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第11章 テイマーの街
第181話 いつの間にか
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「ここからアイシャのターンや」
ゼノンさんは自信満々に言い切った。アイシャさんの実力を怪しんでいるわけではないが、現状クリティカルヒットの攻撃を一度も見てない。
「でも今のところアイシャさんが優位に見えるような展開は確認できなかったんですが、なにかあったんですか?」
「今がまさしくやな。すぐに出てくるはずや」
今が、という言葉に俺はあまり納得がいかなかった。だが、ダルトンさんは何かに気がづいたような表情をしている。
「(とりあえず何もわからない以上、見ることしかできないな)」
今もアイシャさんの攻撃から攻防はスタートしており、おそらくスピードや動きに慣れてきたのかジョージ選手は序盤に比べてもより良く対処できており、ついには何発かアイシャさんにダメージを与えられている。
「どうした、予選の時はもっとアグレッシブに見えたけどな。得意な戦法を封じられたらこんなところか」
「...」
「何も言わない、いや言えないか。もう君の動きは十分に見えている、君が相手になってくれたおかげで僕は勝ち上がれる」
アイシャさんの攻撃に合わせ、片手剣で突きを狙ったジョージ選手。アイシャさんに攻撃がヒットするかと思いきや、ジョージ選手の攻撃に綺麗に合わせて蹴りを放ったのだ。
ジョージ選手もまさかこのタイミングでカウンターが飛んでくると思わなかったのだろう、回避はおろかガードもできずもろに食らってしまった。
「(一体何が起きたんだ!?タイミングを見誤ったのか!?)」
ジョージ選手は派手に吹っ飛ばされて、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしている。まるで何が起きたのかが理解できていないような。立ち上がるも、アイシャさん蹴りが相当効いたのか少しふらついたように見える。
アイシャさんの表情は特に変わらず、再びジョージ選手のほうに接近する。一方のジョージ選手は余裕な表情はなくなり警戒心を隠しきれていない様子だ。そしてアイシャさんは一直線に右足の蹴りを放つ。
「(このタイミングならカウンターの余裕はないだろう)」
ジョージ選手がよけると同時に片手剣を強く握り、自身の体を大きく回転させて斬りかかった。アイシャさんはその回転切りをさも当然のように避けると、再びカウンターの蹴り攻撃を放つ。
「2度もまともに食らってたまるか」
ジョージ選手はぎりぎりのところで剣でアイシャさんの蹴りをはじきダメージはなんとか回避できた。
「...少し浅かったか」
「(っつ!本当に何が起きている。今のは完璧なタイミングだったはずだ。なのに当たり前のようにカウンターをかましやがった)」
剣でガードしたとはいえ、綺麗に打ち込んだ蹴りに対しぎりぎりのガード、パワーにはかなりの差がありジョージ選手は体勢を大きく崩されてしまった。
「これは一体どういうことなんですか。これがゼノンさんが言っていたことなんですか」
「せやな。相手がカウンターの対策をした時点で真っ向から戦うにはスピードが足りていなかったと、自ら教えているようなものやな。その時点で7割方勝負は決まっていた」
あくまで7割なのは、高防御であれば攻撃を耐えそのすきを狙うことも可能であったり、それこそジョージ選手と同じ戦法でかつ罠の利用や、実はスピードが高かったがあえて隠していた、という可能性もあるとのことだった。
「だが、アイシャが真っ先に攻撃を仕掛けるちゅうことはおそらくその3割には当てはまらないと考えたんやろうな。そして、あえて対応させることで癖をつけさせた」
「癖、か。確かに途中から向こうの相手もアイシャの攻撃に慣れてきていたな。だがだいぶ時間かけたな」
「だいぶ丁寧な試合運びをする相手やったからな。時間はかかるが、逆に丁寧だからこそ誘導ができればドツボにはまってしまうタイプやな」
あえて本気を出さずに、相手の動きを制限させて勝利を確実なものにする戦法。大人数の時のカウンターも恐ろしく強かったが、むしろ1対1のこっちのほうが厄介に感じる。
ジョージ選手の綺麗な攻撃がかえって読みやすくなり、途端にアイシャさんのペースになってきている。
「く、どうして攻撃されるんだ。アイシャの動きは完全に把握した。実際さっきまで俺のぺーずだったのに」
途中から自分の思い通りの展開にならなくなったのか、やや動きが雑になってきている。さっきまでの丁寧で綺麗な試合運びは一体どこへ行ったのか。
「意外と向きなるタイプなんやな。今の戦法が通用しないならすぐに変えるのが吉なんやが、あの感じだと変える気はなさそうやな」
アイシャさんの攻撃を何発も食らってフラフラの状態になっているジョージ選手、アイシャさんの最後の攻撃はカウンターでもなく、一直線に近づいてからのハイキックだった。序盤であれば対処できただろうが、体力の低下だけでなく精神的なダメージも大きく何とか合わせようとしたが体がついてきておらず、まともに食らってその場でKOとなった。
ゼノンさんは自信満々に言い切った。アイシャさんの実力を怪しんでいるわけではないが、現状クリティカルヒットの攻撃を一度も見てない。
「でも今のところアイシャさんが優位に見えるような展開は確認できなかったんですが、なにかあったんですか?」
「今がまさしくやな。すぐに出てくるはずや」
今が、という言葉に俺はあまり納得がいかなかった。だが、ダルトンさんは何かに気がづいたような表情をしている。
「(とりあえず何もわからない以上、見ることしかできないな)」
今もアイシャさんの攻撃から攻防はスタートしており、おそらくスピードや動きに慣れてきたのかジョージ選手は序盤に比べてもより良く対処できており、ついには何発かアイシャさんにダメージを与えられている。
「どうした、予選の時はもっとアグレッシブに見えたけどな。得意な戦法を封じられたらこんなところか」
「...」
「何も言わない、いや言えないか。もう君の動きは十分に見えている、君が相手になってくれたおかげで僕は勝ち上がれる」
アイシャさんの攻撃に合わせ、片手剣で突きを狙ったジョージ選手。アイシャさんに攻撃がヒットするかと思いきや、ジョージ選手の攻撃に綺麗に合わせて蹴りを放ったのだ。
ジョージ選手もまさかこのタイミングでカウンターが飛んでくると思わなかったのだろう、回避はおろかガードもできずもろに食らってしまった。
「(一体何が起きたんだ!?タイミングを見誤ったのか!?)」
ジョージ選手は派手に吹っ飛ばされて、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をしている。まるで何が起きたのかが理解できていないような。立ち上がるも、アイシャさん蹴りが相当効いたのか少しふらついたように見える。
アイシャさんの表情は特に変わらず、再びジョージ選手のほうに接近する。一方のジョージ選手は余裕な表情はなくなり警戒心を隠しきれていない様子だ。そしてアイシャさんは一直線に右足の蹴りを放つ。
「(このタイミングならカウンターの余裕はないだろう)」
ジョージ選手がよけると同時に片手剣を強く握り、自身の体を大きく回転させて斬りかかった。アイシャさんはその回転切りをさも当然のように避けると、再びカウンターの蹴り攻撃を放つ。
「2度もまともに食らってたまるか」
ジョージ選手はぎりぎりのところで剣でアイシャさんの蹴りをはじきダメージはなんとか回避できた。
「...少し浅かったか」
「(っつ!本当に何が起きている。今のは完璧なタイミングだったはずだ。なのに当たり前のようにカウンターをかましやがった)」
剣でガードしたとはいえ、綺麗に打ち込んだ蹴りに対しぎりぎりのガード、パワーにはかなりの差がありジョージ選手は体勢を大きく崩されてしまった。
「これは一体どういうことなんですか。これがゼノンさんが言っていたことなんですか」
「せやな。相手がカウンターの対策をした時点で真っ向から戦うにはスピードが足りていなかったと、自ら教えているようなものやな。その時点で7割方勝負は決まっていた」
あくまで7割なのは、高防御であれば攻撃を耐えそのすきを狙うことも可能であったり、それこそジョージ選手と同じ戦法でかつ罠の利用や、実はスピードが高かったがあえて隠していた、という可能性もあるとのことだった。
「だが、アイシャが真っ先に攻撃を仕掛けるちゅうことはおそらくその3割には当てはまらないと考えたんやろうな。そして、あえて対応させることで癖をつけさせた」
「癖、か。確かに途中から向こうの相手もアイシャの攻撃に慣れてきていたな。だがだいぶ時間かけたな」
「だいぶ丁寧な試合運びをする相手やったからな。時間はかかるが、逆に丁寧だからこそ誘導ができればドツボにはまってしまうタイプやな」
あえて本気を出さずに、相手の動きを制限させて勝利を確実なものにする戦法。大人数の時のカウンターも恐ろしく強かったが、むしろ1対1のこっちのほうが厄介に感じる。
ジョージ選手の綺麗な攻撃がかえって読みやすくなり、途端にアイシャさんのペースになってきている。
「く、どうして攻撃されるんだ。アイシャの動きは完全に把握した。実際さっきまで俺のぺーずだったのに」
途中から自分の思い通りの展開にならなくなったのか、やや動きが雑になってきている。さっきまでの丁寧で綺麗な試合運びは一体どこへ行ったのか。
「意外と向きなるタイプなんやな。今の戦法が通用しないならすぐに変えるのが吉なんやが、あの感じだと変える気はなさそうやな」
アイシャさんの攻撃を何発も食らってフラフラの状態になっているジョージ選手、アイシャさんの最後の攻撃はカウンターでもなく、一直線に近づいてからのハイキックだった。序盤であれば対処できただろうが、体力の低下だけでなく精神的なダメージも大きく何とか合わせようとしたが体がついてきておらず、まともに食らってその場でKOとなった。
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