ロリコン村の転生英雄~少女化した魔物達の最強ハーレムで世界救済~

青空顎門

文字の大きさ
307 / 396
第6章 終末を告げる音と最後のピース

273 面影と新たな火種

しおりを挟む
「ウウウッ、ウウッ、ウウウウウウウッ!!」

 循環共鳴で最大限強化したアーク複合発露エクスコンプレックス万有アブソリュート凍結コンジール封緘サスペンド〉によって拘束された妹が、そこから何とか逃れようともがきながら呻き声を上げる。
 爪も翼も分厚い氷に覆われ、火炎のブレスを吐くこともできないように口もまた氷の拘束具によって完全に塞がれている。
 凍りついていないのは、竜の頭部の上半分ぐらいのものだ。
 正直、これはこれで痛々しい姿だが――。

「ごめんな。少しだけ我慢してくれ」

 ああも闇雲に暴れられては、落ち着いて言葉を投げかけることもできない。
 心を鬼にして凍結を維持する。
 そして改めて、俺は妹と正面から向き合った。

「…………よくよく見れば、母さんに似ている気がするな」

 いつだったか母さんが真・複合発露を使用し、火竜レッドドラゴンの姿となった時のことを思い出しながら呟く。
 まあ、そもそも母さん以外には魔物のドラゴンすら目にしたことがないので、比較をすることなどできないのだが……雰囲気的に何となく。
 あるいは、血の繋がりというものを気配として感じ取っているのかもしれない。
 そんな彼女へと、ゆっくりと近づいていく。

「ウウッ!! ウウウウウウウウッ!!」

 対して、一層強い呻き声と共に激しく足掻こうとする妹。
 攻撃が一切通用することなく、逆に容易く拘束してきた遥か格上の存在。
 それも見た目は鳥系統の魔物の特徴を持った異形。
 そんなものが目前に迫ってくれば、そんな反応をするのも当然だろう。
 かつて暴走していたサユキが、複合発露エクスコンプレックスを使用した状態の俺を見て恐怖したのと似たようなものだ。
 だから――。

「ほら、俺も同じだ」

 俺は〈支天神鳥セレスティアルレクス煌翼インカーネイト〉と〈裂雲雷鳥イヴェイドソア不羈サンダーボルト〉を解除し、それから大分久し振りに母さんから受け継いだ複合発露〈擬竜転身デミドラゴナイズ〉を使用した。
 それによって鳥系統の特徴は全て消え去り、代わりに竜の特徴が全身に発現していく。とは言っても、半端な力故に人型の範疇に留まった姿ではあるけれども。
 それでも、眼前で生じた俺の変化を僅かなりとも認識してくれたのだろう。
 妹の呻き声が幾分か低く小さなものになった。
 同じ親に連なる力だ。何か本能的に感じるものもあるかもしれない。

「遅くなってごめんな。寂しかったな」

 そう告げながら伸ばした俺の手の行方を、彼女のルビーの如き燃えるような赤い瞳が追いかける。今度は逃れようと暴れる様子はない。
 阻まれることなく、俺の手が妹の頭に届く。

「兄ちゃんが迎えに来たから、一緒に母さんのところに帰ろう」

 そして俺は彼女を慰撫するように優しく撫でながら、更に言葉を続けた。

「もう怖いことなんてない。兄ちゃんが守ってやるから」

 繰り返し、繰り返し。
 俺が敵ではないことが妹にしっかりと伝わるように。
 努めて穏やかな声で言いながら、何度も彼女の頭に触れる。
 すると――。

「ウ、ウウ……」

 狂乱に塗り潰されていた彼女の目から、徐々に険が取れ始めた。
 幾分か理性の色を取り戻すと共に瞳が潤み始め、その頬に一筋涙が零れる。

「だから今はお休み」
「……ウ……ん」

 やがて妹はフッと体の力を抜くと瞼を閉じた。
 同時に、巨大な竜と化していた体が急激に縮んでいく。
 自然と氷の拘束具に隙間ができ、無用の長物となったそれを解除すると、彼女の小さくなった体が重力に引かれて落下を始めた。
 どうやら意識を失ったようだ。

「おっと」

 すぐさま、事前に発動しておいた飛行の祈念魔法を制御して素早く彼女の下に入り込み、その華奢な体を受け止める。
 改めて腕の中に視線を落とすと、真紅の長い髪の襤褸衣を纏った少女の姿。
 そのあどけない顔立ちには、しかし、母さんの面影が間違いなく見て取れる。
 竜の姿の時に感じた印象も、勘違いではなかったのだろう。

「……よかった」

 ようやく安心できたと言うような、穏やかな妹の寝顔にホッと一息つく。
 とりあえず当初の目的は果たすことができた。それは間違いない。
 母さんにも顔向けができる。

「イリュファ」
「はい」

 このまま抱きかかえていてあげたいところだが、この状態は〈裂雲雷鳥・不羈〉での移動には難がある。
 だから、影から出てきた手に妹を託し、一先ずその中にいて貰うことにする。
 暴走状態も収まったようだし、問題はないはずだ。
 循環共鳴についても、そろそろ解除するとしよう。

「フェリト、助かった。ありがとう」
「気にしないで。……とは言え、少し疲れたわ」
「ああ、ゆっくり休んでくれ」

 そうして最近は酷使してばかりの彼女を労わってから。

「…………さて」

 この地でやり残したことを済ますために一旦地上へと降下していく。
 念のため、再度〈支天神鳥・煌翼〉と〈裂雲雷鳥・不羈〉を使用しながら。
 まあ、やり残しと言うか、ここに来て新たに目の当たりにした問題だが。

「それにしても、クピドの金の矢とはな」

 地面に降り立った地点から、フレギウス王国の王ジーグの方に目を向けて呟く。
 彼は少し離れたところで、氷漬けの状態で頭から大地に突き刺さっていた。

「まあ、まだ本当にそうなのかどうか分かりませんが」
「分かってる。けど、もしかするとそこに答えがあるんじゃないか?」

 イリュファの言葉にそう応じながら視線を戻した俺の正面には、ジーグが異形と化す際に入った配下の一人の影。
 祈念魔法で干渉すれば、その中に押し入ることもできるはずだ。
 そして実際に。手がかりがないものかと、そこに入って探索してみる。
 しかし――。

「…………何もありませんね」
「そう、だな。矢の刺さった少女化魔物ロリータがいるかと思ったけど」
「もしかすると、あれは影を利用した転移だったのかもしれません。影の中に空間を作って出入りしていた訳ではなく」
「……成程。けど、そうだとすると確証は得られないな」

 影を介した転移というのが正しければ、恐らくはフレギウス王国の王都、王政なら当然存在するだろう王城で何かしらの処置を行ったに違いない。
 さすがにそれでは、俺単独では騒ぎを起こさずに証拠を探すことはできない。

「この件は、一旦持ち帰った方がいいかもしれないな」

 ジーグの配下の影から出て、ホウゲツの方角の空を見上げながら嘆息する。

「主様。その前に、ジーグとかいう男の影を探るのは如何でしょうか」
「アイツの影か……そうだな」

 アスカの提案に、再び氷漬けの彼を見やる。
 まあ、減るものではないし、やっておいて損はないだろう。
 そう結論して逆様になった彼の氷に近づき、その影に入り込む。
 すると……。

「これは、矢か」

 三桁はあろうかという数の矢が、一定の数ごとに束ねられて置かれていた。

「クピドの金の矢の複製品でしょうか」

 さすがにオリジナルのそれそのもの、第六位階の祈望之器ディザイア―ドがこれだけ纏まった数、存在している訳がない。
 イリュファが口にした通りのはずだ。
 しかし、複製品は基本的に位階が低下する。
 真性少女契約ロリータコントラクトに干渉することなどできないはずだが……。

「とりあえず、全て拝借していくとしよう」

 アマラさん辺りに調べて貰えば真実は分かるはず。
 いずれにせよ、もし少女化魔物人外ロリの尊厳を傷つけるものなら処分するに限る。
 存在しないはずの祈望之器なら、そうしても問題にはできないはずだ。
 予想が外れて何の変哲もない矢だったなら返却しに来ればいい。

「でも、何でこんなとこに入っていたのです?」
「…………危険な道具だからな。王族が直接管理しているのかもしれない」

 リクルの疑問に、少し考えてから答える。
 強大な少女化魔物の真性少女契約を奪って王位簒奪、とかもあり得るだろう。
 理不尽な効果だけに、全て手元に置いておきたいと思っても不思議じゃない。

「そんなリスクを負うなら、力を分散させないで独り占めした方がいいです。結局は自分一人に集めてましたし、です」
「まあ、何だかんだ言って、人間の脳味噌は一つだけだからな。使える力を増やしても扱い切れなくなりかねない。持て余すだけだ。それに……」

 氷漬けになったジーグの配下達を一通り見回してから続ける。

「軍隊としては一人に力を集積させるよりも、兵士一人一人に一定の力を持たせた方がいい面もあるんだろう」

 万が一、集積させた一人が討たれでもしたら、その時点で詰みだ。
 真性少女契約の場合、少女化魔物も道連れなのだから。
 全部乗せ状態のジーグも、まあ、思ったよりは遥かに強かったのは確かだが、もしもレンリと一対一で戦えば七対三ぐらいでレンリが勝つだろう。
 余りリスクに見合うようには思えない。
 数の力で対抗できない個体を相手取る際の切り札、というのがいいところだ。
 ……正に今回のような状況だな。負けたけど。

「いずれにしても、真性少女契約を移し替える荒業を前提とした手法なのは間違いない。状況証拠は十分。後は、あの矢から何が出てくるか」

 そこら辺はもう、その筋の人に任せるべきだ。
 だから――。

「目的は達したし、情報も得た。一先ずホウゲツに帰ろう」

 俺は意図せず見つけてしまった新たな火種と共に、救い出した妹を連れてフレギウス王国の地を去ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転生したら『塔』の主になった。ポイントでガチャ回してフロア増やしたら、いつの間にか世界最強のダンジョンになってた

季未
ファンタジー
【書き溜めがなくなるまで高頻度更新!♡٩( 'ω' )و】 気がつくとダンジョンコア(石)になっていた。 手持ちの資源はわずか。迫りくる野生の魔物やコアを狙う冒険者たち。 頼れるのは怪しげな「魔物ガチャ」だけ!? 傷ついた少女・リナを保護したことをきっかけにダンジョンは急速に進化を始める。 罠を張り巡らせた塔を建築し、資源を集め、強力な魔物をガチャで召喚! 人間と魔族、どこの勢力にも属さない独立した「最強のダンジョン」が今、産声を上げる!

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

処理中です...