推しの兄(闇堕ち予定)の婚約者に転生した

花飛沫

文字の大きさ
32 / 46
2. 現れる登場人物達

伝統を覆す!

しおりを挟む




 中等部最後の体育祭が近付いてきた。

 オズとランベルトは、先日草刈りをサボった事がバレたので、今日またやり直しをさせられている。
 さっと草刈りを終わらせて草刈機を倉庫にしまっていると、ランベルトが不意に思い出した様に話しかけてきた。

「そういや、本当はそれだけ魔力を持っているなら、体育祭はどうしていたんだ。ずっと手加減していたのか?」
「いや、それでは相手に失礼だからね。低魔力保持者の平均魔力以上の力は使えなくなるブレスレットを身につけていたんだ。だから大会には全力で挑んだよ。」

 その言葉を聞き、ランベルトは大口を開けて動きが止まる。折角せっかくの美形が台無しだ。

「ちょっと、どうしたんだよ。」
「低魔力保持者の平均魔力以上の力が使えなくなるブレスレットだって!?そんな素晴らしい物がこの国にはあるのか!?」
「この国っていうか、兄さんに頼んで僕用に作ってもらったんだよ。兄さんはそういう道具作りとか研究とかが趣味だから。」

 そう、オズの兄アントニーは魔力が高く研究気質で物作りが好きなので、何かとオズを助ける道具たちを生み出してくれている。しかしランベルトの反応を見るに、この道具は物凄い価値があるのだろうか。

「あ、あれってそんなに凄い物なのか?」
「凄い道具だよ!僕は今、アルコイリスで拘束した犯罪者の処置について新しいことを始めたくてね。しかし、現実的には難しいと考えてきた。だがこの道具があれば可能になるかもしれない。」

 聞いてみると、ランベルトはアルコイリス国で犯罪者更生計画の為の仮釈放について考えているらしいと分かった。この世界では、一度捕まえた犯罪者を野に解き放つことなど無い。それでは何の為に悪い人間を捕まえたのか分からないし、被害者たちが浮かばれないからだ。まあ妥当な考え方だと言えよう。

「だが盗みを働いた人間の中には、食べ物がなくて腹を空かせた子供や、夫が育児を放棄して逃げ子供を養えなくなった女性など、終身刑にするには心痛い事例がごまんとある。」

 確かに、貧困層ではとんでもない殺人事件よりも、そう言った事件の方が多いのかもしれない。

「勿論、殺人を犯したり犯罪組織に所属していたりする者と先ほど言った様な人たちの区別の仕方など、法を整備し直さないとならないし、やらなければならない事は沢山ある。でも僕は、その時々の状況によって国は変わり続けなければならないと思う。」
「僕もそう思うよ。」

 しかし、そういった盗みを働いた人の中には通常より強い魔力を持ち、それで人に怪我を負わせてしまった人などもいる。そういう人を野に放つ場合、魔力を制限できる方法がないと、犯罪者の仮釈放は現実的では無い。

「そこでそのブレスレットだよ!これは本当に画期的な道具だ。」
「そうか‥‥。今度兄さんを紹介しようか?」
「是非頼む!」

 だが、そうか。このブレスレットを使えば魔力を制限できる‥‥皆んな同じ土俵に立たせることができるのだ。

(確かに、色々なことに利用できるかも‥‥はっ!)

 その時、オズはとんでもない計画を思いついてしまった。ニヤリと不気味な笑みを浮かべ、未だ考え事をしているランベルトにずいっと寄る。

「なあ、とんでもないこと思い付いたんだけど‥‥聞いてくんない?」






















 こんこんこん、と生徒会室の扉をノックする。中には一人しかいない様で、生徒会長であるグレイグが直接「どうぞ。」と声をかけた。オズとランベルトは「失礼します。」と言って室内へ入る。
 奥の机に座って書類仕事をしていたグレイグは、入ってきた二人を見て目を丸くした。

「体育祭について、提案があるのです。」

 そこで、オズは自身で考えた〝新しい体育祭計画〟を提案した。
 高魔力保持者と低魔力保持者で会場を分けて体育祭を行うのをやめ、全員で戦える行事にしようと考えたのだ。しかし魔力差があると、どうしたって‥‥と思われるかもしれないが、そう、ならば魔力を使わなければいい。元々低魔力保持者の会場の方は半分以上の競技が魔力を使わないものだったし、無理な話でも無い。勿論、誰も魔術を使ってずるいことを出来ない様に、あのブレスレットを付けることは必須条件だ。

(これで、前世にやってた体育祭と同じになる。)

 グレイグは半ば呆然とオズの話を聞いていた。そんな事は考えたことがなかったと溢し、少し考えて、厳しい表情になる。

「だ、だかしかし‥‥このやり方は古くから行われてきた伝統的なもので‥‥。」
「だから、一緒に伝統をくつがえそうよ!新しい時代を作るんだ!」

 オズは語る。高魔力保持者と低魔力保持者は、この行事によって差別化が助長されているのでは無いかと。皆んな魔力を使えないという状況にして仕舞えば、平民相手に高位貴族が勝てるかどうかも分からない。

「それって、凄くわくわくしない?」
「わくわく?」

 グレイグは眉に皺を寄せ、首を傾げた。オズは大きく頷き、彼の机に両手を付いて身を乗り出す。

「魔力が強くて今まで簡単にのし上がってきた人が、今回の大会ではそうはいかなくなるんだ。グレイグだって、あれほどの魔力があれば、今まで本気を出さなくても一番を取れてきたんじゃない?」
「まあ、いつも全力を出していたかと言われると嘘になるが‥‥。」
「魔力が使えなければ、身体能力一本勝負だ。平民にも低魔力保持者にも君より体格が良い人は沢山いるし、足が速い奴も、ジャンプが高い奴もいる。全力を出しても敵わない相手がいるかもしれないんだ!」

 後ろで小さく目を見開くランベルトにグレイグは気が付いたが、オズは見えていないので気付かない。

「今まで相手に退屈していたなら尚更、凄く楽しそうだと思わない?」

 グレイグは目を見開いていたが、その瞳には先程よりも明るい光が宿っていた。「楽しそう‥‥。」と小さく呟き、少しずつその表情は大好きな物を食べた時の様な、大好きな本を読んだ時の様な、幸福を前にした色になる。

「それに、ほら、ここにいるランベルトもこの企画を推してるんだよ!な!」

 オズは突然後ろにいたランベルトに寄り添うと、その背中をバンッと叩いた。グレイグは「そうなのか?」と目で示し、ランベルトは———彼も何故かグレイグと同じ様な希望に満ち溢れた表情になっている———ぐっと拳を握る。

「ああ‥‥見てみたいんだ。この学園が本当に変わるのか。」



 ランベルトの意向でもあるとなると、グレイグは断りずらいだろうと踏んで彼を連れてきたのだが、本当に提案は受理された。とは言ってもまだ教師たちには話を通していない。

「面と向かって言っても、話を聞き終わる前に断られる事は目に見えている。」

 グレイグの案で、近々全校生徒を生徒会長の緊急招集を使い、体育館に集めてこの計画に乗り気にさせ、教師にも抑えられない勢いにして仕舞えばいいという話になった。ランベルトがこの計画を推しているという話は使えるので、彼もステージに上がらせる。主な話はオズがすることになった。

 いよいよ、全校生徒招集計画は明日実行である。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。 それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。 家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。 そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。 ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。 誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。 「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。 これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

『君を幸せにする』と毎日プロポーズしてくるチート宮廷魔術師に、飽きられるためにOKしたら、なぜか溺愛が止まらない。

春凪アラシ
BL
「君を一生幸せにする」――その言葉が、これほど厄介だなんて思わなかった。 チート宮廷魔術師×うさぎ獣人の道具屋。
毎朝押しかけてプロポーズしてくる天才宮廷魔術師・シグに、うんざりしながらも返事をしてしまったうさぎ獣人の道具屋である俺・トア。 
でもこれは恋人になるためじゃない、“一目惚れの幻想を崩し、幻滅させて諦めさせる作戦”のはずだった。 ……なのに、なんでコイツ、飽きることなく俺の元に来るんだよ? 
“うさぎ獣人らしくない俺”に、どうしてそんな真っ直ぐな目を向けるんだ――? 見た目も性格も不釣り合いなふたりが織りなす、ちょっと不器用な異種族BL。 同じ世界観の「「世界一美しい僕が、初恋の一目惚れ軍人に振られました」僕の辞書に諦めはないので全力で振り向かせます」を投稿してます!トアも出てくるので良かったらご覧ください✨

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。

フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」  可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。  だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。 ◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。 ◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。

処理中です...