については知っている。
「確か攻撃を跳ね返すものだったよな?」
「正確には、一定の指向性を持った事象を発生源に返す、というものですね」
「…………まさか!?」
ライムさんの確認気味の問い対して細かい訂正を入れると、彼は一瞬考え込むように動きをとめたかと思えばハッとしたようにこちらを見た。
どうやら俺達の企図に気づいたようだ。
イリュファの力は、思念の強度さえ上回っていれば複合発露を跳ね返すことすらできるように、概念的なものであっても反射の対象となる。つまり――。
「世界に蓄積された破滅欲求を本来の持ち主、観測者へと逆流させます」
それこそが全てを覆すために俺達が取れる唯一無二の方策だった。
そして、集合的無意識の奥底で淀んでしまっている破滅欲求を低減させることによって、人形化魔物が発生する土壌そのものをなくしてしまおうという訳だ。
そうすれば新たな【ガラテア】は生まれなくなるはず。
たとえ未来にその共通認識が残っていて強制的に生み出されることがあったとしても、それは弱々しい力しか持たない存在に過ぎなくなるだろう。
人形化魔物によって世界に危機がもたらされることはなくなる。
「確かにそれができれば救世は必要なくなるだろうな。しかし……」
一度深く頷いて理解の意を示したライムさんだったが、盲目に受け入れるつもりはないようだ。これまでの説明における問題点を指摘しようと口を開く。
「破滅欲求を返された観測者達は大丈夫なのか?」
イリュファの力を利用したそれは、構造としては喇叭の人形化魔物【終末を告げる音】の滅尽・複合発露〈響く音色は本性を暴き立てる〉と似ている。
まあ、厳密には元々の持ち主に返却しているだけだから、蓄積された破滅欲求を掬い取って対象に植えつけるようなものであるそれとは訳が違うが。
いずれにしても下手をすれば、あの時のレンリ達のように破滅欲求に振り回されかねないことは事実だ。ライムさんの不安は的外れではない。
勿論、対象は全ての観測者と非常に広範囲であるため、破滅欲求は無数に分散されて濃度も大分薄くなっているはずではある。
加えて、なるべく急激な影響が出たりしないように最初は限りなく少量から始めるつもりなので、【終末を告げる音】程の即効性はないと確信しているが……。
「……混乱は、間違いなく起こるでしょう。どうにも、この世界の観測者は破滅欲求への耐性がないようですから」
怒りや憎しみに由来するような行動が増え、細かい諍いも増えていくだろう。
下手をすると国家間の敵対から、世界戦争に至ることもあるかもしれない。
観測者自らの手で終末へと転げ落ちていく可能性も否定することはできない。
それならばこれまでと変わらない方がいいとしたのがヒメ様達で、元の世界と同じ状況になることは以ての外と考えたのがショウジ・ヨスキだった。
しかし……そう。
あくまでもそれは、元の世界では当たり前のことでしかない。
「前世の俺が生きた世界は、誰もが破滅欲求を抱きながら、それでも何とか歴史を繋いできました。そんな世界に生きていたからこそ俺は、人形化魔物が時折持つ観測者を扇動するような力にも負けなかった。逆に、この世界の人達がそれに耐えられないのは、破滅欲求を抱いた傍から世界に押しつけてしまうからです」
無菌室で育てられ、本来得られるはずの抵抗力を失ったような状態と言える。
その無垢さを美しさとショウジ・ヨスキは評していたのだろうが、俺には脆く弱いようにも感じられる。
それに、荒波に揉まれて育った者が美しくないということもないはずだ。
「人というものは、そうした負の感情を己の力で制することもできるはずです。そして全ての人が己の心に打ち克てば、誰かを犠牲にしなくても世界を守れる」
各々が各々の精神で心の内に湧き出てくる破滅欲求を抑え込みながら日々生活していた元の世界を知るが故に、この世界でもそれは十分可能だと俺は信じる。
「……確かに。元々は自分自身の思念だ。世界に押しつけるのではなく、他の世界の誰かに尻拭いさせるのでもなく、自分自身で処理すべきだ」
ライムさんは俺が口にした理屈に同意するように頷いた。
しかし、もう一つ重大な問題点があることにも気づいているらしく、こちらを見る表情は依然として厳しいまま言葉を続ける。
「だが、それはイサクと彼女ありきのことだろう。お前が死ねば結局は元通り。破滅欲求は再び世界に蓄積されるようになってしまう」
「そうですね。ですが、この【ガラテア】がいる限り、俺がこの世界の誰かに殺されるようなことは起こり得ません。事故も病も俺の命を脅かすことはありません」
「確かに外的な要因についてはほとんど心配いらないだろう。だが、お前もいずれは老い、命を失う。それが人間というものだ」
その問題はどうするのかとライムさんは視線で問う。
当然、それについても解決策はある。
そう伝わるように俺は表情を和らげ、それから具体的な内容を説明した。
「――だから、問題ありません」
「…………成程な」
結果、俺の答えにライムさんは複雑な表情を浮かべながらも、この場は納得してくれたようだった。周りを見回すと他の皆も同じ様子だ。
色々と思うところはあるだろう。だが、危うい綱渡りにせよ、袋小路に入りつつある旧来の救世よりは開かれた未来がある。
今はそれだけ分かってくれればいい。
……この辺りで説明は十分だろう。
「フェリト、リクル」
「ええ」
「はいです」
そうして俺は準備を整えるために二人に呼びかけ、それから隣に寄り添うように立つイリュファを振り返った。
「さあ、イリュファ」
「はい。イサク様」
彼女と手を取り合って【ガラテア】と向かい合い、多重循環共鳴によって最大限に強化されたイリュファの真・複合発露を共に発動させる。
その力を以って世界に蓄積された破滅欲求へとその化身たる存在を通じて働きかけ、この世に生きる全ての観測者達へとそれを返還していく。
今こそ五百年続いた燔祭の終わり。世界の変革の時だ。
鎮守の樹海中心にある社の地下から氷漬けのヒメ様達を地上に運び出し、封印の注連縄を用意した上で凍結を解除する。
俺達の試みは、全ての観測者に影響を与え得るものだ。
それをなす瞬間まで凍結状態にしておくのは余り好ましくない。
加えて、ある意味五百年の救世に囚われ続けた被害者とも言える彼女達を氷の中に封じ込めたまま放置するなど、人外ロリコンの俺からすると論外だ。
何より、当事者として彼女達には全てを見届ける権利と義務があるだろう。
「イサク様……」
氷から解放された代わりに縄に縛られながら、複雑な表情で俺を見るヒメ様。
そこに怒りや憎しみといった負の感情は見て取れない。
どことなく申し訳なさや諦め、それと一つ大きな肩の荷を下ろしたような解放感のようなものが感じられる。トリリス様やディームさんも同様だ。
チサさんは今一表情が分からないが、似たような感情を抱いているに違いない。
「霊鏡ホウゲツは印刀ホウゲツの一撃で諸共に砕け散り、かつての英雄の残滓は消え去りました。俺達の勝ちです」
凍結が解除されて最初に目にしたのが俺である時点で彼女達も理解しているだろう。だが、改めて事実を突きつけるように告げる。
「そう、ですか」
対してヒメ様はそうとだけ告げると、全てを受け入れるように目を閉じた。
ショウジ・ヨスキの鏡像が完全敗北し、チサさんの力も封じられている。
逆転の目はない。そう即座に理解したからというのもあるだろうし、それ以上に長年蓄積された心労も相まって抗う意思をなくしてしまっているのだろう。
彼女達は揃って口を噤む。
殺されかけて何だが、改めて同情心を強く抱く。
「……しかし、イサク。これから一体どうするつもりなんだ?」
と、そこへ僅かな静寂を破るようにライムさんが問いかけてきた。
彼もそうだが、俺の計画の全容を知る者は多くない。
視線が集まっているのが周囲を探知せずとも分かる。
「救世はお前の死を前提としたもの。俺としても容認できるものじゃない。が、そうしなければ世界が滅ぶのも事実。当然、代案があるんだろう?」
「ええ。勿論です」
確認するように続けられたライムさんの問いに対し、俺は詳細を知らずとも助けとなってくれた彼らの信頼に内心で感謝しながら即答した。
そして一度皆を見回し、それから改めて口を開く。
「救世の転生者と【ガラテア】の命を契約で紐づけ、救世の転生者の死を以って【ガラテア】ごと破滅欲求を消し去る。この方法では結局のところ同じことを延々と繰り返す必要があります」
「観測者が存在する限り、破滅欲求は蓄積されていくのだからな」
おさらいをするように告げた俺の言葉を受け、そうした観測者のあり方を嘲笑うように【ガラテア】が補足を入れた。
「……故に私は、二度とこのような虚しい繰り返しが生じぬように、破滅欲求を吐き出す観測者を滅ぼさんとしていた訳だ。結局、今回も失敗だった訳だがな」
一転して、彼女は自嘲するような口調で続ける。
嘲笑に眉をひそめた者へのフォローではない。単なる本心だろう。
「ただ、この方法は既に破綻しかけています。救世の転生者たる俺がまだ二次性徴も迎えていないのがその証明です。次、百年も間を置かず、新たな【ガラテア】が生まれるでしょう。偏に、人口の増加が臨界を超えてしまったせいです」
「それでも尚、この救世を強行しようというのなら人口を削減するか、共通認識を弄って救世の転生者を頻繁に作り出す以外にないな」
【ガラテア】の結論に、ライムさんは現状の理解が進んだのか渋い顔をした。
他の面々の様子を見ても、現行の手段では袋小路に入りつつあるという認識については共有することができたようだ。
「だから俺は、俺達は、新たな【ガラテア】も救世の転生者も必要としない方法を選ぶことにしました」
「必要としない? そんなことが、できるのか?」
本題に入った俺に、ライムさんは驚愕で目を開きながら半信半疑で問う。
対して俺は、肯定の意を込めて首を縦に振ってから隣に立つイリュファを見た。
「彼女の力を使えば」
「彼女の力?」
そうしながら俺が口に出した答えに、ライムさんは首を傾げて繰り返す。
同じヨスキ村出身の彼だ。イリュファの力については知っている。
「確か攻撃を跳ね返すものだったよな?」
「正確には、一定の指向性を持った事象を発生源に返す、というものですね」
「…………まさか!?」
ライムさんの確認気味の問い対して細かい訂正を入れると、彼は一瞬考え込むように動きをとめたかと思えばハッとしたようにこちらを見た。
どうやら俺達の企図に気づいたようだ。
イリュファの力は、思念の強度さえ上回っていれば複合発露を跳ね返すことすらできるように、概念的なものであっても反射の対象となる。つまり――。
「世界に蓄積された破滅欲求を本来の持ち主、観測者へと逆流させます」
それこそが全てを覆すために俺達が取れる唯一無二の方策だった。
そして、集合的無意識の奥底で淀んでしまっている破滅欲求を低減させることによって、人形化魔物が発生する土壌そのものをなくしてしまおうという訳だ。
そうすれば新たな【ガラテア】は生まれなくなるはず。
たとえ未来にその共通認識が残っていて強制的に生み出されることがあったとしても、それは弱々しい力しか持たない存在に過ぎなくなるだろう。
人形化魔物によって世界に危機がもたらされることはなくなる。
「確かにそれができれば救世は必要なくなるだろうな。しかし……」
一度深く頷いて理解の意を示したライムさんだったが、盲目に受け入れるつもりはないようだ。これまでの説明における問題点を指摘しようと口を開く。
「破滅欲求を返された観測者達は大丈夫なのか?」
イリュファの力を利用したそれは、構造としては喇叭の人形化魔物【終末を告げる音】の滅尽・複合発露〈響く音色は本性を暴き立てる〉と似ている。
まあ、厳密には元々の持ち主に返却しているだけだから、蓄積された破滅欲求を掬い取って対象に植えつけるようなものであるそれとは訳が違うが。
いずれにしても下手をすれば、あの時のレンリ達のように破滅欲求に振り回されかねないことは事実だ。ライムさんの不安は的外れではない。
勿論、対象は全ての観測者と非常に広範囲であるため、破滅欲求は無数に分散されて濃度も大分薄くなっているはずではある。
加えて、なるべく急激な影響が出たりしないように最初は限りなく少量から始めるつもりなので、【終末を告げる音】程の即効性はないと確信しているが……。
「……混乱は、間違いなく起こるでしょう。どうにも、この世界の観測者は破滅欲求への耐性がないようですから」
怒りや憎しみに由来するような行動が増え、細かい諍いも増えていくだろう。
下手をすると国家間の敵対から、世界戦争に至ることもあるかもしれない。
観測者自らの手で終末へと転げ落ちていく可能性も否定することはできない。
それならばこれまでと変わらない方がいいとしたのがヒメ様達で、元の世界と同じ状況になることは以ての外と考えたのがショウジ・ヨスキだった。
しかし……そう。
あくまでもそれは、元の世界では当たり前のことでしかない。
「前世の俺が生きた世界は、誰もが破滅欲求を抱きながら、それでも何とか歴史を繋いできました。そんな世界に生きていたからこそ俺は、人形化魔物が時折持つ観測者を扇動するような力にも負けなかった。逆に、この世界の人達がそれに耐えられないのは、破滅欲求を抱いた傍から世界に押しつけてしまうからです」
無菌室で育てられ、本来得られるはずの抵抗力を失ったような状態と言える。
その無垢さを美しさとショウジ・ヨスキは評していたのだろうが、俺には脆く弱いようにも感じられる。
それに、荒波に揉まれて育った者が美しくないということもないはずだ。
「人というものは、そうした負の感情を己の力で制することもできるはずです。そして全ての人が己の心に打ち克てば、誰かを犠牲にしなくても世界を守れる」
各々が各々の精神で心の内に湧き出てくる破滅欲求を抑え込みながら日々生活していた元の世界を知るが故に、この世界でもそれは十分可能だと俺は信じる。
「……確かに。元々は自分自身の思念だ。世界に押しつけるのではなく、他の世界の誰かに尻拭いさせるのでもなく、自分自身で処理すべきだ」
ライムさんは俺が口にした理屈に同意するように頷いた。
しかし、もう一つ重大な問題点があることにも気づいているらしく、こちらを見る表情は依然として厳しいまま言葉を続ける。
「だが、それはイサクと彼女ありきのことだろう。お前が死ねば結局は元通り。破滅欲求は再び世界に蓄積されるようになってしまう」
「そうですね。ですが、この【ガラテア】がいる限り、俺がこの世界の誰かに殺されるようなことは起こり得ません。事故も病も俺の命を脅かすことはありません」
「確かに外的な要因についてはほとんど心配いらないだろう。だが、お前もいずれは老い、命を失う。それが人間というものだ」
その問題はどうするのかとライムさんは視線で問う。
当然、それについても解決策はある。
そう伝わるように俺は表情を和らげ、それから具体的な内容を説明した。
「――だから、問題ありません」
「…………成程な」
結果、俺の答えにライムさんは複雑な表情を浮かべながらも、この場は納得してくれたようだった。周りを見回すと他の皆も同じ様子だ。
色々と思うところはあるだろう。だが、危うい綱渡りにせよ、袋小路に入りつつある旧来の救世よりは開かれた未来がある。
今はそれだけ分かってくれればいい。
……この辺りで説明は十分だろう。
「フェリト、リクル」
「ええ」
「はいです」
そうして俺は準備を整えるために二人に呼びかけ、それから隣に寄り添うように立つイリュファを振り返った。
「さあ、イリュファ」
「はい。イサク様」
彼女と手を取り合って【ガラテア】と向かい合い、多重循環共鳴によって最大限に強化されたイリュファの真・複合発露を共に発動させる。
その力を以って世界に蓄積された破滅欲求へとその化身たる存在を通じて働きかけ、この世に生きる全ての観測者達へとそれを返還していく。
今こそ五百年続いた燔祭の終わり。世界の変革の時だ。
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