89 / 396
第1章 少女が統べる国と嘱託補導員
083 街中の幽霊
しおりを挟む
「あれは半年程前のことだ」
奢りの清酒を手にし、一口だけ味わってからガイオさんが口を開く。
「住宅街での仕事中。俺はそれを確かに見た。間違いなくな」
彼はその時の光景を細部まで脳裏に思い描こうとしているかのように目を閉じ、そのまま自分に言い聞かせるように告げた。
しかし、まだ少し声色には逡巡のようなものが感じられる。
これまで、その話の対価は嘲笑だけだったのだから、さもありなんというところか。
だから俺は、彼の気を紛らわせるため、少々無作法ながら口を挟むことにした。
純粋に疑問が湧いたから、というのもあるが。
「あの、話の腰を折るようで何ですが、住宅街での仕事というのは?」
「……何だ。その質問は」
問いかけとして余りに頓珍漢だったのか、再び不審そうな顔をするガイオさん。
もしかしたら補導員なら知っていて当然の話なのかもしれない。
しかし、この職業に住宅街での仕事があるイメージは少なくとも俺の中ではない。
魔物にしても少女化魔物にしても、その根源は人間の想像。
特に、大多数が共通の認識として持つことで存在を確立したそれらは、多くが未知なるものへの畏れや外界の危険に対する警鐘として作られた物語に端を発したものだ。
基本的に非日常の具現であり、人間のテリトリーである街に生じるとは考えにくい。
加えて、この世界では街を築く理由の一つとして、それらに対する備えが含まれていることも俺がそう認識している一因と言える。
街は安全であるというある種の信仰によって、街そのものに魔物や少女化魔物が発生しにくい概念が祈望之器の如く付与されていてもおかしくはない。
とは言え、例外があるのは彼の言葉からして間違いない。
後学のため、そこは聞いておきたい。
「すみません。何分まだ新人なもので」
「実力と知識がアンバランスね。……それだけ急激に駆け上がってきた証拠かしら」
俺の若干言い訳染みた返答に、ガイオさんの隣で蜜酒を静かに飲んでいたタイルさんがそう半ば呆れたように呟く。
しかし同時に、その声色には若干の警戒心が感じ取れた。
仕事の競合相手でもある俺に対し、一定の注意を払っているようだ。
「でも、それは大した情報でもないしね」
「ああ。補導員、いや、少女征服者にとっちゃ常識の範疇だ」
タイルさんの言葉にガイオさんは同意し、それから俺の背後のルトアさんを一瞥する。
補導員事務局の受付をしている彼女なら、普通に知っているような話ということか。
「とは言っても、余り大っぴらに吹聴する類のものでもないんだが…………まあ、いいか。その時、俺が引き受けていたのは通夜の護衛だ」
「通夜の護衛? えっと、通夜と言うと、葬式の通夜ですか?」
前世のそれを思い浮かべ、何故護衛が必要なのかと首を傾げる。
確認の問いに二人共首肯したのを見る限り、聞き間違いではないようだが……。
「冠婚葬祭というものは人の感情が集積し易いもの。中でも葬儀は飛び切りだ。故人の心残り、遺族の感情。綯い交ぜになり、ゴーストという形の魔物が生じることがある」
「そうでなくとも、火車っていう魔物が遺体を奪いに来ることもあるからね」
火車。元の世界では葬式に現れ、遺体を奪う妖怪だったか。
地域によっては通夜で線香の煙を絶やさないのは、それを防ぐためとも言い伝えられているそうだが……この世界でも似た話があるらしい。
そうした共通認識によって、そのような魔物が実際に生まれてしまう訳だ。
つまり、非日常の不可思議な存在ではなく、身近に潜む日常の影の如き存在であれば街中で魔物として発生してもおかしくはない訳だ。
勿論、魔物全体からすると少数ではあるだろうが。
「その時は故人が顔の広い高名な人物だっただけあって、補導員である俺まで駆り出されたし、実際火車がわんさか湧いてたな」
わんさかって……嫌な参列者だな。
もしかしたら悪い意味で高名な人間だったのかもしれない。
「満足したか?」
「ええ」
「なら、話を戻すぞ」
ガイオさんはそう俺に断ると、最初の逡巡を全て追い出すように一つ深く息を吐いてから再び口を開いた。
「……まあ、そういう仕事の最中だったから、短絡的に幽霊って思い込んじまった部分もあるかもしれない。それの正体が本当に幽霊だったのかは分からない」
冷静な自己分析に基づく前置きを落ち着いて口にし、それから本題に入る。
「それでも、人間とも少女化魔物とも、魔物とも違う妙なものを見たのは確かだ。しかし、形を思い出そうとすると頭の中が霞みがかっちまう」
「それが余りにも奇妙な存在だったから、ガイオは周りの少女征服者達にも目撃したか尋ね回って、結果頭がおかしくなったって話が広まってしまったのよ」
「結局、特に事件が起きたりした訳でもなかったから尚のことな」
それらが積もり積もって、あの荒れ様だった訳か。
魔物としてのゴーストと、いわゆる幽霊は別ものと考えるべきだろう。
前者は攻撃が通るRPG的な存在で、後者は攻撃が通らない正に霊的な何か。
普通に物理的に干渉してくるゴーストがいるから尚のこと、物理的な干渉が不可能な程に思念の蓄積が少ない幽霊を恐れる者は馬鹿にされてしまうに違いない。
「タイルさんも目撃されたんですか?」
「ええ。戦闘中でガイオ程ハッキリとは見てないから、大分曖昧だけど」
「けど、他の目撃談はないと」
「……そうだな」
俺の確認に頷くガイオさん。
これまでの話を総合すると一つの可能性が出てくる。
確証を得るため、もう少し質問をするとしよう。
「その時、複合発露を使用してましたか?」
「当然だ。葬式の邪魔にならないように、迅速に処理しなければならないからな」
「身体強化系で第六位階相当の複合発露をお持ちの方は他には?」
「…………いや、いなかったな」
一つ一つの質問の意図を探るようにしながら、ガイオさんは答える。
それを受けて俺は「成程」と口の中で呟いた。
「何か分かったのか?」
「はい。……俺が調査している事件の犯人は、認識操作系の複合発露を有していると考えられています。勿論、第六位階です」
その言葉にハッとしたように目を見開くガイオさんとタイルさん。
どうやら、それだけで俺と同じ考えに至ったらしい。
「つまり、俺が目撃したのは認識操作系の複合発露を使用した犯人で、身体強化のおかげで何とか認識することができたってことか」
「身体強化系じゃない少女征服者達が認識できなかったのも説明がつくわね」
腑に落ちたような表情と共に、互いの顔を見て言い合う二人。
正誤はともかく、それらしい理屈を耳にして少しは気が楽になったようだ。
「それでガイオさん。ソイツの動向を覚えてる限りでいいので教えて下さいますか?」
「ああ。と言いたいところだが……ある家に入ったことは覚えているんだが、その家がどこにあるのか思い出せないんだ。仕事場の近くだったのは間違いないが――」
「……それを全く思い出せなかったことも周りから馬鹿にされた原因の一つだったけれど、そう考えるとこれも認識操作されてた可能性が高いわね」
十中八九そうだろう。
だが、その時の仕事場がどこなのかについては、守秘義務に抵触する可能性があるので聞かないでおく。ヒメ様に聞けば、調べてくれるだろうし。
うん。割と有益な情報を得られた気がするな。
「ルトアさん、もう一回――」
「あ、分かりました!」
立てた人差し指を見せながら軽く振り返って口を開くと、全て言い終わる前にルトアさんはリヴェスさんのところに向かった。
意図が伝わったことに小さく頷き、そんな彼女の背中から視線を戻す。
「お二人共、ありがとうございました。もう一杯、奢らせて下さい」
「ああ、いや、こっちこそ感謝する」
「少しは留飲が下がったよ。つまり、私達を馬鹿にした奴らこそ、実力不足だったんだって分かったからね」
なら、よかった。商売のつもりはないが、双方に利益があって。
俺としても喜んで貰えたなら、情報収集以上に価値があったと思える。
「では、俺はこれで。解決の暁には、貴方がたの名誉回復も上に依頼しますので」
清酒と蜜酒が来たのを見計らって、彼らのテーブルから離れる。
「ルトアさんも、ありがとうございました。おかげで少し進展したと思います」
「いえいえ! お食事をご一緒できて嬉しかったです!」
二人で話しながらリヴェスさんのところに戻って彼女に挨拶し、それからガイオさん達への奢り分も含めて会計を済ませて店を出る。
一先ず目的は果たせたと言っていいだろう。後は職員寮に帰るだけだ。
「あ、そうそう。ルトアさん」
ただ、その前に。
情報収集とは全く関係ないが、気になっているところを一つ。
「事務局の外でまで、言葉遣いに気をつけなくてもいいですよ?」
表情や行動は友達っぽい感じなのに、口調だけ慇懃なのは何とも違和感があった。
もう帰り道なのに今更だが、余り形式ばられるのも距離があるようでモヤモヤする。
「お気遣いありがとうございます! でも、私は普段からこんな感じですから!」
そんな俺の言葉に対し、ルトアさんは嬉しそうにしつつも申し訳なさそうに答えた。
……古いつき合いらしいリヴェスさんにもずっと丁寧語だったし、性格的な問題か。
こんなことを言いながらも俺は俺で丁寧語だしな。
まあ、そういうことなら強制するのは好ましくない。とは言え――。
「なら、せめて名前だけでも。様づけはちょっと」
こればかりはむず痒くて敵わない。
「……分かりました! では、外ではイサク君と!」
「はい。ありがとうございます」
これはこれで少し気恥ずかしいが、様づけよりは余程いい。
「じゃあ、イサク君。帰りましょうか」
そして早速、呼び方を変えてくれるルトアさん。
そんな彼女の弾んだ言葉に俺は頷いて応じ、それから俺達は情報収集に区切りをつけてホウゲツ学園行きのバスもどきに乗ったのだった。
奢りの清酒を手にし、一口だけ味わってからガイオさんが口を開く。
「住宅街での仕事中。俺はそれを確かに見た。間違いなくな」
彼はその時の光景を細部まで脳裏に思い描こうとしているかのように目を閉じ、そのまま自分に言い聞かせるように告げた。
しかし、まだ少し声色には逡巡のようなものが感じられる。
これまで、その話の対価は嘲笑だけだったのだから、さもありなんというところか。
だから俺は、彼の気を紛らわせるため、少々無作法ながら口を挟むことにした。
純粋に疑問が湧いたから、というのもあるが。
「あの、話の腰を折るようで何ですが、住宅街での仕事というのは?」
「……何だ。その質問は」
問いかけとして余りに頓珍漢だったのか、再び不審そうな顔をするガイオさん。
もしかしたら補導員なら知っていて当然の話なのかもしれない。
しかし、この職業に住宅街での仕事があるイメージは少なくとも俺の中ではない。
魔物にしても少女化魔物にしても、その根源は人間の想像。
特に、大多数が共通の認識として持つことで存在を確立したそれらは、多くが未知なるものへの畏れや外界の危険に対する警鐘として作られた物語に端を発したものだ。
基本的に非日常の具現であり、人間のテリトリーである街に生じるとは考えにくい。
加えて、この世界では街を築く理由の一つとして、それらに対する備えが含まれていることも俺がそう認識している一因と言える。
街は安全であるというある種の信仰によって、街そのものに魔物や少女化魔物が発生しにくい概念が祈望之器の如く付与されていてもおかしくはない。
とは言え、例外があるのは彼の言葉からして間違いない。
後学のため、そこは聞いておきたい。
「すみません。何分まだ新人なもので」
「実力と知識がアンバランスね。……それだけ急激に駆け上がってきた証拠かしら」
俺の若干言い訳染みた返答に、ガイオさんの隣で蜜酒を静かに飲んでいたタイルさんがそう半ば呆れたように呟く。
しかし同時に、その声色には若干の警戒心が感じ取れた。
仕事の競合相手でもある俺に対し、一定の注意を払っているようだ。
「でも、それは大した情報でもないしね」
「ああ。補導員、いや、少女征服者にとっちゃ常識の範疇だ」
タイルさんの言葉にガイオさんは同意し、それから俺の背後のルトアさんを一瞥する。
補導員事務局の受付をしている彼女なら、普通に知っているような話ということか。
「とは言っても、余り大っぴらに吹聴する類のものでもないんだが…………まあ、いいか。その時、俺が引き受けていたのは通夜の護衛だ」
「通夜の護衛? えっと、通夜と言うと、葬式の通夜ですか?」
前世のそれを思い浮かべ、何故護衛が必要なのかと首を傾げる。
確認の問いに二人共首肯したのを見る限り、聞き間違いではないようだが……。
「冠婚葬祭というものは人の感情が集積し易いもの。中でも葬儀は飛び切りだ。故人の心残り、遺族の感情。綯い交ぜになり、ゴーストという形の魔物が生じることがある」
「そうでなくとも、火車っていう魔物が遺体を奪いに来ることもあるからね」
火車。元の世界では葬式に現れ、遺体を奪う妖怪だったか。
地域によっては通夜で線香の煙を絶やさないのは、それを防ぐためとも言い伝えられているそうだが……この世界でも似た話があるらしい。
そうした共通認識によって、そのような魔物が実際に生まれてしまう訳だ。
つまり、非日常の不可思議な存在ではなく、身近に潜む日常の影の如き存在であれば街中で魔物として発生してもおかしくはない訳だ。
勿論、魔物全体からすると少数ではあるだろうが。
「その時は故人が顔の広い高名な人物だっただけあって、補導員である俺まで駆り出されたし、実際火車がわんさか湧いてたな」
わんさかって……嫌な参列者だな。
もしかしたら悪い意味で高名な人間だったのかもしれない。
「満足したか?」
「ええ」
「なら、話を戻すぞ」
ガイオさんはそう俺に断ると、最初の逡巡を全て追い出すように一つ深く息を吐いてから再び口を開いた。
「……まあ、そういう仕事の最中だったから、短絡的に幽霊って思い込んじまった部分もあるかもしれない。それの正体が本当に幽霊だったのかは分からない」
冷静な自己分析に基づく前置きを落ち着いて口にし、それから本題に入る。
「それでも、人間とも少女化魔物とも、魔物とも違う妙なものを見たのは確かだ。しかし、形を思い出そうとすると頭の中が霞みがかっちまう」
「それが余りにも奇妙な存在だったから、ガイオは周りの少女征服者達にも目撃したか尋ね回って、結果頭がおかしくなったって話が広まってしまったのよ」
「結局、特に事件が起きたりした訳でもなかったから尚のことな」
それらが積もり積もって、あの荒れ様だった訳か。
魔物としてのゴーストと、いわゆる幽霊は別ものと考えるべきだろう。
前者は攻撃が通るRPG的な存在で、後者は攻撃が通らない正に霊的な何か。
普通に物理的に干渉してくるゴーストがいるから尚のこと、物理的な干渉が不可能な程に思念の蓄積が少ない幽霊を恐れる者は馬鹿にされてしまうに違いない。
「タイルさんも目撃されたんですか?」
「ええ。戦闘中でガイオ程ハッキリとは見てないから、大分曖昧だけど」
「けど、他の目撃談はないと」
「……そうだな」
俺の確認に頷くガイオさん。
これまでの話を総合すると一つの可能性が出てくる。
確証を得るため、もう少し質問をするとしよう。
「その時、複合発露を使用してましたか?」
「当然だ。葬式の邪魔にならないように、迅速に処理しなければならないからな」
「身体強化系で第六位階相当の複合発露をお持ちの方は他には?」
「…………いや、いなかったな」
一つ一つの質問の意図を探るようにしながら、ガイオさんは答える。
それを受けて俺は「成程」と口の中で呟いた。
「何か分かったのか?」
「はい。……俺が調査している事件の犯人は、認識操作系の複合発露を有していると考えられています。勿論、第六位階です」
その言葉にハッとしたように目を見開くガイオさんとタイルさん。
どうやら、それだけで俺と同じ考えに至ったらしい。
「つまり、俺が目撃したのは認識操作系の複合発露を使用した犯人で、身体強化のおかげで何とか認識することができたってことか」
「身体強化系じゃない少女征服者達が認識できなかったのも説明がつくわね」
腑に落ちたような表情と共に、互いの顔を見て言い合う二人。
正誤はともかく、それらしい理屈を耳にして少しは気が楽になったようだ。
「それでガイオさん。ソイツの動向を覚えてる限りでいいので教えて下さいますか?」
「ああ。と言いたいところだが……ある家に入ったことは覚えているんだが、その家がどこにあるのか思い出せないんだ。仕事場の近くだったのは間違いないが――」
「……それを全く思い出せなかったことも周りから馬鹿にされた原因の一つだったけれど、そう考えるとこれも認識操作されてた可能性が高いわね」
十中八九そうだろう。
だが、その時の仕事場がどこなのかについては、守秘義務に抵触する可能性があるので聞かないでおく。ヒメ様に聞けば、調べてくれるだろうし。
うん。割と有益な情報を得られた気がするな。
「ルトアさん、もう一回――」
「あ、分かりました!」
立てた人差し指を見せながら軽く振り返って口を開くと、全て言い終わる前にルトアさんはリヴェスさんのところに向かった。
意図が伝わったことに小さく頷き、そんな彼女の背中から視線を戻す。
「お二人共、ありがとうございました。もう一杯、奢らせて下さい」
「ああ、いや、こっちこそ感謝する」
「少しは留飲が下がったよ。つまり、私達を馬鹿にした奴らこそ、実力不足だったんだって分かったからね」
なら、よかった。商売のつもりはないが、双方に利益があって。
俺としても喜んで貰えたなら、情報収集以上に価値があったと思える。
「では、俺はこれで。解決の暁には、貴方がたの名誉回復も上に依頼しますので」
清酒と蜜酒が来たのを見計らって、彼らのテーブルから離れる。
「ルトアさんも、ありがとうございました。おかげで少し進展したと思います」
「いえいえ! お食事をご一緒できて嬉しかったです!」
二人で話しながらリヴェスさんのところに戻って彼女に挨拶し、それからガイオさん達への奢り分も含めて会計を済ませて店を出る。
一先ず目的は果たせたと言っていいだろう。後は職員寮に帰るだけだ。
「あ、そうそう。ルトアさん」
ただ、その前に。
情報収集とは全く関係ないが、気になっているところを一つ。
「事務局の外でまで、言葉遣いに気をつけなくてもいいですよ?」
表情や行動は友達っぽい感じなのに、口調だけ慇懃なのは何とも違和感があった。
もう帰り道なのに今更だが、余り形式ばられるのも距離があるようでモヤモヤする。
「お気遣いありがとうございます! でも、私は普段からこんな感じですから!」
そんな俺の言葉に対し、ルトアさんは嬉しそうにしつつも申し訳なさそうに答えた。
……古いつき合いらしいリヴェスさんにもずっと丁寧語だったし、性格的な問題か。
こんなことを言いながらも俺は俺で丁寧語だしな。
まあ、そういうことなら強制するのは好ましくない。とは言え――。
「なら、せめて名前だけでも。様づけはちょっと」
こればかりはむず痒くて敵わない。
「……分かりました! では、外ではイサク君と!」
「はい。ありがとうございます」
これはこれで少し気恥ずかしいが、様づけよりは余程いい。
「じゃあ、イサク君。帰りましょうか」
そして早速、呼び方を変えてくれるルトアさん。
そんな彼女の弾んだ言葉に俺は頷いて応じ、それから俺達は情報収集に区切りをつけてホウゲツ学園行きのバスもどきに乗ったのだった。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
国家魔術師をリストラされた俺。かわいい少女と共同生活をする事になった件。寝るとき、毎日抱きついてくるわけだが
静内燕
ファンタジー
かわいい少女が、寝るとき毎日抱きついてくる。寝……れない
かわいい少女が、寝るとき毎日抱きついてくる。
居場所を追い出された二人の、不器用な恋物語──
Aランクの国家魔術師であった男、ガルドは国の財政難を理由に国家魔術師を首になった。
その後も一人で冒険者として暮らしていると、とある雨の日にボロボロの奴隷少女を見つける。
一度家に泊めて、奴隷商人に突っ返そうとするも「こいつの居場所なんてない」と言われ、見捨てるわけにもいかず一緒に生活することとなる羽目に──。
17歳という年齢ながらスタイルだけは一人前に良い彼女は「お礼に私の身体、あげます」と尽くそうとするも、ガルドは理性を総動員し彼女の誘惑を断ち切り、共同生活を行う。
そんな二人が共に尽くしあい、理解し合って恋に落ちていく──。
街自体が衰退の兆しを見せる中での、居場所を失った二人の恋愛物語。
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
虚無からはじめる異世界生活 ~最強種の仲間と共に創造神の加護の力ですべてを解決します~
すなる
ファンタジー
追記《イラストを追加しました。主要キャラのイラストも可能であれば徐々に追加していきます》
猫を庇って死んでしまった男は、ある願いをしたことで何もない世界に転生してしまうことに。
不憫に思った神が特例で加護の力を授けた。実はそれはとてつもない力を秘めた創造神の加護だった。
何もない異世界で暮らし始めた男はその力使って第二の人生を歩み出す。
ある日、偶然にも生前助けた猫を加護の力で召喚してしまう。
人が居ない寂しさから猫に話しかけていると、その猫は加護の力で人に進化してしまった。
そんな猫との共同生活からはじまり徐々に動き出す異世界生活。
男は様々な異世界で沢山の人と出会いと加護の力ですべてを解決しながら第二の人生を謳歌していく。
そんな男の人柄に惹かれ沢山の者が集まり、いつしか男が作った街は伝説の都市と語られる存在になってく。
(
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう
サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」
万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。
地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。
これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。
彼女なしの独身に平凡な年収。
これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。
2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。
「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」
誕生日を迎えた夜。
突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。
「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」
女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。
しかし、降り立って彼はすぐに気づく。
女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。
これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる