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第11章 テイマーの街

第174話 装備を見に来たのだが

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試合開始直後からアクセル全開で飛ばしているゼノンさんは、目にもとまらぬ速さで次々と敵を倒していっている。かなり強固に見える重装備をつけている剣士に対してもパンチ一撃で装備ごと破壊していくその様は、まさしく破壊王と評したくなってしまうほどだ。

「確かに、試合前に言っていたことがよくわかりました。想像以上に暴れまわっていますね」

「去年までもそうだったんだが、あいつは大人数でのバトルロワイアル形式になるとああやって加減せず戦うことが多い。タイマン勝負の時はそうでもないんだがな」

初めてゼノンさんの試合を見た時にも、ここまで暴れるような戦法は取っていなかった。冷静に敵の動きを把握し最適な攻撃をしていた。

その後も出場選手のほとんどはゼノンさんに敗れてしまった。ゼノンさんの戦い方を知っている者がいたようで残った選手3人はゼノンさんから距離をとっていたようだ。

「試合時間は3分13秒、アイシャさんが言っていた通り本当に3分で終わりましたね。圧倒的な強さですね」

「...それでもまだまだ余力は残しているはず。彼の強さはこんなものではない」

「それじゃあ俺は失礼する。もし敵として対峙するときは遠慮なしでな」

そういってダルトンさんはその場を後にした。最後の表情は今までのものとはまるで違い、かなり冷酷なものだった。ゼノンさんと何度も戦ったって言ってたか。

「明後日からはお互い敵同士になるもんな。これ以上のなれ合いは不要ってことだな」

俺は飛び入り選手、アウェーなのに対して他の決勝進出選手のほとんどはこの闘技場でしのぎを削ってきている猛者だ。胸を借りるつもりで立ち向かうしかない。

「宿のほうに戻りましょうか?」

「そうだな、その前に少し武器屋に寄らせてくれ」

俺は手にはめるグローブを見てみたかった。金属製の武器はスライムたちの手で作ることが可能だが、グローブはいくつか試してもらったもののそこまで良質なものを作ることはできなかった。

理由の1つに素材の確保だとリーンは推測していた。金属は希少な物も洞窟の探索で確保することは、今の俺たちであればそこまで苦労しない。しかし、グローブに使う専用の素材に関しての知識は深くない。どの素材が適しているかもあまり把握できていない。

そのため、グローブに関しては店で販売されているものを使用している。いつかいい素材が手に入った時にはリーンに良質なものを作ってもらいたいな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ミラーゼルには闘技場がいくつもあるからか、武器の店は今までみた中でもかなり大きい。2階建てになっており、1階は武器、2階は防具が並んでいる構成だった。

今は【グレートモスリーグ】開催中ということもあってか夕方を過ぎているにも関わらず、かなりの人数の客がいるようで盛り上がっている。

「こんなに多くの品物が割引されているのは相当珍しいですよね。これもやはり大会の影響なのですかね?」

「そうだろうな。店側も人が集まりやすい時期に合わせて買いたくなるように戦略を組んでいるんだろうな」

粗利額とかは見当もつかないが、店の存在を知ってもらうことによってリピーターを手に入れようとしているんだろうな。中にはセール期間しか興味ない者もいるがそこは店主の腕の見せ所だな。

「私とルーは店の外で待っていますね。かなり人が多いのでルーも疲れると思います」

「そうだな、それじゃあ少し待っててくれ。すぐに終わらせる」

ルーは実力はあるがまだまだ子供だ。この人ごみの中待つのはつらいはずだ。色々と気になるものは多いがルーたちのためにもお目当てのものだけ探して出るようにしよう。

グローブがいくつか並んであるコーナーを見つけたので急いで向かったが、

「お、決勝に残った兄ちゃんじゃないか」

俺は1人のおっさんに指をさされてしまった。すると、一気に注目を浴びてしまった。そこからいろんな人たちに声をかけられてしまった。どこから来たとか、肩に乗っているスライムについてなど一方的に話しかけられた。

「(本当シルたちが外に出てくれて助かったな。多分ルーが大暴れしているだろうな)」

アクアたちは知能が高いため、むやみに暴れることはないがそれでも機嫌が悪そうに見える。人に埋もれていると突然人がはけ始めた。

「お、シンジやん。なんやこの人だかりは」

ゼノンさんも同じ時間帯に居合わせたようで、目の前に現れた。周りに集まっていた人たちはゼノンさんのほうに視線が向いた。そのおかげですぐに商品を選びことができた。

「シンジといつ当たるかわからんが、敵となったら容赦せんからな。覚悟しとくんやで」

「もちろんです」

ゼノンさんは右手を差し出してきた。俺はその手を握り戦いの意を表した。周りの人たちはさらに声を上げて盛り上がった。
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