3 / 4
おまけ 男爵令嬢の後日談
しおりを挟む「ほんっっっとに最低!」
パーティー会場を出た私は叫ぶ。
すれ違う令嬢たちが不思議そうに見てくるけどそんなの関係ない!
私は今日、大恥をかかされた。
最初に声をかけたのは私。
付き合いで参加した夜会にすっごく好みの男がいたから話しかけた。そしたら相手は王太子で、相手も満更じゃない態度だったしこれは夢の玉の輿?なんて思ってたんだけど。
「何なのよあいつらーっ!」
あの場面で婚約破棄しないとかあり得る?え、それまで私に言ってた言葉はなんだったの?!
『エリー、お前はこの国で一番可愛らしい』
『お前と出会ったのは運命だったのだ』
『これが真実の愛なんだろうな』
「っ……信じてたのにぃっ!」
最初は金目当て、でもそんな熱烈に口説かれれば誰だって好きになっちゃうでしょ?たった数日だけど、あんなに可愛がってもらったら誰だって……。
気付けば周りに人が居るのも忘れてポロポロと泣いてしまった。
「あーーー!!良かったまだ居たよ!」
遠くから叫び声が聞こえ急いで涙を拭く。
顔を上げれば、遠くから数人の令嬢たちが私の方を指差して向かってくる。
にこにこ笑いながら近付く彼女たち……確か、全員男爵令嬢だった気がする。しかも全員同じように目がまんまるで可愛らしい。
「良かったぁ!もう帰っちゃったかと思った」
「急いで追いかけた甲斐がありましたね!」
「ほんとほんとっ!」
彼女たちはニコニコ笑っている。
「な、何よ……振られた私を笑いに来たのっ?!それとも、公爵令嬢さまに報復してこいとでも命令されたのかしら?!」
あの無様な姿は参加者全員、しかも国王陛下にも見られてしまった。そんな私をきっとバカな女って言いに来たんだわ!ほんと、これだから貴族は……
「ああ違うのよ!そういう訳じゃないの!」
「え、ロザリア様が?まっさかぁ!」
「ふふふっ、あのお方はそんなに心が狭くないわ」
3人とも笑いながら首を振る。何よこの和やかな雰囲気は……私はたった今、失恋したのよ?
公爵令嬢さまの使いでないとしたら彼女たちは何故私を追いかけて来たの?
「私たちはね、同じ境遇の貴女を励ましに来たのよー!」
「同じ境遇?」
「そう!強いて言うなら王太子に振られた者同士?」
「!!!」
その言葉に他の2人もうんうんと頷いている。
「どういうことよっ?!」
「ちょっ!落ち着いてよぉ!」
落ち着けるわけない。
私は一番頭の悪そうな子に詰め寄ると、ケホケホと軽く咳払いをしながら観念して話し始める。
「ルイーズさまは、オオカミ少年なのぉ」
「は?」
「ロザリア様に構ってほしくて、好きでもない女を口説いては婚約破棄をちらつかせてるの」
「え、……好きでもないって……」
「その証拠に、ルイーズ様が選ぶのはロザリア様と正反対の目が大きくて幼顔の女ばっかり!しかもそのあとめんどくさくならない様に男爵令嬢ばかり選んでるんだから確信犯なのよ」
ハァと大きなため息。
って事は、私は最初から愛されてなんか……
「何それ、最低じゃない!」
「最低よ?最低なのがルイーズ様だもん」
「そんなの王太子だからって許されるの?!陛下も、周りの貴族たちも何でそんな好き勝手させてるのよ?!」
要約すれば、王太子が気ままに女遊びをしてるってだけじゃない!気を引きたい?そんな子供みたいな理由のせいで?!
彼女たちも困ったように笑ってる。
「でもね、それもあと少しだから」
「ハァ?!」
「ルイーズ様はね、結婚したら全ての権利を失うの。表向きはこの国の王だけど、決定権も実行権も全て奪われる名ばかりの王となるのよ」
「名、ばかりの?」
「そう。そしてルイーズ様に代わって国を治めるのは、実質的には王妃となるロザリア様。頭が良くてお美しい、筆頭公爵家の令嬢であるあの方が全てを持つことになる」
そんな話、今まで聞いたことがない。
当たり前が、私はこの間まで平民だったんだもの。そんな雲の上の話、耳にすらしたことないか。
「だからそれまでのルイーズ様の茶番にみんな付き合ってあげて欲しいと、ロザリア様はわざわざ頭を下げたそうよ!」
「なんてお優しいのかしら!」
「あんなオオカミ少年、廃摘にするなどロザリア様なら出来そうなのに!」
3人は愛していたルイーズ様よりも公爵令嬢さまの話をうっとり顔で続ける。
その異常な雰囲気に冷や汗が流れてしまう。
「あ、あなたも安心してね。いずれオルテイル公爵家から莫大な慰謝料が届くはずよ」
「慰謝料?」
「馬鹿な婚約者の嘘に付き合ってくれたお礼としてね」
クスクスと笑う彼女たちにゾッとしてしまう。
ここまで人は、愛した人を無下に出来てしまうのね。
「大丈夫よ。全部ロザリア様に任せておけば!」
「………そうね」
私はただ頷く事しか出来なかった。
公爵令嬢さまに勝つ?そんなの最初から出来るはずなかったんだわ。
弱い私は周りに合わせるように笑顔をはりつけた。
34
お気に入りに追加
772
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
安息を求めた婚約破棄
あみにあ
恋愛
とある同窓の晴れ舞台の場で、突然に王子から婚約破棄を言い渡された。
そして新たな婚約者は私の妹。
衝撃的な事実に周りがざわめく中、二人が寄り添う姿を眺めながらに、私は一人小さくほくそ笑んだのだった。
そう全ては計画通り。
これで全てから解放される。
……けれども事はそう上手くいかなくて。
そんな令嬢のとあるお話です。
※なろうでも投稿しております。
婚約者に好きな人がいると言われました
みみぢあん
恋愛
子爵家令嬢のアンリエッタは、婚約者のエミールに『好きな人がいる』と告白された。 アンリエッタが婚約者エミールに抗議すると… アンリエッタの幼馴染みバラスター公爵家のイザークとの関係を疑われ、逆に責められる。 疑いをはらそうと説明しても、信じようとしない婚約者に怒りを感じ、『幼馴染みのイザークが婚約者なら良かったのに』と、口をすべらせてしまう。 そこからさらにこじれ… アンリエッタと婚約者の問題は、幼馴染みのイザークまで巻き込むさわぎとなり――――――
🌸お話につごうの良い、ゆるゆる設定です。どうかご容赦を(・´з`・)
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
貴方のことなんて愛していませんよ?~ハーレム要員だと思われていた私は、ただのビジネスライクな婚約者でした~
キョウキョウ
恋愛
妹、幼馴染、同級生など数多くの令嬢たちと愛し合っているランベルト王子は、私の婚約者だった。
ある日、ランベルト王子から婚約者の立場をとある令嬢に譲ってくれとお願いされた。
その令嬢とは、新しく増えた愛人のことである。
婚約破棄の手続きを進めて、私はランベルト王子の婚約者ではなくなった。
婚約者じゃなくなったので、これからは他人として振る舞います。
だから今後も、私のことを愛人の1人として扱ったり、頼ったりするのは止めて下さい。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる