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第1章 少女が統べる国と嘱託補導員
067 暴走の原因と俺の流儀
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「チ、近寄ルナ!!」
一歩一歩地面を踏みしめるように近づく俺に対し、水精の少女化魔物は尚も球形の水の塊を何発も撃ち込んでくる。
暴走していても、いや、むしろ理性が乏しくなったことによって逆に力の差を本能的に気づかされてしまっているかの如く動揺を示しながら。
そして実際に。
彼女が放った攻撃は全て、真・複合発露〈万有凍結・封緘〉の力で全身に纏った氷の鎧によって防がれる。
一発たりとも影響を及ぼしていない。
「悠なる根源に我は希う。『翻訳』『伝達』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈無窮〉之〈訳述〉」
対して俺は歩みを止めず、念のために祈念魔法を発動しておく。
言葉を発していることと、会話可能なことは必ずしも両立しない。
意思伝達し易くしておいて損はない。
「来ルナ!」
激しさを増す攻撃を気にも留めず、川に足を踏み入れる。
瞬間、水精の少女化魔物は思わず逃げ出そうとするような体重移動を見せる。
しかし、微かな動きのみで、彼女は耐えるようにその場に留まった。
川に近づくなという発言が最初にあったことを考えると、俺に対して抱く恐怖心よりも優先する理由、執着的なものが川にあるのかもしれない。
とは言え、逃走の可能性は完全に絶っておくべきだろう。
「ナ、コレハ――」
浅い川に突っ込んだ俺の足を起点に、川面が急激に凍りつく。
それによって少女化魔物は足を取られ、身動きできなくなった。
小川の流れに揺られていた青い髪も巻き込んでしまっているのは、少々申し訳ない。
こちらの方は全く意図してやっているものではないが
「ウウ……」
少女化魔物は悪足掻きをするように足に力を込めて身を捩り、結果髪の毛がピンと張って痛みが走ったのか小さく呻く。
一層、罪悪感が募るが、今情けをかけては意味がない。
「コ、コノッ!」
それから彼女は、そこから脱することはできないと認識してか、苛立ったような視線を俺に向けながら遮二無二攻撃を仕かけてきた。
再びウォーターカッターの如き水流が迫る。
時折、更に大きく固めた水の球をもう一方の手から撃ち出してくる。
二つの異なった攻撃を交え、一層激しく水という範疇に留まらない重量を持った液体が襲いかかってくる。当然、俺の氷の鎧の前では意味をなさないが。
同じ第六位階ではあるが、その辺りはイメージ力の差だ。
ただ、この対策をしていなかったらと思うと、内心冷や汗をかきそうになる。
暴走状態の少女化魔物。
フェリトの時はデバフ系の複合発露だったからよかったようなものの、攻撃系の複合発露だったら蜂の巣になっていたかもしれない。
しかし、あくまでも表面上は平静を装い――。
「気が済んだか? そろそろ、聞かせて貰おうか。何故、そんな風に暴れる?」
攻撃を全て氷の鎧で受け止めながら彼女の目の前に立ち、俺は静かに問いかけた。
「川ヲ汚ス人間、去レ!」
それに応じて返ってきた言葉は答えの体裁を取っていない。
だが、理由はおおよそ分かった。
「……それなりに綺麗だと思うけど」
とは言え、川を見た感じ汚れているようには思えない。
少女化魔物の足元以外の凍結を解除して確認しても、そこそこ透き通っているし。
「ドコガ!!」
そんな俺の感想に対し、激昂して叫ぶ少女化魔物。
……基準が元の世界にある俺とは、感覚が違うのかもしれない。
知識として、河川の汚染が最も酷い時の写真とか知ってるからな。
海外なら現在進行形なところもあったし。
それに比べれば、まだまだ発展途上なこの世界。
汚染などほとんどないに等しい状態からの変化ということであれば、少し汚れた程度でも目につくかもしれない。
「見ロ!」
それから彼女はそう続けて叫ぶと、複合発露で操作したのか水の流れが変わる。
白濁した泡のような淀みが透き通った水を濁らせていく。
水底に溜まっていた汚れを集めたようだ。
「生活排水、か?」
人間が生活していれば大なり小なりあるものだ。
一定の文明を有していれば、その度合いは大きくなる。
……しかし、この世界この時代の技術水準、人口では、まだ深刻な影響が出る程の水質汚染を引き起こすようなレベルではないと思うが。
特に、田舎の村の川においては。
いや、都市では下水も設備され、祈念魔法による浄水を行うための集積施設もある。
前世より遥かに程度は低いにしても、この世界では田舎の村の川の方が汚れているか。
「ソウダ! 今モ増エ続ケテル!! 人間ヲ排除シタノニ!!」
尚も悲痛な声で叫ぶ少女化魔物。
そりゃあ、目に映る場所から人間を追い出したところで下流か上流、この少女化魔物がいないところで洗濯やら何やらしていれば意味がない。
増え続けているということなら上流か。
だが、流れが滞っているようには見えない川。
蓄積され続けているのも不自然だ。
「……もしかすると――」
無意識の思念が影響しているのかもしれない。
そもそも、この少女化魔物が水精の魔物から少女化魔物に至った理由は何か。
それ以前に、水精の魔物が発生した原因は何なのか。
それら万物の根源という思想に根源を持つ魔物は多くの場合、人間が抱く自然への畏れによって生み出されると聞く。
特に現代は人口爆発の真っ只中。
テリトリーを広げるため、自然を切り開き続けていることに対するしっぺ返しを恐れる感情が、精霊系の魔物の発生頻度を高めているのだろう。
そして今回。村人の中の河川の汚染に対する罪悪感などが水精の魔物への思念の蓄積を生み、少女化魔物に至らしめたのだ。
更に川が汚染されているという意識が、本来流されていって分解されるはずの汚れすらも留まらせ、その汚れの只中にいた彼女は暴走してしまった。
その彼女の強烈な思念までもが加わり、尚も川の淀みは増していっている訳だ。
「ある意味、自爆。いや、自縛と言った方がいいか」
元が人間の所業と思念に原因があることに間違いはないが、少女化魔物となった後は自分で自分を苦しめている側面があることは否定できない。
「コウナレバ、直接人間ヲ全テ」
身動きが取れない抑圧によってか、遂には短絡的な解決方法を口にし始める彼女。
だが、残念ながら少女化魔物たる彼女には不可能な話だ。
あくまでも脅威度Aの少女化魔物が一人。人類全てを相手取る力はない。
度が過ぎれば彼女自身も討伐され、何の解決もないまま不幸な結末を迎えるだけだ。
「そんなことは、俺がさせない」
元の世界なら自然の化身染みた存在はいないため、起こらない対立。
だが、前世とは異なる世界からこそ存在する解決手段もある。
「邪魔ヲスルナ!!」
「まあ、見てろ」
再開された攻撃をものともせずに穏やかに告げ、視線を川面に向ける。
「命の根源に我は希う。『分解』『促進』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈救世〉之〈生分解〉」
少女化魔物の周囲に淀む白濁した汚れに対して祈念魔法によって働きかけ、一気に無害な物質へと分解していく。
すると、見る見る内に川は透き通った美しさを取り戻していった。
「……エ?」
余りに急激な変化に、呆けたような声を出す少女化魔物。
まるで疑心暗鬼に陥っていたかのようだった目つきは驚きによって全く意図せずという感じで険が取れ、彼女は戸惑ったように川を見回した。
足枷としていた氷を取り払ってやると、その場に膝をついて水に手を入れる。
透明になったそれに少女の表情が柔らかくなる。
それから彼女はハッとしたように俺の顔を見た。
「イ、一体……ドう……やって」
暴走の主たる原因が取り払われ、少女化魔物は冷静な思考を取り戻したようだった。
完全に暴走状態から脱し、表情も口調も普通の可愛らしい女の子のようになっている。
「祈念魔法。人間の願望に由来する力だ。この川を汚したのは確かに人間だけど、それを何とかしたいと思う人間もいる。だからこそ、この祈念魔法も効果を持つ」
「祈念魔法……」
「これを有効に使えば、人間は自然と共存できるはずだ」
少なくとも、この世界においては。
勿論、祈念魔法という力だけでなく、そうしようという意思も必要ではあるが。
「私にも、使えるの?」
「人間の思念から生まれた少女化魔物。人間にできることは大概できるさ」
それこそ由来した思念によっては、逆に自然を破壊することだってできるだろう。
人間と同じように。
人間だけが敵という訳でもないし、全ての人間が味方でないという訳でもない。
「まあ、君の場合は自然を保とうとする思念が誕生に大きく関わってる。勉強すれば、浄化の祈念魔法はすぐに使えるようになるかもしれない」
「勉強すれば?」
「そう。学園都市トコハのホウゲツ学園でね」
「ホウゲツ、学園……?」
小さく首を傾げる少女化魔物。だが、視線には意思が宿りつつある。
「君が望むなら、連れてってあげるよ」
「行く。連れてって欲しい」
決意を込めて真っ直ぐに見詰めてくる彼女に、首を縦に振って応える。
そうしながら俺は氷の鎧を取り払い、右手を差し出した。
彼女はそれを左手でおずおずと取る。
「よし。行こうか」
それを確認して小さく微笑み、そうして俺は彼女の手を引きながら川から出た。
「運がよかったな、嬢ちゃん。こんな丁寧に補導してくれる奴、中々いないぜ」
「ひっ」
と、前に出てきたシニッドさんの強面具合に、少女化魔物は怯えて俺の背に隠れる。
あの顔がいきなり視界に入ってきたら、そういう反応をするのも仕方がない。
「あー、この人は味方だよ。顔は怖いけど」
「顔が怖いは余計だ。ったく」
軽く愚痴を言い、それから表情を引き締めて俺を見るシニッドさん。
「イサク。丁寧なのはいいが、余り相手に感情移入し過ぎるなよ。人間と同じで、中にはどういようもねえ少女化魔物だっているんだからな」
「……分かってます。けど、やれる限りはやりたいので」
その辺りはもう性分だ。
人外ロリには、できるだけ手を尽くしたい。
それが人外ロリコンたる俺の流儀というものだ。
「まあ、今回はいいさ。後は事務局に戻って終わりだ。帰るぞ」
「はい」
歩き出すシニッドさんに頷き、一度水精の少女化魔物に視線をやってから後に続く。
そうして俺達は、学園都市トコハへの帰路についたのだった。
一歩一歩地面を踏みしめるように近づく俺に対し、水精の少女化魔物は尚も球形の水の塊を何発も撃ち込んでくる。
暴走していても、いや、むしろ理性が乏しくなったことによって逆に力の差を本能的に気づかされてしまっているかの如く動揺を示しながら。
そして実際に。
彼女が放った攻撃は全て、真・複合発露〈万有凍結・封緘〉の力で全身に纏った氷の鎧によって防がれる。
一発たりとも影響を及ぼしていない。
「悠なる根源に我は希う。『翻訳』『伝達』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈無窮〉之〈訳述〉」
対して俺は歩みを止めず、念のために祈念魔法を発動しておく。
言葉を発していることと、会話可能なことは必ずしも両立しない。
意思伝達し易くしておいて損はない。
「来ルナ!」
激しさを増す攻撃を気にも留めず、川に足を踏み入れる。
瞬間、水精の少女化魔物は思わず逃げ出そうとするような体重移動を見せる。
しかし、微かな動きのみで、彼女は耐えるようにその場に留まった。
川に近づくなという発言が最初にあったことを考えると、俺に対して抱く恐怖心よりも優先する理由、執着的なものが川にあるのかもしれない。
とは言え、逃走の可能性は完全に絶っておくべきだろう。
「ナ、コレハ――」
浅い川に突っ込んだ俺の足を起点に、川面が急激に凍りつく。
それによって少女化魔物は足を取られ、身動きできなくなった。
小川の流れに揺られていた青い髪も巻き込んでしまっているのは、少々申し訳ない。
こちらの方は全く意図してやっているものではないが
「ウウ……」
少女化魔物は悪足掻きをするように足に力を込めて身を捩り、結果髪の毛がピンと張って痛みが走ったのか小さく呻く。
一層、罪悪感が募るが、今情けをかけては意味がない。
「コ、コノッ!」
それから彼女は、そこから脱することはできないと認識してか、苛立ったような視線を俺に向けながら遮二無二攻撃を仕かけてきた。
再びウォーターカッターの如き水流が迫る。
時折、更に大きく固めた水の球をもう一方の手から撃ち出してくる。
二つの異なった攻撃を交え、一層激しく水という範疇に留まらない重量を持った液体が襲いかかってくる。当然、俺の氷の鎧の前では意味をなさないが。
同じ第六位階ではあるが、その辺りはイメージ力の差だ。
ただ、この対策をしていなかったらと思うと、内心冷や汗をかきそうになる。
暴走状態の少女化魔物。
フェリトの時はデバフ系の複合発露だったからよかったようなものの、攻撃系の複合発露だったら蜂の巣になっていたかもしれない。
しかし、あくまでも表面上は平静を装い――。
「気が済んだか? そろそろ、聞かせて貰おうか。何故、そんな風に暴れる?」
攻撃を全て氷の鎧で受け止めながら彼女の目の前に立ち、俺は静かに問いかけた。
「川ヲ汚ス人間、去レ!」
それに応じて返ってきた言葉は答えの体裁を取っていない。
だが、理由はおおよそ分かった。
「……それなりに綺麗だと思うけど」
とは言え、川を見た感じ汚れているようには思えない。
少女化魔物の足元以外の凍結を解除して確認しても、そこそこ透き通っているし。
「ドコガ!!」
そんな俺の感想に対し、激昂して叫ぶ少女化魔物。
……基準が元の世界にある俺とは、感覚が違うのかもしれない。
知識として、河川の汚染が最も酷い時の写真とか知ってるからな。
海外なら現在進行形なところもあったし。
それに比べれば、まだまだ発展途上なこの世界。
汚染などほとんどないに等しい状態からの変化ということであれば、少し汚れた程度でも目につくかもしれない。
「見ロ!」
それから彼女はそう続けて叫ぶと、複合発露で操作したのか水の流れが変わる。
白濁した泡のような淀みが透き通った水を濁らせていく。
水底に溜まっていた汚れを集めたようだ。
「生活排水、か?」
人間が生活していれば大なり小なりあるものだ。
一定の文明を有していれば、その度合いは大きくなる。
……しかし、この世界この時代の技術水準、人口では、まだ深刻な影響が出る程の水質汚染を引き起こすようなレベルではないと思うが。
特に、田舎の村の川においては。
いや、都市では下水も設備され、祈念魔法による浄水を行うための集積施設もある。
前世より遥かに程度は低いにしても、この世界では田舎の村の川の方が汚れているか。
「ソウダ! 今モ増エ続ケテル!! 人間ヲ排除シタノニ!!」
尚も悲痛な声で叫ぶ少女化魔物。
そりゃあ、目に映る場所から人間を追い出したところで下流か上流、この少女化魔物がいないところで洗濯やら何やらしていれば意味がない。
増え続けているということなら上流か。
だが、流れが滞っているようには見えない川。
蓄積され続けているのも不自然だ。
「……もしかすると――」
無意識の思念が影響しているのかもしれない。
そもそも、この少女化魔物が水精の魔物から少女化魔物に至った理由は何か。
それ以前に、水精の魔物が発生した原因は何なのか。
それら万物の根源という思想に根源を持つ魔物は多くの場合、人間が抱く自然への畏れによって生み出されると聞く。
特に現代は人口爆発の真っ只中。
テリトリーを広げるため、自然を切り開き続けていることに対するしっぺ返しを恐れる感情が、精霊系の魔物の発生頻度を高めているのだろう。
そして今回。村人の中の河川の汚染に対する罪悪感などが水精の魔物への思念の蓄積を生み、少女化魔物に至らしめたのだ。
更に川が汚染されているという意識が、本来流されていって分解されるはずの汚れすらも留まらせ、その汚れの只中にいた彼女は暴走してしまった。
その彼女の強烈な思念までもが加わり、尚も川の淀みは増していっている訳だ。
「ある意味、自爆。いや、自縛と言った方がいいか」
元が人間の所業と思念に原因があることに間違いはないが、少女化魔物となった後は自分で自分を苦しめている側面があることは否定できない。
「コウナレバ、直接人間ヲ全テ」
身動きが取れない抑圧によってか、遂には短絡的な解決方法を口にし始める彼女。
だが、残念ながら少女化魔物たる彼女には不可能な話だ。
あくまでも脅威度Aの少女化魔物が一人。人類全てを相手取る力はない。
度が過ぎれば彼女自身も討伐され、何の解決もないまま不幸な結末を迎えるだけだ。
「そんなことは、俺がさせない」
元の世界なら自然の化身染みた存在はいないため、起こらない対立。
だが、前世とは異なる世界からこそ存在する解決手段もある。
「邪魔ヲスルナ!!」
「まあ、見てろ」
再開された攻撃をものともせずに穏やかに告げ、視線を川面に向ける。
「命の根源に我は希う。『分解』『促進』の概念を伴い、第四の力を示せ。〈救世〉之〈生分解〉」
少女化魔物の周囲に淀む白濁した汚れに対して祈念魔法によって働きかけ、一気に無害な物質へと分解していく。
すると、見る見る内に川は透き通った美しさを取り戻していった。
「……エ?」
余りに急激な変化に、呆けたような声を出す少女化魔物。
まるで疑心暗鬼に陥っていたかのようだった目つきは驚きによって全く意図せずという感じで険が取れ、彼女は戸惑ったように川を見回した。
足枷としていた氷を取り払ってやると、その場に膝をついて水に手を入れる。
透明になったそれに少女の表情が柔らかくなる。
それから彼女はハッとしたように俺の顔を見た。
「イ、一体……ドう……やって」
暴走の主たる原因が取り払われ、少女化魔物は冷静な思考を取り戻したようだった。
完全に暴走状態から脱し、表情も口調も普通の可愛らしい女の子のようになっている。
「祈念魔法。人間の願望に由来する力だ。この川を汚したのは確かに人間だけど、それを何とかしたいと思う人間もいる。だからこそ、この祈念魔法も効果を持つ」
「祈念魔法……」
「これを有効に使えば、人間は自然と共存できるはずだ」
少なくとも、この世界においては。
勿論、祈念魔法という力だけでなく、そうしようという意思も必要ではあるが。
「私にも、使えるの?」
「人間の思念から生まれた少女化魔物。人間にできることは大概できるさ」
それこそ由来した思念によっては、逆に自然を破壊することだってできるだろう。
人間と同じように。
人間だけが敵という訳でもないし、全ての人間が味方でないという訳でもない。
「まあ、君の場合は自然を保とうとする思念が誕生に大きく関わってる。勉強すれば、浄化の祈念魔法はすぐに使えるようになるかもしれない」
「勉強すれば?」
「そう。学園都市トコハのホウゲツ学園でね」
「ホウゲツ、学園……?」
小さく首を傾げる少女化魔物。だが、視線には意思が宿りつつある。
「君が望むなら、連れてってあげるよ」
「行く。連れてって欲しい」
決意を込めて真っ直ぐに見詰めてくる彼女に、首を縦に振って応える。
そうしながら俺は氷の鎧を取り払い、右手を差し出した。
彼女はそれを左手でおずおずと取る。
「よし。行こうか」
それを確認して小さく微笑み、そうして俺は彼女の手を引きながら川から出た。
「運がよかったな、嬢ちゃん。こんな丁寧に補導してくれる奴、中々いないぜ」
「ひっ」
と、前に出てきたシニッドさんの強面具合に、少女化魔物は怯えて俺の背に隠れる。
あの顔がいきなり視界に入ってきたら、そういう反応をするのも仕方がない。
「あー、この人は味方だよ。顔は怖いけど」
「顔が怖いは余計だ。ったく」
軽く愚痴を言い、それから表情を引き締めて俺を見るシニッドさん。
「イサク。丁寧なのはいいが、余り相手に感情移入し過ぎるなよ。人間と同じで、中にはどういようもねえ少女化魔物だっているんだからな」
「……分かってます。けど、やれる限りはやりたいので」
その辺りはもう性分だ。
人外ロリには、できるだけ手を尽くしたい。
それが人外ロリコンたる俺の流儀というものだ。
「まあ、今回はいいさ。後は事務局に戻って終わりだ。帰るぞ」
「はい」
歩き出すシニッドさんに頷き、一度水精の少女化魔物に視線をやってから後に続く。
そうして俺達は、学園都市トコハへの帰路についたのだった。
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◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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