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第5章 治癒の少女化魔物と破滅欲求の根源
232 全力遊戯
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浜辺での遊びと言えば、ビーチバレーが一つの定番として挙げられるだろう。
それはどうやら、この異世界においても同じらしい。
ダンの口から真っ先に出てきたのも正にそれだった。
と言う訳で、早速昨日買ってきたボールを影の中から取り出し、多少練習した後でチームに分かれて軽く試合を始めたのだが……。
「あんちゃん、ごめんなさい」
序盤も序盤でビーチバレーにのめり込んでしまったダンが、全力スパイクによって割と硬いボールを破裂させてしまっていた。
まあ、常時身体強化している俺達が本気を出せば、そうなるのは当然のことだ。
なので事前に注意を促してはおいたのだが、加減が利かなかったらしい。
しかし、それも仕方のないことだろう。
レジャーであれスポーツならば、体を思い切り動かすことに爽快感を抱くもの。
力の加減を主題にした遊びならともかく、窮屈な状態では楽しみにくい。
上手い人がレベルを合わせて皆で楽しむとか、そういうのとは全く別の話だし。
実際、幼い女の子のラクラちゃんを含め、複合発露なしならば祈念魔法による身体強化のおかげで単純な肉体的スペックは同程度。
いい感じに拮抗すると、力がこもってしまうのも当然というものだ。
「折角買ってくれたボール、壊しちゃった」
破裂して無惨な状態になったボールを手に、落ち込んだようにダンが言う。
正直、ある程度は予期できていたことなので、とめなかった方もとめなかった方という感じではあるけれども、いい教訓として利用しておくことにする。
「……そうだな。もしダンが将来複合発露や祈念魔法を扱う職業につくのなら、どんな状況でも冷静に自分の力をコントロールできるようにならないといけない。そうじゃないと危険だからな」
「うん……」
諭すように告げた俺の言葉に、シュンとなって俯くダン。
同じぐらい熱中しつつあったセト達も、若干落ち込んだように視線を下げる。
しかし、素直で賢明な子供達には、それだけで十分伝わるだろう。
だから俺は、意識的に厳しくしていた表情を和らげ、ダンの肩に手を置いた。
「けど、今はただの遊びだから、余り気にするな。ボールだって予備があるし、それに、誰かが怪我しそうになるような話でもないからな」
祈望之器でもない単なるボールを破裂させた程度で怪我をするようなら、むしろ身体強化が甘いと厳しく説教しなければならないぐらいだ。
子供とは言え、彼らの実力ならば逆に怪我などしようがないレベルなのだから。
「でも、またボールを壊したら……」
「じゃあ、道具を使わず、水かけ合戦でもしようか」
「水かけ合戦?」
軽い口調で告げた俺に、ダンは顔を上げて繰り返しながら首を傾げる。
「雪合戦みたいなの?」
更に彼はちょっと気を取り直したように、そう問い気味に続けた。
冬になれば雪の降るヨスキ村では、うまい具合に年の近い子供が生まれていれば雪合戦は自然と行われる。弟達も皆、当然のように大好きだ。
セトとトバルも、少し期待しているような顔に変化している。
「ああ。互いに祈念魔法で一定以上の大きさの水を撃って、当たったら負け。水は第一位階限定、身体強化は必ず第二位階以上を保つ。相手には触れない。これなら怪我もしないし、壊れる道具もないから全力で動ける」
何より、遊びであると同時に丁度いい鍛錬にもなる。
当たれば水を被ったのと同じような状態になるが、それは水着を着た夏の浜辺ならば逆に面白さに繋がり、鍛錬という側面を完全に覆い隠してくれることだろう。
「後は、水を撃つ以外の攻撃は禁止。それ以外は何でもアリ。どうだ?」
「やる!」
元気を取り戻し、前のめりになって言うダン。
早速チーム分けをする。
チームAはセト、ダン、ラクラちゃん、リクル、ルトアさん、ライムさん、そしてパレットさんの七人。
チームBは俺、トバル、ヘスさん、フェリト、レンリ、アスカ、そしてルシネさんの七人。七対七だ。
残るラハさんは真・複合発露〈制海神龍・轟渦〉によってリヴァイアサンと化し、巨大な体で海を自由に泳いでいる。
まあ、彼女は放置でいい。
「水の根源に我は希う。第一の無垢なる力を示せ。〈清水〉」
そして試合を開始すると、すぐに子供達は祈念魔法で水の球を作って撃ち合いを始めようとする。しかし、それは少々素直過ぎる。
俺が口にしたルールから、他の面々は俺の意図を理解していたようだ。
「土の根源に我は希う。『成形』『硬化』『維持』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈地母〉之〈防壁〉」
互いに砂浜に壁を生み出し、水の球を防ぐ。
「風の根源に我は希う。『纏繞』『収束』『制御』『維持』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈天父〉之〈天翔〉」
同時に一部は空へと上がり、そこから爆撃するように水を落としていく。
一瞬にして浜辺は嵐のように成り果てる。
遊びという認識が先立っていたからか、余りに素直に臨み過ぎて展開の移り変わりに追いつけなかったらしい弟達は、この時点で両陣営共に退場。
ついでに本来戦闘職ではないヘスさんも巻き込まれてアウト。
残るは俺達とライムさん達のみ。
「もっと柔軟に戦わないと駄目だぞ。水の根源に我は希う。『成形』『維持』の概念を伴い、第一の力を示せ。〈清水〉之〈液壁〉」
ルールを提示した者として当然この状況を想定して空にいた俺は、そこからセト達に向けて言うと共に、両手の少し先辺りに拳大の水の塊を固定させた。
それと同時に、同じく空にいる敵陣に突っ込む。
「戦い方も複合発露も発想力次第だからな。水の根源に我は希う。『成形』『維持』の概念を伴い、第一の力を示せ。〈清水〉之〈流鞭〉」
対してライムさんもまた弟達に言ってから、水の鞭を作り出して応戦してくる。
が、俺はそれを水の塊で殴りつけるようにして軌道を逸らし、雷速を以って懐に入り込んだ。そして、そのまま彼に水を叩きつける。
「……さすがは、イサクだな」
敗北を認め、水に濡れたイケメン状態で地上に降下しながら呟くライムさん。
とは言え、ルシネさんとの真・複合発露による認識操作は攻撃判定でルール違反となるため、最も脅威となる攻撃が制限されてしまっている。
それでは仕方がないだろう。
パレットさんとの真・複合発露による転移は使用可能だが――。
「甘いっ!」
背後から彼女に奇襲させるために、使わずにいたようだ。
しかし、俺は風の探知によって正確に彼女の位置を把握し、振り向かないまま撃ち放った水の球を命中させた。
そこへ更に続けて、最初から波状攻撃を作戦としていたのか、ルトアさんが自らの真・複合発露を用いて雷の如く一気に接近してくる。
臆病者を自称する彼女だが、恐怖なく自らの力を使えれば厄介極まりない。
この遊びにおいては、速さは大きなアドバンテージとなる。
もっとも俺も同じ真・複合発露を使えるのでスピードは同等だし、技の豊富さや戦闘経験という点ではこちらに分がある。
なので、うまく誘導して進行方向に水の壁を生成。
自分から突っ込ませて水を被せ、びしょびしょに。
文字通り、水も滴るいい女状態だ。
「ま、負けました。けど、チームはまだ負けてないですよ!」
ちょっと恥ずかしそうにしながら、敵チームらしく振る舞って言うルトアさん。
その言葉を受けて自陣を振り返ると、いつの間にか俺のチームの他のメンバーはやられてしまっていた。
その相手は……リクル。彼女一人にレンリやアスカまで敗北していた。
常々戦闘面で俺の役に立てないことを気にしているリクルだが、その実、ポテンシャルは凄まじいものがある。
何せ彼女は、俺が使用できる複合発露は全て使いこなせるのだ。
あくまでも第五位階だから第六位階の戦いに参加できないだけで、非接触かつ当てたら勝ちというこのゲーム方式ならば彼女の力は猛威を振るう。
真性少女契約を結ぶことができたら、俺達の中で二番目の戦力になるだろう。
……しかし、本当に。本人も望んでくれているのに何故できないのやら。
「あうぅ、負けちゃいました、です」
ともあれ、結局のところ完全上位互換状態にある俺には勝つことができず、最初の試合はこちらのチームの勝利に終わった。
「あんちゃん、そういうのアリなの?」
「最初に言っただろ? ルールで禁止したこと以外は何でもアリだって。遊ぶにしたって全力で考えないと、また最初で脱落するぞ?」
ちょっと納得の行っていない感じになっていた子供達を諭し、それから一先ず過剰戦力気味な俺とリクルは外れて次の試合に移行する。
要領が分かり、うまく立ち回ることができるようになった弟達のおかげで一試合一試合が長くなっていく。
いい感じに熱中しているようだ。
楽しそうな弟達。その姿を微笑ましく見守る。
そんな俺の前で彼らは浜辺で日が暮れるまで全力で遊び続け……。
子供達は、夕食の後には疲れ果ててすぐに眠ってしまったのだった。
それはどうやら、この異世界においても同じらしい。
ダンの口から真っ先に出てきたのも正にそれだった。
と言う訳で、早速昨日買ってきたボールを影の中から取り出し、多少練習した後でチームに分かれて軽く試合を始めたのだが……。
「あんちゃん、ごめんなさい」
序盤も序盤でビーチバレーにのめり込んでしまったダンが、全力スパイクによって割と硬いボールを破裂させてしまっていた。
まあ、常時身体強化している俺達が本気を出せば、そうなるのは当然のことだ。
なので事前に注意を促してはおいたのだが、加減が利かなかったらしい。
しかし、それも仕方のないことだろう。
レジャーであれスポーツならば、体を思い切り動かすことに爽快感を抱くもの。
力の加減を主題にした遊びならともかく、窮屈な状態では楽しみにくい。
上手い人がレベルを合わせて皆で楽しむとか、そういうのとは全く別の話だし。
実際、幼い女の子のラクラちゃんを含め、複合発露なしならば祈念魔法による身体強化のおかげで単純な肉体的スペックは同程度。
いい感じに拮抗すると、力がこもってしまうのも当然というものだ。
「折角買ってくれたボール、壊しちゃった」
破裂して無惨な状態になったボールを手に、落ち込んだようにダンが言う。
正直、ある程度は予期できていたことなので、とめなかった方もとめなかった方という感じではあるけれども、いい教訓として利用しておくことにする。
「……そうだな。もしダンが将来複合発露や祈念魔法を扱う職業につくのなら、どんな状況でも冷静に自分の力をコントロールできるようにならないといけない。そうじゃないと危険だからな」
「うん……」
諭すように告げた俺の言葉に、シュンとなって俯くダン。
同じぐらい熱中しつつあったセト達も、若干落ち込んだように視線を下げる。
しかし、素直で賢明な子供達には、それだけで十分伝わるだろう。
だから俺は、意識的に厳しくしていた表情を和らげ、ダンの肩に手を置いた。
「けど、今はただの遊びだから、余り気にするな。ボールだって予備があるし、それに、誰かが怪我しそうになるような話でもないからな」
祈望之器でもない単なるボールを破裂させた程度で怪我をするようなら、むしろ身体強化が甘いと厳しく説教しなければならないぐらいだ。
子供とは言え、彼らの実力ならば逆に怪我などしようがないレベルなのだから。
「でも、またボールを壊したら……」
「じゃあ、道具を使わず、水かけ合戦でもしようか」
「水かけ合戦?」
軽い口調で告げた俺に、ダンは顔を上げて繰り返しながら首を傾げる。
「雪合戦みたいなの?」
更に彼はちょっと気を取り直したように、そう問い気味に続けた。
冬になれば雪の降るヨスキ村では、うまい具合に年の近い子供が生まれていれば雪合戦は自然と行われる。弟達も皆、当然のように大好きだ。
セトとトバルも、少し期待しているような顔に変化している。
「ああ。互いに祈念魔法で一定以上の大きさの水を撃って、当たったら負け。水は第一位階限定、身体強化は必ず第二位階以上を保つ。相手には触れない。これなら怪我もしないし、壊れる道具もないから全力で動ける」
何より、遊びであると同時に丁度いい鍛錬にもなる。
当たれば水を被ったのと同じような状態になるが、それは水着を着た夏の浜辺ならば逆に面白さに繋がり、鍛錬という側面を完全に覆い隠してくれることだろう。
「後は、水を撃つ以外の攻撃は禁止。それ以外は何でもアリ。どうだ?」
「やる!」
元気を取り戻し、前のめりになって言うダン。
早速チーム分けをする。
チームAはセト、ダン、ラクラちゃん、リクル、ルトアさん、ライムさん、そしてパレットさんの七人。
チームBは俺、トバル、ヘスさん、フェリト、レンリ、アスカ、そしてルシネさんの七人。七対七だ。
残るラハさんは真・複合発露〈制海神龍・轟渦〉によってリヴァイアサンと化し、巨大な体で海を自由に泳いでいる。
まあ、彼女は放置でいい。
「水の根源に我は希う。第一の無垢なる力を示せ。〈清水〉」
そして試合を開始すると、すぐに子供達は祈念魔法で水の球を作って撃ち合いを始めようとする。しかし、それは少々素直過ぎる。
俺が口にしたルールから、他の面々は俺の意図を理解していたようだ。
「土の根源に我は希う。『成形』『硬化』『維持』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈地母〉之〈防壁〉」
互いに砂浜に壁を生み出し、水の球を防ぐ。
「風の根源に我は希う。『纏繞』『収束』『制御』『維持』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈天父〉之〈天翔〉」
同時に一部は空へと上がり、そこから爆撃するように水を落としていく。
一瞬にして浜辺は嵐のように成り果てる。
遊びという認識が先立っていたからか、余りに素直に臨み過ぎて展開の移り変わりに追いつけなかったらしい弟達は、この時点で両陣営共に退場。
ついでに本来戦闘職ではないヘスさんも巻き込まれてアウト。
残るは俺達とライムさん達のみ。
「もっと柔軟に戦わないと駄目だぞ。水の根源に我は希う。『成形』『維持』の概念を伴い、第一の力を示せ。〈清水〉之〈液壁〉」
ルールを提示した者として当然この状況を想定して空にいた俺は、そこからセト達に向けて言うと共に、両手の少し先辺りに拳大の水の塊を固定させた。
それと同時に、同じく空にいる敵陣に突っ込む。
「戦い方も複合発露も発想力次第だからな。水の根源に我は希う。『成形』『維持』の概念を伴い、第一の力を示せ。〈清水〉之〈流鞭〉」
対してライムさんもまた弟達に言ってから、水の鞭を作り出して応戦してくる。
が、俺はそれを水の塊で殴りつけるようにして軌道を逸らし、雷速を以って懐に入り込んだ。そして、そのまま彼に水を叩きつける。
「……さすがは、イサクだな」
敗北を認め、水に濡れたイケメン状態で地上に降下しながら呟くライムさん。
とは言え、ルシネさんとの真・複合発露による認識操作は攻撃判定でルール違反となるため、最も脅威となる攻撃が制限されてしまっている。
それでは仕方がないだろう。
パレットさんとの真・複合発露による転移は使用可能だが――。
「甘いっ!」
背後から彼女に奇襲させるために、使わずにいたようだ。
しかし、俺は風の探知によって正確に彼女の位置を把握し、振り向かないまま撃ち放った水の球を命中させた。
そこへ更に続けて、最初から波状攻撃を作戦としていたのか、ルトアさんが自らの真・複合発露を用いて雷の如く一気に接近してくる。
臆病者を自称する彼女だが、恐怖なく自らの力を使えれば厄介極まりない。
この遊びにおいては、速さは大きなアドバンテージとなる。
もっとも俺も同じ真・複合発露を使えるのでスピードは同等だし、技の豊富さや戦闘経験という点ではこちらに分がある。
なので、うまく誘導して進行方向に水の壁を生成。
自分から突っ込ませて水を被せ、びしょびしょに。
文字通り、水も滴るいい女状態だ。
「ま、負けました。けど、チームはまだ負けてないですよ!」
ちょっと恥ずかしそうにしながら、敵チームらしく振る舞って言うルトアさん。
その言葉を受けて自陣を振り返ると、いつの間にか俺のチームの他のメンバーはやられてしまっていた。
その相手は……リクル。彼女一人にレンリやアスカまで敗北していた。
常々戦闘面で俺の役に立てないことを気にしているリクルだが、その実、ポテンシャルは凄まじいものがある。
何せ彼女は、俺が使用できる複合発露は全て使いこなせるのだ。
あくまでも第五位階だから第六位階の戦いに参加できないだけで、非接触かつ当てたら勝ちというこのゲーム方式ならば彼女の力は猛威を振るう。
真性少女契約を結ぶことができたら、俺達の中で二番目の戦力になるだろう。
……しかし、本当に。本人も望んでくれているのに何故できないのやら。
「あうぅ、負けちゃいました、です」
ともあれ、結局のところ完全上位互換状態にある俺には勝つことができず、最初の試合はこちらのチームの勝利に終わった。
「あんちゃん、そういうのアリなの?」
「最初に言っただろ? ルールで禁止したこと以外は何でもアリだって。遊ぶにしたって全力で考えないと、また最初で脱落するぞ?」
ちょっと納得の行っていない感じになっていた子供達を諭し、それから一先ず過剰戦力気味な俺とリクルは外れて次の試合に移行する。
要領が分かり、うまく立ち回ることができるようになった弟達のおかげで一試合一試合が長くなっていく。
いい感じに熱中しているようだ。
楽しそうな弟達。その姿を微笑ましく見守る。
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