784 / 830
後日談 その2 出世の果てに
変貌した村
しおりを挟む
自動操縦の飛行島は昼夜問わず飛び続け、気がつけばピッキー達の故郷上空にいた。
思えばあっという間だった。飛行島は速い。
飛行島の庭に備え付けた地上を見る魔導具……テレビのようなそれに皆が集まっていた。
「間違いないんスよね」
「そうだな。上空から見ているのもあって、イメージが違うだけかもしれないぞ」
オレたちは困惑していた。
サムソンが自信をもって進んだ目的地は、上空からみると予想外に大きな集落に見えた。
集落というより、広大な畑をもつ街。
「いや、間違いないようですよ。下に広がるのはロンボ村ですね」
困惑して対応を話し合っていると、イオタイトが言った。
「思ったより大きな村だったんスね」
「いえ。すこし飛んで様子をみてきましたが、どうも広くなったのは最近のようです。危険はなさそうなので、降りてもかまわないかと」
「ですが、飛行島は大きいですし、リーダは王子なので……いきなり降りるのはやめたほうがいいと思います。思いません?」
確かにカガミの言う通りだな。
飛行島の一部を降ろすにしても、どこに降りるのがベストかわからない。
一応、オレは王子だしなぁ。お偉いさんが、いきなり村のど真ん中に降り立つのは迷惑だろう。先方の心の準備的に。
「おれっちが、先触れに行きましょうか?」
「玄関から、こんにちはでいいじゃん」
どうしようかと考えていると、ミズキが魔導具に映る村の一部を指差した。
それは門だった。
「そうだな。前回と同じように海亀にのっていくか」
ミズキの案を採用することにした。
海亀の背に小屋を乗せて、そこに皆で乗り込んで、門から村に入ることに決める。
立派な門だ。門番くらいはいるだろうし、取り次いでもらえるのではないかと考えた。門から入れば、先方も準備など可能だろう。
今更だけど、先に手紙くらい送っておけばよかったな。
「海亀の背の小屋に入るのって、久しぶりだよね」
「すごい! 広々としていると思います。思いません?」
「あぁ、それなら王都の魔導具大工から、素材を分けてもらったからな」
海亀の背に乗せた小屋は新バージョンになっていた。レイネアンナに、ハイエルフの双子、メンバーは旅をしていたときより増えたが、それを補ってあまりある広さだ。
豪華な小屋に皆で乗り込み、小さな飛行島を使い地上に降りる。
フラケーテア達双子のハイエルフによって、魔法がつむぐ植物の網にくるまれた海亀が、飛行島に吊される形でじんわりと降下していく。
編み目ごしに外を眺めると、飛行島がすごい高度を飛んでいたことを実感できた。
「出発進行!」
目的地から少し離れた場所に降り立つと、ピッキーが掛け声をあげて海亀が出発する。
出発進行の掛け声を聞くと、なんだか昔を思い出す。
久しぶりになる海亀での移動に、同僚達も懐かしさを感じたようで、皆が小屋に引きこもることなく、外にでて揺れる景色を楽しんでいた。
それはノアも一緒だったようで、目をキラキラとさせ外を見ていた。
もっとも、海亀の小屋で進む時間はすぐ終わる。
「もうすぐ到着です」
ピッキーが声をあげた。楽しい時間はすぐ過ぎる……というより、目的地の近くで降りたからなのだが、少し物足りない。
それだけ海亀の小屋で進む時間は楽しかった。それはノアも同じだったようで、なんだか到着して残念そうだった。
目的地であるピッキー達の故郷。以前は無かった木製の壁が張り巡らされ、固く閉じられた門には門番が数人いた。全員がピッキーと同じ種族だ。つまりレッサーパンダの獣人。鍋のような兜をかぶり、質素な槍を構えている門番達はどこかコミカルな印象だ。
そんな彼らが守る門は立派だ。本当に、前とは印象が違う。大きな変貌だ。
「ピーッ!」
そんな立派な門にたむろしていた門番の一人が、オレ達を見つけるやいなや笛を鳴らした。
「ど、どうしましょうか?」
いきなりの対応に困惑したピッキーが指示を求めてくる。
「一旦停まって、様子を見よう」
少しだけ様子を見ることにした。
敵対的な行動というわけではないが、どうにも妙な動きが気になった。笛を鳴らした門番は、ピーピー笛を吹きながら右往左往するばかり。
他の門番は槍をほっぽって、集まって相談を始めている。
「なんだか面白そうだよね」
ミズキがヘラヘラ笑いながら、混乱している門番を眺め言った。
最初こそ、オレ達も緊迫感をもって見ていたが、すぐにどうでも良くなっていた。
「もう、進んでしまおう」
埒があかないので、海亀で近づく事に決めた。
向こうも戦う気は無さそうだ。もめ事があっても、今のオレ達なら対処可能だろうという判断だ。
ところがそんなことは無かった。
「どうします、リーダ?」
カガミが困った顔でオレを見た。
大抵の事は対処可能だと思っていたが、予想外の反応には考えが追いつかないものだ。
門番は、オレ達が近づくと、そろって土下座して頭を上下する。
オレ達をみて、すぐさま地面を見る。ゆっくりとしたペースで、オレ達と地面を交互にみる様子はまるで拝んでいるようだ。
「あの……オイラは、ノアサリーナ様の従者で……おうちに帰ることにして……」
「英雄様だ。英雄様だぞ」
ピッキーがおずおずと門番に声をかけるが、門番はそんなピッキーに対して妙な事を言いながら態度を変えようとしない。
だけど、そんな状況もようやく終わりを告げた。
固く閉じられた門が、内開きにギギっという音をたて開いたのだ。
「あっ、父ちゃん!」
ピッキーが安堵の声をあげる。
開いた門の向こうに、彼の父親がいた。それからカラフルなシルクハットを被った……村長と屈強な護衛がいた。
ともあれ、これでこの妙な状況から解放……。
少しだけ安堵し、余裕が出来たときだった。
「ちょっと、リーダ、あれ!」
ミズキが門の奥に広がる村の一方を指さし声をあげる。
なんだろうと彼女が示す先をみる。
「あっ」
そこに、予想外の代物を見つけた。
思えばあっという間だった。飛行島は速い。
飛行島の庭に備え付けた地上を見る魔導具……テレビのようなそれに皆が集まっていた。
「間違いないんスよね」
「そうだな。上空から見ているのもあって、イメージが違うだけかもしれないぞ」
オレたちは困惑していた。
サムソンが自信をもって進んだ目的地は、上空からみると予想外に大きな集落に見えた。
集落というより、広大な畑をもつ街。
「いや、間違いないようですよ。下に広がるのはロンボ村ですね」
困惑して対応を話し合っていると、イオタイトが言った。
「思ったより大きな村だったんスね」
「いえ。すこし飛んで様子をみてきましたが、どうも広くなったのは最近のようです。危険はなさそうなので、降りてもかまわないかと」
「ですが、飛行島は大きいですし、リーダは王子なので……いきなり降りるのはやめたほうがいいと思います。思いません?」
確かにカガミの言う通りだな。
飛行島の一部を降ろすにしても、どこに降りるのがベストかわからない。
一応、オレは王子だしなぁ。お偉いさんが、いきなり村のど真ん中に降り立つのは迷惑だろう。先方の心の準備的に。
「おれっちが、先触れに行きましょうか?」
「玄関から、こんにちはでいいじゃん」
どうしようかと考えていると、ミズキが魔導具に映る村の一部を指差した。
それは門だった。
「そうだな。前回と同じように海亀にのっていくか」
ミズキの案を採用することにした。
海亀の背に小屋を乗せて、そこに皆で乗り込んで、門から村に入ることに決める。
立派な門だ。門番くらいはいるだろうし、取り次いでもらえるのではないかと考えた。門から入れば、先方も準備など可能だろう。
今更だけど、先に手紙くらい送っておけばよかったな。
「海亀の背の小屋に入るのって、久しぶりだよね」
「すごい! 広々としていると思います。思いません?」
「あぁ、それなら王都の魔導具大工から、素材を分けてもらったからな」
海亀の背に乗せた小屋は新バージョンになっていた。レイネアンナに、ハイエルフの双子、メンバーは旅をしていたときより増えたが、それを補ってあまりある広さだ。
豪華な小屋に皆で乗り込み、小さな飛行島を使い地上に降りる。
フラケーテア達双子のハイエルフによって、魔法がつむぐ植物の網にくるまれた海亀が、飛行島に吊される形でじんわりと降下していく。
編み目ごしに外を眺めると、飛行島がすごい高度を飛んでいたことを実感できた。
「出発進行!」
目的地から少し離れた場所に降り立つと、ピッキーが掛け声をあげて海亀が出発する。
出発進行の掛け声を聞くと、なんだか昔を思い出す。
久しぶりになる海亀での移動に、同僚達も懐かしさを感じたようで、皆が小屋に引きこもることなく、外にでて揺れる景色を楽しんでいた。
それはノアも一緒だったようで、目をキラキラとさせ外を見ていた。
もっとも、海亀の小屋で進む時間はすぐ終わる。
「もうすぐ到着です」
ピッキーが声をあげた。楽しい時間はすぐ過ぎる……というより、目的地の近くで降りたからなのだが、少し物足りない。
それだけ海亀の小屋で進む時間は楽しかった。それはノアも同じだったようで、なんだか到着して残念そうだった。
目的地であるピッキー達の故郷。以前は無かった木製の壁が張り巡らされ、固く閉じられた門には門番が数人いた。全員がピッキーと同じ種族だ。つまりレッサーパンダの獣人。鍋のような兜をかぶり、質素な槍を構えている門番達はどこかコミカルな印象だ。
そんな彼らが守る門は立派だ。本当に、前とは印象が違う。大きな変貌だ。
「ピーッ!」
そんな立派な門にたむろしていた門番の一人が、オレ達を見つけるやいなや笛を鳴らした。
「ど、どうしましょうか?」
いきなりの対応に困惑したピッキーが指示を求めてくる。
「一旦停まって、様子を見よう」
少しだけ様子を見ることにした。
敵対的な行動というわけではないが、どうにも妙な動きが気になった。笛を鳴らした門番は、ピーピー笛を吹きながら右往左往するばかり。
他の門番は槍をほっぽって、集まって相談を始めている。
「なんだか面白そうだよね」
ミズキがヘラヘラ笑いながら、混乱している門番を眺め言った。
最初こそ、オレ達も緊迫感をもって見ていたが、すぐにどうでも良くなっていた。
「もう、進んでしまおう」
埒があかないので、海亀で近づく事に決めた。
向こうも戦う気は無さそうだ。もめ事があっても、今のオレ達なら対処可能だろうという判断だ。
ところがそんなことは無かった。
「どうします、リーダ?」
カガミが困った顔でオレを見た。
大抵の事は対処可能だと思っていたが、予想外の反応には考えが追いつかないものだ。
門番は、オレ達が近づくと、そろって土下座して頭を上下する。
オレ達をみて、すぐさま地面を見る。ゆっくりとしたペースで、オレ達と地面を交互にみる様子はまるで拝んでいるようだ。
「あの……オイラは、ノアサリーナ様の従者で……おうちに帰ることにして……」
「英雄様だ。英雄様だぞ」
ピッキーがおずおずと門番に声をかけるが、門番はそんなピッキーに対して妙な事を言いながら態度を変えようとしない。
だけど、そんな状況もようやく終わりを告げた。
固く閉じられた門が、内開きにギギっという音をたて開いたのだ。
「あっ、父ちゃん!」
ピッキーが安堵の声をあげる。
開いた門の向こうに、彼の父親がいた。それからカラフルなシルクハットを被った……村長と屈強な護衛がいた。
ともあれ、これでこの妙な状況から解放……。
少しだけ安堵し、余裕が出来たときだった。
「ちょっと、リーダ、あれ!」
ミズキが門の奥に広がる村の一方を指さし声をあげる。
なんだろうと彼女が示す先をみる。
「あっ」
そこに、予想外の代物を見つけた。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~
深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公
じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい
…この世界でも生きていける術は用意している
責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう
という訳で異世界暮らし始めちゃいます?
※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです
※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる