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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実
かししょくにん
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「大変そうだから助けるって、働くってことか?」
「リーダ、なに嫌そうな顔してるの。うける」
「嫌に決まっているだろ。労働だぞ労働」
働くという選択肢を、どうしてこんなにも、にこやかに提案できるのか不思議だ。
仕事してないから、禁断症状が出ているのかな。
「ひどい業者がいてですね。大事な食材が買い占めされたり、職人が引き抜かれたんですって」
カガミも労働したいサイドか。
それにしても、引き抜きねぇ。
「うん、それで」
「それで今年の予選って投票らしいんだけどさ。投票できる人は、お菓子を実際食べた人なんだって」
「まぁ、そりゃ、そうなんじゃんじゃないの」
「しかも審査員がいるわけでなくて、町にいる人だったら誰でも投票OKらしいんです」
「だったらさ、たくさんお菓子を売らないと、投票してくれる人も増えないってことになるじゃん」
「まあ、そりゃそうだな」
職人が引き抜かれてしまい、お菓子が大量に作れない。
そこで手伝おうっていうことか。
「でも、オレ達には、お菓子の大量生産をするノウハウないだろ?」
「そこは魔法でなんとかできると思うんです」
確かに言われてみれば魔法っていう手があるか。
「そうそう、それで前にサムソンがやったように、魔法でドーナツ作るやつやってみたらさ、すっごく驚かれちゃって」
「あぁ、あれか」
これぞ魔法使いって感じで、凄かったな。
「そうそう。サムソンが見せてくれたやつ」
「あれを応用して、できるだけ大量の物を、1度に作ることを試してみたんです」
「そしたらさ、驚かれちゃって」
「魔法陣を提供しようとしたんですが、使いこなすのは難しいらしいんです」
なるほど。
それなら、自分達で、魔法で助けようっていうのか。
「材料とかどうする?」
「それは先方が用意します。レシピも。私達は、あくまで魔法を使って大量生産する部分だけに留まると思います」
「ほら、私達も海亀のために海藻をいっぱい分けてもらった訳だしさ。いくらお金を渡したと言っても、助けられるなら助けたくてさ」
見渡すと、町へ観光に行ったチームは全員が前向きのようだ。
「了解。どれぐらい手伝うかにもよるけど、皆で手伝うか」
別に反対する理由はない。
よくよく考えたら、お菓子で有名な町の菓子職人がどういうものかを、間近でみることができるチャンスだしな。
「言った通りでしょ。ノアノア」
オレが了承したのを見て、楽しそうにミズキがノアへと声をかけた。
「どうしたんだ?」
「先輩だったら、困っている人がいるなら皆で助けようって言うに決まってるって話っスよ」
そっか。
「じゃ、頑張ろうか。ノア」
「うん!」
翌日、留守番のサムソンに見送られ、コルヌートセルへと向かう。
飛行島を止めている場所から少し離れた街道に出ると馬車が2台待っていた。
昨日のうちに、門番の紹介を受けてカガミが手配した馬車だ。
皆で二手に分かれ、コルヌートセルへと向かう。
コルヌートセルは、すごくカラフルな町だった。
「今、あたし達も稼ぎ時でさ」
御者のお姉さんがそんなことを言っている。
道に沿ってずらりと屋台や店が並ぶ。
曲芸のように大きなフライパンを振り回し、お菓子を焼いている職人。
大きなケーキを、一口サイズにパンパンと軽快な音を立てて切る職人。
「おぉ」
まるで新体操のリボンのように、飴を大きく空に舞わせ細工を作る職人技を見て、思わず声が出る。
見ているだけで楽しい。
お祭りは始まっていないらしいが、すごく賑わっている。
吟遊詩人があちこちで歌い、大道芸をやっている人もいる。
そして、甘ったるい匂いが、そこら中に立ち込めているのだ。
『カタタン……カタタン』
乾いた音で鳴り響く車輪の音が心地いい。
天気も晴れで、周りのカラフルな店の数々。
「やっぱりさ、見てるだけでウキウキするよね」
ミズキの言葉に同感だ。
「あそこのね、クッキー美味しかったの。あっちのお店、壁の模様がお花をなんだよ」
ノアもキョロキョロと周りを見ながら、一生懸命に観光ガイドよろしくいろいろ教えてくれる。
「ここで良かったんだよね?」
「えぇ、ありがとうございます」
「んじゃ、また帰りはトーク鳥で呼んでおくれ」
そう言って御者は、側に置いてあった小鳥の入った籠を渡して、去って行った。
すごくテキパキと動いて、サービスがいいけれど、前金にどれくらい払ったのかな。
あとで、カガミに聞いてみるかな。
「あれ?」
ミズキが大きな声を上げて、店へと駆けて行く。
途中で何かが書かれた木片を手に取り、それから右手側に見える店へと進んでいく。
オレ達もそれに続く。
そこは、こぢんまりとした店だった。
うす黄色の壁に、パステルカラーの屋根。屋根に吊された丸い看板には、フライパンの上に乗った丸いケーキが描かれている。
元の世界であれば、オレには縁の無い、可愛らしいお店だ。
だが、店の前の立て看板二つに折れて、テーブルも壊れていた。
中に入ると1人の女性がうずくまり、それを男性がなだめていた。
さらに、鼻血を拭いた後のある男の子が、ホッペをさすっていた。
嫌がらせを受けたのか。
町は甘い匂いに満ちていたのに、現実は少し辛めだ。
「リーダ、なに嫌そうな顔してるの。うける」
「嫌に決まっているだろ。労働だぞ労働」
働くという選択肢を、どうしてこんなにも、にこやかに提案できるのか不思議だ。
仕事してないから、禁断症状が出ているのかな。
「ひどい業者がいてですね。大事な食材が買い占めされたり、職人が引き抜かれたんですって」
カガミも労働したいサイドか。
それにしても、引き抜きねぇ。
「うん、それで」
「それで今年の予選って投票らしいんだけどさ。投票できる人は、お菓子を実際食べた人なんだって」
「まぁ、そりゃ、そうなんじゃんじゃないの」
「しかも審査員がいるわけでなくて、町にいる人だったら誰でも投票OKらしいんです」
「だったらさ、たくさんお菓子を売らないと、投票してくれる人も増えないってことになるじゃん」
「まあ、そりゃそうだな」
職人が引き抜かれてしまい、お菓子が大量に作れない。
そこで手伝おうっていうことか。
「でも、オレ達には、お菓子の大量生産をするノウハウないだろ?」
「そこは魔法でなんとかできると思うんです」
確かに言われてみれば魔法っていう手があるか。
「そうそう、それで前にサムソンがやったように、魔法でドーナツ作るやつやってみたらさ、すっごく驚かれちゃって」
「あぁ、あれか」
これぞ魔法使いって感じで、凄かったな。
「そうそう。サムソンが見せてくれたやつ」
「あれを応用して、できるだけ大量の物を、1度に作ることを試してみたんです」
「そしたらさ、驚かれちゃって」
「魔法陣を提供しようとしたんですが、使いこなすのは難しいらしいんです」
なるほど。
それなら、自分達で、魔法で助けようっていうのか。
「材料とかどうする?」
「それは先方が用意します。レシピも。私達は、あくまで魔法を使って大量生産する部分だけに留まると思います」
「ほら、私達も海亀のために海藻をいっぱい分けてもらった訳だしさ。いくらお金を渡したと言っても、助けられるなら助けたくてさ」
見渡すと、町へ観光に行ったチームは全員が前向きのようだ。
「了解。どれぐらい手伝うかにもよるけど、皆で手伝うか」
別に反対する理由はない。
よくよく考えたら、お菓子で有名な町の菓子職人がどういうものかを、間近でみることができるチャンスだしな。
「言った通りでしょ。ノアノア」
オレが了承したのを見て、楽しそうにミズキがノアへと声をかけた。
「どうしたんだ?」
「先輩だったら、困っている人がいるなら皆で助けようって言うに決まってるって話っスよ」
そっか。
「じゃ、頑張ろうか。ノア」
「うん!」
翌日、留守番のサムソンに見送られ、コルヌートセルへと向かう。
飛行島を止めている場所から少し離れた街道に出ると馬車が2台待っていた。
昨日のうちに、門番の紹介を受けてカガミが手配した馬車だ。
皆で二手に分かれ、コルヌートセルへと向かう。
コルヌートセルは、すごくカラフルな町だった。
「今、あたし達も稼ぎ時でさ」
御者のお姉さんがそんなことを言っている。
道に沿ってずらりと屋台や店が並ぶ。
曲芸のように大きなフライパンを振り回し、お菓子を焼いている職人。
大きなケーキを、一口サイズにパンパンと軽快な音を立てて切る職人。
「おぉ」
まるで新体操のリボンのように、飴を大きく空に舞わせ細工を作る職人技を見て、思わず声が出る。
見ているだけで楽しい。
お祭りは始まっていないらしいが、すごく賑わっている。
吟遊詩人があちこちで歌い、大道芸をやっている人もいる。
そして、甘ったるい匂いが、そこら中に立ち込めているのだ。
『カタタン……カタタン』
乾いた音で鳴り響く車輪の音が心地いい。
天気も晴れで、周りのカラフルな店の数々。
「やっぱりさ、見てるだけでウキウキするよね」
ミズキの言葉に同感だ。
「あそこのね、クッキー美味しかったの。あっちのお店、壁の模様がお花をなんだよ」
ノアもキョロキョロと周りを見ながら、一生懸命に観光ガイドよろしくいろいろ教えてくれる。
「ここで良かったんだよね?」
「えぇ、ありがとうございます」
「んじゃ、また帰りはトーク鳥で呼んでおくれ」
そう言って御者は、側に置いてあった小鳥の入った籠を渡して、去って行った。
すごくテキパキと動いて、サービスがいいけれど、前金にどれくらい払ったのかな。
あとで、カガミに聞いてみるかな。
「あれ?」
ミズキが大きな声を上げて、店へと駆けて行く。
途中で何かが書かれた木片を手に取り、それから右手側に見える店へと進んでいく。
オレ達もそれに続く。
そこは、こぢんまりとした店だった。
うす黄色の壁に、パステルカラーの屋根。屋根に吊された丸い看板には、フライパンの上に乗った丸いケーキが描かれている。
元の世界であれば、オレには縁の無い、可愛らしいお店だ。
だが、店の前の立て看板二つに折れて、テーブルも壊れていた。
中に入ると1人の女性がうずくまり、それを男性がなだめていた。
さらに、鼻血を拭いた後のある男の子が、ホッペをさすっていた。
嫌がらせを受けたのか。
町は甘い匂いに満ちていたのに、現実は少し辛めだ。
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