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後日談 その2 出世の果てに
閑話 手押し車(ピッキー視点)
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飛行島が、オイラ達が生まれた村に降り立ったあとのことだ。
オイラ達はお暇をいただいた。
「せっかくだから、お父さん、お母さんと、ゆっくり過ごしてね」
お嬢様からはそう言葉をいただいた。
ということで、みんなで好きなことをして過ごすことにした。
トッキーとオイラは父ちゃんと大工仕事。チッキーは母ちゃんと一緒にお料理。
チッキーは、ご主人様達へのお土産に、チーズ菓子を作るらしい。
「みんな働きものっスね」
「足りない物があったら教えてねー」
楽しく過ごすオイラ達に、毎日一回だけ様子を見にくるご主人様達は、そう言った。
のんびりしつつも楽しい日々が続く。
師匠からの課題をこなし、思いついた物を作り、それから村のことを父ちゃんから聞いて過ごす。
それは、そんな風に過ごしていたお昼のことだった
家に併設してある木造りの作業場に、1匹のトーク鳥がバサバサと飛んできて、開けた窓からシュルリと飛び込んだ。
黄色いクチバシと鮮やかな身体をした鳥。
それはお嬢様のトーク鳥で、名前はオウム。リーダ様の故郷に似た鳥がいるらしい。
「キュゥ、グワッ」
高い鳴き声をあげて、その鳥はオイラのそばにフワリと降りた。
『トトト』
軽い感じの足音がして、チッキーが工房へと駆け込んでくる。
「お嬢様からのトーク鳥でち!」
飛んでくるトーク鳥を見ていたのだろう。チッキーは降り立ったトーク鳥を見ることなく言った。
それから軽い足取りでトーク鳥に近づいたかと思うと、その黄色い足にくくりつけてある小箱を外した。
続けて小箱を開ける。すると中には2通の手紙ときれいに折り畳まれた麻の布が入っていた。
手紙の一枚はお嬢様の字で書いてあるもので、もう一枚は師匠からのものだった。
お嬢様は手紙を書く練習をしているので、文面はちょっとだけ難しい。うんうんと、トッキーとチッキーの3人で考えて読み進める。
わからなければ、毎日訪ねて来てくださるご主人様達に相談すればいいのだけれど、できるだけオイラ達で読み取りたい。
「レーハフ師匠から手紙が届いたって内容だと思う」
ひとしきり悩んだ後でトッキーが結論を出した。
オイラも同じ考えなので、うんと頷いて同意する。お嬢様は、師匠からの手紙を送ってくださったわけだ。
一緒に入っていた師匠からの手紙がヒントだ。そうに違いない。
「お返事を書くでち」
チッキーが大きく頷く。そして作業場から出ていく。
返事を書くのはチッキーの役目だ。チッキーは手先が器用で、綺麗な字を書けるのだ。きっとりっぱな返事を書いてくれるに違いない。
「オイラ達はこちらを見よう」
そう言いつつ、作業台にあるハンマーを取り除く。
師匠からの手紙を作業台に広げるためだ。
手紙は、大きな布とセットだった。手紙には力強い文字で課題が書いてあった。
オイラ達はお嬢様についてあっちこっちに出かけているので、なかなかギリアには戻れない。
ということで、最近はずっとこうやって手紙のやり取りをしている。
ご主人様がギリアまで白孔雀を飛ばしてくださるのだ。
オイラ達は、師匠に贈り物や作り上げた課題を送る。そして師匠から、新しい課題を受け取っている。
何度も何度もそうやって修行を続けている。
手紙には、前回の課題が上手だと賞賛の言葉があった。それから今度の課題は難しいものだと書いてあった。
「難しいって」
文字を読むのが早いトッキーが、一足先に読み終えて言った。
ちょっとだけ遅れて読み終えたオイラも同意とうなずく。
それから望むところだと心の中でつぶやいた。
「厩舎小屋……」
課題は厩舎小屋を作ること。図面も一から引いて、使った木の破片を図面と一緒に送るようにとあった。さらに、一緒に送った布に書いてある身体強化の魔法を使って、二人だけで作るようにと注釈があった。
「布を広げよう」
「うん。大きいからテーブルより床に広げるね。兄ちゃん」
トッキーがさっと作業台そばの椅子を片付けた。オイラは空いたスペースに布を丁寧に広げる。
『ザザッ!』
ちょうど布を広げた時だ。外で何かが滑る音がした。
「茶釜の足音だ」
音がしたほうに顔を向けると同時、トッキーが言った。
「きっとミズキ様だ」
茶釜で来られるのはミズキ様がほとんどだ。
「今日もお仕事?」
出迎えるために、走って外へでると、ミズキ様が笑って言った。
今日は、ミズキ様のほかにカガミ様も茶釜に乗っておられる。お二人とも楽しそうだ。
「はい師匠から厩舎を作る課題をいただいたので、それをやろうと思います」
「厩舎」
オイラの答えに、ミズキ様が嬉しそうに笑った。
それから言葉を続けられる。
「うんうん。厩舎、いいね。飛行島にもさ、モフモフ犬がくる予定だからさ、2人には期待してるよ」
それからミズキ様が言われた。モフモフ犬というのがわからないけれど、厩舎を必要とされるのなら、立派なものを作るだけだ。
「ところで、ピッキー君、ちっちゃい子供たちを乗せた手押し車って知ってる?」
続けてカガミ様が言われた。
ちっちゃい子供達を乗せた手押し車……それならばよく知っている。
「それならオイラ達が3日ほど前に作りました」
「えっ? ピッキー君が作ったの?」
お二人は、空から地上を眺めていて、オイラ達の作った手押し車を見つけたらしい。
それが、とても気になったらしい。ということで、詳細を知るために急遽やってきたそうだ。
「とうちゃんから相談を受けたんです」
だから、作った経緯を軽く説明する。
父ちゃんからのちょっとした相談の話だ。
それは村人のちょっとした困りごと。面倒をみる者が家にいない時に、子供達を仕事場近くまで連れて行って、目の届くところに置いておきたいという。
でも、いい方法がない。
小さな子供達は目を離すとすぐにどこかにいってしまう。どこにも行かないようにしながら移動する。だけど、その方法が思いつかない。
だから困っていると。
「それで、トッキー君とピッキー君が手押し車を作ったのね」
「はい。チッキーがお嬢様に相談したんです。そうしたらリーダ様が、いいものがあるとお知恵を授けてくださいました」
そう言ってお嬢様からの手紙を見せる。お嬢様がリーダ様に相談して教えてもらった工夫を書いたものだ。
なんでもホイクエンジという小さな子供を乗せる魔導具があるそうだ。
それはカートと呼ばれる手押し車。
言葉の意味はほとんどわからなかったが、リーダ様が図面を書いてくれたので、どういうものかはよくわかった。
しかも、その少しだけ後、サムソン様から魔法陣の提供もあった。沢山の子供を乗せても軽々と手押し車を動かせて、なおかつ揺れない魔法陣だ。
簡単に作ることができたので、一昨日から早速利用しているのだと説明する。
「既視感があると思っていたらリーダの考えだったんだ。やるじゃん」
「それならそうと、さっき言って欲しかったと思います。思いません?」
「そうだよね」
お二人はオイラ達の話を聞いてうんうんとうなずいてくれた。
それからいい仕事だと沢山褒めてくれた。
「でさ、カートってどこにいるの?」
そしてミズキ様が、ぜひ間近で見てみたいと言われた。
どこだろうと思ってトッキーを見ると、わからないと首をふる。もちろんオイラも知らない。
でも、考えて父ちゃんが知っていると気がついた。
なぜならば、父ちゃんは今や副村長。村でみんなに尊敬される人なのだ。
「そういうことならば、私がご案内いたしましょう。今日は開墾途中の畑にいるはずです。言葉での説明は難しいですし、手押し車を見るにも、私が一緒ならば話が早いはずです」
それから父ちゃんが、ミズキ様達を開墾途中の畑の場所まで案内することになった。
「じゃ、私たちは、ピッキー君達の力作……かわいいで一杯のカートをみてくるね」
「ピッキー君達もがんばってね。でも、無理しないようにして欲しいと思います」
牛の背に乗る父ちゃんと、茶釜に乗られるお二人を見送る。
「手押し車……すごく褒めてくれたね。兄ちゃん」
離れていく父ちゃんと二人を見てトッキーが言う。
「そうだな。厩舎も頑張ろう」
喜んでいただけてオイラは嬉しかった。それから飛行島にも、立派で素敵な厩舎を作ろうと決意した。
オイラ達はお暇をいただいた。
「せっかくだから、お父さん、お母さんと、ゆっくり過ごしてね」
お嬢様からはそう言葉をいただいた。
ということで、みんなで好きなことをして過ごすことにした。
トッキーとオイラは父ちゃんと大工仕事。チッキーは母ちゃんと一緒にお料理。
チッキーは、ご主人様達へのお土産に、チーズ菓子を作るらしい。
「みんな働きものっスね」
「足りない物があったら教えてねー」
楽しく過ごすオイラ達に、毎日一回だけ様子を見にくるご主人様達は、そう言った。
のんびりしつつも楽しい日々が続く。
師匠からの課題をこなし、思いついた物を作り、それから村のことを父ちゃんから聞いて過ごす。
それは、そんな風に過ごしていたお昼のことだった
家に併設してある木造りの作業場に、1匹のトーク鳥がバサバサと飛んできて、開けた窓からシュルリと飛び込んだ。
黄色いクチバシと鮮やかな身体をした鳥。
それはお嬢様のトーク鳥で、名前はオウム。リーダ様の故郷に似た鳥がいるらしい。
「キュゥ、グワッ」
高い鳴き声をあげて、その鳥はオイラのそばにフワリと降りた。
『トトト』
軽い感じの足音がして、チッキーが工房へと駆け込んでくる。
「お嬢様からのトーク鳥でち!」
飛んでくるトーク鳥を見ていたのだろう。チッキーは降り立ったトーク鳥を見ることなく言った。
それから軽い足取りでトーク鳥に近づいたかと思うと、その黄色い足にくくりつけてある小箱を外した。
続けて小箱を開ける。すると中には2通の手紙ときれいに折り畳まれた麻の布が入っていた。
手紙の一枚はお嬢様の字で書いてあるもので、もう一枚は師匠からのものだった。
お嬢様は手紙を書く練習をしているので、文面はちょっとだけ難しい。うんうんと、トッキーとチッキーの3人で考えて読み進める。
わからなければ、毎日訪ねて来てくださるご主人様達に相談すればいいのだけれど、できるだけオイラ達で読み取りたい。
「レーハフ師匠から手紙が届いたって内容だと思う」
ひとしきり悩んだ後でトッキーが結論を出した。
オイラも同じ考えなので、うんと頷いて同意する。お嬢様は、師匠からの手紙を送ってくださったわけだ。
一緒に入っていた師匠からの手紙がヒントだ。そうに違いない。
「お返事を書くでち」
チッキーが大きく頷く。そして作業場から出ていく。
返事を書くのはチッキーの役目だ。チッキーは手先が器用で、綺麗な字を書けるのだ。きっとりっぱな返事を書いてくれるに違いない。
「オイラ達はこちらを見よう」
そう言いつつ、作業台にあるハンマーを取り除く。
師匠からの手紙を作業台に広げるためだ。
手紙は、大きな布とセットだった。手紙には力強い文字で課題が書いてあった。
オイラ達はお嬢様についてあっちこっちに出かけているので、なかなかギリアには戻れない。
ということで、最近はずっとこうやって手紙のやり取りをしている。
ご主人様がギリアまで白孔雀を飛ばしてくださるのだ。
オイラ達は、師匠に贈り物や作り上げた課題を送る。そして師匠から、新しい課題を受け取っている。
何度も何度もそうやって修行を続けている。
手紙には、前回の課題が上手だと賞賛の言葉があった。それから今度の課題は難しいものだと書いてあった。
「難しいって」
文字を読むのが早いトッキーが、一足先に読み終えて言った。
ちょっとだけ遅れて読み終えたオイラも同意とうなずく。
それから望むところだと心の中でつぶやいた。
「厩舎小屋……」
課題は厩舎小屋を作ること。図面も一から引いて、使った木の破片を図面と一緒に送るようにとあった。さらに、一緒に送った布に書いてある身体強化の魔法を使って、二人だけで作るようにと注釈があった。
「布を広げよう」
「うん。大きいからテーブルより床に広げるね。兄ちゃん」
トッキーがさっと作業台そばの椅子を片付けた。オイラは空いたスペースに布を丁寧に広げる。
『ザザッ!』
ちょうど布を広げた時だ。外で何かが滑る音がした。
「茶釜の足音だ」
音がしたほうに顔を向けると同時、トッキーが言った。
「きっとミズキ様だ」
茶釜で来られるのはミズキ様がほとんどだ。
「今日もお仕事?」
出迎えるために、走って外へでると、ミズキ様が笑って言った。
今日は、ミズキ様のほかにカガミ様も茶釜に乗っておられる。お二人とも楽しそうだ。
「はい師匠から厩舎を作る課題をいただいたので、それをやろうと思います」
「厩舎」
オイラの答えに、ミズキ様が嬉しそうに笑った。
それから言葉を続けられる。
「うんうん。厩舎、いいね。飛行島にもさ、モフモフ犬がくる予定だからさ、2人には期待してるよ」
それからミズキ様が言われた。モフモフ犬というのがわからないけれど、厩舎を必要とされるのなら、立派なものを作るだけだ。
「ところで、ピッキー君、ちっちゃい子供たちを乗せた手押し車って知ってる?」
続けてカガミ様が言われた。
ちっちゃい子供達を乗せた手押し車……それならばよく知っている。
「それならオイラ達が3日ほど前に作りました」
「えっ? ピッキー君が作ったの?」
お二人は、空から地上を眺めていて、オイラ達の作った手押し車を見つけたらしい。
それが、とても気になったらしい。ということで、詳細を知るために急遽やってきたそうだ。
「とうちゃんから相談を受けたんです」
だから、作った経緯を軽く説明する。
父ちゃんからのちょっとした相談の話だ。
それは村人のちょっとした困りごと。面倒をみる者が家にいない時に、子供達を仕事場近くまで連れて行って、目の届くところに置いておきたいという。
でも、いい方法がない。
小さな子供達は目を離すとすぐにどこかにいってしまう。どこにも行かないようにしながら移動する。だけど、その方法が思いつかない。
だから困っていると。
「それで、トッキー君とピッキー君が手押し車を作ったのね」
「はい。チッキーがお嬢様に相談したんです。そうしたらリーダ様が、いいものがあるとお知恵を授けてくださいました」
そう言ってお嬢様からの手紙を見せる。お嬢様がリーダ様に相談して教えてもらった工夫を書いたものだ。
なんでもホイクエンジという小さな子供を乗せる魔導具があるそうだ。
それはカートと呼ばれる手押し車。
言葉の意味はほとんどわからなかったが、リーダ様が図面を書いてくれたので、どういうものかはよくわかった。
しかも、その少しだけ後、サムソン様から魔法陣の提供もあった。沢山の子供を乗せても軽々と手押し車を動かせて、なおかつ揺れない魔法陣だ。
簡単に作ることができたので、一昨日から早速利用しているのだと説明する。
「既視感があると思っていたらリーダの考えだったんだ。やるじゃん」
「それならそうと、さっき言って欲しかったと思います。思いません?」
「そうだよね」
お二人はオイラ達の話を聞いてうんうんとうなずいてくれた。
それからいい仕事だと沢山褒めてくれた。
「でさ、カートってどこにいるの?」
そしてミズキ様が、ぜひ間近で見てみたいと言われた。
どこだろうと思ってトッキーを見ると、わからないと首をふる。もちろんオイラも知らない。
でも、考えて父ちゃんが知っていると気がついた。
なぜならば、父ちゃんは今や副村長。村でみんなに尊敬される人なのだ。
「そういうことならば、私がご案内いたしましょう。今日は開墾途中の畑にいるはずです。言葉での説明は難しいですし、手押し車を見るにも、私が一緒ならば話が早いはずです」
それから父ちゃんが、ミズキ様達を開墾途中の畑の場所まで案内することになった。
「じゃ、私たちは、ピッキー君達の力作……かわいいで一杯のカートをみてくるね」
「ピッキー君達もがんばってね。でも、無理しないようにして欲しいと思います」
牛の背に乗る父ちゃんと、茶釜に乗られるお二人を見送る。
「手押し車……すごく褒めてくれたね。兄ちゃん」
離れていく父ちゃんと二人を見てトッキーが言う。
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