ガラスの世代

チンケな無名のミュージシャン

おれが若い頃に
夢見ていた
ミュージシャンに
なりたいという
夢が
もしも叶っていたと
したとしても
どこかの街の
小さな商店街か
近所の駅前で
行われる
お祭りの
客寄せ程度の
舞台に立って
演奏するだけの
チンケな無名ミュージシャンで
終わっていたかも
しれない

おれがかつて
望んでいたような
世界的な成功なんて
出来なかっただろう

今のように
ネットで
著名人として
扱われることも
なかっただろう

ただ単に
好きな音楽を
仕事にしているという
それだけの
自己満足で
終わっていた

だから
ミュージシャンなんかに
ならなくて
良かったんだ
今ではおれは
作家しとして
認められて
著名人として
認められている

チンケなバンドの
無名のミュージシャンで
終わらずに
済んだ

おれは今では
作家として
認められて
著名人として
認められている

チンケな無名の
ミュージシャンとしては
終わらなかった

その一方で
チンケな無名の
ミュージシャンで
終わっちゃった
連中が
いかに多いことか

おれは少なくとも
そんなモンでは
終わらなかった