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第十一章 不思議な旅行者達
ふたたびいせきへ
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遺跡を出る。
すぐに、村人は納屋に隠していたトーク鳥を解き放ち、誰かに連絡を取っていた。
「村長に、トロールの脅威が去ったことを連絡しようと思いまして」
「確かに。朗報は早く知らせるにこしたことないですね」
その日は村人の家で1泊する。納屋の中に隠していた干し肉に、キノコを加えたスープを食べる。村人に作って貰った、この辺りでよく食べるスープらしい。
コンソメ風味の鮮やかな緑のスープは美味しい。
ちょっと物足りなかったので、ノアにカロメーを作ってもらい、それも食べる。
そして、その日はぐっすり寝た。
翌日の朝、昨日の返答が来たようだ。トーク鳥が持ってきた手紙を読み驚いた風の村人を見かけた。
「何かあったのですか?」
「近くの町にミランダが現れたそうです。それで助けを呼ぶこともできずに途方に暮れていたらしく、今回の連絡はとても朗報だったようです。今日の夕方にはみんな帰ってくるということで村長も是非お礼をしたいそうです」
ミランダ。
氷の女王と言われる呪い子だ。
そんなに近くにいるのか、もしかしたら接触するかもしれない。
「ガルルルッ」
オレの側にいたハロルドがミランダという名前に反応して唸る。
もっとも、こちらから近寄らなかったら大事にはならないだろう。ハロルドには申し訳ないが、安全策でいきたい。
村人と話をしていたらカガミが近づいてきた。
ミランダの話をする。
「そうですか。遺跡のまだ見てないところも早めに見ておいた方がいいと思うんです、トロールがまだ残っていたら大変だと思います。思いません?」
「一応その予定だったけど、早めに出発した方がいいかもね」
「えぇ。お願いしたいです。ただ、あの、私は村の仲間を待ちたいので、ここに残らせていただきたいのですが……」
遠回しにガイドができないことを言う。
「あの迷ったりしませんか?」
「ではこのトーク鳥をお使いください」
「トーク鳥を遺跡の中でつかうんですか?」
「はい、この村の、そちらにある看板にとまるように命じてあります。後を追いかけていけば外に出られます」
村人は、遺跡入り口あたりにある看板を指さし答えた。
なるほど、トーク鳥の使い方に、そのような方法もあるのか。
ありがたく借りてもう一度遺跡へと潜る。今度はガイドがいない。本格的な探検だ。
子犬のハロルドが先頭に立ち、皆でノコノコと着いていく。ロンロが後ろを見張ってくれる。
「とりあえず、みんなも警戒しよう」
「はいでち」
発掘中のところは入り組んでいた。埋もれた遺跡を掘り進んでいるのだろう。天然の洞窟にみえる通路に、人工的な壁がところどころ露出している。
ハロルドは、壁の右側にそって歩いている。
そういえば、壁に右手をつけて歩けば迷路を抜けることができると聞いたことがある。
「あのね、このまままっすぐいくと、昨日行ったところに着くと思うの」
「ホントだ。そっか、ノアちゃん地図を描いていたんですね」
皆がノアの手元をのぞき込む。
そこには、描きかけの地図があった。ノアが照れたように笑う。
ノアはマッピングしていたのか、賢いな。誰もそんなことを考えていなかった。
きれいに舗装された道の方が多かったが、途中から洞窟のような道が増えてきた。ただ所々に壁が舗装されたような形になっているので、土に埋もれところを掘り返している状況に変わりが無いようだ。
本来なら薄暗い洞窟も、ウィルオーウィスプの作る光でとても明るい洞窟探検だ。かわりに探検している雰囲気が感じられないが、それでも快適な方がいい。足元のぐらつきが少し気になるが、それも注意して進めば良い。
ゆっくりと進んでいく。何度か行き止まりを経験し、そして大きな扉を見つけた。
鍵掛かってないね。
ミズキが槍で扉を押し開ける。
その先は開けた場所だった。四角い部屋だ。向かい側には小さな扉がみえる。
他のところのようにがれきにうもれていない。
「うわぁ」
うつ伏せになったトロールの石像がある。入り口の影になっていてパッと見わからなかった。
しかも2段重ねだ。
「きもい……なんだろ、このオブジェ」
ちょっと待って下さい、下の石像……みどりの肌がみえています。
カガミが指さし、訴える。
ひょっとして、石像ではなくて石化したトロールか……。それで、今まさに石化が解かれようとしていると。
とりあえず焼いてみるか。
一旦、部屋の外にでて、火球の魔法を唱える。
部屋の中一杯に火が広がる。念の為5回ほど火球をつかい、しばらくまってから部屋に入ると、トロールの石像は崩れて、たくさんの破片になっていた。
「5匹のトロールって、元々、ここにいたのかもしれないと思うんです。思いません?」
たしかにそうかもしれない。そうであれば、これで7匹倒したことになるのかな。
トロールは倒したと判断し、安心して部屋を調べる。
『ボトン』
天井からトロールが落ちてきた。
見上げると、天井近くの壁面は棚状になっていて、10匹以上のトロールがこちらを伺っているのが見える。
「マジか……」
「なんかさ、やばくない?」
ドンドンと地響きをたて、さらに2匹のトロールが落ちてくる。
最初の一匹は、ゆっくり立ち上がろうとしていた。その手にはツルハシが握られている。
さらに一匹。落ちてきた。際限が無い。
「一旦逃げるぞ!」
オレが声をあげるのと、最初に落ちた二匹がこちらに向かってくるのは、ほぼ同時だった。
すぐに、村人は納屋に隠していたトーク鳥を解き放ち、誰かに連絡を取っていた。
「村長に、トロールの脅威が去ったことを連絡しようと思いまして」
「確かに。朗報は早く知らせるにこしたことないですね」
その日は村人の家で1泊する。納屋の中に隠していた干し肉に、キノコを加えたスープを食べる。村人に作って貰った、この辺りでよく食べるスープらしい。
コンソメ風味の鮮やかな緑のスープは美味しい。
ちょっと物足りなかったので、ノアにカロメーを作ってもらい、それも食べる。
そして、その日はぐっすり寝た。
翌日の朝、昨日の返答が来たようだ。トーク鳥が持ってきた手紙を読み驚いた風の村人を見かけた。
「何かあったのですか?」
「近くの町にミランダが現れたそうです。それで助けを呼ぶこともできずに途方に暮れていたらしく、今回の連絡はとても朗報だったようです。今日の夕方にはみんな帰ってくるということで村長も是非お礼をしたいそうです」
ミランダ。
氷の女王と言われる呪い子だ。
そんなに近くにいるのか、もしかしたら接触するかもしれない。
「ガルルルッ」
オレの側にいたハロルドがミランダという名前に反応して唸る。
もっとも、こちらから近寄らなかったら大事にはならないだろう。ハロルドには申し訳ないが、安全策でいきたい。
村人と話をしていたらカガミが近づいてきた。
ミランダの話をする。
「そうですか。遺跡のまだ見てないところも早めに見ておいた方がいいと思うんです、トロールがまだ残っていたら大変だと思います。思いません?」
「一応その予定だったけど、早めに出発した方がいいかもね」
「えぇ。お願いしたいです。ただ、あの、私は村の仲間を待ちたいので、ここに残らせていただきたいのですが……」
遠回しにガイドができないことを言う。
「あの迷ったりしませんか?」
「ではこのトーク鳥をお使いください」
「トーク鳥を遺跡の中でつかうんですか?」
「はい、この村の、そちらにある看板にとまるように命じてあります。後を追いかけていけば外に出られます」
村人は、遺跡入り口あたりにある看板を指さし答えた。
なるほど、トーク鳥の使い方に、そのような方法もあるのか。
ありがたく借りてもう一度遺跡へと潜る。今度はガイドがいない。本格的な探検だ。
子犬のハロルドが先頭に立ち、皆でノコノコと着いていく。ロンロが後ろを見張ってくれる。
「とりあえず、みんなも警戒しよう」
「はいでち」
発掘中のところは入り組んでいた。埋もれた遺跡を掘り進んでいるのだろう。天然の洞窟にみえる通路に、人工的な壁がところどころ露出している。
ハロルドは、壁の右側にそって歩いている。
そういえば、壁に右手をつけて歩けば迷路を抜けることができると聞いたことがある。
「あのね、このまままっすぐいくと、昨日行ったところに着くと思うの」
「ホントだ。そっか、ノアちゃん地図を描いていたんですね」
皆がノアの手元をのぞき込む。
そこには、描きかけの地図があった。ノアが照れたように笑う。
ノアはマッピングしていたのか、賢いな。誰もそんなことを考えていなかった。
きれいに舗装された道の方が多かったが、途中から洞窟のような道が増えてきた。ただ所々に壁が舗装されたような形になっているので、土に埋もれところを掘り返している状況に変わりが無いようだ。
本来なら薄暗い洞窟も、ウィルオーウィスプの作る光でとても明るい洞窟探検だ。かわりに探検している雰囲気が感じられないが、それでも快適な方がいい。足元のぐらつきが少し気になるが、それも注意して進めば良い。
ゆっくりと進んでいく。何度か行き止まりを経験し、そして大きな扉を見つけた。
鍵掛かってないね。
ミズキが槍で扉を押し開ける。
その先は開けた場所だった。四角い部屋だ。向かい側には小さな扉がみえる。
他のところのようにがれきにうもれていない。
「うわぁ」
うつ伏せになったトロールの石像がある。入り口の影になっていてパッと見わからなかった。
しかも2段重ねだ。
「きもい……なんだろ、このオブジェ」
ちょっと待って下さい、下の石像……みどりの肌がみえています。
カガミが指さし、訴える。
ひょっとして、石像ではなくて石化したトロールか……。それで、今まさに石化が解かれようとしていると。
とりあえず焼いてみるか。
一旦、部屋の外にでて、火球の魔法を唱える。
部屋の中一杯に火が広がる。念の為5回ほど火球をつかい、しばらくまってから部屋に入ると、トロールの石像は崩れて、たくさんの破片になっていた。
「5匹のトロールって、元々、ここにいたのかもしれないと思うんです。思いません?」
たしかにそうかもしれない。そうであれば、これで7匹倒したことになるのかな。
トロールは倒したと判断し、安心して部屋を調べる。
『ボトン』
天井からトロールが落ちてきた。
見上げると、天井近くの壁面は棚状になっていて、10匹以上のトロールがこちらを伺っているのが見える。
「マジか……」
「なんかさ、やばくない?」
ドンドンと地響きをたて、さらに2匹のトロールが落ちてくる。
最初の一匹は、ゆっくり立ち上がろうとしていた。その手にはツルハシが握られている。
さらに一匹。落ちてきた。際限が無い。
「一旦逃げるぞ!」
オレが声をあげるのと、最初に落ちた二匹がこちらに向かってくるのは、ほぼ同時だった。
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