召還社畜と魔法の豪邸

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第七章 雪にまみれて刃を研いで

こうじげんば

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「……というわけなんだ」

 屋敷に戻った後、さっそく皆に成り行きを説明する。
 ゴーレムを操って行う工事のお手伝いに、誰かがいかないといけないことも含めてだ。

「何も聞かれなかったのは不幸中の幸いだな」
「そうだね。そんなわけで、プレインに工事の手伝いに行ってもらいたいんだが」
「すみません、ボク、町にマヨネーズ作りにいかなきゃいけなくて、急に仕事が入ったっスよ」

 プレインは先約有りか。

「そうしたら……カガミ、お願いできるかな?」
「私も、イザベラ様からいつ呼び出しがあるかわからないので。それにドレスの受け取りも、そろそろあると思います」

 そういえばカガミも仕事を請け負っているんだった。

「カガミも仕事か。それじゃ、ミズキ」
「ゴメン、私もさ、仕事で酒場に飲みにいかなきゃいけなくてさ」

 ミズキも仕事か。

「しょうがない、サムソン……」
「ちょっと待て。リーダ、お前、何ナチュラルに自分を外してるんだ?」

 ちっ。バレていた。

「そんなことないよ……オレは、皆のほうが適任だと思って、うぅ」

 軽く泣き真似をしつつサムソンに答える。
 ちょっとした冗談だったが、本気にする人物がいた。

「あのね。リーダ……困ってるの」

 ノアだ。
 皆の責めるような視線を感じる。

「ハァ……。そっか。ノアちゃん知らないからなぁ」

 カガミが唐突に何かを言い出した。

「知らない?」
「働いているリーダの格好良さ」

 何をいっているのだ?

「そういえば、そうだな。働いているリーダは格好いい。すごく格好いいぞ」

 サムソンが大きく頷き同調している。その様子に、ノアは何かに気がついたように目を輝かせる。

「ノアノアは、リーダの格好いいところみたくない?」
「みたい!」
「そうっスね。じゃ、ノアちゃんは誰が工事のお手伝いをするのが良いと思う?」
「リーダ!」

 全員が示し合わせたように、拍手する。
 嬉しそうなノアをみると断ることができなくなった。

「いってらっしゃーい!」

 満面の笑みをしたノアに見送られる。
 片道4時間の通勤生活。泣きたい。
 急いでコレだ。
 工事は今日で6日目。だいたいの様子はつかめたので、今日はノア達がお昼に食事を持ってくる。
 いつものように、親方連中の指示のとおりにゴーレムをうごかす。
 意外と皆フレンドリーのホワイトな職場だ。仕事時間も3時間程度。すぐに終わる。
 初日にゴブリンや狼の襲撃があったが、同行した兵士が倒してくれた。

「ボーチル親方。この木材はこっちですかー」
「兄ちゃん。こっちだって」

 トッキーとピッキーの声がする。
 今日はチッキーもお昼に来るので、お手伝いを志願したそうだ。
 すでに石工達とも顔見知りのようで、仲よさそうに仕事を手伝っている。
 スムーズに工事は進みお昼になった。
 今日は皆が屋敷からやってきている。

「あのね、ずっと見てたよ。リーダがゴーレムを動かしててかっこ良かったよ」
「ノアノアとこっそり見てたんだよね。結構やるじゃん」

 ノアが、オレを描いた絵を見せてくれる。オレがゴーレムの側で両手を挙げている姿が描かれている。絵が上手いな、ノア。
 昼食に持ってきてくれたのはサンドイッチだ。周りをみると、職人達も、思い思いに肉を焼いたり、鍋を作ったりと昼食をとっている。肉の焼ける匂いがこちらまで漂ってくる。美味しそうな匂いだ。

「お昼から豪勢っスね」
「今回は、特に急な仕事だからお城からいろいろと援助があるんだとさ」

 だが料理については、オレ達も負けてはいない。
 山菜に鳥ハム、それにピリ辛のマヨネーズで味付けされたサンドイッチは美味しい。サンドイッチごとに、いろいろと配分や味付けが違うので何個食べてもあきない。

「お、うまそーじゃないか。だけど、足りないだろ」

 レーハフさんの息子であるクストンさんに、串焼きのお裾分けをもらった。とても大きな肉の塊。元の世界で考えられない昼休憩時の豪勢な食事。

「ボリュームたっぷり」
「塩だけの味付けなのに、このお肉すごく美味しいと思います」

 皆で、豪勢な食事に舌鼓をうつ。昼飯だけでお腹いっぱいになって動けなくなりそうだ。
 そんな時、急にあたりがざわめきだした。

「敵襲!」

 大声が聞こえた。
 一瞬で風景がかわる。
 狼に乗ったゴブリンが走ってくる。その後ろにはもっと大きいゴブリン。しかも、空から大きなカラスにのったゴブリンも急降下してきた。
 兵士も対応しているが、前回とは数が大違いだ。次々と兵士が取りこぼし、職人達へと突っ込んでくる。
 筋骨隆々な職人達だが、戦闘は不慣れなのだろう。圧倒的な数の差により押されつつある。
 楽しい食事だったのに、一気に大混乱だ。

「どうしよう……?」

 ノアが不安そうにオレをみていた。
 周りをみると皆が頷いている。
 そうだ。

「問題ないよ。ちょうどいい。食後の運動に、迎撃しよう」

 飛竜に襲われてから、ずっと考えて対策してきたのだ。オレ達の努力、その成果をみせてやろう。
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