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第3章 絡み合う道
156 色々な祈望之器の複製品
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「さて、今日の用向きは貴様の武器と小僧共の社会科見学、じゃったか」
「え、ええ。そうですけど――」
やや低く掠れている、横文字で言うなればハスキーな声で確認してくるアマラさんに対して、俺は若干戸惑いの色を声に滲ませながら口を開いた。
彼女の酷く世間擦れしたような目つきの悪さやベリーショートの髪、やや着崩した袴という姿に妙な凄味があるからだけではない。
今も彼女の傍に控えている青銅製の人形が気になるからだ。
微妙に俺を盾にしている感のあるセト達も、後ろでそれを警戒している。
とにもかくにも、その正体を明らかにしないと意識が散って仕方がない。
「す、すみません。あの、これは?」
「ん? ああ、こいつか。こいつは祈望之器ターロスの複製改良品じゃ。銘はない」
「ターロス?」
「とある島を守る逸話を持つ自動人形じゃな。小間使いとして使えないものかとそれを複製したんじゃが……現存するのはこれ一つのみじゃ」
「一つだけ、ですか?」
確か、複製を行うに当たって数に制限はなかったはずだ。
相応の質量を持つ材料か、あるいは自分自身のカロリー辺りを消費しさえすれば。
なのに何故、この便利そうな祈望之器が世に出ていないのだろうか。
聞いた限り、もうちょっと頑張ればメイドロボとかにもなりそうなのに。
そう内心首を傾げていると――。
「元々は融通の利かぬ自律兵器。絶妙なバランスの上に成り立っていたらしく、その用途を変更した結果、とんでもない不具合が出てしまってな。そこから三百年以上調整に調整を重ね、様々な情報を仕込んでようやく多少は使いものになったかという程度なのじゃ。正直、いくら世界最高の複製師たるワシでも二度と同じことはしたくない」
言外の疑問を察したように、嫌そうな顔をして厭わしげに言うアマラさん。
恐らく。複製による改良は、プログラムの書き換えに似ているのだろう。
元々の内容が複雑であればある程、ちょっとした変更があちらこちらに影響を出す。
特に自律兵器のそれなど間違いなく継ぎ足しだらけの違法建築染みたものだろうし、どう考えても軽々しく弄れるものではない。
バグ塗れのプログラムを一つ一つ修正していく拷問のような作業を経て、それらしく来客対応できるようにしただけでも、彼女の忍耐力と複製師としての腕が窺い知れる。
国一番どころか世界最高を自称するのも理解できようというものだ。
武器の製作を依頼する相手としても、社会科見学の対象としても最上だろう。
「まあ、一種の番犬としても役立つから廃棄はせずに使っておるがな」
「番犬……?」
「おうよ。見ての通り、こいつは人や少女化魔物とは似て非なる人型の存在。しかも言葉らしき音を出せる。となれば、真っ先に人形化魔物を思い起こすじゃろう。奴らは多くの者にとって恐怖の対象以外の何ものでもない」
成程。となると、入口でセト達が絶句したのは初めて目の当たりにする異質な存在だからというだけでなく、そうした理由もあったのかもしれない。
俺の場合は前世の記憶の影響か、恐怖に由来した反応とはならなかったが。
その辺、下手をすると弟達に違和感を持たれかねなかったかと軽く冷や汗をかくが、困惑から近しい言動にはなっていたはずだから問題はないだろう。
しかし――。
「そんなのを番犬代わりにして大丈夫なんですか?」
「何、この工房にトリリス達の紹介もなく来る者なぞ、賊以外にはおらん。問題など一つもないわ。……もっとも、前に賊が来たのは十年以上前じゃがな。こいつを見て、腰を抜かして這って逃げておったわ」
記憶の中にあるその姿が滑稽だったのか、アマラさんは「かかか」と笑う。
俺達は賊ではないし、ちゃんとトリリス様を通じて約束を取りつけているのだが……。
「別に俺達の出迎えまで任せなくてもいいのでは?」
「しばらく待機状態のままじゃったからな。メンテナンスという奴じゃ。後はちょっとしたサプライズ。それから、ワシの腕を示すのにも丁度よかったじゃろう? これで逃げ回るような奴には期待もできんしな」
俺達の反応を面白がっているかのように、ニヤリと口の端を吊り上げるアマラさん。
とりあえず、彼女がトリリス様と似た系統の厄介な性格であることは理解した。
飛び抜けて優秀な者は、どこか性格が破綻しているものなのだろう。
「まあ、こいつのことはもういいじゃろう。おい、下がっておれ」
「畏マリマシタ」
そうしてアマラさんの指示に従い、重々しい足音を鳴らして部屋から出ていく名もない人形。後ろから改めて見ても動作は滑らかだ。本当によくできている。
これがほぼプログラム的な部分の限度と考えると非常に惜しい。
更に高度なものを、となると機械技術方面の発達を待つ必要があるのかもしれない。
「……さて、まずは軽く講釈でも垂れるとしようかのう。複製師という職がどれだけ社会に貢献しているのか、まだまだあやふやじゃろう小僧共もおることじゃしな」
やがて人形の姿が完全に見えなくなったところでアマラさんはそう言いながら立ち上がり、ついてくるように髪の毛で隠れていない目だけで示す。
この奥の部屋からどこへ行くのだろうかと思っていると、彼女は後方の壁にかけてあった価値はそんなになさそうな掛け軸を雑にどかした。
すると、隠し通路が現れ、地下へと続く階段が目に映る。
「おお」
からくり屋敷のような構造にちょっと興奮して前のめりになり、それからハッとして誤魔化し気味に咳払いしながら弟達を振り返る。
つい童心に帰ってしまったと恥ずかしくなるが……彼らは、俺の反応を気にも留めず目を見開いて驚いていた。初めて目の当たりにしたかのようだ。
いや、実際そうした映像作品がある訳でもなし、初見で間違いないのだろう。
ニッチな娯楽小説とかにはあるかもしれないが、まだ彼らは十二歳だしな。
「ほれ、ついてこい」
アマラさんはそうした俺達の姿に満足げな表情を浮かべつつもそう促し、隠し通路の先へと歩みを進めていく。
「祈望之器は複製師によって複製され、様々な場面で使用されておる。それこそ日常生活のあちらこちらでな」
更に言葉を続けながら階段を下りていく彼女に続くと、頑丈そうな金属製の扉。
開いた中は、武器やら防具やら調度品やら、様々な道具が置かれた広い空間だった。
一方の壁に木製の扉があり、まだ別の部屋があるようだが……。
「日常生活で使う祈望之器と言えば、どんなものがある?」
アマラさんはその中央で立ち止まると俺達を振り返り、特にセト達に問いかけた。
社会科見学の対応を自らしてくれるらしい。
性格に難があるところもあるが、後進を導くべき先達としての意識はあるようだ。
「ええと……バスとか?」
「列車もそうだよな」
「うむ。……まあ、もう少し身近なところを答えて欲しかったが、よいじゃろう」
トバルとダンから出てきた答えに、彼女は少し微妙な顔をしてから続ける。
「街の移動手段たるバス、街と街を繋ぐ列車。各々正式名称はメルカバス、メルカトレインじゃが、それらは元々メルカバと呼ばれる戦車から派生したものじゃ」
「戦車?」
「正確には古代戦車じゃな。神やら天使やらが乗ると言われておる。それを改良して多人数が乗れる形状とし、適度に速度調整が効くようにしたものが、メルカバスやメルカトレインじゃ。形状は道路やレールに沿って規格化されておる」
あれも割と苦労したのじゃぞ、と軽く嘆息するアマラさん。
どうやら彼女も開発に携わっていたようだ。
「他に、もっと身近なところで知っているものはないかの?」
「うーん……乗り物以外だと、ちょっと……」
考えていたものをトバルとダンに言われてしまったのか、困ったように唸るセト。
「うーむ。ヨスキ村の小僧共は、もう少し世の常識にも目を向ける必要があるな。じゃが、そこの娘は思いつくものがあるじゃろう?」
「は、はい。えっと、その、水とか食べものの一部を祈望之器で生成してるとか聞いたことがあります」
「そうじゃ。まずヒュギエイアの杯というものを複製改良した水の杯を多数用いることで、大きな街の上下水道は構築されておる。食料の方は、食いものを生成する逸話を持つ祈望之器はいくつかあるが、世界で最も複製されておるのはダグザの大釜じゃな」
「でも、確か、何かを生成する祈望之器は、別のものを同程度消費しないといけないんじゃなかったですか?」
「その通り。水の杯の場合は、基本生水を消費して飲料水を作っておる。都市では、それに圧力をかける機能を追加することで各家庭に供給できるようにしておるな」
どうやら、江戸時代の水道のように高低差を利用している訳ではないようだ。
その辺の工夫も複製師の腕の見せどころ、というところか。
「ちなみに生成のプロセスを利用して下水を浄化することも可能じゃ。食料の原料はそれこそ土やら草やら色々じゃな。ただ、感情的な問題で汚物は使用しておらんな」
「……そうなると、農業とか畜産業とかってないんですか?」
祈望之器の複製品だけで賄えそうだが、と考えて横から尋ねる。
「いや、ある意味文化保護的に一定の規模で継続しておる。不滅の逸話でもない限りは祈望之器と言えど壊れるからな。万に一つ。現存する全てが使用不可能になってしまった時に自給できないでは洒落にならん」
アマラさんは俺の問いにそう答え、更に「特にそうした日常生活な不可欠な複製品は壊れ易いが故、複製師の職もなくならん訳だ」とつけ加えた。
確かに、祈望之器が存在する限り、安泰な職業と言えるだろう。
トバルに跡を継いで欲しいと彼の両親が願うのも分かるな。
「さて、余り立ち話ばかりしていても飽きるじゃろう。実際に祈望之器を複製し、改良しておるところを見せてやるとしようではないか」
それから。アマラさんはそこで一つ話を区切ると、その部屋にあった木製の扉を目線で示し、そちらへと向かった。
「え、ええ。そうですけど――」
やや低く掠れている、横文字で言うなればハスキーな声で確認してくるアマラさんに対して、俺は若干戸惑いの色を声に滲ませながら口を開いた。
彼女の酷く世間擦れしたような目つきの悪さやベリーショートの髪、やや着崩した袴という姿に妙な凄味があるからだけではない。
今も彼女の傍に控えている青銅製の人形が気になるからだ。
微妙に俺を盾にしている感のあるセト達も、後ろでそれを警戒している。
とにもかくにも、その正体を明らかにしないと意識が散って仕方がない。
「す、すみません。あの、これは?」
「ん? ああ、こいつか。こいつは祈望之器ターロスの複製改良品じゃ。銘はない」
「ターロス?」
「とある島を守る逸話を持つ自動人形じゃな。小間使いとして使えないものかとそれを複製したんじゃが……現存するのはこれ一つのみじゃ」
「一つだけ、ですか?」
確か、複製を行うに当たって数に制限はなかったはずだ。
相応の質量を持つ材料か、あるいは自分自身のカロリー辺りを消費しさえすれば。
なのに何故、この便利そうな祈望之器が世に出ていないのだろうか。
聞いた限り、もうちょっと頑張ればメイドロボとかにもなりそうなのに。
そう内心首を傾げていると――。
「元々は融通の利かぬ自律兵器。絶妙なバランスの上に成り立っていたらしく、その用途を変更した結果、とんでもない不具合が出てしまってな。そこから三百年以上調整に調整を重ね、様々な情報を仕込んでようやく多少は使いものになったかという程度なのじゃ。正直、いくら世界最高の複製師たるワシでも二度と同じことはしたくない」
言外の疑問を察したように、嫌そうな顔をして厭わしげに言うアマラさん。
恐らく。複製による改良は、プログラムの書き換えに似ているのだろう。
