189 / 195
第11章 テイマーの街
第188話 王者の一撃
しおりを挟む
試合が開始してから、おおよそ5分が経過した。ザークは短剣をメインに機動力を生かした戦法をとっている。予選のバトルロワイヤルであれば、単純な攻撃だけでもほとんどの選手を倒せていただろうが、相手はこの闘技場のカリスマのゼノンさんだ。
「あれだけ手数の多い攻撃にも関わらず、すべて正確に対処していますね」
ゼノンさんは攻撃の95%をかわし、時には蹴りで剣を弾くことでザークの攻撃を防いでいる。攻撃は喰らっていないが、いまだに自身から攻めに行っているシーンは一度もない。
「ゼノンさんは何か狙っているんですか?流石に何回かは攻撃に動いても良かったと思うんですが」
「ああ、ゼノンはあえて自分から動いていないんだ」
「?どういうことですか?」
「予選の時は派手に、かつスピーディーに戦う方が観客を沸かせられるけど、今回は瞬殺では流石に物足りないだろう。時間をかけすぎても、だれるからあんまりいいとも言えないが」
自分から行かない理由は、観客のためのパフォーマンスということか。普段相手にすることが魔物ばかりだから、そういう感覚は中々持てないな。
「そろそろやな」
「いつまで回避してるつもりなんだ。あんたが魅せるために回避に専念して時間を稼いでいるのはわかっている。俺に攻撃しないと意味ないぞ」
ゼノンさんが、ザークの言葉を聞くと大きなため息をついた。
「は~~、何をゆうとんねや。お前のためにこうして5分間は猶予を与えてやってんや。いきなり倒すのは流石に酷やと思って、チャンスを与えたのにのう。まあええか、それじゃあとっとと終わらせよか」
ゼノンさんは一気に魔力を込め始めた。魔力の動きは全く淀みがなく、それでいて力強い。遠くから見ている俺ですらこれだけプレッシャーを感じているのだから、目の前で対峙しているザークに対するそれは比べものにもならないだろう。
「(もしこのまま勝ち進めば、俺が相手になるのかもしれないのか)」
このトーナメントで結果を出すことを目標にするのであれば、避けては通れない相手である。そのことはもちろん最初から分かっていたことではあるが、改めて考えると背筋が凍るな。
「それがあなたの全力のようだな。つまり、その一撃を凌げることができれば俺にもまだまだ勝機があるということだ」
ザークはそう言うと、彼もまた魔力をためそして身体強化を施す。完全に防御態勢に入っている。
「中々悪ないやん。あと数年この闘技場で戦えばさらに強なりそうやな。俺のレベルには全く到達してないけどな」
「最後までどうなるかはわからないもんだろ」
「その意気込みだけは認めたるわ。そういう反骨精神は大事や、この闘技場でなり上げていくには常に挑戦し続ける必要がある」
ゼノンさんは仁王立ちの体勢から、腰を軽く落とし右手を少し前に突き出す。おそらくゼノンさんの攻撃が繰り出される。ザークもため込んだ魔力をすべて防御力に返還させている。
「いくぞ『飢餓狼の爪《ウルブスクロー》』」
独特の構えから、一瞬にしてゼノンさんはザークの背後に回っていた。そのザークは大きな切り傷を受けてその場で倒れ込んだ。
「そこまで、勝者ゼノン!!」
「やっぱしあっけなかったのう。怪我しなかっただけマシと考えるべきやろうけど、あんまし面白なかったの」
トーナメントに上がってきている選手だ。決して弱い選手ではないとは思う。そんな相手にも、たったの一撃、しかも完全に防御に徹していた相手をと考えると、本当に底知れない存在だ。
「シンジ、驚いているようだが、本気どころかあれはジャブ程度なものだぞ」
「へえ!?マジですか」
「うん、おおマジよ。今のは演出の一環で一撃性能が高いように見せているが、あいつは高火力を高機動力かつ圧倒的な手数で倒していく戦闘スタイルだ。今の試合はあいつの5%も見せていない。予選の時のほうが余程力を出していたな」
予選の時はひたすら暴れていたことを考えると、本来はもっと火力とその攻撃範囲も今の戦闘内容とは比べものにならないんだろうな。
そして、そんなゼノンさんの相手をするダルトンさんもまたさらに脅威に感じてしまうな。
「あれだけ手数の多い攻撃にも関わらず、すべて正確に対処していますね」
ゼノンさんは攻撃の95%をかわし、時には蹴りで剣を弾くことでザークの攻撃を防いでいる。攻撃は喰らっていないが、いまだに自身から攻めに行っているシーンは一度もない。
「ゼノンさんは何か狙っているんですか?流石に何回かは攻撃に動いても良かったと思うんですが」
「ああ、ゼノンはあえて自分から動いていないんだ」
「?どういうことですか?」
「予選の時は派手に、かつスピーディーに戦う方が観客を沸かせられるけど、今回は瞬殺では流石に物足りないだろう。時間をかけすぎても、だれるからあんまりいいとも言えないが」
自分から行かない理由は、観客のためのパフォーマンスということか。普段相手にすることが魔物ばかりだから、そういう感覚は中々持てないな。
「そろそろやな」
「いつまで回避してるつもりなんだ。あんたが魅せるために回避に専念して時間を稼いでいるのはわかっている。俺に攻撃しないと意味ないぞ」
ゼノンさんが、ザークの言葉を聞くと大きなため息をついた。
「は~~、何をゆうとんねや。お前のためにこうして5分間は猶予を与えてやってんや。いきなり倒すのは流石に酷やと思って、チャンスを与えたのにのう。まあええか、それじゃあとっとと終わらせよか」
ゼノンさんは一気に魔力を込め始めた。魔力の動きは全く淀みがなく、それでいて力強い。遠くから見ている俺ですらこれだけプレッシャーを感じているのだから、目の前で対峙しているザークに対するそれは比べものにもならないだろう。
「(もしこのまま勝ち進めば、俺が相手になるのかもしれないのか)」
このトーナメントで結果を出すことを目標にするのであれば、避けては通れない相手である。そのことはもちろん最初から分かっていたことではあるが、改めて考えると背筋が凍るな。
「それがあなたの全力のようだな。つまり、その一撃を凌げることができれば俺にもまだまだ勝機があるということだ」
ザークはそう言うと、彼もまた魔力をためそして身体強化を施す。完全に防御態勢に入っている。
「中々悪ないやん。あと数年この闘技場で戦えばさらに強なりそうやな。俺のレベルには全く到達してないけどな」
「最後までどうなるかはわからないもんだろ」
「その意気込みだけは認めたるわ。そういう反骨精神は大事や、この闘技場でなり上げていくには常に挑戦し続ける必要がある」
ゼノンさんは仁王立ちの体勢から、腰を軽く落とし右手を少し前に突き出す。おそらくゼノンさんの攻撃が繰り出される。ザークもため込んだ魔力をすべて防御力に返還させている。
「いくぞ『飢餓狼の爪《ウルブスクロー》』」
独特の構えから、一瞬にしてゼノンさんはザークの背後に回っていた。そのザークは大きな切り傷を受けてその場で倒れ込んだ。
「そこまで、勝者ゼノン!!」
「やっぱしあっけなかったのう。怪我しなかっただけマシと考えるべきやろうけど、あんまし面白なかったの」
トーナメントに上がってきている選手だ。決して弱い選手ではないとは思う。そんな相手にも、たったの一撃、しかも完全に防御に徹していた相手をと考えると、本当に底知れない存在だ。
「シンジ、驚いているようだが、本気どころかあれはジャブ程度なものだぞ」
「へえ!?マジですか」
「うん、おおマジよ。今のは演出の一環で一撃性能が高いように見せているが、あいつは高火力を高機動力かつ圧倒的な手数で倒していく戦闘スタイルだ。今の試合はあいつの5%も見せていない。予選の時のほうが余程力を出していたな」
予選の時はひたすら暴れていたことを考えると、本来はもっと火力とその攻撃範囲も今の戦闘内容とは比べものにならないんだろうな。
そして、そんなゼノンさんの相手をするダルトンさんもまたさらに脅威に感じてしまうな。
156
お気に入りに追加
11,451
あなたにおすすめの小説
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅
聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
追放されたテイマー半年後に従魔が最強になったのでまた冒険する
Miiya
ファンタジー
「テイマーって面白そうだったから入れてたけど使えんから出ていって。」と言われ1ヶ月間いたパーティーを追放されてしまったトーマ=タグス。仕方なく田舎にある実家に戻りそこで農作業と副業をしてなんとか稼いでいた。そんな暮らしも半年が経った後、たまたま飼っていたスライムと小鳥が最強になりもう一度冒険をすることにした。そしてテイマーとして覚醒した彼と追放したパーティーが出会い彼の本当の実力を知ることになる。
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜
純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」
E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。
毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。
そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。
しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。
そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。
『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。
「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」
「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」
これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。
※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。
おばあちゃん(28)は自由ですヨ
七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。
その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。
どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。
「おまけのババアは引っ込んでろ」
そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。
その途端、響く悲鳴。
突然、年寄りになった王子らしき人。
そして気付く。
あれ、あたし……おばあちゃんになってない!?
ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!?
魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。
召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。
普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。
自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く)
元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。
外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。
※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。
※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要)
※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。
※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる