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2. 現れる登場人物達
中等部に進学!
しおりを挟む進学祝いの花束を抱えて、オズは大きな門の前に立っている。春の日差しは暖かく、煉瓦造りの校舎を照らす。
「ここが中等部校舎‥‥。」
初等部とは比べ物にならない大きな校舎に広い庭園、巨大な噴水に林の様なものまで見えた。唖然としていると、後ろからヒューに声を上げられる。
「オズ、門の入り口前で記念撮影しようって皆んなが‥‥。」
そう言いながらこちらへ来たヒューは、オズの隣に並ぶと同じ様に門を見上げる。
オズはヒューに顔を向けると、出会った頃より力強い顔つきになった彼を見て感慨深くなった。出会った頃は若干オズの方が背が高かった——ヒューは否定している——のに、今では拳一つ分くらい負けている。
「いよいよ中等部だな、ヒュー。」
「案外初等部の生活は短かった気がするよ。でも、オズが一緒ならきっと中等部も楽しいだろうな。」
「これからもよろしく。」
「こちらこそ。」
そう笑みを交わし合うと、二人は門の入り口の方へ向かっていった。入り口にはジャスパー、ロニー、リンジー、それに中等部入学式を見に来た初等部制服を着ているアルが待っている。
(今日もアルが最高に可愛い。しかもかっこよさも増して来てる。制服似合いすぎだろ!)
二人が合流すると、ジャスパーの家のお付きの人が撮影水晶を構え、みんなで写真を撮った。
「見ろよこれ!」
「おお、四枚中三枚の写真でオズが半目だ‥‥っ!」
「え!?」
ジャスパーが水晶を確認しながら言って、覗き込んだロニーが笑いを堪えながら水晶を指差す。オズも急いで駆け寄り覗き込むと、確かに半目で花束を抱えた自分の姿が見えた。
「ちょっと、その三枚消してよ!」
「その写真は全て僕の部屋の水晶にも送っておいてくれ。」
「ヒュー!?」
ヒューがオズの半目写真を欲しがり、やたら嫌がるオズが面白かったのかジャスパーも乗って頷いたので、写真は後でヒューの家にも送られてしまうのだろう。
(けどまあ、この顔だから半目でも結構綺麗だしな。ギリ許すか。)
そんなこんなで学舎に入ると、まずは集会ホールに集まるよう職員に促されて従った。中では校長の挨拶を聞き、様々な偉い人達に歓迎の言葉を貰う。最後には、学園初等部の最終テストや一般校の最終テスト全て合わせて一番成績の良かった新入生が挨拶を行った。
その新入生は勿論———。
「———以上、新入生の言葉でした。グレイグ・ハルフォード君、ありがとうございました。」
主人公の彼氏(予定)のグレイグだ。
入学式進行役の教頭の言葉で、ホールに拍手の音が溢れる。
ヒューバートは成績がいつもグレイグといい勝負なのだが、最終テストの点数は僅差で負けてしまったらしい。オズはヒューバートが実はそれでかなり落ち込んでいたことも知っている。最終テストの結果が張り出された日、校舎裏でひっそり泣いていた彼の背中を撫でて慰めたのは結構最近の記憶だ。
ヒューは意外と負けず嫌いなのだ。オズは彼が泣いているところを初めて見て、元気を出してほしいと思い背を撫でる反面、自分しか知らないヒューの顔がある事が嬉しくもあった。
(なーんて。そんなこと言ったら怒られるかな。)
オズはヒューバートの何事にも一生懸命なところが好きだし、彼の隣に居るために自分もそうありたいと思っている。なので、クラス発表にも勿論全力で挑んだ。
「オズワルド、オズワルド‥‥あった!Cクラスだ!」
廊下に張り出された紙を探し見る。なにせとんでもない人数なので、名前がアルファベット順に並んでおり、名前の後ろにクラスが表記されるという形になっている。
「僕は‥‥Aクラスだ‥‥。」
「俺はCクラスだったぜー。」
ヒューのこの世の終わりの様な声の後に、ジャスパーの呑気な声が続く。
「ヒューと‥‥離れ離れ‥‥!?」
「俺はいるぞ。」
「オズ‥‥お昼はまた一緒に食べよう。」
「俺も一緒だけどな。」
「うん‥!俺、一人でも頑張るよ。」
「俺居るって。」
「オズ、頑張って友達作るんだよ。」
「ヒューもね‥!」
「お前ら耳付いてる?」
ジャスパーを揶揄ったりしつつ、オズは結構気落ちしていた。ヒューと別れ、少し憂鬱な気分でCクラスへの廊下をジャスパーと歩く。
「そんなに落ち込むなよ。このくそ多いクラス数なのに俺がまた同じクラスなのも凄いだろ。」
「確かに‥‥。」
(てかジャスパーは同じクラスになりすぎだろ。もうずっと連続だし。)
そんなことを思いながら歩く廊下には窓から日の光が差し込んでいて、木の床板が明るく見えた。
(最悪だ‥‥もう帰りたい。)
教室の扉をくぐりエッカルトの姿が目に入ったオズの最初の感想はそれだ。
エッカルト・ギーアスターは小説の登場人物の一人で、主人公メルヴィンに惚れる男の一人でもありかなりイケメンで格好良い。しかし嘘みたいに思想が強い魔力至上主義者で、去年の修学旅行中に彼に出会ったオズは盛大に説教を垂れた。それ以来なんだか好かれてしまった様である。
(このクラス数で同じクラスになるか?運凄すぎだろ。)
奴はオズを見つけると直ぐにこちらへ駆け出して来る。
「オズワルド!」
「エッカルト‥‥久しぶりだね。」
「ああ、君と同じクラスになれて本当に嬉しいよ。また君の話を沢山聞かせてくれ!」
「ははっ‥‥。」
エッカルトの口癖は「これだから低魔力保持者は‥‥。」だった筈、というか高等部になるまでそれが口癖な筈なのだが、価値観が変わってしまったのかもしれない。去年の別れ際に「君の言葉で世界が変わった。」とか何とか言っていた。魔力至上主義者でなくなっている可能性がある。
(それって物語に影響はないんだろうか。いや、深く考えるのはやめよう。)
そうして黒板に貼ってある紙通りの席につき、オズは右隣を向いた。隣の席の子にさっそく声を掛けて仲良くなりたいな、と顔を向けたのだが、そこにいた人物を見て絶句する。
目を見張る様な白髪に、ちょうど良い濃淡の桃色の瞳。きゅるんとした可愛い顔は誰もを虜にしてしまいそうな笑顔だ。
しかしオズには彼に見覚えがあった。そう。何を隠そう、その男は‥‥。
(この子、ハイノじゃないか!?)
小説の登場人物一人だったのである。
ハイノ・ゲーテはとても可愛いキャラクターで、いつも色んな人をメロメロにしてきた。だが本性はとんでもない腹黒という設定だ。
その時、ちょうどハイノもオズの視線に気がついてこちらを向いた。ハイノはにっこりと美しい笑みで口を開く。
「こんにちは。僕はハイノ・ゲーテです。隣の席の子だよね。名前は何と言うの?」
「お、オズワルド・チャールトンです‥‥。」
彼の笑みに、近くに居た生徒達が見惚れて呆けている。
しかしオズだけは知っている。この可愛らしい顔の裏で、こいつがどれだけ腹黒かということを。
ハイノは可愛らしく小首を傾げる。
「オズ君だね!これからよろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします‥‥。」
オズはビクビクしながら挨拶を交わした。
(ハイノはやばい。どうしよう、隣の席とか怖すぎ‥‥!)
そうして黒板の方へ顔を戻すと、今度は左側から視線を感じて、オズは恐る恐るそちらに顔を向ける。
「ぎゃっ!」
思わず奇声を上げてしまった。なんとエッカルトが左隣の席に座って頬杖をつき、キラキラした目でオズを見つめていたのである。
(何何何、マジで!?怖すぎるんだけど!)
エッカルトはこれまた皆んなが見惚れてしまう様な美しい微笑みを浮かべる。
「オズの隣の席だなんて‥‥とても嬉しいよ‥‥!」
「ははっ‥‥。」
オズは空気が抜ける様な微妙な笑みで返した。
(いつの間にかオズ呼びだし。)
中等部のクラスの新しい席は、右隣がきゅるるんと可愛い白髪にピンクの瞳の腹黒男ハイノ、左隣が魔力至上主義者で思想つよつよイケメンエッカルトだ。かなりの強メンツで始まった新学期に、オズはもう既に根を上げてしまいそうである。
(こいつらを虜にしてたメルヴィン強すぎだろ‥‥。)
しかしメルヴィンは高等部生にならないと学園には来ないので、中等部は自分の力で何とかしないといけない。
(終わった‥‥。)
オズは机に突っ伏した。
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