2 / 8
序章
第2話
しおりを挟む
馬車に揺られながら、2日間かけてついに到着したクルス。学園のあまりの大きさに思わず驚いてしまう。
「兄ちゃんこんなところで驚いてたらこの先もたんよ。中はもっとすごいことになっているよ」
馬車の御者にそんなことを言われてしまうクルス、実際クルスが驚くのも、無理はなく彼が今まで配属されていた部署はそこまで大きくなかった。しかし、今目の前には城下町でもあるのかというレベルである。
「これが魔導士育成学園か想像していたのとはだいぶ違ったんで」
「まあ確かにこの学園は他のところに比べてもかなり規模は違うな」
クルスがこれから通う【マーリン魔導士育成学園】は、他の学園と比べても歴史や知名度だけでなく学園自体の大きさも群を抜いている。
「そんじゃ達者でな兄ちゃん」
そう言って御者は去っていった。
「着いたはいいけど、一体この後どうすればいいんだ」
クルスに渡された資料には、【マーリン魔導士育成学園】への到着までしか記載されておらず、この後に関しては何1つ記載されていなかった。
「勝手に入るわけにもいかないしな」
学園入り口付近には守衛所のようなものが設置されており、時折その方向から強い視線をクルスは感じていた。
「遅れてしまってすまない。思ったよりこちらの作業が滞ってしまってね」
クルスの背後から2人、綺麗な男性と女性だ。ここにはクルス以外人がいないので、自分に声をかけてきたのだと認識する。
「あんたたちは一体誰だ」
「僕はキース、この学園の教員長を務めている。こちらは助手のリリアだ」
「初めまして、私はリリアと申します。この学園ではあなたの先輩にあたります。どうぞよろしくお願いします」
クルスは軽く会釈をする。
「来てもらって早々で悪いけど、ちょっと場所を移させてもらえるかな。少し話がしたくてね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クルスはキースたちの後をついていく。無事学園内に入れたものの、御者が言っていた通り学園内も当然に広くかつ、豪華な装飾が施されているためクルスはなかなか落ち着かない様子だった。
「中々いい反応をみせるね。何か気になったものでもあったかい?」
「いや、学園の割には他生徒を全く見かけないのが不思議に感じてしまいますね」
そう、クルスたちが通ってきた道には生徒だけでなく教員たち誰1人として見かけることはなかった。時間帯次第では通る人数が少ないことも可能性としてはあるが、いくら何でも無人というのは不自然に感じたようだ。
それを聞いたキースはにやりと笑みを浮かべると、
「別に怪しいことをするつもりはないよ。人払いをしているのは、すぐに移動ができるようにするためだけだよ。この後学園長に会ってもらいたいからね」
クルスはキースの言葉をきき素直に受け止めた。ほかにも色々と言いたいことはあったが、これ以上の追求は無用と感じた。
「さて、着いたよ。ここが【マーリン魔導士育成学園】の現学園長の部屋だ」
学園長の部屋の前には装置が置いてあり、そこに手をかざさせるような模様が入っている。キースが装置に手をかざすと、緑色の光が装置全体を覆い扉付近からガチャリと音が鳴った。
「キースです、入ってもよろしいでしょうか?」
「うむ、入りたまえ」
キースは声を発さず手のしぐさでクルスとリリアに入るように合図を送った。そして3人が学園長の部屋に入る。
「キース君!!合言葉はどうしたのかね!?」
3人が入った途端にそのような怒号が響いた。しかし、声は大きいものの高くかわいらしく聞こえる。奥に座っている学園長と思しき人間は、小さい華奢な少女だった。
「はあ、ここは学園長室であなたは学園長、この施設で最も偉い人物なんですよ。あれを合言葉にする学園長がどこに存在するんですか」
「ええ~~、『オープンセサミン!!』っていい合言葉だと思うのに。みんな言わないんだよね」
「当たり前でしょう、もっと学園長としての自覚をですね...」
ブーブーとまるで子供のような仕草をしている学園長の姿を見て、クルスは若干拍子抜けした。一方のキースは頭を悩ませている。
「あの2人は師弟関係なのであんな感じなんですよ。あんな感じですけど、普段はしっかりした人たちですから安心してくださいね」
リリアからそんな悲しいフォローが入る。学園長がキースからクルスのほうに視線を向ける。
「君がクルス君だね。私はここ【マーリン魔導士育成学園】の学園長、ノノだ」
「クルス=サングエです。よろしくお願いします」
先ほどまで幼い印象を見せてきた学園長、ノノだったが冷静な表情と声色でクルスに挨拶する。一瞬で雰囲気が変わったの察し、クルスも同じように真摯に対応する。
「君のことはかねがね聞いているよ。なんでも軍で8年間も在籍していたそうじゃないか。それでどんな人物なのか気になって呼ばせてもらったよ」
「いえいえ、自分はまだまだ未熟者ですよ。自分より優秀な隊員は他にもいますよ」
ノノはじっとクルスを見つめる。そのままの状態でしばらく時間が経つと、突然ノノから強烈な魔力の圧がクルスに襲い掛かってきた。
「学園長!?何をしているんですか!?」
キースが高速でノノのそばに接近し腕をとって止めようとしたが、障壁がすでに展開されており抑えることはできなかった。
「(いくら軍所属の人間とは言え、15歳の少年だぞ。彼に対してこの魔圧、学園長は何を考えているんだ)」
魔圧はクルスにしか向いていないためキースとリリアは問題ないが、クルスへの一点集中のため非常に危険な状況である。
「兄ちゃんこんなところで驚いてたらこの先もたんよ。中はもっとすごいことになっているよ」
馬車の御者にそんなことを言われてしまうクルス、実際クルスが驚くのも、無理はなく彼が今まで配属されていた部署はそこまで大きくなかった。しかし、今目の前には城下町でもあるのかというレベルである。
「これが魔導士育成学園か想像していたのとはだいぶ違ったんで」
「まあ確かにこの学園は他のところに比べてもかなり規模は違うな」
クルスがこれから通う【マーリン魔導士育成学園】は、他の学園と比べても歴史や知名度だけでなく学園自体の大きさも群を抜いている。
「そんじゃ達者でな兄ちゃん」
そう言って御者は去っていった。
「着いたはいいけど、一体この後どうすればいいんだ」
クルスに渡された資料には、【マーリン魔導士育成学園】への到着までしか記載されておらず、この後に関しては何1つ記載されていなかった。
「勝手に入るわけにもいかないしな」
学園入り口付近には守衛所のようなものが設置されており、時折その方向から強い視線をクルスは感じていた。
「遅れてしまってすまない。思ったよりこちらの作業が滞ってしまってね」
クルスの背後から2人、綺麗な男性と女性だ。ここにはクルス以外人がいないので、自分に声をかけてきたのだと認識する。
「あんたたちは一体誰だ」
「僕はキース、この学園の教員長を務めている。こちらは助手のリリアだ」
「初めまして、私はリリアと申します。この学園ではあなたの先輩にあたります。どうぞよろしくお願いします」
クルスは軽く会釈をする。
「来てもらって早々で悪いけど、ちょっと場所を移させてもらえるかな。少し話がしたくてね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クルスはキースたちの後をついていく。無事学園内に入れたものの、御者が言っていた通り学園内も当然に広くかつ、豪華な装飾が施されているためクルスはなかなか落ち着かない様子だった。
「中々いい反応をみせるね。何か気になったものでもあったかい?」
「いや、学園の割には他生徒を全く見かけないのが不思議に感じてしまいますね」
そう、クルスたちが通ってきた道には生徒だけでなく教員たち誰1人として見かけることはなかった。時間帯次第では通る人数が少ないことも可能性としてはあるが、いくら何でも無人というのは不自然に感じたようだ。
それを聞いたキースはにやりと笑みを浮かべると、
「別に怪しいことをするつもりはないよ。人払いをしているのは、すぐに移動ができるようにするためだけだよ。この後学園長に会ってもらいたいからね」
クルスはキースの言葉をきき素直に受け止めた。ほかにも色々と言いたいことはあったが、これ以上の追求は無用と感じた。
「さて、着いたよ。ここが【マーリン魔導士育成学園】の現学園長の部屋だ」
学園長の部屋の前には装置が置いてあり、そこに手をかざさせるような模様が入っている。キースが装置に手をかざすと、緑色の光が装置全体を覆い扉付近からガチャリと音が鳴った。
「キースです、入ってもよろしいでしょうか?」
「うむ、入りたまえ」
キースは声を発さず手のしぐさでクルスとリリアに入るように合図を送った。そして3人が学園長の部屋に入る。
「キース君!!合言葉はどうしたのかね!?」
3人が入った途端にそのような怒号が響いた。しかし、声は大きいものの高くかわいらしく聞こえる。奥に座っている学園長と思しき人間は、小さい華奢な少女だった。
「はあ、ここは学園長室であなたは学園長、この施設で最も偉い人物なんですよ。あれを合言葉にする学園長がどこに存在するんですか」
「ええ~~、『オープンセサミン!!』っていい合言葉だと思うのに。みんな言わないんだよね」
「当たり前でしょう、もっと学園長としての自覚をですね...」
ブーブーとまるで子供のような仕草をしている学園長の姿を見て、クルスは若干拍子抜けした。一方のキースは頭を悩ませている。
「あの2人は師弟関係なのであんな感じなんですよ。あんな感じですけど、普段はしっかりした人たちですから安心してくださいね」
リリアからそんな悲しいフォローが入る。学園長がキースからクルスのほうに視線を向ける。
「君がクルス君だね。私はここ【マーリン魔導士育成学園】の学園長、ノノだ」
「クルス=サングエです。よろしくお願いします」
先ほどまで幼い印象を見せてきた学園長、ノノだったが冷静な表情と声色でクルスに挨拶する。一瞬で雰囲気が変わったの察し、クルスも同じように真摯に対応する。
「君のことはかねがね聞いているよ。なんでも軍で8年間も在籍していたそうじゃないか。それでどんな人物なのか気になって呼ばせてもらったよ」
「いえいえ、自分はまだまだ未熟者ですよ。自分より優秀な隊員は他にもいますよ」
ノノはじっとクルスを見つめる。そのままの状態でしばらく時間が経つと、突然ノノから強烈な魔力の圧がクルスに襲い掛かってきた。
「学園長!?何をしているんですか!?」
キースが高速でノノのそばに接近し腕をとって止めようとしたが、障壁がすでに展開されており抑えることはできなかった。
「(いくら軍所属の人間とは言え、15歳の少年だぞ。彼に対してこの魔圧、学園長は何を考えているんだ)」
魔圧はクルスにしか向いていないためキースとリリアは問題ないが、クルスへの一点集中のため非常に危険な状況である。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる