1 / 8
序章
第1話
しおりを挟む
「クルス、本部から命令で軍役の任が解かれることとなった」
魔物殲滅軍【リベルオル】、世界中で生息し人類の危機を脅かす存在である【魔物】を殲滅し平和を維持し続ける部隊である。私営軍隊ではなく、国家が管理しており軍隊での活躍次第では後に爵位を与えられることもあり、人類を守るという意味で非常に責任があると同時に人気もある。
そんなリベルオルで異例中の異例とも呼べる存在である15歳の少年、クルス=サングエ。リベリオルの平均年齢は34歳、若くても20歳前後であるがクルスは7歳にしてすでに軍役についていた。そんな彼が突然上司である軍隊長、シリウスからそう告げられた。
「俺何か問題でも起こしましたか?そこまでの重大なミスはしていないと思うんですが」
「理由としては、【マーリン魔導士育成学園】へ編入のためだそうだ」
【マーリン魔導士育成学園】、ここでは将来魔物を殲滅する魔導士を育成する学校の1つである。数ある育成学校の中でも圧倒的に高い教育水準を誇っており、【リベリオル】に所属している者で【マーリン魔導士育成学園】出身者も少なくない。
「でも俺はすでに魔物と戦えるんで今更通う必要はないと思うんですけどね」
「本部長にも考えがあってのことだろう。ここは素直に従っておけ」
クルスはすでに8年間魔物と戦い続け、時には生死をさまよいかけたこともあったが何とか生き残り続けられている。実力も軍役を続けられるぐらいには持っている。
そこがクルスは一番引っかかっていたのだ。理由が不鮮明で、現実的である『成長』という観点で考えたとしても8年も戦場で戦えば十分に実力は備わっていると認識される。
「3日後には移動みたいだから荷物はまとめておけ...いやその必要はないか」
「ええ、つい昨日に部隊改変の連絡が入っていたんで、ある程度荷物はまとめてありますよ。こういうことだったんですね」
クルスはしてやられた、といった表情をしている。数年に一度隊員の移動や場所の移動などによって部隊が改変されることがある。
「まあ連絡事項は以上だ、遅れが出ないように準備は早めに進めておくようにな」
「了解です」
クルスは部屋を離れた。クルスの対応をしていたシリウスが1つ息を吐くと
「こんな感じで大丈夫でしたか?」
「ああ、問題なかった」
シリウス1人しかいなかったはずの部屋に突然謎の男が現れた。
「あいつを戦線から離脱させるなんて一体どういうおつもりなんですか?本部長、あいつの実力なら十分に戦えますし、今更学園に通わせる必要性はないと思うんですが」
謎の男は、シリウスとクルスとの会話でも話題になっていた魔物殲滅軍【リベリオル】の本部長、ダークだった。ダークはにやりと笑い、
「奴の実力は俺自身も重々承知しているし、その上で学園への編入を斡旋した」
「一体何が目的なんですか?」
シリウスはダークの考えていることがますますわからなくなった。
「魔導士学園は何も魔物に対する戦闘だけを教えるわけではない。クルスは戦闘力は高いが、それ以外の能力、統率力だったりコミュニケーション能力といったところがまだまだ未熟だな」
シリウスはダークの言葉を聞いて素直に関心する。ただ魔物を倒しという意味では上記の能力はそこまで必要とされることは少ないが、【リベリオル】という組織で活動していくことを考えれば他の隊員との連携などで必要とされる可能性は高い。
「それにあいつはまだ15歳、成人にもなってないのに地獄のような環境で8年も戦い続けている。少しは年相応の楽しさを味わってもらいたいんだよ」
「本部長の考えはわかりましたよ。とはいえ、よく学園側も編入を受け入れましたね。【リベリオル】所属の少年ってだけで相当異例でしょう。扱いにくいと思うんですが」
魔導士育成学園は、本来は魔物と対抗する術を学ぶ場所である。そのためある程度他生徒とアドバンテージが生じうるのではないかとシリウスは危惧する。
「俺もその辺はどう説得するか考えていたが、向こうの学園長は特に何も言ってこなかったな。何かしらの利益があるんだろう」
ダークはシリウスに数枚の書類を渡した。そこには今度は言ってくる新人隊員の情報が記載されていた。
「自分の担当する区域の新人ですか。3人もこっちで抱えるんですね」
「クルスもいなくなって少なからず戦力は減少しているんだ。すぐ使えるようにしっかり叩き込んでくれよ」
「了解しました。それではお先に失礼します」
シリウスは部屋を出ると、新人の書類に目を通し始め今後どういった方針で進めていくかを模索した。ダークはシリウスがいなくなったのを確認し、深く椅子に腰かけた。
「...さて、クルスはどう成長して戻ってくるか非常に楽しみだな。8年間の戦場での経験が学園でどう活かされるかも気になるところだな」
ダークは不敵に笑う。
魔物殲滅軍【リベルオル】、世界中で生息し人類の危機を脅かす存在である【魔物】を殲滅し平和を維持し続ける部隊である。私営軍隊ではなく、国家が管理しており軍隊での活躍次第では後に爵位を与えられることもあり、人類を守るという意味で非常に責任があると同時に人気もある。
そんなリベルオルで異例中の異例とも呼べる存在である15歳の少年、クルス=サングエ。リベリオルの平均年齢は34歳、若くても20歳前後であるがクルスは7歳にしてすでに軍役についていた。そんな彼が突然上司である軍隊長、シリウスからそう告げられた。
「俺何か問題でも起こしましたか?そこまでの重大なミスはしていないと思うんですが」
「理由としては、【マーリン魔導士育成学園】へ編入のためだそうだ」
【マーリン魔導士育成学園】、ここでは将来魔物を殲滅する魔導士を育成する学校の1つである。数ある育成学校の中でも圧倒的に高い教育水準を誇っており、【リベリオル】に所属している者で【マーリン魔導士育成学園】出身者も少なくない。
「でも俺はすでに魔物と戦えるんで今更通う必要はないと思うんですけどね」
「本部長にも考えがあってのことだろう。ここは素直に従っておけ」
クルスはすでに8年間魔物と戦い続け、時には生死をさまよいかけたこともあったが何とか生き残り続けられている。実力も軍役を続けられるぐらいには持っている。
そこがクルスは一番引っかかっていたのだ。理由が不鮮明で、現実的である『成長』という観点で考えたとしても8年も戦場で戦えば十分に実力は備わっていると認識される。
「3日後には移動みたいだから荷物はまとめておけ...いやその必要はないか」
「ええ、つい昨日に部隊改変の連絡が入っていたんで、ある程度荷物はまとめてありますよ。こういうことだったんですね」
クルスはしてやられた、といった表情をしている。数年に一度隊員の移動や場所の移動などによって部隊が改変されることがある。
「まあ連絡事項は以上だ、遅れが出ないように準備は早めに進めておくようにな」
「了解です」
クルスは部屋を離れた。クルスの対応をしていたシリウスが1つ息を吐くと
「こんな感じで大丈夫でしたか?」
「ああ、問題なかった」
シリウス1人しかいなかったはずの部屋に突然謎の男が現れた。
「あいつを戦線から離脱させるなんて一体どういうおつもりなんですか?本部長、あいつの実力なら十分に戦えますし、今更学園に通わせる必要性はないと思うんですが」
謎の男は、シリウスとクルスとの会話でも話題になっていた魔物殲滅軍【リベリオル】の本部長、ダークだった。ダークはにやりと笑い、
「奴の実力は俺自身も重々承知しているし、その上で学園への編入を斡旋した」
「一体何が目的なんですか?」
シリウスはダークの考えていることがますますわからなくなった。
「魔導士学園は何も魔物に対する戦闘だけを教えるわけではない。クルスは戦闘力は高いが、それ以外の能力、統率力だったりコミュニケーション能力といったところがまだまだ未熟だな」
シリウスはダークの言葉を聞いて素直に関心する。ただ魔物を倒しという意味では上記の能力はそこまで必要とされることは少ないが、【リベリオル】という組織で活動していくことを考えれば他の隊員との連携などで必要とされる可能性は高い。
「それにあいつはまだ15歳、成人にもなってないのに地獄のような環境で8年も戦い続けている。少しは年相応の楽しさを味わってもらいたいんだよ」
「本部長の考えはわかりましたよ。とはいえ、よく学園側も編入を受け入れましたね。【リベリオル】所属の少年ってだけで相当異例でしょう。扱いにくいと思うんですが」
魔導士育成学園は、本来は魔物と対抗する術を学ぶ場所である。そのためある程度他生徒とアドバンテージが生じうるのではないかとシリウスは危惧する。
「俺もその辺はどう説得するか考えていたが、向こうの学園長は特に何も言ってこなかったな。何かしらの利益があるんだろう」
ダークはシリウスに数枚の書類を渡した。そこには今度は言ってくる新人隊員の情報が記載されていた。
「自分の担当する区域の新人ですか。3人もこっちで抱えるんですね」
「クルスもいなくなって少なからず戦力は減少しているんだ。すぐ使えるようにしっかり叩き込んでくれよ」
「了解しました。それではお先に失礼します」
シリウスは部屋を出ると、新人の書類に目を通し始め今後どういった方針で進めていくかを模索した。ダークはシリウスがいなくなったのを確認し、深く椅子に腰かけた。
「...さて、クルスはどう成長して戻ってくるか非常に楽しみだな。8年間の戦場での経験が学園でどう活かされるかも気になるところだな」
ダークは不敵に笑う。
3
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる