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第三十四章 途方も無い企み
たんざく
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山の斜面に沿って、足の踏み場もないほどの人混みが目の前に広がっている。
男性、女性、種族もバラバラ、服装もバラバラ。本当にいろいろな場所から集まってくれたことがわかる。
そんな皆が、魔神復活を告げるオレを黙って見ていた。
「魔神」
誰かが言った。
集まった人々がざわめき始めた。
「魔神が復活するのですか?」
人々の中から、質問があった。
誰が言ったのかわからない。その質問は、複数の人から連続するように投げかけられた。
「はい。近く、魔神が復活します。王の月、4日目の日が高く昇る頃です」
オレは、再びはっきりと言った。
そして手をグッと握った。
――なぜ、そこまで正確な日にちがわかるのか?
これから来るであろう質問に、備える。
「ご武運を!」
だけど、人々から追加の質問は無く、違う言葉が返ってきた。
「勝利を」
「ご武運を」
その2つの言葉を人々は繰り返した。
「どういうこと?」
後に立っているミズキの困惑した声が聞こえた。
皆がオレの言葉をすんなり受け入れた事、誰も疑問を口にしない事に、同僚達も困惑していた。
「魔神の復活は決まり切った事。逃げる事ができない運命だ」
「おじいちゃん?」
背後から続けて2人の声が聞こえた。
ノアと、そしてカロンロダニアだ。
振り向くと、いつの間にかカロンロダニアがいて、続いてファラハが壇上に登ってくる姿が見えた。
オレを見てカロンロダニアが微笑み言葉を続ける。
「今回の件と、魔神復活に関わりがある事は皆が気付いていた。そのうえで皆は協力した。加えて日付も知ることができた。それ以上、詮索も、知る必要も無い」
「しかし、それでは……カロンロダニア様は魔神が復活する日を、私達が知っている理由に疑問を持たないのですか?」
微笑みながらカロンロダニアが続ける言葉に、カガミが質問を投げかける。
その言葉を聞いて、カロンロダニアは意外な事を言われたといわんばかりに、目を広げ、直後笑いだした。
「フハハハ。なるほど、そういう事か。そんな事は誰も疑問に思わぬよ。今さらな」
「今さら……ですか?」
「うむ。数多くの奇跡を成し遂げ、誰もが及ばぬ英知を次々と披露する貴方方に、今さら……だろう。しかし、そういうものなのだな。自分の事は存外わからぬのは、誰もが同じらしい」
楽しそうに笑うカロンロダニアをチラリと見たファラハが、オレ達を見回し口を開く。
「皆様には皆様の思惑があるやもしれません。でも、別にいいのです。皆が集まり、力を合わせる事の意義を確認できました。それに我らはハーモニーを手にすることができて、希望が持てました」
疑問に思わないのはファラハも同じなのか。
いまいちピンと来ないが、きっと信用されているからなのだろうと、少しだけ納得することにした。
「では、後は我らに任せてもらえるかな?」
ようやくオレを含めて同僚達がホッとした表情になった頃、カロンロダニアが言った。
「後?」
「魔神復活に際し、この場で、ここまで人が集まっているのは良いことではない。各々の居るべき場所で対処すべきだろう」
「解散し、守りを固めるということでしょうか?」
「あぁ。さきほどから勇者の軍の船も待機している。後は我らに任せて欲しい」
オレに笑顔のカロンロダニアが言い、ファラハが頷いた。その背後には、エスメラーニャとキンダッタ、そしてカガミの友人であるマルグリットの姿もあった。
そして、まるで追い払われるようにオレ達は壇上から降ろされ、屋敷に戻ることになった。
オレ達が後にした壇上から、ファラハの演説するような声が聞こえた。
それからタタッと早足で進んだミズキが振り返り笑う。
「結局さ、私達が思っている以上に皆が優しかったよね」
そして彼女は軽い調子で言った。
「そうだな。だけど、少しハードルが上がったぞ」
リラックスした様子のサムソンが、弾んだ声で言う。
「そうですね。究極を超える究極で叶える願いに……この世界の人達への恩返しも含めないとダメだと思います。思いません?」
確かにカガミの言うとおりだ。
「どうせ、大量に願いを叶えるつもりだ。世界平和に向けた願いも沢山お願いしないとな」
オレは笑いながらカガミに同調する。
「じゃさ、エックスデーまで、皆で思いつく限りの願い事を用意しようよ」
ミズキが笑いながら言い、さらに言葉を続ける。
「紙にひたすら願い事を書いて、そうそう、あれ……あの、7月の……そう、たなばた。七夕の短冊みたいな感じで、書いていって、まとめちゃおう」
「いいと思います。まとめたら、単語カードみたいになりそうです。私、単語カードを作るのが好きだったんです。英単語のとか」
単語カード……あぁ、受験勉強なんかで作った長方形の紙を金属の輪でまとめたヤツか。
たしかに、願い事を沢山まとめて、上から願っていけば良い感じになりそうだ。
「それでいこうか。願い事を短冊に込めることにしよう」
オレは頷き、魔神復活までの予定に、1つの行事を加えることを宣言した。
男性、女性、種族もバラバラ、服装もバラバラ。本当にいろいろな場所から集まってくれたことがわかる。
そんな皆が、魔神復活を告げるオレを黙って見ていた。
「魔神」
誰かが言った。
集まった人々がざわめき始めた。
「魔神が復活するのですか?」
人々の中から、質問があった。
誰が言ったのかわからない。その質問は、複数の人から連続するように投げかけられた。
「はい。近く、魔神が復活します。王の月、4日目の日が高く昇る頃です」
オレは、再びはっきりと言った。
そして手をグッと握った。
――なぜ、そこまで正確な日にちがわかるのか?
これから来るであろう質問に、備える。
「ご武運を!」
だけど、人々から追加の質問は無く、違う言葉が返ってきた。
「勝利を」
「ご武運を」
その2つの言葉を人々は繰り返した。
「どういうこと?」
後に立っているミズキの困惑した声が聞こえた。
皆がオレの言葉をすんなり受け入れた事、誰も疑問を口にしない事に、同僚達も困惑していた。
「魔神の復活は決まり切った事。逃げる事ができない運命だ」
「おじいちゃん?」
背後から続けて2人の声が聞こえた。
ノアと、そしてカロンロダニアだ。
振り向くと、いつの間にかカロンロダニアがいて、続いてファラハが壇上に登ってくる姿が見えた。
オレを見てカロンロダニアが微笑み言葉を続ける。
「今回の件と、魔神復活に関わりがある事は皆が気付いていた。そのうえで皆は協力した。加えて日付も知ることができた。それ以上、詮索も、知る必要も無い」
「しかし、それでは……カロンロダニア様は魔神が復活する日を、私達が知っている理由に疑問を持たないのですか?」
微笑みながらカロンロダニアが続ける言葉に、カガミが質問を投げかける。
その言葉を聞いて、カロンロダニアは意外な事を言われたといわんばかりに、目を広げ、直後笑いだした。
「フハハハ。なるほど、そういう事か。そんな事は誰も疑問に思わぬよ。今さらな」
「今さら……ですか?」
「うむ。数多くの奇跡を成し遂げ、誰もが及ばぬ英知を次々と披露する貴方方に、今さら……だろう。しかし、そういうものなのだな。自分の事は存外わからぬのは、誰もが同じらしい」
楽しそうに笑うカロンロダニアをチラリと見たファラハが、オレ達を見回し口を開く。
「皆様には皆様の思惑があるやもしれません。でも、別にいいのです。皆が集まり、力を合わせる事の意義を確認できました。それに我らはハーモニーを手にすることができて、希望が持てました」
疑問に思わないのはファラハも同じなのか。
いまいちピンと来ないが、きっと信用されているからなのだろうと、少しだけ納得することにした。
「では、後は我らに任せてもらえるかな?」
ようやくオレを含めて同僚達がホッとした表情になった頃、カロンロダニアが言った。
「後?」
「魔神復活に際し、この場で、ここまで人が集まっているのは良いことではない。各々の居るべき場所で対処すべきだろう」
「解散し、守りを固めるということでしょうか?」
「あぁ。さきほどから勇者の軍の船も待機している。後は我らに任せて欲しい」
オレに笑顔のカロンロダニアが言い、ファラハが頷いた。その背後には、エスメラーニャとキンダッタ、そしてカガミの友人であるマルグリットの姿もあった。
そして、まるで追い払われるようにオレ達は壇上から降ろされ、屋敷に戻ることになった。
オレ達が後にした壇上から、ファラハの演説するような声が聞こえた。
それからタタッと早足で進んだミズキが振り返り笑う。
「結局さ、私達が思っている以上に皆が優しかったよね」
そして彼女は軽い調子で言った。
「そうだな。だけど、少しハードルが上がったぞ」
リラックスした様子のサムソンが、弾んだ声で言う。
「そうですね。究極を超える究極で叶える願いに……この世界の人達への恩返しも含めないとダメだと思います。思いません?」
確かにカガミの言うとおりだ。
「どうせ、大量に願いを叶えるつもりだ。世界平和に向けた願いも沢山お願いしないとな」
オレは笑いながらカガミに同調する。
「じゃさ、エックスデーまで、皆で思いつく限りの願い事を用意しようよ」
ミズキが笑いながら言い、さらに言葉を続ける。
「紙にひたすら願い事を書いて、そうそう、あれ……あの、7月の……そう、たなばた。七夕の短冊みたいな感じで、書いていって、まとめちゃおう」
「いいと思います。まとめたら、単語カードみたいになりそうです。私、単語カードを作るのが好きだったんです。英単語のとか」
単語カード……あぁ、受験勉強なんかで作った長方形の紙を金属の輪でまとめたヤツか。
たしかに、願い事を沢山まとめて、上から願っていけば良い感じになりそうだ。
「それでいこうか。願い事を短冊に込めることにしよう」
オレは頷き、魔神復活までの予定に、1つの行事を加えることを宣言した。
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