追放された勇者、魔物の帝国を創る

Miiya

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第4話

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蒼真は出来上がった洞窟の中に足を踏み入れる。壁はかなり綺麗に作られておりごつごつしていないため、安全に壁にもたれかかることができる。中に入ると、開いていた部分が閉じていった。

「真っ暗にはなるが、逆に安心できるか」

洞窟の開いていたところから漏れていた月の光が完全に消えた。何も見えなくなったが、それでも壁の強度はかなりあるため安心して体を休めれる。

「う!?まただるくなってきた」

蒼真は壁にもたれかかった瞬間に体にどっと疲れを感じた。これは【土地開発】によって洞窟を作ったことに起因している。軽く息も切れ始めているが、何とか意識は保っている。

「...なるほどな。これが俺の能力か。おそらく俺のこの能力はさっきの食べるもの、飲み物、そして休めれる場所、この3つのもので一番強く想像できるものが現れた」

蒼真はある程度自身の能力を把握し始めた。まだ試行回数は全然足りてはおらず、確定的な要素もほとんどないが元もと勇者には何かしらの能力が宿るということ、そしてあり得ないこの一連の現象から自身の能力によるものだと推測した。

「だが、攻撃的なものを出すことはできないのか。飲み物を願ったときにも目の前から出たわけではなく、水溜りという形で出てきた。自然に関する能力であり、サポート的な能力...いやこの認識は正しくはないか」

蒼真は自信に宿った能力の推測を続けた。周りに頼れる人はおらずいつ命を落としてしまうかもわからない。現状彼に残っているのはこの能力だけである。

「さっきの果物や水に比べて、今の洞窟は大きさもそうだしなにより発動の時間が違いすぎる」

木の実と水を願ってから、実際に出現したのは15分後のことであった。これは蒼真は別の場所にいたため知る由もないが、洞窟に関しては1分もかからず発動した。

「疲れはかなり感じるが、気を失うほどではないな。まだまだ確かめる要素が多そうだな」

蒼真はそのあとこの能力に関していろいろと推測をしながら、夜を越した。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

蒼真は、起き上がると壁のほうに歩き始めた。自動扉のように壁が開き始めた。

「こんな機能まであるのはありがたいな。いちいち洞窟を出す必要がないな」

洞窟の作成1回でかなりの魔力を使用してしまい、それに伴い体力も削られてしまう。そういう意味で、一度作ったあと何度も使用することが可能なのは、無駄なエネルギーを抑えられる。

太陽の光を浴びて大きく体を伸ばす。日本とは違いベッドや布団はなく座ったままで寝たためかなり体を痛めてるようだ。

昨日残していた果物の残りを朝ごはんとして食べた。外に置いていたがそこまで気温は高くなく悪くなかったため蒼真はすんなりと食べることができた。

最後の1つを食べようとした瞬間、近くの茂みから物音がすた。

「何だ!?」

蒼真は果物を置いてすぐにその場から遠ざかった。そして後ろにあった洞窟の前に立った。何か魔物が現れればすぐに隠れることができるからである。

しばらく経つと、茂みから2匹のスライムが現れた。手のひらサイズで、青色と赤色のスライムであった。蒼真は獣が出ると警戒していたが、スライムが出たため少し警戒心が薄れてしまった。

「なんだ、スライムだったか。てっきりクマとかかと思った」

蒼真はこれまで魔物に一度も出会ってない。しかも何も知らない森なうえ異世界ともなれば、強大な魔物が現れても何らおかしくないと想像できる。

しかし、スライムも異世界の魔物には違いない。スライムは蒼真のほうをじっと見つめている様子。だが一向に襲う気はないようであるが、何かに気付いたのか蒼真の後ろの水たまりのほうにぴょんぴょんと跳ねていった。

「水が欲しかっただけなのか?確かにここら一帯に川はなかったが」

2匹のスライムは水たまりに乗っかると、水たまりの水がどんどんなくなってきた。どうやら体全体で水を吸収しているようで水たまりにある水がすべてなくなってしまった。

吸収しきったスライム2匹は嬉しそうにその場でぴょんぴょんと跳ねているようだ。そして蒼真の足元に寄り添って近づくとプルプルと震えた。

「仲間になりたがっているのか?」

蒼真はそうつぶやくと、スライム2匹は激しく震えた。蒼真につぶやきに答えたのかは定かではなかったが、蒼真は肯定的だととらえ、蒼真はスライムたちに手を伸ばす。スライム2匹は手に乗っかるとそのまま蒼真の両肩に乗っかった。

蒼真は、そこまで深く考えていなかったがスライムは蒼真の言葉を本当に理解していたのだ。これは蒼真が授かったもう1つに能力である【魔力強化】によるもので、蒼真によって作り出された水には多量に魔力が含まれており、スライムたちは水を介して魔力を吸収することによって大幅に強化された。

しかし、スライムと同じように飲んだ蒼真には強化が働かない。というよりは、魔物にしか作用しない能力であるため、この能力も勇者にはかなり不向きなものであった。
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