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第二十一章 行進の終焉、微笑む勝者
ていこくのひじゅつ
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ゴーレムの頭に乗った2人は、第1皇子の側近のようで、すぐに儀式めいた宣言がされた。
「これがリストか……なるほど」
「ですが、全てではないのです。紙が足りないので、何処かの町で集めなくては」
紙が足りない。
この世界で、紙を大量消費するのはオレ達だけのようで、どんなに買い占めてもすぐに使い切ってしまう。
今回も、上手くいっていたのに、紙が足りず困った状況に陥る。
だが、それは第1皇子クシュハヤートが解決してくれた。
「紙があれば、どの程度の時間で、用意できる?」
「1日あれば」
カガミと相談し、紙さえあれば1日で行進全員のリストを打ち出せることを説明する。
打ち出せるとは言わず、魔法で字を書き込めると表現したが、すぐに受け入れてくれた。
「では、ノアサリーナよ。幻術でかまわない、紙を作り出せ」
「幻術で……ございますか?」
幻術の魔法。
そんなのあったっけ?
「ノアサリーナ様、こちらにございます」
ミズキが知っていたらしい。
しかも準備済み。
ハンカチサイズの布をもってくる。
幻術の魔法はいくつか種類があるらしい。
変装の魔法も、そのうちの一つだとか。
「ここに紙を置いて、魔法を唱えるの……ですか?」
「左様です」
話の流れでノアが魔法を使う。
意外と簡単な魔法だ。ノアが、ゆっくりと詠唱すると、空から大量の紙がふりそそいできた。
「誰が、紙を振らせよと!」
「初めて使う魔法なので、失敗してしまったようだな。仕方無い」
クシュハヤートの側近がノアへ大声を上げたのを、クシュハヤート本人がたしなめる。
結構、おおらかな人なのかな。
「申し訳ありません」
「気にするな。いきなりのことだ。だが、紙を拾い集める役目は、其方らに任せる」
言うと同時に、クシュハヤートが手のひらを上へ掲げる。
次の瞬間、彼の手のひらと額が光り、すぐに消えた。
『パサリ……パサリ』
先ほどまで、幻術で作られた紙は地面に落ちると消えていたが、落ちたまま残るようになった。
それをクシュハヤートの側近が拾い上げる。
「クシュハヤート様は、幻を実体化し、実体を幻とすることができる。これを使い、リストとやらを提供せよ」
そんなことができるのか。
魔法の詠唱などしていなかったように見えたが、魔導具かなにかなのかな。
「ただし、永久ではない。このような紙でも、1日くらいだろう。約束通り1日でしあげよ」
「お願いします。カガミ」
「畏まりましたお嬢様」
ノアが厳かにカガミへと紙の回収を依頼する。
今回は、お偉いさんの前なので、いつも以上に畏まったやりとりだ。
その日の夜は、ほとんど徹夜だった。
リストを用意するための作業。
ノアに徹夜させるわけにいかないので、同僚達と交代でやることにした。
紙を集めるのは、神官達も手伝ってくれた。
ブラウニーも呼んで、全員で。
「いやはや。皇子が来られるとは、しかも皆の前で秘術まで披露されていましたね」
紙を拾いながらサイルマーヤが言う。
「秘術……ですか?」
「皇族は、魔法の詠唱をせず一つの魔法を使えるのです。まるで息をするように」
「へぇ」
「まぁ……噂ですけどね」
ちょっとした小話をしつつ、夜遅くまで紙を拾い集めた。
それから、汚れていないものを選り分け、リストを作成する。
紙にインクを塗り、パソコンの魔法で使う水を張った桶にインクを塗った紙をくぐらせる。
すると、インクがウニウニ動いて、リストの形にインクがくっつく。
ということで、一枚一枚にインクを塗らなくてはならない。
魔力も使うし、案外手作業もめんどくさかった。
「それにしても、いきなり世界平和とか言い出して、どうしようと思ったぞ」
「あれだけの人数だ、漠然としたことを言ってごまかそうかと思ったんだよ。世界平和なら、とりあえずダメとは言われないだろう?」
「いきなりスケール大きな話だったっスね」
「思ったより上手くいったよ。やっぱり日頃の行いだろうな」
だらだらと話をしながらの単純作業。
だが、問題ない。オレ達はやり遂げたのだ。一晩で。
「このゴーレムの胸には、時の流れを遅くする眠りの間がある。そこに入れておけば、幻へと戻ることなく持つのだ」
翌日、大量の紙束をゴーレムへと詰め込んで仕事おしまい。
あの2体のゴーレム。胸の辺りがパカリと開いて、ベッドルームになっていた。
寝心地良さそうなベッドだが、そこに書類を入れておけばいいらしい。
「ノアサリーナ様。ありがとうございます」
「一生の思い出になりました」
「もし、人手が必要ならお声をかけてください。はせ参じますので」
「ラーメン、美味しかったです。きっと、きっと、帝国中に広めて見せます」
ほとんど半日かけていろいろな人とお別れの挨拶をした。
諸侯から派遣された人、民衆、旅人。
こうやってみると、いろいろな立場の人がいた。
全てをやり遂げ、橋を渡る。
ここで多くの人とはお別れすることになった。
神官団の代表達、コルヌートセルの町が目的地の料理人や何人かの人達。
同じ道を行くのは、数十人程度。
「では、さらばだ」
クシュハヤートが代表で見送りの言葉を言う。
のっそりのっそりと、海亀が橋を渡り始める。
「ワッショイ!」
後ろで大きなワッショイという掛け声が聞こえた。
今までで一番の大きな声。
比べものにならないほど大きな声が響いた。
いきなりのことで、ノアがビクッと動きチラリと後ろをみる。
行進を見送っている人達が、手を振っていた。
そんな様子をみて、ノアが小さく微笑みオレを見る。
「あのね。皆が、ワッショイって。すっごい大きな声だった」
「いままでで一番大きな声で、ビックリしたよ」
「うん!」
出発の合図だった「ワッショイ」の掛け声。
それは行進が終わってお別れの言葉としてオレ達を見送ってくれる。
ノアは、オレをもう一度チラリと見た後、見送る人達が見えなくなるまで笑顔で見ていた。
「これがリストか……なるほど」
「ですが、全てではないのです。紙が足りないので、何処かの町で集めなくては」
紙が足りない。
この世界で、紙を大量消費するのはオレ達だけのようで、どんなに買い占めてもすぐに使い切ってしまう。
今回も、上手くいっていたのに、紙が足りず困った状況に陥る。
だが、それは第1皇子クシュハヤートが解決してくれた。
「紙があれば、どの程度の時間で、用意できる?」
「1日あれば」
カガミと相談し、紙さえあれば1日で行進全員のリストを打ち出せることを説明する。
打ち出せるとは言わず、魔法で字を書き込めると表現したが、すぐに受け入れてくれた。
「では、ノアサリーナよ。幻術でかまわない、紙を作り出せ」
「幻術で……ございますか?」
幻術の魔法。
そんなのあったっけ?
「ノアサリーナ様、こちらにございます」
ミズキが知っていたらしい。
しかも準備済み。
ハンカチサイズの布をもってくる。
幻術の魔法はいくつか種類があるらしい。
変装の魔法も、そのうちの一つだとか。
「ここに紙を置いて、魔法を唱えるの……ですか?」
「左様です」
話の流れでノアが魔法を使う。
意外と簡単な魔法だ。ノアが、ゆっくりと詠唱すると、空から大量の紙がふりそそいできた。
「誰が、紙を振らせよと!」
「初めて使う魔法なので、失敗してしまったようだな。仕方無い」
クシュハヤートの側近がノアへ大声を上げたのを、クシュハヤート本人がたしなめる。
結構、おおらかな人なのかな。
「申し訳ありません」
「気にするな。いきなりのことだ。だが、紙を拾い集める役目は、其方らに任せる」
言うと同時に、クシュハヤートが手のひらを上へ掲げる。
次の瞬間、彼の手のひらと額が光り、すぐに消えた。
『パサリ……パサリ』
先ほどまで、幻術で作られた紙は地面に落ちると消えていたが、落ちたまま残るようになった。
それをクシュハヤートの側近が拾い上げる。
「クシュハヤート様は、幻を実体化し、実体を幻とすることができる。これを使い、リストとやらを提供せよ」
そんなことができるのか。
魔法の詠唱などしていなかったように見えたが、魔導具かなにかなのかな。
「ただし、永久ではない。このような紙でも、1日くらいだろう。約束通り1日でしあげよ」
「お願いします。カガミ」
「畏まりましたお嬢様」
ノアが厳かにカガミへと紙の回収を依頼する。
今回は、お偉いさんの前なので、いつも以上に畏まったやりとりだ。
その日の夜は、ほとんど徹夜だった。
リストを用意するための作業。
ノアに徹夜させるわけにいかないので、同僚達と交代でやることにした。
紙を集めるのは、神官達も手伝ってくれた。
ブラウニーも呼んで、全員で。
「いやはや。皇子が来られるとは、しかも皆の前で秘術まで披露されていましたね」
紙を拾いながらサイルマーヤが言う。
「秘術……ですか?」
「皇族は、魔法の詠唱をせず一つの魔法を使えるのです。まるで息をするように」
「へぇ」
「まぁ……噂ですけどね」
ちょっとした小話をしつつ、夜遅くまで紙を拾い集めた。
それから、汚れていないものを選り分け、リストを作成する。
紙にインクを塗り、パソコンの魔法で使う水を張った桶にインクを塗った紙をくぐらせる。
すると、インクがウニウニ動いて、リストの形にインクがくっつく。
ということで、一枚一枚にインクを塗らなくてはならない。
魔力も使うし、案外手作業もめんどくさかった。
「それにしても、いきなり世界平和とか言い出して、どうしようと思ったぞ」
「あれだけの人数だ、漠然としたことを言ってごまかそうかと思ったんだよ。世界平和なら、とりあえずダメとは言われないだろう?」
「いきなりスケール大きな話だったっスね」
「思ったより上手くいったよ。やっぱり日頃の行いだろうな」
だらだらと話をしながらの単純作業。
だが、問題ない。オレ達はやり遂げたのだ。一晩で。
「このゴーレムの胸には、時の流れを遅くする眠りの間がある。そこに入れておけば、幻へと戻ることなく持つのだ」
翌日、大量の紙束をゴーレムへと詰め込んで仕事おしまい。
あの2体のゴーレム。胸の辺りがパカリと開いて、ベッドルームになっていた。
寝心地良さそうなベッドだが、そこに書類を入れておけばいいらしい。
「ノアサリーナ様。ありがとうございます」
「一生の思い出になりました」
「もし、人手が必要ならお声をかけてください。はせ参じますので」
「ラーメン、美味しかったです。きっと、きっと、帝国中に広めて見せます」
ほとんど半日かけていろいろな人とお別れの挨拶をした。
諸侯から派遣された人、民衆、旅人。
こうやってみると、いろいろな立場の人がいた。
全てをやり遂げ、橋を渡る。
ここで多くの人とはお別れすることになった。
神官団の代表達、コルヌートセルの町が目的地の料理人や何人かの人達。
同じ道を行くのは、数十人程度。
「では、さらばだ」
クシュハヤートが代表で見送りの言葉を言う。
のっそりのっそりと、海亀が橋を渡り始める。
「ワッショイ!」
後ろで大きなワッショイという掛け声が聞こえた。
今までで一番の大きな声。
比べものにならないほど大きな声が響いた。
いきなりのことで、ノアがビクッと動きチラリと後ろをみる。
行進を見送っている人達が、手を振っていた。
そんな様子をみて、ノアが小さく微笑みオレを見る。
「あのね。皆が、ワッショイって。すっごい大きな声だった」
「いままでで一番大きな声で、ビックリしたよ」
「うん!」
出発の合図だった「ワッショイ」の掛け声。
それは行進が終わってお別れの言葉としてオレ達を見送ってくれる。
ノアは、オレをもう一度チラリと見た後、見送る人達が見えなくなるまで笑顔で見ていた。
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