魔物殲滅軍上がりの少年は魔導士育成学園で無双する

Miiya

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序章

第2話

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馬車に揺られながら、2日間かけてついに到着したクルス。学園のあまりの大きさに思わず驚いてしまう。

「兄ちゃんこんなところで驚いてたらこの先もたんよ。中はもっとすごいことになっているよ」

馬車の御者にそんなことを言われてしまうクルス、実際クルスが驚くのも、無理はなく彼が今まで配属されていた部署はそこまで大きくなかった。しかし、今目の前には城下町でもあるのかというレベルである。

「これが魔導士育成学園か想像していたのとはだいぶ違ったんで」

「まあ確かにこの学園は他のところに比べてもかなり規模は違うな」

クルスがこれから通う【マーリン魔導士育成学園】は、他の学園と比べても歴史や知名度だけでなく学園自体の大きさも群を抜いている。

「そんじゃ達者でな兄ちゃん」

そう言って御者は去っていった。

「着いたはいいけど、一体この後どうすればいいんだ」

クルスに渡された資料には、【マーリン魔導士育成学園】への到着までしか記載されておらず、この後に関しては何1つ記載されていなかった。

「勝手に入るわけにもいかないしな」

学園入り口付近には守衛所のようなものが設置されており、時折その方向から強い視線をクルスは感じていた。

「遅れてしまってすまない。思ったよりこちらの作業が滞ってしまってね」

クルスの背後から2人、綺麗な男性と女性だ。ここにはクルス以外人がいないので、自分に声をかけてきたのだと認識する。

「あんたたちは一体誰だ」

「僕はキース、この学園の教員長を務めている。こちらは助手のリリアだ」

「初めまして、私はリリアと申します。この学園ではあなたの先輩にあたります。どうぞよろしくお願いします」

クルスは軽く会釈をする。

「来てもらって早々で悪いけど、ちょっと場所を移させてもらえるかな。少し話がしたくてね」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

クルスはキースたちの後をついていく。無事学園内に入れたものの、御者が言っていた通り学園内も当然に広くかつ、豪華な装飾が施されているためクルスはなかなか落ち着かない様子だった。

「中々いい反応をみせるね。何か気になったものでもあったかい?」

「いや、学園の割には他生徒を全く見かけないのが不思議に感じてしまいますね」

そう、クルスたちが通ってきた道には生徒だけでなく教員たち誰1人として見かけることはなかった。時間帯次第では通る人数が少ないことも可能性としてはあるが、いくら何でも無人というのは不自然に感じたようだ。

それを聞いたキースはにやりと笑みを浮かべると、

「別に怪しいことをするつもりはないよ。人払いをしているのは、すぐに移動ができるようにするためだけだよ。この後学園長に会ってもらいたいからね」

クルスはキースの言葉をきき素直に受け止めた。ほかにも色々と言いたいことはあったが、これ以上の追求は無用と感じた。

「さて、着いたよ。ここが【マーリン魔導士育成学園】の現学園長の部屋だ」

学園長の部屋の前には装置が置いてあり、そこに手をかざさせるような模様が入っている。キースが装置に手をかざすと、緑色の光が装置全体を覆い扉付近からガチャリと音が鳴った。

「キースです、入ってもよろしいでしょうか?」

「うむ、入りたまえ」

キースは声を発さず手のしぐさでクルスとリリアに入るように合図を送った。そして3人が学園長の部屋に入る。

「キース君!!合言葉はどうしたのかね!?」

3人が入った途端にそのような怒号が響いた。しかし、声は大きいものの高くかわいらしく聞こえる。奥に座っている学園長と思しき人間は、小さい華奢な少女だった。

「はあ、ここは学園長室であなたは学園長、この施設で最も偉い人物なんですよ。あれを合言葉にする学園長がどこに存在するんですか」

「ええ~~、『オープンセサミン!!』っていい合言葉だと思うのに。みんな言わないんだよね」

「当たり前でしょう、もっと学園長としての自覚をですね...」

ブーブーとまるで子供のような仕草をしている学園長の姿を見て、クルスは若干拍子抜けした。一方のキースは頭を悩ませている。

「あの2人は師弟関係なのであんな感じなんですよ。あんな感じですけど、普段はしっかりした人たちですから安心してくださいね」

リリアからそんな悲しいフォローが入る。学園長がキースからクルスのほうに視線を向ける。

「君がクルス君だね。私はここ【マーリン魔導士育成学園】の学園長、ノノだ」

「クルス=サングエです。よろしくお願いします」

先ほどまで幼い印象を見せてきた学園長、ノノだったが冷静な表情と声色でクルスに挨拶する。一瞬で雰囲気が変わったの察し、クルスも同じように真摯に対応する。

「君のことはかねがね聞いているよ。なんでも軍で8年間も在籍していたそうじゃないか。それでどんな人物なのか気になって呼ばせてもらったよ」

「いえいえ、自分はまだまだ未熟者ですよ。自分より優秀な隊員は他にもいますよ」

ノノはじっとクルスを見つめる。そのままの状態でしばらく時間が経つと、突然ノノから強烈な魔力の圧がクルスに襲い掛かってきた。

「学園長!?何をしているんですか!?」

キースが高速でノノのそばに接近し腕をとって止めようとしたが、障壁がすでに展開されており抑えることはできなかった。

「(いくら軍所属の人間とは言え、15歳の少年だぞ。彼に対してこの魔圧、学園長は何を考えているんだ)」

魔圧はクルスにしか向いていないためキースとリリアは問題ないが、クルスへの一点集中のため非常に危険な状況である。
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