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第三十三章 未来に向けて
せいりせいとん
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久しぶりの海亀での旅。
小屋を載せた海亀はご機嫌で、軽やかに足を動かす。
「少しは自分で歩くと言っているのです」
最初はずっと茶釜に引っ張ってもらおうかと思っていたが、ヌネフの通訳によると海亀も自分の足で歩きたいらしい。結果的に、一日の半分は海亀がトコトコと歩いて進んだ。
それでもすごいペースで旅は住む。
旅は平和に進んだ。たまには魔物が出るが魔法の矢でイチコロだ。
周りの景色は、葉っぱのない木が目立つ。季節的には冬なのだが、まるでオレ達の旅を応援するかのようにポカポカ陽気が続いた。
小屋の屋根でごろりと転がり空を見る。
大空に広がる巨大魔方陣……天の蓋が邪魔だが、流れる雲と青い空が気持ちいい。
オレが寝転がっているそばで、ノアは先ほどから熱心に絵を描いている。
「気持ちよさそうに飛んでるね」
「うん」
ノアが描いているのは、最近仲間に加わったロック鳥だ。
オレ達が出発してしばらくして、追いかけてきたのだ。
こうして見るとでっかいスズメだな。
付かず離れず飛んでいる。夜になると小屋の屋根に止まって体を休めているようだ。
そうしてロック鳥を眺めつつ屋根で寝転がったり、究極を超える究極のために頑張って働いたり、快適な旅は続く。
そして、その出来事はそんな海亀の小屋の中で起こった。
「リーダ、これ私の着替えじゃないんですけど」
「ごめんごめん。似たようなものがいっぱいあってさ、間違えちゃったよ」
旅に備えて皆の着替えを木箱に詰めた。
それは、それぞれの人について一箱ずつ。
他にも魔道具の製作の為に必要な道具一式。魔法の触媒一式。色々なものを箱に詰めて出発したのだが、似たような箱に詰めてしまったので取り出すのに間違えてしまうのだ。
今までも同じように箱に詰めていたのだが、いままで使っていた箱は、足りなくなる度に、現地で手に入れた箱を使っていたので、それぞれの箱の特徴がはっきりしていた。今回は古くなった箱を捨てて新調した箱に入れなおしたため、見た目が全部同じ箱になってしまった。それが仇となって取り出すときの間違いが増えたのだ。
他にも、急に増えた古い時代の資料が、今田把握できず、よく影から取り出す時に間違えてしまう。
「うーん。どうにもイメージしにくいな」
影から箱を3個取り出してカガミに渡す。どれも見た目が全く同じ。
本当に、どれがどれだかわからない。
「確かに失敗したと思います」
「資料も増えたしな。良い機会だから、対策すべきだと思うぞ」
対策ということで、荷物の分類をすることにした。分類というより分かりやすくすることにしたのだ。
「では箱に、名前を書こうと思います」
「イメージしやすいように、ついでに中身が分かるようなメモを書いといてくれよ」
「箱にメモって、引っ越しの時の荷物みたいな感じ?」
「そうそう、そんな感じ。ミズキが言うように、引っ越しの時に用意するダンボールみたいな感じ。できるだけイメージしやすいほうがいいんだよ」
「だったらマークを付けたほうがいいと思います」
「マーク?」
「えっとね、ノアノア。こんな感じで……服だったらこう。食べ物だったらこう」
ノアの質問に対して、ミズキが紙にささっとイラストを書く。
衣服だったらTシャツのマーク、食べ物だったらマンガ肉を、ミズキが手早く描いて見せた。こうやってみるとミズキはイラストがうまい。
「豆判みたいな?」
「そうそう。スタンプもいいよね」
ということで、豆判と文字を使った、荷物の分類が始まった。
同じような木箱に入った荷物と、古い時代の資料をはじめとする紙類の分類を進めることにした。
「これは、ノアちゃんのっスか?」
「私のお絵かき帳だ」
「だったら、ノアノアのマークだね」
「これは、レシピだと思いますが……」
「マヨネーズの分類スね」
「プレインお兄ちゃんのマークだね」
ノアが紙の隅っこに豆判を押す。紙の分類にはマークとメモ、それから番号。
番号はパソコンの魔法でデータベースを作りそれによって分類する。
ピンポイントで見つけたい場合は番号で、そこまで厳密でない場合はマークとメモで、オレはイメージを膨らませ影から取り出す。そういう段取りだ。
一番大変なのは紙資料だった。
思った以上に紙の資料は多い。
「これは、何だっけ?」
複数の人が書いたメモを、一枚の紙に貼り付けた資料が見つかる。
こういった、何の資料なのか一見わからないものも沢山ある。
「タイマーネタの言葉だよ、リーダ。これが、私で、これがチッキー……それでこれがクローヴィス」
オレが影から取り出して、皆に見せるようにピラピラと紙を振ると、ノアが手をあげて答えた。
タイマーネタの言葉?
あぁ、思い出した。思い出した。タイマーネタを起動させるキーワードだ。
魔導弓タイマーネタは見る人によって起動の言葉が違うんだよな。
特に、チッキー達獣人の見える言葉は、自爆キーワードで危ない。
「これは危ないから、危ないマークだな」
「危ないマーク?」
「骸骨……で、こんなやつ」
ミズキがすらすらとイラストをかく。しゃれこうべの下にペケ印をつけたやつだ。
漫画なんかにでてくる毒薬に描いていそうなマークだ。
「私が描くね」
そういってノアが、ミズキのイラストを元に、骸骨を描いて、それから危険と文字をつけくわえた。
骸骨が、骸骨なのに可愛らしい。
それから先も、整理整頓は続いていく。
似たような箱に名札をつけたり、マークを描いたり。
途中から、ノアとオレが中心となって整理整頓を続けていき数日後。
「村長様がぁ、出迎えてくれるみたいよぉ」
先行するミズキについていったロンロが一人戻ってくる。
「あの人影か?」
「そうよぉ」
快適で、ちょっぴり忙しかった久しぶりの旅はあっけなく終わり、オレ達は遺跡の村へとたどり着いた。さて、超巨大ゴーレムとご対面だ。
小屋を載せた海亀はご機嫌で、軽やかに足を動かす。
「少しは自分で歩くと言っているのです」
最初はずっと茶釜に引っ張ってもらおうかと思っていたが、ヌネフの通訳によると海亀も自分の足で歩きたいらしい。結果的に、一日の半分は海亀がトコトコと歩いて進んだ。
それでもすごいペースで旅は住む。
旅は平和に進んだ。たまには魔物が出るが魔法の矢でイチコロだ。
周りの景色は、葉っぱのない木が目立つ。季節的には冬なのだが、まるでオレ達の旅を応援するかのようにポカポカ陽気が続いた。
小屋の屋根でごろりと転がり空を見る。
大空に広がる巨大魔方陣……天の蓋が邪魔だが、流れる雲と青い空が気持ちいい。
オレが寝転がっているそばで、ノアは先ほどから熱心に絵を描いている。
「気持ちよさそうに飛んでるね」
「うん」
ノアが描いているのは、最近仲間に加わったロック鳥だ。
オレ達が出発してしばらくして、追いかけてきたのだ。
こうして見るとでっかいスズメだな。
付かず離れず飛んでいる。夜になると小屋の屋根に止まって体を休めているようだ。
そうしてロック鳥を眺めつつ屋根で寝転がったり、究極を超える究極のために頑張って働いたり、快適な旅は続く。
そして、その出来事はそんな海亀の小屋の中で起こった。
「リーダ、これ私の着替えじゃないんですけど」
「ごめんごめん。似たようなものがいっぱいあってさ、間違えちゃったよ」
旅に備えて皆の着替えを木箱に詰めた。
それは、それぞれの人について一箱ずつ。
他にも魔道具の製作の為に必要な道具一式。魔法の触媒一式。色々なものを箱に詰めて出発したのだが、似たような箱に詰めてしまったので取り出すのに間違えてしまうのだ。
今までも同じように箱に詰めていたのだが、いままで使っていた箱は、足りなくなる度に、現地で手に入れた箱を使っていたので、それぞれの箱の特徴がはっきりしていた。今回は古くなった箱を捨てて新調した箱に入れなおしたため、見た目が全部同じ箱になってしまった。それが仇となって取り出すときの間違いが増えたのだ。
他にも、急に増えた古い時代の資料が、今田把握できず、よく影から取り出す時に間違えてしまう。
「うーん。どうにもイメージしにくいな」
影から箱を3個取り出してカガミに渡す。どれも見た目が全く同じ。
本当に、どれがどれだかわからない。
「確かに失敗したと思います」
「資料も増えたしな。良い機会だから、対策すべきだと思うぞ」
対策ということで、荷物の分類をすることにした。分類というより分かりやすくすることにしたのだ。
「では箱に、名前を書こうと思います」
「イメージしやすいように、ついでに中身が分かるようなメモを書いといてくれよ」
「箱にメモって、引っ越しの時の荷物みたいな感じ?」
「そうそう、そんな感じ。ミズキが言うように、引っ越しの時に用意するダンボールみたいな感じ。できるだけイメージしやすいほうがいいんだよ」
「だったらマークを付けたほうがいいと思います」
「マーク?」
「えっとね、ノアノア。こんな感じで……服だったらこう。食べ物だったらこう」
ノアの質問に対して、ミズキが紙にささっとイラストを書く。
衣服だったらTシャツのマーク、食べ物だったらマンガ肉を、ミズキが手早く描いて見せた。こうやってみるとミズキはイラストがうまい。
「豆判みたいな?」
「そうそう。スタンプもいいよね」
ということで、豆判と文字を使った、荷物の分類が始まった。
同じような木箱に入った荷物と、古い時代の資料をはじめとする紙類の分類を進めることにした。
「これは、ノアちゃんのっスか?」
「私のお絵かき帳だ」
「だったら、ノアノアのマークだね」
「これは、レシピだと思いますが……」
「マヨネーズの分類スね」
「プレインお兄ちゃんのマークだね」
ノアが紙の隅っこに豆判を押す。紙の分類にはマークとメモ、それから番号。
番号はパソコンの魔法でデータベースを作りそれによって分類する。
ピンポイントで見つけたい場合は番号で、そこまで厳密でない場合はマークとメモで、オレはイメージを膨らませ影から取り出す。そういう段取りだ。
一番大変なのは紙資料だった。
思った以上に紙の資料は多い。
「これは、何だっけ?」
複数の人が書いたメモを、一枚の紙に貼り付けた資料が見つかる。
こういった、何の資料なのか一見わからないものも沢山ある。
「タイマーネタの言葉だよ、リーダ。これが、私で、これがチッキー……それでこれがクローヴィス」
オレが影から取り出して、皆に見せるようにピラピラと紙を振ると、ノアが手をあげて答えた。
タイマーネタの言葉?
あぁ、思い出した。思い出した。タイマーネタを起動させるキーワードだ。
魔導弓タイマーネタは見る人によって起動の言葉が違うんだよな。
特に、チッキー達獣人の見える言葉は、自爆キーワードで危ない。
「これは危ないから、危ないマークだな」
「危ないマーク?」
「骸骨……で、こんなやつ」
ミズキがすらすらとイラストをかく。しゃれこうべの下にペケ印をつけたやつだ。
漫画なんかにでてくる毒薬に描いていそうなマークだ。
「私が描くね」
そういってノアが、ミズキのイラストを元に、骸骨を描いて、それから危険と文字をつけくわえた。
骸骨が、骸骨なのに可愛らしい。
それから先も、整理整頓は続いていく。
似たような箱に名札をつけたり、マークを描いたり。
途中から、ノアとオレが中心となって整理整頓を続けていき数日後。
「村長様がぁ、出迎えてくれるみたいよぉ」
先行するミズキについていったロンロが一人戻ってくる。
「あの人影か?」
「そうよぉ」
快適で、ちょっぴり忙しかった久しぶりの旅はあっけなく終わり、オレ達は遺跡の村へとたどり着いた。さて、超巨大ゴーレムとご対面だ。
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