召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第三十二章 病の王国モルスス、その首都アーハガルタにて

アーハガルタ

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 ミランダの持ち込んだ情報。
 クイットパースの北東にあるという魔の三角地帯。そして、そこにある遺跡の情報。
 もともと黒の滴が潜んでいた遺跡には、黒本らしきものが大量にあるという。
 そんな遺跡の対応をどうするかという問題に、ゲオルニクスを呼び聞いてみるというオレの提案。

「確かにそうだな。黒本はゲオルニクスの知り合いが作った物だというし、何か知っている可能性が高いか……」
「そうですね。情報を集めるのはいいと思います」
「いいんじゃない」

 同僚達もオレのアイデアに同調してくれる。
 ゲオルニクスは、ノームに頼めば来てくれると聞いている。
 そうと決まればミランダには、判断に時間がかかることを説明しなくてはならない。

「もう! ミランダはあっちいけ」

 オレがミランダに話をしようと、彼女とノアがいるテーブルを見た直後だった。
 ノアが何やらミランダに怒っていた。

「どうしたんだい?」
「リーダ! ミランダが邪魔をする!」

 オレが声をかけると怒り心頭なノアが教えてくれる。
 ノアが金貨の枚数を数えていると、ミランダが話しかけてきたそうだ。

「あのね、めちゃくちゃな数を言いながら話しかけてくるの」
「そんなことないわ。私がどうやってここまで来たのか教えてあげていたのよ」
「聞いてないの!」
「あらあら、酷い」

 ミランダがノアをからかっているのか。
 ヘラヘラ笑うミランダはとても楽しそうで、眉間に皺を寄せて睨むノアとは対照的だ。
 まったく困ったものだ。

「ノアは金貨を数えているんだから、邪魔をするなよ」
「そうだ、そうだ」
「お邪魔だったのかしら?」

 何が、お邪魔だったのかしら……だ。絶対にわかってやってるだろ。
 確かに口をとんがらかせて怒るノアは面白いけれど。なんてこと言っちゃダメだよな。

「ところで返事かしら?」
「さっきの件について知ってそうな人に相談するから、それまで待って欲しい」
「どのくらい?」
「今日の事にはならないかな。少なくても数日後だ」

 オレの言葉に、ミランダがニヤリと笑う。また何かを企む悪い笑みだ。
 彼女の表情を見てノアが警戒するのがわかる。

「だったら、少し、ここで過ごしていいかしら?」

 ミランダが飛行島の家を見やる。
 確かに、数日でゲオルニクスが来るなら、ここで待ってもらうほうがいいかな。
 ギリアの町には行きそうにないし、何処にいるか分からない状況よりマシだ。
 それがいいだろうと考えて了承し、オレ達はギリアの屋敷に戻った。

「家賃払えよ、ミランダ!」

 帰り際、ノアなりの凄みを利かせてミランダに言い放った言葉が面白かった。
 それから、すぐにノームにゲオルニクスを呼んでもらうようお願いする。
 ちなみにロンロはミランダの気配を感じて、即座に逃げたらしい。
 ハロルドは呪い克服の特訓後でぐったりしていたのだとか。
 そして、4日が過ぎた。
 特にミランダは飛行島から降りてくる事はなかった。
 食事を持っていったカガミが言うには、本を読んで過ごしているらしかった。
 あとは、ノアが2度ほど勝負を挑んで撃退されたくらいだ。
 1度目は何やら言いくるめられて戻ってきた。
 2度目は、騙されたと激高して戦いを挑み、飛行島から叩きおとされていた。
 もっとも、落下速度は途中でゆっくりとなり、フワリと着地して無傷だったので心配はない。

「なんだかんだ言って、ミランダとノアノアって仲いいよね」

 2度目の戦いに同行していたミズキは、笑いながら2人の関係をそう表していた。
 ゲオルニクスがやってきたのは、そんな平和な日々の事だった。
 彼はヒンヒトルテをテンホイル遺跡まで送って、それから少しだけ発掘を手助けしていたらしい。
 とりあえずゲオルニクスを屋敷に招き入れ、同僚達そしてノアとハロルド、そしてロンロで話をする。

「それは、きっと……いや、絶対にアーハガルタだァ。モルススの首都だ」

 ミランダに聞いた話をゲオルニクスに伝えると、彼は断言した。
 モルススの首都……つまりは敵の本拠地だった場所だと。
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