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序章
第4話
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「この学生寮は他の学園に比べて広くて使い心地がいいことで有名なんですよ。男子寮は見たことがないから詳しいことはあまり知らないけれど、女子寮はかなり綺麗なんだよ」
「そ、そうですか」
笑顔で話しかけるリリアに対して、ぎこちない笑顔を見せるクルス。クルスがこれまで過ごしてきた殲滅軍には同世代の女性が在籍していなかったため、会話経験がほぼないためスムーズに会話ができずにいた。
「学生寮までまだまだ時間があるし軽くこの学園の特徴について説明しようかな」
「学園の特徴ですか?」
「そ、学園の生徒は実力や貢献度とかによってランク分けがされているの」
【マーリン魔導士育成学園】では学生がその学年には依存せず、実力や試験の結果など様々な要素から階級分けされている。最低はDで、そこからC、B、Aそして最後にS級となっている。
「私はA級で、こんな感じで金色の腕章がその証なの」
ふふん、と自信満々にその腕章をクルスに見せつける。説明の通り上から2番目のランクであるため上位であることは予想できるが、クルスは正確にはわからない。
「A級ってどのぐらいの強さなんですか?」
「うーん、ここで言ってもいいけすぐにわかると思うしあえて言わないでおこうかな。実際に見てみたほうがいいよ」
クルスは何となく気になったものの、おそらく問い詰めても回答は出ないだろうと判断し追及することをやめた。しばらく歩いていると、学園の教室が近くなったことにより、学生の声や先生の声などが聞こえるようになってきた。
「リリアさんは授業とか大丈夫なんですか?」
「私はキース先生、というか学園長から特別許可を得ているから大丈夫だよ。じゃなきゃこうして授業中に堂々と別ごとできないわよ」
クルスはあたりを見渡す。運動場や強固な造りになっている特殊な建物、そして学園の定番の建物である授業棟が何棟も建てられている。
クルスは幼いころから戦場で生きてきたためこういった建物を見る機会は全くなかった。だからこそ興味深そうに眺めていた。
「さて、そろそろ学生寮だよ。今日はもうクルス君予定はないから寮で休むといいよ。明日から慣れてない学園生活が始まるわけだし」
「わかりました。今日はありがとうございました」
「いいよいいよ、今後も可能な限りは私も手伝うしわからないことがあったら遠慮なく声けてもいいよ」
リリアは笑顔で手を振ると学生寮から姿を消した。学生寮は異性の出入りは原則禁止されている。そのためリリアの動向も学生寮前までだ。
クルスが学生寮に入ると、声や音はほとんど聞こえなかった。それもそのはずクルス以外の学生は授業中であるからだ。中を進むと、そこには男性の職員が立っていた。
「君がクルス君だね。僕はこの学生寮の管理人のドーラだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
ドーラは右手を差し出した。クルスはそれにこたえるように手を出し、強い握手を交わす。
「思ったより、強い手だな。その見た目で数々の死線をくぐり抜けてきたようだな」
「え?握手だけでわかるものですか?」
「学園長から君の素性をある程度聞いているからね。そうでなくともわかるさ。僕もこの学園でいろんな学生を見てきたからね」
少し不敵に笑うドーラ。そしてついてくるようにクルスに声をかける。
「(この人も学園長も、中々変わった人たちが多いな。意外と退屈しないのかもな)」
馬車に乗っている間は、【マーリン魔導士学園】に関して興味のかけらもなかったが、軍では味わうことのなかった新鮮味に少し楽しさを感じ始めている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「必要な書類は机の上に置いてある。荷物はほとんど送られてこなかったが大丈夫か?」
「はい、特に必要なものも無かったので問題ないです」
了解だ、と言ってドーラは部屋を出ていった。寮部屋は1人一室のようで、学習机にベッドで数冊入った本棚があるぐらいで簡素的にである。
「まあ、こんぐらいあれば大丈夫だろう。とりあえず書類に目を通しておくか」
ベッドに腰を掛けると、机の上に置かれていた書類を読み始める。そこには学園の方針や授業形態、あとはリリアからもある程度説明があったランク制度などが書かれていた。
ランクは入学時の試験結果や検査等である程度ランク分けされる。そのため1年でありながら上位ランクに振り分けられることもある。
「だが、俺は編入扱いのため最低順位からスタートっていうわけか」
ある程度書類に目を通し終えたクルスは書類を片付け、ベッドに横たわった。
「...こうして昼の間にベッドにいるのは変な感覚だな」
こうしてクルスの初日は終了した。
「そ、そうですか」
笑顔で話しかけるリリアに対して、ぎこちない笑顔を見せるクルス。クルスがこれまで過ごしてきた殲滅軍には同世代の女性が在籍していなかったため、会話経験がほぼないためスムーズに会話ができずにいた。
「学生寮までまだまだ時間があるし軽くこの学園の特徴について説明しようかな」
「学園の特徴ですか?」
「そ、学園の生徒は実力や貢献度とかによってランク分けがされているの」
【マーリン魔導士育成学園】では学生がその学年には依存せず、実力や試験の結果など様々な要素から階級分けされている。最低はDで、そこからC、B、Aそして最後にS級となっている。
「私はA級で、こんな感じで金色の腕章がその証なの」
ふふん、と自信満々にその腕章をクルスに見せつける。説明の通り上から2番目のランクであるため上位であることは予想できるが、クルスは正確にはわからない。
「A級ってどのぐらいの強さなんですか?」
「うーん、ここで言ってもいいけすぐにわかると思うしあえて言わないでおこうかな。実際に見てみたほうがいいよ」
クルスは何となく気になったものの、おそらく問い詰めても回答は出ないだろうと判断し追及することをやめた。しばらく歩いていると、学園の教室が近くなったことにより、学生の声や先生の声などが聞こえるようになってきた。
「リリアさんは授業とか大丈夫なんですか?」
「私はキース先生、というか学園長から特別許可を得ているから大丈夫だよ。じゃなきゃこうして授業中に堂々と別ごとできないわよ」
クルスはあたりを見渡す。運動場や強固な造りになっている特殊な建物、そして学園の定番の建物である授業棟が何棟も建てられている。
クルスは幼いころから戦場で生きてきたためこういった建物を見る機会は全くなかった。だからこそ興味深そうに眺めていた。
「さて、そろそろ学生寮だよ。今日はもうクルス君予定はないから寮で休むといいよ。明日から慣れてない学園生活が始まるわけだし」
「わかりました。今日はありがとうございました」
「いいよいいよ、今後も可能な限りは私も手伝うしわからないことがあったら遠慮なく声けてもいいよ」
リリアは笑顔で手を振ると学生寮から姿を消した。学生寮は異性の出入りは原則禁止されている。そのためリリアの動向も学生寮前までだ。
クルスが学生寮に入ると、声や音はほとんど聞こえなかった。それもそのはずクルス以外の学生は授業中であるからだ。中を進むと、そこには男性の職員が立っていた。
「君がクルス君だね。僕はこの学生寮の管理人のドーラだ。よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
ドーラは右手を差し出した。クルスはそれにこたえるように手を出し、強い握手を交わす。
「思ったより、強い手だな。その見た目で数々の死線をくぐり抜けてきたようだな」
「え?握手だけでわかるものですか?」
「学園長から君の素性をある程度聞いているからね。そうでなくともわかるさ。僕もこの学園でいろんな学生を見てきたからね」
少し不敵に笑うドーラ。そしてついてくるようにクルスに声をかける。
「(この人も学園長も、中々変わった人たちが多いな。意外と退屈しないのかもな)」
馬車に乗っている間は、【マーリン魔導士学園】に関して興味のかけらもなかったが、軍では味わうことのなかった新鮮味に少し楽しさを感じ始めている。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「必要な書類は机の上に置いてある。荷物はほとんど送られてこなかったが大丈夫か?」
「はい、特に必要なものも無かったので問題ないです」
了解だ、と言ってドーラは部屋を出ていった。寮部屋は1人一室のようで、学習机にベッドで数冊入った本棚があるぐらいで簡素的にである。
「まあ、こんぐらいあれば大丈夫だろう。とりあえず書類に目を通しておくか」
ベッドに腰を掛けると、机の上に置かれていた書類を読み始める。そこには学園の方針や授業形態、あとはリリアからもある程度説明があったランク制度などが書かれていた。
ランクは入学時の試験結果や検査等である程度ランク分けされる。そのため1年でありながら上位ランクに振り分けられることもある。
「だが、俺は編入扱いのため最低順位からスタートっていうわけか」
ある程度書類に目を通し終えたクルスは書類を片付け、ベッドに横たわった。
「...こうして昼の間にベッドにいるのは変な感覚だな」
こうしてクルスの初日は終了した。
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