元々の内容が複雑であればある程、ちょっとした変更があちらこちらに影響を出す。
特に自律兵器のそれなど間違いなく継ぎ足しだらけの違法建築染みたものだろうし、どう考えても軽々しく弄れるものではない。
バグ塗れのプログラムを一つ一つ修正していく拷問のような作業を経て、それらしく来客対応できるようにしただけでも、彼女の忍耐力と複製師としての腕が窺い知れる。
国一番どころか世界最高を自称するのも理解できようというものだ。
武器の製作を依頼する相手としても、社会科見学の対象としても最上だろう。
「まあ、一種の番犬としても役立つから廃棄はせずに使っておるがな」
「番犬……?」
「おうよ。見ての通り、こいつは人や少女化魔物とは似て非なる人型の存在。しかも言葉らしき音を出せる。となれば、真っ先に人形化魔物を思い起こすじゃろう。奴らは多くの者にとって恐怖の対象以外の何ものでもない」
成程。となると、入口でセト達が絶句したのは初めて目の当たりにする異質な存在だからというだけでなく、そうした理由もあったのかもしれない。
俺の場合は前世の記憶の影響か、恐怖に由来した反応とはならなかったが。
その辺、下手をすると弟達に違和感を持たれかねなかったかと軽く冷や汗をかくが、困惑から近しい言動にはなっていたはずだから問題はないだろう。
しかし――。
「そんなのを番犬代わりにして大丈夫なんですか?」
「何、この工房にトリリス達の紹介もなく来る者なぞ、賊以外にはおらん。問題など一つもないわ。……もっとも、前に賊が来たのは十年以上前じゃがな。こいつを見て、腰を抜かして這って逃げておったわ」
記憶の中にあるその姿が滑稽だったのか、アマラさんは「かかか」と笑う。
俺達は賊ではないし、ちゃんとトリリス様を通じて約束を取りつけているのだが……。
「別に俺達の出迎えまで任せなくてもいいのでは?」
「しばらく待機状態のままじゃったからな。メンテナンスという奴じゃ。後はちょっとしたサプライズ。それから、ワシの腕を示すのにも丁度よかったじゃろう? これで逃げ回るような奴には期待もできんしな」
俺達の反応を面白がっているかのように、ニヤリと口の端を吊り上げるアマラさん。
とりあえず、彼女がトリリス様と似た系統の厄介な性格であることは理解した。
飛び抜けて優秀な者は、どこか性格が破綻しているものなのだろう。
「まあ、こいつのことはもういいじゃろう。おい、下がっておれ」
「畏マリマシタ」
そうしてアマラさんの指示に従い、重々しい足音を鳴らして部屋から出ていく名もない人形。後ろから改めて見ても動作は滑らかだ。本当によくできている。
これがほぼプログラム的な部分の限度と考えると非常に惜しい。
更に高度なものを、となると機械技術方面の発達を待つ必要があるのかもしれない。
「……さて、まずは軽く講釈でも垂れるとしようかのう。複製師という職がどれだけ社会に貢献しているのか、まだまだあやふやじゃろう小僧共もおることじゃしな」
やがて人形の姿が完全に見えなくなったところでアマラさんはそう言いながら立ち上がり、ついてくるように髪の毛で隠れていない目だけで示す。
この奥の部屋からどこへ行くのだろうかと思っていると、彼女は後方の壁にかけてあった価値はそんなになさそうな掛け軸を雑にどかした。
すると、隠し通路が現れ、地下へと続く階段が目に映る。
「おお」
からくり屋敷のような構造にちょっと興奮して前のめりになり、それからハッとして誤魔化し気味に咳払いしながら弟達を振り返る。
つい童心に帰ってしまったと恥ずかしくなるが……彼らは、俺の反応を気にも留めず目を見開いて驚いていた。初めて目の当たりにしたかのようだ。
いや、実際そうした映像作品がある訳でもなし、初見で間違いないのだろう。
ニッチな娯楽小説とかにはあるかもしれないが、まだ彼らは十二歳だしな。
「ほれ、ついてこい」
アマラさんはそうした俺達の姿に満足げな表情を浮かべつつもそう促し、隠し通路の先へと歩みを進めていく。
「祈望之器は複製師によって複製され、様々な場面で使用されておる。それこそ日常生活のあちらこちらでな」
更に言葉を続けながら階段を下りていく彼女に続くと、頑丈そうな金属製の扉。
開いた中は、武器やら防具やら調度品やら、様々な道具が置かれた広い空間だった。
一方の壁に木製の扉があり、まだ別の部屋があるようだが……。
「日常生活で使う祈望之器と言えば、どんなものがある?」
アマラさんはその中央で立ち止まると俺達を振り返り、特にセト達に問いかけた。
社会科見学の対応を自らしてくれるらしい。
性格に難があるところもあるが、後進を導くべき先達としての意識はあるようだ。
「ええと……バスとか?」
「列車もそうだよな」
「うむ。……まあ、もう少し身近なところを答えて欲しかったが、よいじゃろう」
トバルとダンから出てきた答えに、彼女は少し微妙な顔をしてから続ける。
「街の移動手段たるバス、街と街を繋ぐ列車。各々正式名称はメルカバス、メルカトレインじゃが、それらは元々メルカバと呼ばれる戦車から派生したものじゃ」
「戦車?」
「正確には古代戦車じゃな。神やら天使やらが乗ると言われておる。それを改良して多人数が乗れる形状とし、適度に速度調整が効くようにしたものが、メルカバスやメルカトレインじゃ。形状は道路やレールに沿って規格化されておる」
あれも割と苦労したのじゃぞ、と軽く嘆息するアマラさん。
どうやら彼女も開発に携わっていたようだ。
「他に、もっと身近なところで知っているものはないかの?」
「うーん……乗り物以外だと、ちょっと……」
考えていたものをトバルとダンに言われてしまったのか、困ったように唸るセト。
「うーむ。ヨスキ村の小僧共は、もう少し世の常識にも目を向ける必要があるな。じゃが、そこの娘は思いつくものがあるじゃろう?」
「は、はい。えっと、その、水とか食べものの一部を祈望之器で生成してるとか聞いたことがあります」
「そうじゃ。まずヒュギエイアの杯というものを複製改良した水の杯を多数用いることで、大きな街の上下水道は構築されておる。食料の方は、食いものを生成する逸話を持つ祈望之器はいくつかあるが、世界で最も複製されておるのはダグザの大釜じゃな」
「でも、確か、何かを生成する祈望之器は、別のものを同程度消費しないといけないんじゃなかったですか?」
「その通り。水の杯の場合は、基本生水を消費して飲料水を作っておる。都市では、それに圧力をかける機能を追加することで各家庭に供給できるようにしておるな」
どうやら、江戸時代の水道のように高低差を利用している訳ではないようだ。
その辺の工夫も複製師の腕の見せどころ、というところか。
「ちなみに生成のプロセスを利用して下水を浄化することも可能じゃ。食料の原料はそれこそ土やら草やら色々じゃな。ただ、感情的な問題で汚物は使用しておらんな」
「……そうなると、農業とか畜産業とかってないんですか?」
祈望之器の複製品だけで賄えそうだが、と考えて横から尋ねる。
「いや、ある意味文化保護的に一定の規模で継続しておる。不滅の逸話でもない限りは祈望之器と言えど壊れるからな。万に一つ。現存する全てが使用不可能になってしまった時に自給できないでは洒落にならん」
アマラさんは俺の問いにそう答え、更に「特にそうした日常生活な不可欠な複製品は壊れ易いが故、複製師の職もなくならん訳だ」とつけ加えた。
確かに、祈望之器が存在する限り、安泰な職業と言えるだろう。
トバルに跡を継いで欲しいと彼の両親が願うのも分かるな。
「さて、余り立ち話ばかりしていても飽きるじゃろう。実際に祈望之器を複製し、改良しておるところを見せてやるとしようではないか」
それから。アマラさんはそこで一つ話を区切ると、その部屋にあった木製の扉を目線で示し、そちらへと向かった。
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